はづきちさんのはまりもの

まだあったので日記帳になりました

ぱあとなあ 7 信じてる (SS) 

2010-01-19 04:10:54 | ぱあとなあ(SS)
「プロデューサーさん…」
「…いや、俺は俺の出来ることで最大の事を」
「で、これですか?」
「…はい」
あきれる春香の前に置いてあるのは黒い消し炭
もとい玉子焼き…になる予定だったものだ

オーディションに自らが考え付いた奇策で勝った春香
それのご褒美ということで何が欲しいか聞いたのだが
なぜか春香からでて来た答えは
「プロデューサーさんの手料理が食べたい」
とのある意味最強クラスの無理難題が飛んできたのだ
自慢ではないが俺は料理はほぼ出来ない
いや、しないのだ、だからやれば出来る!
…んじゃないかな?と意気込んで出来たものが目の前のこちらになります
「プロデューサーさんって不器用なんですねー」
春香の鋭い一言が胸に痛い
しかもなぜか嬉しそうだし
「じゃ、じゃあ春香は…って聞くだけあれだった」
「ええ、私はそれなりに出来ますから」
お菓子作りが趣味な春香は普通の料理もやはり美味い
時々作ってくるサンドイッチなどに俺の胃袋は癒されているのだ
「しかし何だって俺の料理なんか…」
ふさくれる俺に春香は笑顔で答えた
「食べたことありませんでしたから」
「まあ結局食べれなかったんだが」
消し炭を見つめる俺
「でもそのことがわかっただけでいいかなって」
「…俺が消し炭しか作れないことがか?」
「はい」
どこまでも笑顔だ
くそう、春香に手玉に取られてる
というより再結成からずっと手玉に取られてる気すらする
時は俺と春香のパワーバランスさえ崩してしまったのか!

「次は何のオーディションですか?」
「ん、ああ…実はな…」
言いにくい
現在のランクはC
そう前回のプロデュース時と同じ所まで来たのだ
本当ならばここからはじっくり行きたい
レッスンを重ね、実力と時勢のタイミングが重なった時にオーディション
そうしたい
そうしたいのだが…
あの事務員さんはまたもや笑顔で無茶を告げた
「「特別レベルのオーディションだけ受けてください」なんて無茶を言いやがって…」
今度の指令は特別オーディションの連戦制覇
極端に合格枠が少ないオーディションを特別オーディションと呼ぶ
先日合格したダンスマスターもその一つなのだが
それぞれに難易度が高いそんなオーディションがまだまだあるのだ
そしてそんな中でも今回は…
「HIT-TVだ」
「…」
告げる俺
それを聞き思案顔の春香
そりゃあそうだ
HIT-TVは事実上のTOPアイドルオーディション
現時点の春香では正直勝つ方法が思い浮かばない
自殺行為とも言えるのだ
「プロデューサーさん?」
「な、なんだ?」
「おかしいですよね」
「何がだい?」
「…何か隠してるでしょ?」
「そ、そんなことはないぞ」
思わず目を逸らす
まさか「とんでもない指令の元にプロデュースしてる」なんて言えるはずが…
「目を見てください」
「春香…」
そのまっすぐな瞳は
隠し事をしてる者には直視できない瞳
やはり目を逸らしてしまう
「プロデューサーさん…」
「いや、あのな」
「私達はなんですか?」
「アイドルとプロデューサーで…」
「そんなことじゃなくて!」
口調が荒くなる
逸らした目を戻せないが震えてる
見えないが、わかる
「私達は…パートナーでしょう…」
静かに重く春香は呟く
「私達に関することなのに…私には秘密なんですか?」
「…春香」
「私はプロデューサーさんを信頼してます!でもプロデューサーさんはっ!」
「俺だって…」
ダメだ、これは単なる言い訳だ
自分の保身のために春香を利用していると
それが事実だから、言いたくなかった
春香は賢く、そして感の利く子になったのだろう
その事実に、自ら気が付いてしまった
多分俺は、怒られた子供のような顔をしていたんだろう
そして春香は泣いている
怒りながら、目の端に涙をためて
「…ごめんな春香」
「…」
「全部話す」
「…聞いた上で辞めるか辞めないか決めますから」
「ああ、聞いてくれ、それから判断して欲しい、俺は無茶を言ってるから」



タイガー!イヤー! (速い子SS)

2010-01-06 03:10:32 | SS 番外編
初出勤
それは年が明け、正月気分を吹き飛ばす
ちょっと陰鬱な試練の日だ
こんな職業上、定期的な休み
それこそ正月休みなんかは普通無縁なのだが
まあそれは売れっ子の場合
売れてなければ暇なのだ
…くそう、来年は忙しくて仕方なくしてやる!
そんな事を考えながら事務所のドアを開けると
そこには一人の…
いや一匹の野獣がいた

