芭屋框組(はなや かまちぐみ)

残しておきたい情報や、知っておきたい事

古鉋再生(11)おまけ・時代別の特徴

2021-01-10 16:35:21 | 古鉋再生


何枚も古鉋触っていると何となく時代別にまとまった特徴があるのに気付いてきた。これによって今まで読めなかった文字が読めたり、分からなかった価値に気付いたり時代の流行みたいなものが分かって、チョットした歴史ロマンを楽しめたりもする。

ざっとまとめると以下の感じ









登録商標・大サイズ



登録商標・中サイズ



登録商標・小サイズ






鋼厚み薄め(だいぶ古い、たぶん明治大正期)




鋼厚み中くらい(まあまあ古い、昭和)



鋼厚み厚いめ(近代、戦後)



全体の厚み、頭形状、仕上げ比較(下の薄いのが一番古い、上に行くほど新しい)





近代、新潟製(上の3枚に比べるとだいぶん厚い)




刀にちなんだ銘に束模様(菱形に点々模様)があるのも良くみかける


甲側




別の刃表側












下3枚は同じ「村正」銘だが下に行くほど時代が古い。登録商標の文字も古いほど小さく、鋼も薄くなる



戦中戦後は軍国的な銘もあり:「皇国」銘



「赤城」はじめは「赤城山」の事かと思っていたが、両脇の✕印が戦闘機とかに貼ってある追撃マークか何かにちなんでいるのでは?




本銘、✕印(=登録商標以前の時代は本改メのしるしが登録商標的な役割で、「改メ」とか「メ」の字が✕印として残っている)が入っているので、かなり古い物だと思う





別の✕印



頭部分短い例:使い始めを荒仕込で削る際に刃丈が長い方が掴みやすく、少し短くなった頃の焼き入れがベストの部分を仕上げに使い、チビチビになっても台直しに使える様に設計されている。最近は荒仕込に鉋使う事も少ないので、こういった配慮も消えていった。



普通の頭長さとの比較



別の刃:改めて見るともともと同じ様に頭短いのに気付く。おそらく明治大正期作



鋼材のいろいろ:昔は玉鋼とか日本鉄(=包丁鉄)を使っている事アピールし、その後洋鋼だとか青紙とか特殊焼き入れとかが最新式でいいですよーみたいな時代があり、最近はまた炭素鋼が復権している。

和鋼、玉鋼(両方同じ意味)







和鉄日本鋼



切り銘:日本鉄




青紙付き




特級


地金:ゴマの入ったのが古いと思っていたが、本当に古い物に意外とゴマ入っていない。これが日本鉄なのか?

ゴマ入り



日本鉄?




古い縄目:刀にちなんだ模様の別パターン:上の「刀印」「村正」ともこの手の模様あり






初弘系の縄目



永弘系の縄目模様:







ちなみに下の二枚は花押も同じなので恐らく同じ作者。たまにこういった兄弟の再会に立ち会えるのも古鉋再生の楽しみの一つ









古鉋再生(10)巾落とし

2021-01-03 15:40:18 | 古鉋再生


見ての通りなかなかの錆鉋。前回のサンポールで錆び落としてみても、押さえ溝に接していた部分が致命的。

普通ならやらないが「和鋼」の刻印と全体的な雰囲気より明治期頃の作りでは?との期待も手伝い思い切って巾を切り詰める事にした。









鋼部分まで切りすすむが鋼に当たった途端全く歯が立たない、最後はペンチで挟んでコキコキ折った感じ。
こうして実際に鋼を触ってみると、硬さだとか薄く見えても意外と厚みあるなとかが実感出来る。



ダイヤやすりを使い平らに







刃先も錆穴だらけなので長さ方向も切り詰め、試しに裏出ししてみたが錆穴消えず。

錆穴無い箇所まではかなり短くしないとならない。また表馴染み部分もかなり腐食進み、このままでは仕込んだ際にうまく抑えが効かなそうなので、こちらの面も整形必要。なんとか使えるようにしたいが、今までで一番重症。 いつ使えるやら?先は本当に長い。



古鉋再生(9)サンポールでの錆取り

2021-01-03 15:09:02 | 古鉋再生



錆取り工程なんとか手短にできないかとサンポールでの錆取り試してみた。

確かに工程は簡単で入り組んだところまで錆は落ちてはくれるのだが、デメリットも多い。
•古い風合いはまるで無くなる
•アルカリでの中和が不十分だと酸化がいつまでも進行して錆が止まらない。また後から発生した錆が普通の錆の様に取れてくれない
•匂いがやばい。有毒ガスなので吸い込むと本当に危険。保管するのにフタ付き容器必要
•使用済みの原液の処理問題:水で希釈して便所に流すのが一般的らしいが、環境問題を考えると気がひける

と言う訳で今後は鉋には使わんかな。

古鉋再生(8)古台利用する場合

2021-01-03 10:33:59 | 古鉋再生


はじめにお断りしておくが、古台再利用する労力を考えると恐らくは新しく台打ちした方が良いと思われるので、あくまでも参考程度にして欲しい(自分も普段はほぼ9割がた台打ち直している)

以下、古台の改良手順・ポイント(※刃が再生出来ている事前提)

