洗濯ものを干しに庭に出ると 誰が木を切っているのか チェーンソーの機械音が響き渡っている。
空を見上げると、太陽の日差しにどことなく春の訪れを感じる。
止む事のないチェーンソーの音を聞きながら、ふと
やぶやまさんは、今日も裏山で竹を切っていらっしゃるのかなあと思った。
一月もあと二日で終わり
春が近づくにつれ、なんとなく気ぜわしく急き立てられるようで、落ち着かない。
庭や畑の草取り そしてまた米つくりが始まるのだ。
友人が 真紅のバラの花束を一抱え持ってきてくれた。
「広島からたくさん送ってきて 始末に困っているの。○○さんに花を生けてもらったら喜ぶので貰ってくれる?。」
「まああ、綺麗!ありがとう。」
そういえば・・・花束といえば
夫が 一度だけ バラの花束を両手に抱えて帰ってきたことがあった。
もう十数年も前の事 何を思ったのか
「誕生日おめでとう。」
と言って 私にプレゼントしてくれたのだ。
「え~ うそ~」
突然の事で、驚きと嬉しさと感激で、ありがとうという言葉が、すぐには出なかった。
それが最初で最後(いや最後じゃないかも)のプレゼントだ。
男の人が お花屋さんに寄って彼女、ではなく・・・古女房のために薔薇を選び花束にして包装してもらったという行為が、なんとも言えず
嬉しかった。
きっと 照れくさかったんじゃあないかなあ・・・
あとにも先にも、たった、この一回だけのバラの花束が 私には忘れられず
頂いた友人にも思わず話してしまった。
友人から頂いた真紅の薔薇は、玄関や居間 廊下に飾られて、古い家も少し華やいでいる。