トヨタ関連23社違法雇用 法定賃金守らず/東京新聞

2006-09-03 20:16:26 | 労働運動
トヨタ自動車(愛知県豊田市)の下請け企業二十三社が法定の最低賃金や時間外割増賃金を守らずに約二百人のベトナム人を雇用していたとして、豊田労働基準監督署から労働基準法などに基づいて是正勧告を含む強い指導を受けていたことが二日、分かった。ベトナム人はいずれも「技能実習生」として受け入れており、未払い賃金の総額は五千万円余りとみられる。

■是正指導で支払い

 関係者によると、指導を受けたのは豊田市の自動車シート部品製造会社など。二十三社のうち二十二社が集まって組織する事業協同組合も対象となった。いずれもトヨタの直接取引先に部品を納入する二次下請けか三次下請けで、従業員五十-百五十人。

 全国の労働局は労基法に基づいて地域や業種ごとに最低賃金を決めており、外国人の技能実習生にも適用される。愛知県の地域別最低賃金は一時間六百八十八円、産業別賃金は業種により金額が異なるが、地域別最低賃金より高め。時間外労働の賃金は二割五分増し。

 しかし、これらの企業は業種や就労実態を問わず一カ月十二万二千円の統一賃金を取り決めていた。時間外労働もほぼ常態化していたが、賃金の割り増しもしていなかった。ある企業の場合、産業別最低賃金は八百七円だが、統一賃金と労働実態から割り出した時間当たりの賃金は七百二円。時間外労働についても、少なくとも一時間千九円に対し、半分以下の四百五十円しか支払っていなかった。

 豊田労基署は六月から個々の企業への立ち入り調査や関係者の事情聴取を進め、是正勧告などをした。各企業は労基署が期限とした八月末までに未払い賃金をほぼ支払い終えたという。

 これらの企業は二〇〇一年秋からベトナム人の受け入れを始めた。ここ数年は年間五十-六十人規模で推移しており、日本人労働者の不足を実質的に補っている。

 取材に対し、組合は「法に対する認識が甘かった。労基署の指導は真摯(しんし)に受け止めており、既に賃金体系も労働実態に合わせた形に改めた」と話している。

◇制度に罰則規定を◇

 外国人労働者問題に詳しい愛知淑徳大のブイ・チ・トルン教授(ベトナム人)の話 企業側が外国人技能実習生に目を付け、安価な労働力にしようとしたのは、経済原理から言えば当然の流れともいえる。国レベルで外国人労働者問題を真剣に議論しない限り、根本的な解決には至らない。違法雇用をしないよう実習生制度に罰則規定を設けるなど、運用を含めた制度の抜本的な見直しがない限り、制度の「研修・実習」という趣旨は形骸(けいがい)化する一方だろう。

<メモ>外国人の技能実習生 
 法務省が1993年に制度を創設。中小企業の場合、企業が事業組合などを設立して「受け皿」とする。実習生は個々の企業と雇用契約を結ぶ。3年の期間のうち1年目は研修生、残り2年間は実習生。研修生は生活実費相当の手当が支払われるが、労働基準法などは適用されない。実習生となる2年目以降は労働基準法などで法定の最低賃金を上回る賃金水準が保証されている。



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