「ぐるるるるるぅー!きしゃぁぁ!」
青い髪、サイドテール、少し幼い顔作り
整ってはいるはずなのだが、現状ではそれがよくわからない顔
八重歯は今の状態には似合ってる、凄く
そう、目の前で唸ってるのは…千速だ
「…聞くのもなんだがなにしてんだ?新年早々」
「ふしゃー!」
「四つんばいだと膝汚れるだろ、そもそもこんなに寒いのにTシャツか」
いつもへんてこな文字入りTシャツを着てる千速だが
今日は更にへんてこになってる
黄色と黒の縞々のしっぽをつけ、頭の上には同じような耳
これはどうみても…
「あら、千速ちゃん?今日はいつもよりワイルドね」
そう言いながら現れたのは765プロのお茶目な事務員、小鳥さんだ
「ですねぇ、いつもワイルドですが」
「ええ、アクセサリーの耳と尻尾がよく似合ってるわ」
「今日の千速なら生肉ぐらいモリモリいきそうですよね」
「昨日は御餅を喉につかえさせてましたよ」
「ははは、初笑いですね」
「ええ、クスクス」
のた打ち回る千速に掃除機を突っ込み餅を吐き出させる姿を想像して
つい笑いが溢れてしまった
こんな風に明るい気持ちにさせてくれる
それがアイドルだ
「きしゃぁぁぁぁぁぁ!!!」
「ぎゃぁぁぁ!!」
引っかかれた
ううむ、なんという凶暴性
俺の一瞬の判断力がなければその鋭い爪で血だらけだったろう
「いや、危ないところでした」
「プロデューサーさん、血がドバドバでてますよ」

「ほら、千速、唸ってないで降りてきなさい!」
「千速ちゃーん、江戸屋小猫の物真似はもういいわよー」
「グルルルル…」
おかしい
いや、いつもおかしいのが千速なんだが
今日は特におかしい気がする
「くっ…」
そこによろめいた影が一つ現れる
「社長!」
ボロボロな姿だが、それを決して外に見せようとしないその黒い姿
自分が傷だらけなのを悟られないためなのだろう
その社長の精神に涙する
まあ本当は真っ黒でよくわからんのだが
「千速君は今…呪いによって乗っ取られているのだ!」
「「!!」」
緊張が走る事務所!
その衝撃的な発言に思わず声を上げてしまう
「何言ってんすか、非常識な」
「呪いとかあるわけ無いじゃないですか、ボケました?」
「おおう!君達!言葉のナイフが胸に突き刺さるよ!」
社長が語るには
・765プロには危険なアクセサリーを封印した箱がある
・その箱はしっかり管理されている
・正月なので虫干ししてたら居眠りしてしまった
・気が付いたら千速が虎耳、虎尻尾を付けてた
「管理できてないじゃないですか!」
「そもそもなんですか!?危険なアクセサリーって!」
「セクシーボンテージとか、ギャグボールとか…」
「それあんたの趣味だろ!」
「そんなものを堂々と真昼間から虫干ししないでください!」
「しょうがなかったんだよ!おとそも入ってたし!」
「酒飲んで大事な仕事するな!」

「で、あれはどうなってしまうんですか?」
小鳥さんが千速の耳と尻尾を差し
大事なことを聞いてくれる
呪いのアイテムと言われているアクセサリー
それ相応の理由があるはずだ
今の千速の状況を見ても、おそらく虎
虎が関係あるのではないだろうか
「うむ…それはね」
ゴクリ…
その唾を飲む音は俺のものなのか、社長のものなのか
それとも…
「説明書を無くしてしまったからわからんのだよ」
「…呪いとか乗り移ったとか言うのは?」
「勢いで言ってみたんだよ!」

社長を赤と黒のルージュノワールにした俺達
問題の虎のアクセサリー
虎と言うところに恐怖がある
動物の中でもかなりの戦闘力を誇る虎
もし、その虎になりきってしまっていると言うならば
それを俺達が止められるのだろうか
冷や汗が伝う
しかし、だが…
「小鳥さん」
「なんですか、プロデューサーさん」
「虎ってどういう行動するんでしょうか?」
「…さあ?」
見たところ先ほどから千速は
尻尾を振ったり
唸ったり
伸びたり
なんというか…これは…
「…猫ですね」
「ですね」

