過労死は自己管理のもんだいです。奥谷禮子/週刊東洋経済

2007-01-13 23:34:21 | 労働運動
過労死は自己管理のもんだいです。
   奥谷禮子(ザ・アール社長)

若い人の中には、もっと働きたくてウズウズしている人たち
がいる。結果を出して評価を得たいから、どんどん仕事するわけですよ。
ところが現法制下では上司が「早く帰りなさい」と。本来そこは代休な
どの制度を確保したうえで、個人の裁量に任せるべき。働きたい人間が
働くのを阻むのはマイナスですよ。
仕事が面白い、もっと能力を高めたいと思っているときに、人の能力
は伸びます。自分自身の商品価値が上がれば、会社が買収されたとか倒
産した場合でも、労働市場で売れるわけです。今まで8時間かけていた
仕事を4時間でこなして、残り4時間は勉強に充てようとか、ボランテ
ィアをやろうとか、介護や育児に回すこともできる。24時間365日、
自主的に時間を管理して、自分の裁量で働く。これは労働者にとって大
変プラスなことですよ。
自己管理しつつ自分で能力開発をしていけないような人たちは、ハッ
キリ言って、それなりの処遇でしかない。格差社会と言いますけれど、
格差なんて当然出てきます。仕方がないでしょう、能力には差があるの
だから。結果平等ではなく機会平等へと社会を変えてきたのは私たちで
すよ。下流社会だの何だの、言葉遊びですよ。そう言って甘やかすのは
いかがなものか、ということです。

さらなる長時間労働、過労死を招くという反発がありますが、だいた
い経営者は、過労死するまで働けなんて言いませんからね。過労死を含
めて、これは自己管理だと私は思います。ボクシングの選手と一緒。ベ
ストコンディションでどう戦うかは、全部自分で管理して挑むわけで
しょう。自分でつらいなら、休みたいと自己主張すればいいのに、そん
なことは言えない、とヘンな自己規制をしてしまって、周囲に促されな
いと休みも取れない。揚げ旬、会社が悪い、上司が悪いと他人のせい。
ハッキリ言って、何でもお上に決めてもらわないとできないという、
今までの風土がおかしい。たとえば、祝日もいっさいなくすべきです。
24時間365日を自主的に判断して、まとめて働いたらまとめて休む
というように、個別に決めていく社会に変わっていくべきだと思いますよ。

同様に労働基準監督署も不要です。
個別企業の労使が契約で決めていけばいいこと。「残業が多すぎる、不
当だ」と思えば、労働者が訴えれば民法で済むことじゃないですか。労
使間でパッと解決できるような裁判所をつくればいいわけですよ。
もちろん経営側も、代休は取らせるのが当然という風土に変えなけれ
ばいけない。うちの会社はやっています。だから、何でこんなくだらな
いことをいちいち議論しなければいけないのかと思っているわけです。

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全員正社員化など非現実的 非正規なりの雇用安定を
八代尚宏・経済財政諮問会議議員(国際基督教大学教授)

経済財政諮問会議(議長・安倍首相)が提案した「労働ビッグバ
ン」は首相の「再チャレンジ」と同様、基本は規制改革にある。
需要が不足しているときに、規制で労働者全体の雇用を守ることは
不可能。非正社員の低賃金の改善には雇用需要増加が必要だ。
正社員と非正社員の間の格差が言われるが、規制緩和で非正社員が
増えたというのは誤った認識だ。むしろバブル崩壊後、1%台の
成長時代には企業は雇用保障の必要な正社員を減らし、非正社員を
増やさざるをえなかった。
1600万人の非正社員を全員正社員にすることで格差をなくせと
いうのは非現実的であり、非正社員なりの雇用安定を図る策を
考えていくべきだ。
現在の労働者派遣法の期間制限や雇い入れ申し込み義務は、むしろ
派遣期間の短縮化を招く。これをパート労働法のような純粋に
労働者保護のための法律に変えていくべき。いわゆる偽装請負
問題も、請負と派遣との境界線が不明確なことから生じた面も
ある。労働者保護の観点から請負労働に関する共通ルールを
定めていく必要がある。
ホワイトカラー・エグゼンプションを「残業代なしの働き方」と
いうのは誤りで、正しくは残業代の「定額払い」だ。これで
過労死が増えると主張する向きもあるが、残業しなければ給料が
増えない仕組みにも問題がある。労働者が特定の企業にしがみ
つくのではなく、円滑に転職できる自由を確保することも大事だ。
そのためには中途採用機会が増えるような雇用の流動化と、
人材ビジネスがもっと発展して、よりよい職の紹介や訓練が
できるような形にすべきだ。
労働ビッグバンを行うには、労使の利害調整だけではなく、
労働組合以外の大多数の労働者の利益も含めた、長期的に
望ましい労働市場のあり方について考えていく必要がある。

