jurgen's Heurige Blog (ゆるげんのブログ)

I will, I will いっぱい足りないの切なくて
I feel, I feel いっぱい会いたいのボクだって

南国かつおまぐろ旅 / 椎名誠 文春文庫

2014年04月26日 | 読書
赤マントシリーズ第4弾。週刊文春1993年1月14日号~11月25日号掲載分をまとめたもの。バブルが崩壊して浮ついた時代から次第に経済の縮小・停滞期へと向かっていく下り坂な当時の空気感が全体から伝わってくる。そんな中でも、銀座のクラブのママさんのひとこと「銀座のお店はもう半分ほどなくなってしまったのよ」にもっとも集約されているように思える。当時で半分なのだから、2014年現在の今は果たしてどうなっているのだろう?
白眉はなんといっても『クソまみれの人生』の巻。当時、週刊文春でリアルタイムに読んだ記憶がある。自分も同じような修羅場を何度も経験しているので、リアルに緊迫感・切迫感が伝わってくる。数えきれないほどある椎名エッセイのなかでも1位、2位を争う秀逸の1篇。この1本だけでも読む価値がある。
「秋風ラーメン旅」もリアルタイムで読んでいて、よく覚えている。富山県でたまたま入ったラーメン屋がズイマーだった話。これに尾ひれ背びれがついて、一部の読者に富山県全部のラーメン屋がズイマーだったような印象を与えてしまい、抗議がいっぱい来そうな。ちゃんと読めば、そんな悪意はまったくないことがわかるのにね。
何かに怒っている時の椎名誠エッセイは、初期のスーパーエッセイ時代を彷彿させとても面白い。しかし、何かがキッカケで抗議が殺到したりすると、書く方も慎重になってしまい、本来の面白さが薄まってしまう作品をその後読まされることになる。これは、あまりよろしくない傾向ではないかと息苦しさを感じ、少々ぐったりしてしまったのであった。