浜菊会のブログ

半泣き老狼団。一道民が生き抜く為の記録。

放射線による鼻血をどう考えるか~血管内皮細胞の応答という仮定

2015-05-28 21:25:25 | 原発
長くなるので、記事に書くことにしました。

本日、ツイッターで教えていただきました。ありがとうございます。


>http://www.nirs.go.jp/information/qa/qa.php

このうち、1の「放射線の人体への影響」という項目にある、

「放射線を浴びると鼻血が出る」のは本当ですか?
 
東京電力福島第一原子力発電所の事故当時に、放射性物質が鼻の粘膜に付着することで、鼻血がでることは考えられますか?


というのを読んでみました。以下に、当方の見解を。



数日前に同研究所のHPを見たように記憶しているが、その時には、下の行の記述(回答)がなかったような気がする。特に、こんなに長い印象的な見出しは見落とさないような気がするが……。歳のせいもあり、物忘れが多いので記憶違いかもしれない。これは、おいといて。


計算上は、という、お説ごもっともな気もするが、これらの前提というのが放射線の直接的組織傷害による変化を見ているものと思う。
放射線治療で照射野に熱傷に類する皮膚症状が見られるほどの線量というのは、通常は回避されているが、皆無というわけではないかもしれない。計算方法が、そういう直接効果を仮定しているのと同じではないかと思える。


以前のツイートでも述べたが、当方の推測では、血管内皮細胞の応答があるかもしれない、という前提であり、NOというシグナル発現の結果、出血を生じさせるに至るのではなかろうか、ということである。従って、放射線量の水準を、直接的な細胞傷害の起こる線量を想定することを必要としない。


例えば、腫瘍細胞が低酸素下で放射線感受性が低下して生存率が上がり、高酸素下だと逆に放射線で死滅する割合が高くなることが知られている。こうした酸素濃度の差は、標的となる細胞内の酸素分圧にして仮に3mmHgの違いで照射後残存率に効果をもたらす場合、細胞内酸素量の違いが微量であっても細胞応答は異なるということを言っているのである。


鼻血は放射線による直接傷害の結果で生じる、という考え方そのものに、直ちに同意できるものではない、ということ。鼻血は血管外への漏洩であって、必ずしも細胞死ではないし、広範な組織破壊を伴う変化でない。放医研の計算値は広範(例えば1c㎡)な組織破壊による結果を前提としている。当方が言うのは、そういうことではない。


粘膜面の出血点は放射線の直接傷害である必然性はなく、通常通りの原因で何ら問題ない。炎症巣、微小な創傷、のぼせ、等々鼻血原因は様々あるだろうが、放射線照射で血管壁が破壊されるとか、粘膜や皮膚が破壊される必要がない。

重要な点は、単回の鼻血ではなく「反復する鼻血」である。初回出血原因は、放射線での粘膜破壊とか皮膚壊死などを必要とするわけでない。恐らく、不安を訴える人々が鼻血を心配する理由は、この頻回に見られる鼻血であり、そういう経験を有する人たちが「鼻血が止まらなかった」、「たくさん出た」といった証言(愁訴)をしているのであろう。それとも、1回ではあっても、普通に想定される時間よりもはるかに長時間にわたり、出血が継続している、ということであろうか。


いずれにせよ、出血の直接原因は何か、というのは、必ずしも放射線による細胞破壊といったことを条件とすべき理由はなく、「度重なる出血をもたらす」とか「止血時間を延長させる」とか「出血量を増大させる」という状況をもたらすなら、証言に十分合致するであろう、と考えられるのではないかということだ。


そして、その理由となり得るのが、血管内皮細胞におけるNO産生量増大、と指摘したのである。
けれども、血管内皮細胞がNO産生を生じる放射線量がどの程度か、というのは不明点であり、果たしてNO産生量増大が照射後変化として観察されるかどうかは分からない。裏付けが存在しないことから、「解らない」と言ったのである。
自然放射線だのK40だのといった線量程度では、細胞応答が恐らく観察されないであろう、とは思うので、実際にどれくらい受けると応答が生じるかは、全く分からない。



一応、NOの働きから見ると、血管拡張、血小板凝集抑制、血管透過性亢進は、

・易出血性(出血回数増加)
・出血量の増大
・止血時間延長

などといった、推定される「鼻血の証言」の条件に合致するであろう、というのがまず第一点。


放射線による腫瘍細胞死の理由として、大雑把に言うとDNA損傷と、ミトコンドリアの活性酸素産生増大、ということが言われている。つまり、放射線照射を受けた細胞のミトコンドリアでは活性酸素の産生増大が生じるであろう、ということは、恐らく正常細胞でも起こるのではないか、ということだ。そして、酸素濃度が高くなる場合には、細胞の放射線感受性が高まる、と言われているのは前述した通り。


血管内皮細胞は元々放射線感受性が高い部類の細胞と言われているので、これに抵抗しないと細胞がもっとダメージを受けてしまう。その結果が、NO産生量の増大なのではないか、ということ。NOは、活性酸素の消費材として作用する(両者は反応しやすい、ONOO-などの生成)ので、酸化ストレスへの抵抗性(抑制)ということになる。そのような反応が血管内皮細胞に生じるのではないか、というのが第二点。


はじめは少数の血管内皮細胞からのNO放出であっても、正のフィードバックが働くので、近隣の血管内皮細胞へとシグナル伝達されることになり、ある範囲の血管内皮細胞は同一の反応を示すことになるかもしれない。それはすなわち、血管外漏出を促進し得る、血小板凝集抑制も生じる、ということを意味する。その現象こそが、出血なのではないか、ということ。


更に、NOはヘモグロビンとの結合能が非常に高く(COよりも高い)、赤血球が運んでくる酸素を遊離させ易くすることになる。末梢に来た赤血球が酸素を放出し、それにとって替わってNOと結び付く、ということ。これはその部位での酸素分圧を上昇させる効果をもたらす。高酸素濃度の環境にする、ということ。先の話で書いたように、高酸素下に置かれた細胞は「放射線感受性が高くなる」ということだったはずなので、これも正常(血管内皮)細胞の反応として、またまた放射線の影響を受け易くなってしまう、ということだ。周囲の正常細胞の生存率にも影響を与えてしまうかもしれない。


以上のように、もしも放射線を受けた血管内皮細胞がダメージから身を守ろうとして反応する(恐らく生存しようとするだろうから、だ)結果、NO産生量を増大させるなら、鼻血を出やすくする側に作用するであろう、ということである。


それから、以前のツイートにも書いたが、放医研のような従来からある計算方法というのは、想定される面積が、例えば400μ㎡と、1c㎡とでは、全然違う。
50μm以下の近傍にある細胞が受ける場合には、線源が高線量でなくとも、それなりの線量を浴びることになってしまうのではないか、ということである。


医療での照射の場合だと、正常細胞の回復を待つ為に、照射時間を空けるわけだが、鼻血問題の場合には必ずしもそうした条件を想定できないのではないか、ということがある。持続的に付着する可能性、ということ。放射性物質が粘膜から吸収されたとしても、普通は血流で洗い流されるから局所に留まり続けて薬理作用を発揮するということでもないのだが、偶然血流で流し切られず残存したままであるか、流れても次の付着が間断なくあるといったことなら、放射線を照射されっぱなし、と同じ状況に陥る。なので、医療で用いる線量(例えば2Gy/日を5回/週とか)が高線量なのに鼻血が出ないぞ、というのとは単純に比較できないだろうな、と。



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