「なぜ、いま『坂の上の雲』かを考える」神戸のシンポジウム報告/市民社会フォーラムML

2009-11-11 08:29:08 | 集会情報
先週土曜日に神戸で催された表題のシンポジウムに参加してきました。
そこそこ大きな会場でしたが、参加者が会場からあふれ、会場外にパイプ椅子を
ならべるほど盛況でした。
神戸新聞では事前に報道していたようですね。
http://www.kobe-np.co.jp/news/shakai/0002497102.shtml
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司馬遼太郎さん原作「坂の上の雲」ドラマ化めぐり論議/神戸新聞 
 NHKが11~12月に放映するドラマ「坂の上の雲」をめぐり、市民団体や近代史専門家らが、原作者の故司馬遼太郎さんが「ミリタリズム(軍国主義)を鼓吹(こすい)しているように誤解される」と映像化を拒み続けていたことを挙げ「9条改悪の世論作りになる」などと批判している。県内では問題点を考えるシンポジウムも開かれるが、NHKは「誤解を恐れた司馬さんの思いを生かして制作している」と説明する。(森本尚樹)

 「坂の上の雲」は司馬さんの代表作の一つで、日露戦争の海軍参謀・秋山真之、その兄で陸軍軍人の好古(よしふる)、俳人正岡子規らの奮闘や苦悩を軸に、近代化に突き進んだ明治を描く。ドラマは本木雅弘さん主演でNHKが制作し、11月29日から第1部5回が放映される。

 だが、司馬さんは生前、映画・ドラマ化の申し入れを一貫して拒否し、NHKの番組で「なるべく映画とかテレビとか、そういう視覚的なものに翻訳されたくない作品でもあります。うかつに翻訳すると、誤解されたりする恐れがありますからね」と述べている。

 「NHK問題を考える会」(兵庫)事務局の西川幸さんは「自衛隊の海外派兵恒久化や憲法改悪の論議がくすぶる中での放映で、視聴者として問題点を考えたい」としている。

 中塚明・奈良女子大学名誉教授(日本近代史)も「原作は日本の朝鮮支配と直結していた日清、日露戦争の真実に触れていない。韓国併合100年を翌年に控えた時期に公共放送での放映は理解できない」と指摘する。

 NHK広報局は「司馬遼太郎記念財団から故人の遺志も理解した上で映像化の許可をいただいた。6年前にドラマ化を決定・発表しており、昨今の(政治的な)動きと連動するものではない」と説明する。

 NHK問題を考える会は県内の平和団体や労働組合などの協賛も得て、11月8日午後1時半から、神戸市中央区の県私学会館でシンポジウム「なぜ、いま『坂の上の雲』かを考える」を開く。資料代1000円。同会TEL078・351・0194
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会場で当日のパネラーでもあった牧俊太郎さんの本を買って読みましたが、「坂
の上の雲」の記述の問題点を指摘するだけでなく、いろんな資料を引用しながら
司馬氏自身の思考の変遷を分析している点がたいへん面白かったです。
http://books.yahoo.co.jp/book_detail/AAY84053/

また、この日のテーマとは直接には関連しませんでしたが、やはり会場で販売し
ていたこの本、まだ読んでいる途中ですが大変すばらしい本なのでご紹介したい
と思います。
「朝鮮王妃殺害と日本人―誰が仕組んで、誰が実行したのか」
http://www.amazon.co.jp/朝鮮王妃殺害と日本人―誰が仕組んで、誰が実行したのか-金-文子/dp/4874984169/ref=sr_1_3?ie=UTF8&s=books&qid=1257863568&sr=1-3

基調報告をされた中塚先生が教えてくれましたが、今回のドラマ化にあわせてN
HKが出版した「坂の上の雲 (NHKスペシャルドラマ歴史ハンドブック)」とい
う本に、閔妃暗殺事件が朝鮮内の反閔妃派の単独犯行であると記述していること
にとても驚きました。
http://www.amazon.co.jp/歴史ハンドブック坂の上の雲/dp/4149107297

なかなか有意義かつ面白いシンポジウムでした。

ちなみに当日も紹介されていましたが、映画人9条の会の方が「坂の上の雲」ド
ラマ化に対して、こんな発言をされています。
http://masrescue9.seesaa.net/article/127847239.html
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「坂の上の雲」と司馬遼太郎


馬 場 和 夫(映画人九条の会運営委員、元東宝映画専務)


 「たとえどんなに信頼できるプロデューサー、監督であっても、この作品の映画化は絶対にお断りする。それは映像化することによって、必ず軍国主義を肯定する結果になるからであり、それは私のこの作品の意図に全く反するからである」。

 「坂の上の雲」の映画化の申し入れに対して、誰にでも一貫して拒否された司馬氏の言は、すべてこの言葉に尽きていた。

 私は1971年(昭和46年)、東宝が他社に先駆けた「合理化」第1号として、撮影所の映画製作部門を切り離した子会社(株)東宝映画を設立した時の専務に任じられ、企画の担当者としてこの作品を是非にと考え、企画部長でプロデューサーの故・椎野英之君や俳優座子会社「仕事」の社長の故・佐藤正之君とともに映画化の申し入れをした。当時、司馬作品の著作権関係を任されていた横浜の二橋進悟氏を介してねばり強く頑張ったが、司馬氏の姿勢は寸毫も動かなかった。

 同じ頃、後に大映を引き受けた徳間康快氏も山本薩夫監督で申し入れていたし、石原プロダクションも交渉していたが、お断りの理由は全く同一であった。
 映画、テレビを問わず、映像文化というものが、原作を離れて独り歩きする危険性を、司馬氏は明確に見通していられたのだと思う。

 先頃上映された映画「真夏のオリオン」は太平洋戦争末期の日本海軍潜水艦と米艦の一騎討ちのドラマだが、どちらの艦長も正義漢で、「こんな立派な戦争もあったのか」と錯覚を起こさせる極めて危険な作品であった。同じ戦争でも、正しい戦争と誤った戦争がある──というような意識を与える怖れに満ちているこの作品を観て、私は改めて司馬氏の確固とした姿勢に思いを強めた。

 司馬氏はこの作品の映像化拒否を遺言にまで残されていたと聞く。著作権の管理が財団に移されていて、ご遺族の意志に拘わらずにNHKのドラマは実現するようであるが、戦争ドラマの危険性をひしひしと感じる。

 どんな政権になっても、国民投票法を経て憲法改悪の道は近づいている。映画人である我々は、映像文化のもたらす人心への影響力の深さ、強さを充分に意識して闘い続けなければならない。
            *
 NHKのスペシャルドラマ「坂の上の雲」は、今年11月29日から第1部(全5回)の放送をめざして制作が続けられている。第2部(全4回)は2010年秋放送予定。第3部(全4回)は2011年秋放送予定。
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國本依伸
y-kunimo@ka2.so-net.ne.jp


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