昨日、一昨日と、地方にあるユニークな技術系企業2社へのヒアリングに行ってきました。先般少し触れた公的プロジェクトの一環なので詳細はそちらでの報告として、これも同じエントリで書いた「経営課題と知財活動がどうして効果的に紐付けられているのか」というところを探るのが目的です。
今回両社の社長様のお話を伺って思ったことは、「知財戦略」とか「三位一体(事業戦略・研究開発戦略・知財戦略)」とかいった切り口だけで考えていては、全体が見えずなかなか本質に辿りつけない、ということです。特に中小企業の場合は、知財(主として特許)は事業戦略のシナリオの一部として居場所があるものであり、知財戦略を考えて、事業戦略や研究開発戦略にドッキングさせるものではない。それは観念的にはわかっていたつもりなのですが、こうやって書くと何か薄っぺらに見えてしまい、切れる社長の思考を目の当たりにしてみると、まだまだ理解できていない部分があると改めて考えさせられた次第です。
最初に訪問した会社では、「リスクを背負って投資をしたのだから、それを守る手段として特許に力を入れるのは必然である。」といったお話をいただきました。以下は私の解釈ですが、裏を返せば、事業や研究開発で経営者が大きなリスクをとるジャッジをすることなく、「特許をとればなんかいいことあるかな?」なんて発想から始めたところで、知財がパワーを発揮するはずがありません(そういう意味では「知財で会社を活性化」とかいうのは順番が逆ということです)。前提として、研究開発や事業化へのリスクを背負った投資があるから、そこに本当の意味で知的財産権の力が必要になってくる、そこにこそ知的財産権の本来の居場所がある、という大原則に改めて気付かされた次第です。
次に訪問した会社では、何より大切なのは事業として成功するビジネスモデルを組み立てることであり、その中で効果を発揮し得る部分に知的財産権(特許)を配置するのだ、というお話を伺いました。こちらも以下は私が解釈したまとめですが、事業は、優れた商品を作れば売れるという単純なものではないから、特許だって単に開発成果をそのまま出願すれば効果があるというものでもない。ユーザのニーズを少しでも川上で検知することから、川下では売れる必然性・売るための仕組みまでビジネスモデルを組み立てて、その全体像の中で一番効きそうな部分に特許を配置する。特に予算やマンパワーに制約のある中小企業では、このビジネスモデルの全体像が見えているか、その中で特許のことを考えているかどうかが重要になってくるのだと思います。
※ お知らせ
12/5(金) 京都にて、京滋知的財産権協議会様・京都発明協会様主催の京滋合同特別セミナーにて、(知財戦略の切り口では・・・なんて書いておきながら何ですが)「企業に活力を与えるための知財戦略」についてお話をさせていただきます。
今回両社の社長様のお話を伺って思ったことは、「知財戦略」とか「三位一体(事業戦略・研究開発戦略・知財戦略)」とかいった切り口だけで考えていては、全体が見えずなかなか本質に辿りつけない、ということです。特に中小企業の場合は、知財(主として特許)は事業戦略のシナリオの一部として居場所があるものであり、知財戦略を考えて、事業戦略や研究開発戦略にドッキングさせるものではない。それは観念的にはわかっていたつもりなのですが、こうやって書くと何か薄っぺらに見えてしまい、切れる社長の思考を目の当たりにしてみると、まだまだ理解できていない部分があると改めて考えさせられた次第です。
最初に訪問した会社では、「リスクを背負って投資をしたのだから、それを守る手段として特許に力を入れるのは必然である。」といったお話をいただきました。以下は私の解釈ですが、裏を返せば、事業や研究開発で経営者が大きなリスクをとるジャッジをすることなく、「特許をとればなんかいいことあるかな?」なんて発想から始めたところで、知財がパワーを発揮するはずがありません(そういう意味では「知財で会社を活性化」とかいうのは順番が逆ということです)。前提として、研究開発や事業化へのリスクを背負った投資があるから、そこに本当の意味で知的財産権の力が必要になってくる、そこにこそ知的財産権の本来の居場所がある、という大原則に改めて気付かされた次第です。
次に訪問した会社では、何より大切なのは事業として成功するビジネスモデルを組み立てることであり、その中で効果を発揮し得る部分に知的財産権(特許)を配置するのだ、というお話を伺いました。こちらも以下は私が解釈したまとめですが、事業は、優れた商品を作れば売れるという単純なものではないから、特許だって単に開発成果をそのまま出願すれば効果があるというものでもない。ユーザのニーズを少しでも川上で検知することから、川下では売れる必然性・売るための仕組みまでビジネスモデルを組み立てて、その全体像の中で一番効きそうな部分に特許を配置する。特に予算やマンパワーに制約のある中小企業では、このビジネスモデルの全体像が見えているか、その中で特許のことを考えているかどうかが重要になってくるのだと思います。
※ お知らせ
12/5(金) 京都にて、京滋知的財産権協議会様・京都発明協会様主催の京滋合同特別セミナーにて、(知財戦略の切り口では・・・なんて書いておきながら何ですが)「企業に活力を与えるための知財戦略」についてお話をさせていただきます。
土生先生と同じプロジェクトにて
北海道のある企業を訪問し、ヒアリングしてきました。
ごく簡単に。
この会社の社長さんは、水産品の手作業処理を機械化する機械を製造しようとした。
が、調べたら外国企業の特許の存在が判明。
その特許を回避可能な機械を開発。
開発した機械の特許を出願し、模倣品の出現を抑制。
現在、固定客を持ち、且つ改善改良も進めている。
このように書くと、教科書通りの、ごく普通のことのように見えるでしょうが、
この会社の社長さんは誰に教わることもなく、自然にやってこられ、現在もおやりになっています。
なお、当時のこの社長さんに対して、銀行などの金融機関が冷たかった、という話もありました。
これまでの私の実感ですが、
初期投資が大変な頃に、特許出願費用を捻出する、ということを 当たり前のようにやれる中小企業の社長は、なかなかいない!
なぜこの社長はできたのか、なぜ他の中小企業ではできないのか、といったことを考えてみる。
そういうことが重要! という気がします。
ヒアリングの件、お疲れ様です。
「知財戦略」と難しそうな顔をして追っかけてみると、その先にあるのは当たり前のオーソドックスな特許のあり方だったりする。田坂広志先生がよく書かれている「弁証法」の世界を実感します。
ご指摘のように、ではなぜその当たり前をやれる企業とやれない企業があるのか、は重要なポイントですが、後者も実は「やれない」というのではなく、「やる必要がない」(∵本当の意味で‘張って’いないor特許でどうこうできる世界でない)ことが多かったりするような気がします。