経営の視点から考える「知財発想法」

これからのビジネスパーソンに求められる「知財発想法」について考える

キーワードは「投資」、か?

2008-11-27 | 企業経営と知的財産
 先日のエントリに書いたヒアリングの一環で、一昨日も2社の社長様を訪問してきました。今回もいろいろ示唆に富んだお話を伺えたので、その余韻でまだちょっと頭が興奮モードです。
 これまでに訪問した4社は技術指向型の中小企業で、いずれも特定の製品で高い市場シェアを実現しており、特許を中心とした知財業務にも力を入れている企業です。総じていえそうなことは、どの企業も決して「知財戦略」を殊更に意識しているわけではなく、経営者が考える様々な要素の一つとして知財にも気を配っているという感じで、インタビューの中でキーワードとしてよく登場したのが「投資」でした。
 「投資」といっても、研究開発投資、設備投資、人への投資など、その内容は様々です。社長様に経営者としてどのような課題を意識して取り組んでいるかを伺うと、当然ながらこれらの投資に関する話が中心であり、その投資の一つとして、必要な場面で特許出願など知財活動への投資が登場してくる、といった感じです。
 これは車の運転に喩えるとわかり易いと思うのですが、会社を車と考えてみると、経営者は車を運転するドライバーです。車を運転するためには、アクセルを踏む、ブレーキを引く、ハンドルを切る、ギアチェンジをする、ライトを点ける、ワイパーを動かすなど様々な操作が必要になりますが、この「操作」が言ってみれば「投資」に当たるものです。操作のタイミングやアクセルやブレーキの程度が適切でないと、車の運転はうまくいかない。つまり、どのタイミングでどのような投資をどの程度行うか、というのがドライバーである経営者に求められる役割であり、そこがおそらく運転=経営の真髄なのだと思います。経営者はその部分をいつも必死で考えておられるのであり、「経営」を支援するのであればその意識をしっかりともっておくことは必須になってくるわけです。その中で知財活動というものは、例えばブレーキを引くみたいな操作の一つであって、優良ドライバーはそれを流れの中で適切に操作しているから、車はしっかりと走行することができる。そうしたドライバーにとって、ブレーキは使い方と効き方がわかっているならば、あとは自然に運転の流れの中で出てくるものであり、殊更に「ブレーキの引き方戦略」だけを云々しようとしても違和感を感じられたりすることもあるということなのだと思います。
 だとすると、ドライバー=経営者の知財戦略を支援するためには、「ブレーキの引き方戦略」からアプローチしてもスムーズな運転にはなかなか繋がらないわけであって、ブレーキをもっとうまく使って運転したいというニーズに対応するためには、自動車教習所の教員のように、そのドライバーの運転する車の流れに乗ってみた中で「引く」タイミングを考えていかないと、運転全体としてはしっくりしたものになってこない、っていう感じです。
 わかり易いとかいいながら、なんだか抽象的でよくわからない話になってきてしまいましたが、知財活動も「投資」の一部という視点で捉え、他の要素も含めた流れの一環で考える、ということが大切であるということを今回のヒアリングシリーズで感じています。

※ 尚、このプロジェクトは技術指向型の中小・ベンチャー企業を対象にしているので、操作をとても一人のドライバーではコントロールできず、それぞれの操作を統合して全体を運転しなければならない大企業だと話は違ってくると思います。


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