おはようヘミングウェイ

インターネット時代の暗夜行路。一灯の前に道はない。足音の後に道ができる。

My Way それぞれの歌、そして堪能

2017-06-01 | Weblog
アメリカのエンターテイナーとして君臨したフランク・シナトラの持ち歌で知られるMy Way。わたくしもかつては日本語版の歌詞ながらスナックなどで絶唱、愛唱、放歌高吟した口である。元をただせば、フランス人が作詞作曲した歌を聴いたポール・アンカが歌詞を変えてシナトラに提供した歌だそうだ。歩んできた人生の道のりを肯定し、わが人生に悔いなしの心境を高らかに歌い上げる内容である。アーイ・ディドゥ・イッ・マーイ・ウェー(I did it my way)! 唄いながら、歌詞に、単語の1つひとつに陶酔していくような歌であり、ここちよくなる歌でもある。だから多くの歌い手たちが大御所シナトラの十八番に挑むかのようにMy Wayを自分なりに歌い上げる。まさにマイ・ウェイな歌い方である。ユーチューブで検索すると、実に多くの有名歌手らがこの名曲を歌っている。共通しているのは声が美しい、もしくは魅惑的なこと。次いで歌唱力があること。最後に個性を感じさせることだ。これら3要素を平たく言えば、「いい声だなあ、うまいなあ、聞かせるなあ」となる。今宵はMy Wayに聴き惚れよう。

エルビス・プレスリー

なにを置いても、声が絶品。出だしのAnd now, the end is near, を聴いただけで、プレスリーのMy Wayの世界にすんなり誘われ、シナトラの歌だったことがすっ飛んでしまう。プレスリーの▲の形をした太い揉み上げと額から流れる一筋の汗を見ているだけでYou did it your way!と声を上げたくなるほどだ。光り物を散りばめた白いステージ衣装で全身を使った決めポーズは最高。


アンドレア・ボチェッリ

プレスリーの後の2番手として登場するには、相当な歌い手でないといけないな。彼しかないだろう。サラ・ブライトマンとデュエットで歌ったタイム・トゥー・セイ・グッバイの美声がMy Wayの歌詞の中に滲み入り、言葉の隅々までを清澄に染め上げて行く。プレスリーもよかったけど、ボチェッリもいいねえ、となる。


アンディ・ウイリアムズ

美しい声、美しい発音、美しい英語となれば、この人の出番である。ムーンリバーに代表されるように、全ての歌が彼の声にかかると、アンディ・ウイリアムズ化されてしまう。全身これ歌う楽器のような歌手である。爽やかで、力みがなく、まるで清流のようなMy Wayとなるのである。


プラシド・ドミンゴ、カレーラス、パヴァロッテイ

イタリアオペラ界の大御所3人によるMy Wayである。荘厳にして格調高く、もうほとんど聖なる歌となっている。声調と歌いっぷりに聴き惚れて歌詞の内容など忘却の彼方である。聞き終えた後にはブラボー、ブラボーと我を忘れて大声を何度も掛けたくなる。


セリーヌ・ディオン

男の歌をセリーヌが歌うと、どうなるのか。映画タイタニックの主題歌での美声が蘇える。歌に、歌詞に情感をたっぷりと込めることができる歌い手だと実感させられる。そもそもMy Wayは人生の最終幕に至った際の歌である。そうした終焉の時間帯に居ることの哀歓をセリーヌは歌詞の言葉ににじませ、溢れさせる。目を閉じて、じっと聴き入れば、涙さえ浮かんでくる。My Wayで、こんなにも哀歓を漂わせる歌い手は他にはいない。

デヴィッド・ボウイ

昨年亡くなったということも影響しているのかもしれないが、ボウイのMy Wayもセリーヌとはまた異なる哀歓みたいなものを感じさせる。歌いっぷりはボウイ調なのだが、ボウイ色が消えて痛々しいような哀しみの声調が耳に伝わり、聴き終えてなんとも言えない深い印象がいつまでも残る。もう聴けないけど、生で聴きたかったなあ。


藤圭子

My Wayを上手に歌う日本人の歌い手もたくさんいるが、あえて1人を選ぶとすれば、藤圭子となる。個人的な嗜好であり、書き手の自由ゆえである。あの声とあの顔が、あの歌詞を歌うのを、1人静かに聴き入りたいんだよね。♪愛と涙とほほえみにあふれ 今思えば楽しい思い出よ♪ ゆっくりとした歌いっぷりから歌詞が進むにつれてだんだんと声調が高まって来て、♪私には 愛する歌があるから 信じたこの道を 私は行くだけ 全ては心の決めたままに♪へと盛り上がっきてフィナーレへ。音源はよくないが、ぶっきらぼうのような部分や、なんとも真に迫った歌いっぷりが入り混じっているのが、また、いいんだな。

フリオ・イグレシアス

シナトラの他にもう1人大御所がいるとしたら、フリオである。黒い瞳のナタリーで聴かせた艶やかで官能的な声のMy Way。英語よりスペイン語の方が素晴らしい、といったコメントが入るほど、スペイン語の意味は分からなくても、いい歌を聴いているというのを如実に感じさせる。まさに「いい声だなあ、うまいなあ、陶然と聞かせるなあ」である。今宵、最後に聴くMy Wayはこれじゃなくちゃ。いい夢を見そうだ。



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