1)ガラス板に粘着ペーパー80番で下端直し:とりあえず刃口部分だけたいらになる様に中スキもペーパー横ずりでざっくりで
2)普通に刃が出るまで表馴染み、押さえ溝巾の仕込み直し:仕込みゆるゆるで刃が出過ぎる状態ならば、一旦刃が接する面の汚れをスクレーパー等でこそぎ落す。
3)刃に車ワックス等の剝離材塗りエポキシ充填し台に仕込む~乾燥後余分なエポキシ取り~必要なら屑たまり巾修正



4)ガラス板粘着80番で下端直し:削り出来る程度まで
5)必要なら下端面を基準に台厚み、巾、木口の切り直し~各面仕上げ~面取り




6)必要ならば、刃口埋め木、割れ・隙間へのエポキシ充填











7)下端直し:各自の目標レベルまで
8)目止め塗装など必要に応じて




古鉋再生(7)刃研ぎ前のベースの前のベース

2021-01-01 17:01:05 | 古鉋再生
刃研ぎについてはこれと言って無く、特に刃先の「研ぎ・研磨」は日々進化しアップロードされているので省略させて頂く。

今回は刃付け前のベース作り、のさらに前のベース作りについて。(要はつぶした刃先をどう直していくかについて)



以前は棒やすり状のダイヤやすりで荒落とししていたが、あまりにも辛気臭いので上の回転を砥石購入した。
フリーハンドでも角度割と決まるし、早く研げるので最初は良いかと思ったのだが、どうも火花出まくりで鋼に悪そうなのと、砥面を直しても両端がダレしまい研ぎ直すが大変なので、あまり使わなくなった。

最近は普通の両頭グラインダーを使用。横に1スライドさせる度に水に漬けるペースで10往復ほど地金部分を荒砥ぎ、次に角度ブロックをガイドに300番ダイヤ砥で手研ぎ



グラインダー傷消えてきたら再びグラインダー研ぎ→ダイヤ手研ぎの繰り返しで、刃先が髪の毛1本分残った状態まできたら、荒砥(剛研220番)→刃返りでたら、中砥といった工程に今は落ち着いている。
(ダイヤ砥は荒砥ぎに使うとすぐに砥面が狂い、両端が多く研げてしまう傾向あり次の工程で修正が意外と大変。また勿論研いでいるうちに裏も動くので、そのやり直しも含めかなり時間かかる。何とか鋼をいためずにに早く研げるもっと良い方法ないかが一番の課題である)

そうして研げた刃




古鉋再生(6)ピンホールを見落とすと

2021-01-01 16:42:40 | 古鉋再生


実は意外と見落とすピンホール
嘘みたいだけど、やってもうた。
まあこれもネタとして笑ってもらっとこう。裏すきが綺麗になるにつれてようやく気付いた間の悪さ。

仕様がないので刃先切り詰めやり直し






刃の長さ変わると接地点も変わるので、今まで無かったねじれも出てきたりする。
まあ本当に一からやり直し、気を付けましょう。

古鉋再生(5)裏すき具合について

2021-01-01 14:30:17 | 古鉋再生
明けましておめでとうございます。世の中すっかり様変わりしましたが今年もよろしくお願いします。

時間があいた為に重複する話や古い情報も混じってしまい、ややこしい箇所もあるかと思いますが早速本題へ。

一見ただのべた裏鉋に見えても、実は両脇のダレやねじれがしっかり残っているケースがほとんど。なので前回までの工程を参考に出来るだけ本体の狂いを取るのは勿論、研ぎが無意味になってしまう刃先裏のピンホールの有無も意外と見落としてしまうので注意。
※いきなり裏すき直しから始められる事は滅多にないと思った方が良い

これは自分がいつもお手本にしている裏すきの画像





深さに関してはそれぞれの刃の元々のすき加減をいかして。脚の部分はこんなに綺麗にはまず出ないので刃先側から1センチ位出ていれば良しとしましょう。





この形を目指してペン型ルーターを使い整形。※回転数落として火花出さない様に
余談だがペン型ルーター使いすぎて壊してしまったので、回転数変えられる電気ドリルを最近は使用。こちらの方がモーターが丈夫で故障の心配ないが重くて手が疲れる。



目詰まりしない様に頻繁にダイヤブリックにこすりつける





耳周りの丸い部分も慣れれば結構機械だけで作れるようになるが、やはり一番難しい。定規で確認しながらやれば分かるが、思ったよりもしつこくこすらないと整形出来ない。昔の薄い鋼でなければ、地金の研ぎ出し気にしなくても良い

それから忘れてはならないのは、裏すきや刃研ぎで金属の厚みが変わると裏も若干変形する。なので途中何回か砥石に裏を研いでみて、すき残った部分がちゃんと砥石に当たるか確認必要。真ん中の横が当たらなくなる事多いので、その場合は裏出し直し。



機械すきが終わればグラインダー砥石切端を使い、デコボコをならす。縦方向でむらなくなるまで次に横方向

これも耳周りが難しい。画像の白い点々が機械のデコボコ。これを消す様に、なお且つ出ている裏に傷を付けないように。





使う切端砥石はこの形が今のところ使いやすい




最後は木っ端定規にそわせて仕上げの筋目を付ける。
この後本格的に裏押しとなるがその時点で出過ぎた所や、出足りない所修正を何度か繰り返す。

※大体2~3回は機械の裏すき直しからやり直し有り、先は長い。