シーブレ日記

愛艇と綴る釣り日記
最近は登山や自転車へと 遊びの範囲が拡大中

奥穂高岳&ジャンダルム

2014年09月16日 00時30分14秒 | 山遊び
僕が10、20代の頃に読み耽った新田次郎の山岳小説や「山と渓谷」などの山岳雑誌。それらの華やかなステージは北アルプスだった。
中でも「ジャンダルム」の威容な岩峰の写真は鮮烈に覚えている。どうやったら行けるのか、当時は想像すら出来なかった。

この夏、僕は40年来の夢であった穂高(西穂、前穂、奥穂、北穂の4座の総称)にを登ってみようと考えた。
だが、不安定な天候が続き、西穂高岳登頂のみしか実現できていない。

この連休、やっと天候が安定する予報となった。
このチャンスを逃したくない。 連休の混雑も避けたいので、僕は一日前倒しで急遽計画実行とした。
とにかくテントを持って、穂高登山の聖地、涸沢まで行こう!


9月12日(木)
深夜に家を出発。午前3時半に沢渡の駐車場に車を入れる。ここから先はマイカー規制だ。
車内で数時間の仮眠を取り、朝、シャトルバスで上高地に入る。

上高地だ。河童橋からは西穂から奥穂、前穂までの稜線が見事に見えた。
先月、西穂のあのピークに立ったのかと思うと、何か信じられない。


7:30上高地出発。
梓川沿いの平坦路をひたすら歩き、先ずは11km先の横尾山荘を目指す。
小梨平、明神館、徳沢園と通過。小説で何度も登場した小屋だ。

9:50横尾山荘到着。
ここまではハイキング気分で来れるが、小屋の前の横尾橋を渡ると、その先は登山者の領域となる。
ついに来たんだなぁと気が引き締まる。

左手に巨大な「屏風岩」が見えてきた。
日本のクライミング(岩壁登攀)の聖地。数々のドラマが繰り広げられてきた場所だ。


横尾から涸沢まではさらに6km。それなりに手応えのある登山道をグイグイ登る。
だいぶ疲れてきた辺りで、正面に奥穂高岳がドーンと姿を現した。
テンション 一気に上がります!


13:00 涸沢カールに到着。17km、5時間半歩きました。
ウォー、凄い景色です。カール(圏谷)といってすり鉢状の底に位置し、左から右に前穂、奥穂、涸沢岳、北穂と一大パノラマが広がる。
写真で何度も見ているが、現物はケタ違いだ。広角24mmでは景色の半分しか入りません。
右のピークが北穂高岳。


涸沢カールを挟むように「涸沢小屋」と「涸沢ヒュッテ」が建ち、その間に広大なテント場があります。
俗世界と隔絶されたように、一大登山基地がそこにあった。
雪渓を挟んで左が前穂高岳、右が奥穂高岳。


テントを設営し終えた時点で本日の予定は完了。
僕はコーヒーを入れ、午後の間ずっーとこの景色を眺めて過ごした。
ついにここまで来たんだなぁと改めて実感した。

穂高4座の中の盟主は奥穂。難易度がやや低いのは北穂。
僕は山を眺めながら明日アタックする山を考える。

奥穂をやろう!

もう一つ考えた。
奥穂の先に「ジャンダルム」がある。エキスパートのみに許される領域にある象徴的な岩峰だ。
ここからは見えないが、その名前が頭の中に浮かんだ以上、それを消し去ることは出来なかった。
この目で見てみたい。 行ってみたい・・・
現物を目の前にして行くか止めるか、明日、奥穂の上で決めよう。

夕暮れと共に気温がガクンと下がりダウンジャケット無しでは無理。厳しい場所だ。
涸沢に闇が迫る中、僕は簡単な夕食を作り19時に就寝。



9月13日(土)
5時起床。
東側の常念岳かな、夜明けのグラデーションが美しい。


5:30 朝日が穂高連峰の頂上を赤く染める「モルゲンロート」現象が見られた。
今日、アタックする奥穂です。
なんという荘厳な姿なんだろう。適当な言葉が浮かびません。
ジャンダルムは奥穂の向こう側で、ここからは見えない・・・


6:30 テントのチャックをビシッと閉めて、いざ出発。


奥穂へはザイテングラートと呼ばれる細い岩稜を辿って、先ずは稜線へ出ます。
ザイテングラートの登りはこんな感じ。
けっこう岩々してますが、これが楽に登れなきゃ、この先は止めた方が良いかもです。
ここを登りきると、稜線上には「穂高岳山荘」があります。


だいぶ高度感が出てきました。見上げていた北穂も目線に迫ってきた。


8:35 稜線上の穂高岳山荘に到着。
ここからヘルメット装着して奥穂頂上を目指します。まだ200m以上高度を稼がなくてはならない。
奥穂頂上に向けてGO!


小屋から先は、まさに岩峰。道はありません。
マークを頼りに浮石や落石に要注意で、慎重に進みます。


奥穂頂上の右手にジャンダルムが見えてきた。
気持ちがざわつくが、先ずは奥穂の頂上を極めることに集中、集中。



9:40 奥穂高岳 標高3190m 登頂!


