経営の視点から考える「知財発想法」

これからのビジネスパーソンに求められる「知財発想法」について考える

相撲型ビジネス・格闘技型ビジネスと特許の関係

2007-04-13 | 知財発想法
 特許人にとっては、
「ライバル会社に特許を回避されること」=「敗北」
と理解されていることが一般的であろうと思います。「回避されるような特許では意味がない」といったことも、当たり前のようにいわれています。
 確かに、「特許の世界の勝負」では「敗北」ということになるのでしょうが、「ビジネスに対する貢献」という観点からすると、一概にはそうともいえないのではないかと思います。

 特許の対象となる商品やサービスは、
① 頻繁に買い換える商品・サービス
② 一度購入すると当分の間(数年間)は買い換えない商品・サービス
の2つのタイプに分けることができると思います。
 食料品や飲料が①の典型例ですが、こうした商品やサービスでは、より安価な競合品が発売されれば顧客はすぐにスイッチすることが可能なので、特許を回避されてしまうと特許による優位性は直ちに失われてしまうことになります。こうした分野では、確かに「回避されない特許」であることが極めて重要になります(よって、「ヘルシア緑茶」も多数の特許で雁字搦めにしているのでしょう。)。
 一方、②のような例、例えば企業の基幹系のコンピュータシステム、家庭であれば大型テレビみたいなものになると、一度購入したものを安価な競合品が出たからといって、直ちに買い換える性格のものではありません。こうした分野では、新規の販売分では競合品に顧客を奪われるとしても、①のように全ての顧客層が直ちに入れ替わってしまうものではありません。また、既に販売して使用されているものについては、顧客が使い勝手に慣れることでリプレースの際にもリピトオーダーをとりやすいでしょうし、既存品の改善点に関する情報も得やすいので、競合品と差別化する改善を行う上でも有利なポジションに立ちやすいと思います。こうした分野では、大気圏を飛び出したロケットがエンジンを切り離すように、回避されてしまう特許も「最初の段階でビジネスに勢いをつける」という意味で有効に機能することは十分にあるのではないでしょうか。

 尤も、この考え方が成り立つのは、「特許で囲った安全な領域で事業を行う」というビジネス(医薬品etc.)ではなく、「特許があろうがなかろうが事業を行い、特許はその後方支援として機能する」というビジネスであることが前提になります。土俵の境目が死活線の相撲型ビジネスと、場外乱闘もありの格闘技型ビジネスの違い、とでも言い換えることもできそうですが。

※ 弁理士を含めた士業ビジネスも「格闘技化」が進行し、力士→格闘家への転換が求められることになるのでしょうか。曙のようになっても困りますが(笑)。


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