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1月13日号目次

もう安住の職場はどこにもない
雇用破壊

正社員を襲う「ホワイトカラー・エグゼンプション」の衝撃
無給長時間残業への道

INTERVIEW
改革は何をもたらすのか
労働関連法改正を審議してきた公労使代表に聞く
使用者側 「過労死は自己管理の問題です」 奥谷禮子/ザ・アール社長
労働者側 「本当に休みは取れるのか!?」 長谷川裕子/連合総合労働局長
公益側 「野放し状態の管理監督者“扱い”に一線」 荒木尚志/東京大学法学部教授

パート、派遣、請負労働者の前途を阻む鉄壁
「正社員にはさせない」!? ―― 大企業側の反撃

INTERVIEW
全員正社員化など非現実的、非正規なりの雇用安定を 八代尚宏/経済財政諮問会議議員
「労働ビックバン」が掲げる国家観がまったく見えない 川崎二郎/前厚生労働大臣

現地ルポ
もはや“労働者天国”はこの世に存在しない
ドイツでも「安定雇用」が崩壊

「労働者」の権利を持たない労働者たち
「個人請負」という名の悲惨

COLUMN
東京ディズニーランドのダンサーたちも「請負」から「雇用」へ

関連
http://blog.goo.ne.jp/harumi-s_2005/e/c228e7d4ec9d26698e03f0e09979b335


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12 コメント

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非常にわかりやすい論理だ! (邪論)
2007-01-14 00:10:52
「自己責任論」って非常に簡単だってことがよ~くわかったね!

「だいたい経営者は、過労死するまで働けなんて言いませんからね」って、そんなこと公式に言う経営者がいたら、殺人者ですよね。そんなこと言うわけないのね。だったら残業代出せよな!残業代なくても食っていけるだけの賃金よこせよな。

「何でもお上に決めてもらわないとできない」っていうけど、派遣労働の枠を拡大したのは誰なんだ?お上じゃないのか?

この自己責任論って無責任論でもあるね。あまりにも簡単というか、単純すぎるね。世の中そんなに単純に回っているんであれば、うまくいっちゃんだけどね。何でうまくいかないのか、自己責任だから?責任果たせばうまくいくんだよね?この人の論理からいえば。

「個別企業の労使が契約で決めていけばいいこと」ってできるのか?やってるのか?文句を言ったら、即クビってところが多いし、労働組合の結成を奨励する経営者っているの?

