はづきちさんのはまりもの

まだあったので日記帳になりました

夏の始まり、女の子 (千早SS)

2007-03-26 14:43:44 | 千早4畳半(SS)

日課の朝顔の水やりも終わり顔を上げる
起きたのが昼どころか3時過ぎだったので今日の日課はこれでおしまい
夏が近いとは言えそろそろ夕方だ
後は暇つぶしをかねて買い物にでも行こうか
掃除、洗濯は明日にする事にしよう
ここ数日はお天気が続いてるから明日も大丈夫
…だと思う

買い物帰りに公園に寄った
日が長くなったからまだ子供達が遊んでる
決して大きな公園じゃないけれど
ベンチもあるし、緑もある、私のお気に入りの場所
買って来たアイスキャンディーをしゃぶりながらベンチに腰かける
こういうものが美味しい時期だな…としみじみ思う
まだ夏本番というわけでもなくて
時折吹く風がとても心地よく感じられるぐらいの季節
初夏か…
アイスの棒を少しかじると木の味がした
これが苦手でいつもなんとも言えない気分になってしまうのに
それでもやってしまうのはなんでだろう?
あ、やっぱりなんとも言えない
ガジガジガジ

「ちはやおねーちゃーん!」
不意に名前を呼ばれてそちらを見る
「はるかちゃん」
「やっぱりちはやおねーちゃんだ!」
ぱあっと輝く笑顔でこちらに駆けて来る
そのまま…ずっこけた
「はるかちゃん!大丈夫!?」
「ふぇぇぇぇ…」
まずい!このままだと大泣きだ
泣いたはるかちゃんを泣きやますのはたいへんな重労働
目に涙を溜めたはるかちゃんを抱き締めて背中をさすりながら
「大丈夫、はるかちゃんは強い子だもの、痛くない、痛くない」
言い聞かせるように優しく語りかける
「うっぐ、えっぐ…」
うーん、もう少しなんだけど…
しょうがない、最後の手段
「ほら、泣いてるとおねーちゃん、はるかちゃんのこと嫌いになっちゃうよ?」
「やだぁ!きらいになっちゃやだよぉ!」
ぎゅーとしがみ付いて来るはるかちゃん
ああ、もう、本当に…
嫌いになるなんてあるはず無いじゃないか
昔は可愛いものに対してクールを決め込んで我慢していたりしたが
それがどんなにもったいない事だったかと今になって思う
主にこの子の前で
「大丈夫、おねーちゃんははるかちゃんのこと大好きだから」
ニッコリ笑って頭を撫でる
「ほんとー?」
「ええ」
大きく頷くとまたぱぁっと輝くような笑顔
ああもう!可愛すぎ!
手で服の汚れを払ってあげる
しかし名前が一緒だからって
よく転ぶのまで同じじゃなくたっていいんじゃないだろうか?
危なっかしくて目が離せないのは、同じ名前の私の友達と同じかも

キーンコーン!カーンコーン!
その時5時を告げる鐘がなった
「あ、5じだ、かえらなきゃ」
「じゃあ途中まで一緒に帰ろうか?」
「うん!」
手を繋いで公園を後にする
「今日はお母さんは家にいるの?」
「うん!きょうはハンバーグなんだよ!」
「そうなんだ、よかったね」
優しい笑顔でハンバーグを作っているはるかちゃんのお母さん
エプロン姿の小鳥さんが思い浮かんだ

夕日が赤い
手を繋いだ影が伸びている
小さい影ははるかちゃん
大きな影は私
夕日には人を切なくさせる不思議な力があると思う
こんな風に私も家に帰った事もあったかななんて


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