暖かな日の差し込む窓
古ぼけたアパートの2階の端の部屋
この4畳半に私は生きていた
何もかもと離れたくて
でも離れたくなくて
ひっそりと移り住んだ私の城
年季の入ったその建物は
辛い時にも嬉しい時にも
緩やかに静かに私を包み込んでくれた
まるで水槽みたいに
時の止まった様なこの部屋は
波風を立てることの無い水面のように
励ます事も慰める事もしてくれはしないけれど
蹲り泣いていても
陽気に笑っていても
変化なくいつも私の居場所だった
何度この日に焼けた壁にもたれただろう
声を殺して泣いてすがりついたり
背をもたれてただぼーっとしたり
暖かい日はもたれたまま寝ちゃったこともあったっけ
天井の染みは何に見えたんだっけ
何回も寝る前に天井裏はどうなってるんだろう?って思ったけれど
結局調べる事は無かったな
今は何もない部屋を見渡す
元々物があったわけではないけれど
何年もあったちゃぶ台や小さな赤いテレビ
それらが無くなっただけでもずいぶん寂しく見えるものだ
私が生きてきた生活の跡
失くす事は寂しい事
でも得られるものもある
そう私は思えるようになった
このうつろう様な、彷徨う様な4畳半の生活
引きこもったり
旅に出たり
夜更かししてみたり
一日寝て過ごしてみたり
相反した事、知らなかった事、知ろうともしなかった事
その全てを許してもらえる生活だった
特殊な状況というのもあったかもしれないけれど
人が一人になって
明日の心配をする事無く、迎えられる今日は
何も無い明日に怯える事無く、迎えられる今日は
ほんの小さい頃には当たり前だったそれは
なんて素晴らしいんだろう
家族が居た頃
歌以外のものを信じられなかったあの頃
信じる人ができたあの頃
全てを失ったと思い込んでいた頃
ただ流れていた頃
私は一度羽ばたきあの大空を飛んで、落ちた
片翼を失ったと思ってた
でも
鳥でなくても、翼が無くても、生きていけた
歌手でなくても、プロデューサーが居なくても
全然大丈夫という事は無かったけど生きていけた
意外に人間はしぶとくて
図太くなんとかなってしまうものだって
日が傾き、夕焼けが窓から差し込み始めている
ちょっと物思いにふけってたと思ったらもうこんな時間
小さな鞄に最後の荷物であるハーモニカをしまう
悲しかった時に慰めてくれた私の相棒
できることなら、これからは楽しい曲を弾いてあげたい
何も無くなった部屋
ギィと軋むドア
別れを告げるつもりで振り向いたけれど
出てきた言葉はちょっと違った
多分、もうここに来る事は無いのだろうけれど
それでも
あの日々に
この部屋に
さよならを
言いたくなかった
だから
「またね」
って
笑った
古ぼけたアパートの2階の端の部屋
この4畳半に私は生きていた
何もかもと離れたくて
でも離れたくなくて
ひっそりと移り住んだ私の城
年季の入ったその建物は
辛い時にも嬉しい時にも
緩やかに静かに私を包み込んでくれた
まるで水槽みたいに
時の止まった様なこの部屋は
波風を立てることの無い水面のように
励ます事も慰める事もしてくれはしないけれど
蹲り泣いていても
陽気に笑っていても
変化なくいつも私の居場所だった
何度この日に焼けた壁にもたれただろう
声を殺して泣いてすがりついたり
背をもたれてただぼーっとしたり
暖かい日はもたれたまま寝ちゃったこともあったっけ
天井の染みは何に見えたんだっけ
何回も寝る前に天井裏はどうなってるんだろう?って思ったけれど
結局調べる事は無かったな
今は何もない部屋を見渡す
元々物があったわけではないけれど
何年もあったちゃぶ台や小さな赤いテレビ
それらが無くなっただけでもずいぶん寂しく見えるものだ
私が生きてきた生活の跡
失くす事は寂しい事
でも得られるものもある
そう私は思えるようになった
このうつろう様な、彷徨う様な4畳半の生活
引きこもったり
旅に出たり
夜更かししてみたり
一日寝て過ごしてみたり
相反した事、知らなかった事、知ろうともしなかった事
その全てを許してもらえる生活だった
特殊な状況というのもあったかもしれないけれど
人が一人になって
明日の心配をする事無く、迎えられる今日は
何も無い明日に怯える事無く、迎えられる今日は
ほんの小さい頃には当たり前だったそれは
なんて素晴らしいんだろう
家族が居た頃
歌以外のものを信じられなかったあの頃
信じる人ができたあの頃
全てを失ったと思い込んでいた頃
ただ流れていた頃
私は一度羽ばたきあの大空を飛んで、落ちた
片翼を失ったと思ってた
でも
鳥でなくても、翼が無くても、生きていけた
歌手でなくても、プロデューサーが居なくても
全然大丈夫という事は無かったけど生きていけた
意外に人間はしぶとくて
図太くなんとかなってしまうものだって
日が傾き、夕焼けが窓から差し込み始めている
ちょっと物思いにふけってたと思ったらもうこんな時間
小さな鞄に最後の荷物であるハーモニカをしまう
悲しかった時に慰めてくれた私の相棒
できることなら、これからは楽しい曲を弾いてあげたい
何も無くなった部屋
ギィと軋むドア
別れを告げるつもりで振り向いたけれど
出てきた言葉はちょっと違った
多分、もうここに来る事は無いのだろうけれど
それでも
あの日々に
この部屋に
さよならを
言いたくなかった
だから
「またね」
って
笑った