こんな文章が堂々とまかり通る日本って、おかしい!
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そう、おかしいですよネ! (ima)
2007-01-14 04:14:05
この人の頭の中は、さぞかしお幸せ、なんでしょうね。この類の世間知らずのお話を堂々とされる方々には、時給750円とかでパートなりアルバイトをして暮らして頂くしか、考えを変えて貰う方法は無いと思いますね。
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偉大なるゴールドマン・サックス様の御為に (不二家が割を喰ったって話!)
2007-01-14 13:17:26
過労死が自己責任とノタマッたオバはんは、マルチ商法発祥の地=米国は、マルチ商法開祖=アムウェイの出身!だから、誰がどんな差し金でそう言わせているのか、判りそうなもんだよね!?
オマケに、不二家が賞味期限切れを素っ破抜かれた件、偉大なるゴールドマン・サックス様が株をお買上との意図をお示しになられたかららしいよ!何と素晴らしい愛国心であろうか?!愛米心って言うか。
ぶっちゃけ、個人的にはシューの細菌は怖いが、牛乳の賞味期限を一日も越えちゃいけないとかノタマう人って、今に食糧事情が厳しくなると飢え死にするんじゃないかと思うよ?温暖化とかで。
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1・12ネッスル日本労組の記事も読んでね (マーリンカ)
2007-01-14 22:44:19
私は森永砒素ミルク中毒事件の被害者なので、「牛乳の賞味期限を一日も越えちゃいけないとかノタマう」とかいう人、わかってないなあ、と思います。
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Unknown (Unknown)
2007-01-15 02:13:06
「若い人の中には、もっと働きたくてウズウズしている人たちがいる。」
そういう若い人を応援したいなら、残業代を出して働かせてやれよ。
若い人達のやる気をタダで利用しようとするんじゃねぇよ。
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賞味期限と砒素に (如何関係あるって思ってんだよ!)
2007-01-15 13:56:49
賞味期限はただの目安って、常識だ。
当たり前だが、ずっと冷蔵庫内で保管して1日賞味期限を過ぎたのと、炎天下の真夏に買って直ぐホンの一日だけ置きっ放しにしたのとでは、賞味期限内の炎天下の方が危険。
本当に砒素ミルクの被害者なら、そんな事は言わないよ!
よくも、本当の被害者を騙って、貶めてるのは「マーリンカ」とやらだろ!
正気を疑うよ!
って言うか、言ってる内容が婉曲ながら自然と「過労死は~」って言った人の応援になってるって点で、怪しいんだけど。
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セレブのアッキーの (親族会社と腰掛け会社に)
2007-01-16 16:43:49
森永砒素ミルクの被害者がどんな目に合わされたか!
しかもそのバックに国がついていて、どんな卑怯な手を連続して使って来た事か!
知ってりゃあ、セレブのアッキーみたいな、賞味期限切れ一日がトンでもない!なんて、抜けた事は言わないよ。
何処の庶民が、たった一日で捨てるんだよ!
正しい庶民の牛乳の飲み方は、冷蔵庫内で1日過ぎはそのまま飲み、2・3日で過熱する料理に使い、1週間ならある方法で判別して料理に使う。
でも、どんな方法かは、嘘吐きの成り済ましには教えられないね。
セレブな右翼のネット工作員とか、男子厨房に入らずとは体のイイ言い訳で、実は台所を滅茶苦茶にするんで追い出されてるチャンネル桜の爺さんとかには、ね!
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Unknown (マーリンカ)
2007-01-18 07:36:05
森永砒素ミルク中毒の被害者に対してどういうイメージをお持ちか知らないが、その被害の現われ方は多様で、亡くなられた方、重度の障害をもたらされた方、あるいは極端に言えば、風邪をひきやすいのが症状かなという程度の方もいらっしゃる。
私自身賞味期限切れの牛乳を飲んでも
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Unknown (マーリンカ)
2007-01-18 08:47:53
私自身賞味期限切れの牛乳を飲んでもどうという事はないが、広汎な人々にどのような影響が出るのかを想定して製造するのが食品企業の社会的責任。森永の「事件」も粉ミルク製造の際、鮮度の落ちた原乳をごまかす為劇薬と承知で最も粗悪なものを注文し、量も目分量で加えるといういい加減さ。
森永も不二家も程度の差はあれ、コストを削減しあくなき利潤追求をするのは同じ。今のあらゆる労働者に対する攻撃も同じ、あれこれ言葉を弄しても利潤追求
の為。マーリンカはロシア語で小さいという意味。うちの猫は、マーリンカとやら、です。
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社会的責任が抑圧されてるんです。 (勿論、利潤追求で。)
2007-01-18 17:52:56
12年も前の食中毒までも引き合いに出され、ゴールドマン・サックス証券が最安値で不二家を買う為に、犠牲になるのは常に弱者で、この場合不二家の労働者や契約者が、既に被害者。
大資本に媚びるマスコミと一緒になって、何時もの報道洪水ヒステリーで不二家多い詰めれば、ゴールドマン・サックスに買われた不二家が、利潤追求より消費者の安全を最優先にするとでも?
まさか!答えは「NO!」以外あり得無い!!!
当初だけは社会的にそういうポーズを取るが、あっと言う間にほとぼりが醒めれば、村上ファンドやホリエモンよりもっと酷い、当然、以前の不二家よりも更に酷い事になるのは目に見えている。
郵政民営化が何故大反対の嵐だったかと言えば、外資は国内の大企業よりももっとシビアな資本主義の理論で、収奪出来るだけ荒稼ぎして、後は野となれ山となれ!で撤退するし、実例もあるから。
小さくっても山椒は小粒でピリリと辛く、世を広く見通さないと、もっともっと更に酷い目に遭う時代なので、カネミ油症の裏にはベトナム戦争当時の枯葉剤があった、との「黒い噂」を追って見るのもいいでしょう。
今のアメリカでBSEと言うだけでどんな目に遭うやら?正義が訴訟で干される「美しい国へ」?!米国の尻馬で、自虐的に更に日本の庶民を追い詰めるのだけは御免です。
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