「つまり、今の千速ちゃんは大きな猫です」
「…猫」
「両方結局、猫科の生き物ですから」
そう言って猫じゃらしを渡してくる小鳥さん
嫌な予感はするが一応聞いてみる
「あのどう」
「これで千速ちゃんと遊んでてください、私は仕事があるので」
逃げられた
残されたのは机の上で伸びをしてる千速と猫じゃらしを力なく持った俺
遠まわしに俺に仕事が無いといわれてるような被害妄想
いや、千速の世話が俺の仕事だからまあいいんだけど…
とりあえず…振ってみる
千速に向けて先をゆらゆらと振らすとすぐに食いついてきた
目線で俺の揺らす先を見つめ、手をちょい、ちょいとそこに出す
…猫だ
このしぐさは猫だ…
そしてなんというか
それが可愛いと思ってしまってることが少し恥ずかしい
「ほーれ、ほーれ」
「にゃー、にゃー」
…猫だ
人なのに猫だ!
楽しくなってきてより激しく振って見る
「にゃん!にゃん!にゃん!」
千速も夢中になってるようで必死に全身を使ってじゃれている
「ほーれ!」
飛びついてきた千速から逃がすように猫じゃらしを上に逃がす
すると楽しげに飛びついてくる
…俺の上に
「うわっ!」
「にゃー!」
千速は今は確かに猫だが、体は千速のまんまなわけで
軽いとは言え全体重がかかったタックルは俺を押し倒すのに十分だった
手から落ちて動かない猫じゃらしには興味を失ったのか
千速はそのまま丸まってしまう
…俺の膝の上で
「…っておい!」
「にー」
なんとも心地よさそうに目を細められる
ゴロゴロと喉を鳴らしたり
そのしぐさはまるで猫そのものだ
思わず喉を撫でたりしてみる
おお、実に気持ちよさそうだ
そのまま無意識に撫で続ける
猫にするように、ゆっくりと、やさしく

「ああ、体温高いな、お前は」
「にゃ~」
「ははは、猫になった方が静かだな」

冬の事務所は寒いはずなのに
ポカポカしてたのはこの猫のおかげだろう
まあ、いつもの千速じゃ絶対無理だしな
こんな落ち着いた時間を二人で過ごすことは

結局
俺の今日の仕事は
猫を撫でる事だった










「大変です!プロデューサーさん!」
「しー、千速が起きます」
「あ、ごめんなさい」
指を前に立てるジェスチャーで寝ていることを小鳥さんに伝える
あまりに気持ちよさそうに寝てるので起こす気になれなかったのだ
「で、何が大変なんですか?
「はい、それがですね」
小声で話し合う俺達
「実は虎は猫と違ってですね、嫉妬深いそうなんです」
「嫉妬?」
「はい、他の虎と仲良くしてるとパートナーは怒るらしいんです」
「凄いですね」
「ええ、時には相手を殺してしまう個体もいるとか」
「とは言っても別に今の状況には関係無い…」
今、俺達は千速を起こさぬために小声で話してるわけで
相手の声を聞き取るために
必然的にお互いの顔がかなり近づいている
気づいた瞬間、赤くなったのか、青くなったのか
それは膝の上から響く唸り声だけが知っていた

「ぎゃぁぁぁ!!引っかくな!噛み付くな!」
「グルルルルッ!!」
「プロデューサーさん!虎の力は凄いから気をつけてください!」
「今、それを実感してますよ!ぐはぁ!足が痺れて逃げられない!」
「長い間、猫を膝に乗せてると足が痺れるからそれも気をつけてください!」
「先に言ってくださいよ!」
「虎は気に入った相手には甘噛みするらしいですよ!」
「これ本噛みだろ!イテェ!!」
「…音無君、彼らは何をしてるのかね」
「あっ、社長、仲良くケンカと言いますか…」

「ぎゃぁぁぁ!!やーーめーーてーー!!」


「…ところで千速は治るんですか?」
「鯛食べさせたら治るってユーザーサポートからメールが」
「なぜ鯛…?」
「お正月なのと鯛(タイ)ガーってことじゃないですか?」
「酷いオチだ」
「全くです」
























あけましておめでとうございます!
気が付けば2010年
驚きですよ、未来ですよ!
2010年って言ったらメイドロボぐらいいても
おかしくないと思ってたんですが意外とそうはいかない様で
未来っぽいのは薄型TVぐらいですよね
腕時計型の電話とかもうできてもいいと思うんですけど

久々のSSです
速い子ですが喋ってません、速い子
唸ってます
たまにはいいかなーと虎をテーマに書き出しましたが
・猫だこれ!
・別に速い子じゃなくてもよくね!?
と言う感じに
まあ僕は、速い子が大好きと言うことで
こっちも地味に動かして行きたいと言う願望もあるので
あ、後半の虎の性質に関してはデタラメです
多分

…まずは連載式の方どうにかしろ
はい
めんちゃい