ついに来ちゃいました。穂高の主峰であり、富士山、北岳に続く国内第三位の高峰です。
360°の絶景。
奥穂の頂上からは3本の稜線が延びている。
今登ってきた北側の稜線。その先には剣岳。


剣岳のアップ。
大キレット越しの縦走路が奇麗なラインを描いている。歩いてみたいね。


南東に伸びる吊尾根、その先には前穂高。
なかなか手強そうな縦走路です。


そして、南西に伸びる国内最難関と言われる西穂へと続く稜線。
手前に見えるピークがジャンダルムだ。
奥穂~西穂間は一般縦走路にはなっておらず、エキスパートオンリーの領域とされている。
どうする、オレ。。。


角度を変えてじっくりとルートを観察する。
ジャンダルムまでの間にも、ウマノセやロバの耳という有名な難所をクリアしなければならない。
天候、時間、体調を客観的に考えると、オールOK。
あとは自分の技量と勇気の問題。


行くことにした。


集中力をとぎらさない。
三点確保とネコ足。
自分の技量の余裕を見極めながら進む。撤退を常に意識して進む。
以上を心に刻む。

9:45 ジャンダルムアタック 開始。


直ぐに違いが分かった。奥穂までの一般ルートとはまったく別物。
岩は脆いし、転倒したりバランス崩したら確実に逝きます。危険度がMAXです。
あと、ルートを見失うと結構ヤバイです。身動きできなくなる可能性大です。


岩峰を上り下りしながら進む。当然下りの方が難しいです。
僕はと言うと、技量的には余裕あったし、高度感は凄いけど恐怖はあまり感じなかった。

以下、比較的安全な場所で体勢を整えて撮った写真です。
説明は不要ですね。現場はこの写真のまんまです。
岩壁に人が小さく写ってるのが分かるかな?
もしジャンに行くかどうか考えている人がこのブログ見たのなら、一つの参考にして下さい。









10:50 ジャンダルム登頂!!!


来たぞー!!!!!!
本気で嬉しい。

自分がジャンダルムの頂に立ってる事が、ちょっと信じがたい。
ピークには3、4人居たので、写真撮ってもらいました。
ちょっと他の頂上では味わえない、運命共同体のようなものを感じました。


急にガスが掛かってきた。長居は出来ません。
集中力を切らさずに、先ずは奥穂まで戻りましょう。
以下、帰路の写真。








奥穂の頂上が見えてきた。
よーく見ると、皆さんがこちらを見てます。ジャンダルムアタックはギャラリーの視線の中を進むことになるんですね。。。


12:03 奥穂頂上に帰着。
魔界から舞い戻ったような気がしました。


さらに穂高岳山荘までは集中力を維持させて下山します。
穂高岳山荘に到着。
この時点で、奥穂登頂&ジャンダルム登頂成功を実感しました。


さらに涸沢に向けて一気にザイテングラートを下山します。


岩場が終わり、お花畑の中の直線トラバース区間をテクテク下ってる時、じんわり涙が浮かんだよ・・・


14:53 涸沢テン場に帰着。


周りは連休の混雑が始まってて、えらいことになってました・・・


見上げると、さっきまで居た稜線部はガスの中。
なんだか不思議な気がします。


僕はテントに潜り込み、しばし休息。
寝転がりながら、今日の体験を反芻する。
何か自分で信じられませんが、本当にジャンダルムまで行って戻ってきたんだよ。


夕暮れまで、コーヒー飲んでボーっとしてました。

改めて思ったんですが、奥穂だってしっかり鍛えてないと体力もたないと思う。
まして、ジャンダルムはやっぱり技術が伴わないと行っちゃいけない所かな。
即、重大事故に繋がるので僕的には人を誘う気はしません。
岩に慣れてる人で、基本動作がしっかりやり切れる人なら大丈夫と思う。ポイントは集中力の持続かも。
僕の場合、若い頃に岩場も含め登山道以外のところばかりを歩き回ってた経験が生きてた気がする。

テント村が奇麗・・・



9月14日(日)
三日目のの朝です。
今日もモルゲンロートが見られました。


ここは聖地、この瞬間みんな外へ出て両手をかざして熱心に祈りを捧げます。いや違う、写真撮ってます。


僕はゆっくりと朝食を取り、テントを撤収して下山へと。
多くの登山者が来てますが、話を聞くと、ここ涸沢までの人も沢山居るようですね。

さいなら、、、


テクテク歩いて横尾橋を渡り人間界に戻りました。


井上靖の「氷壁」の舞台「徳沢園」。


そして、、、再び17km歩いて上高地到着。
大勢の観光客でごった返してました。

この雲の中には、独標、ピラミッドピーク、西穂、奥穂、ジャンダルムが見えるはずです。
年取って上高地に来たら、ここから見える風景も一味違うだろうな。


山を再開したのが去年の10月。随分駈け足でここまで来たなぁ。
40年来の夢が叶いました。

感謝です。

コメント (4)
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