※9月13日の大井玄氏の講座は延期となりました。
代理として、岡野守也氏をお招きしお話を伺います。詳しくは、―こちら―をご覧ください。
Samhall ― 「サムハル」という企業をご存知でしょうか。
これは、スウェーデンのストックホルムの中心に本社を置く企業の名前です。
設立は1980年、従業員数は2万2千人、収入は868億円を超え(2007年度)、自己資本利益率は9%、自己資本比率も38%という、収益力のある大企業です。
このサムハルの大きな特徴は2つ。
政府が100%の株を保有する特殊法人であること、
従業員の90%が何らかの障害を持っていること、です。
8月25日(火)、東京・六本木のスウェーデン大使館において、
「スウェーデン・サムハルから見た、働くということ:
3万人の障害者を雇用する企業から考える雇用問題」
と題した講演会に参加してきました。
お聞きしたところによると、98名定員の会場に、申し込みが150名程あり、残念ながら参加をお断りしたそうです。そのくらい、盛況な集まりでした。
講師に立たれたのは、(株)プロシード代表取締役社長・西野弘(にしのひろし)氏です。
スウェーデンでは、「就労と納税」はセットで考えられており、そのために「誰もが働いて納税できる」ことを目的とした、雇用の機会均等政策があります。
「pride of taxpayer」という言葉もあり、納税をして国を支えることにたいへんな誇りを持っている民族だと聞いた事があります。
それは例外なく、障害のある方も対象となっています。
「障害者」とは、何らかのハンディキャップのある人のことを指し、身体的・知的はもちろんのこと、アルコール依存症患者や麻薬中毒患者も、「精神的な障害を持つ人」と見なされています。
また、外国からの移民の人々も、「スウェーデン語を話せない」「生活習慣が違う」ハンデ(=障害)を持つと考えられているようです。つまり、「障害」という言葉には、我々日本人がもっている認識よりも幅広い内容が含まれます。
スウェーデンでは、みな何かしらのハンデを持っているのは当たり前、という前提が国民感情としてあるようで、あくまでも「一人の人間」として接し、政府もその個々の要望に応える支援策を打ち出しています。
そのひとつがサムハルです。
サムハルとは驚くべき会社です。下記をご覧ください。
○経営ビジョン
障害者を積極的に採用し、その社員に成長の可能性とチャンスをもたらす魅力的な職場を創出していくこと
○企業理念
スウェーデンにおける最も成功した企業体を目指す
経営結果としても人間の価値を創造する面を両立させる
我々の試みが社員・顧客・社会に対して利益を生むものでなければならない
○企業目標
障害者雇用数の増大(実質稼働時間が政府によって決められている)
雇用優先障害カテゴリーの充実(重度の障害者の雇用%が政府によって決められている)
サムハルグループ外企業への転職
企業利益の拡大
これだけを見ても、日本の障害者施設とは、大きく違うことがわかると思います。
日本では、個人の要望に関係なく、できる「作業」を与え、政府は補助金だけを出し、そこには「個人の成長の手助け」はなく、「弱者の救済」という思想があるだけです。
そして、企業の障害者雇用枠には重度・軽度のカテゴリーがなく、重度障害や複数の障害のある方々の就労のチャンスはかなり少ないのではないでしょうか。
サムハルでは企業のオーナーは政府ですが、数値目標はしっかり定められており、利益をあげるための要求もしています。
サムハルの経営者は、常にこれらの理念・目標を達成する経営のプロであり、価値のある一企業として、他企業とのパートナーシップを目指しています。
1981年には政府からの補助金は170%だったのが2008年には90%まで減少し、利益を上げ、配当までしているという実際のデータもあります。
そして現在では、製造業に3割、サービス業に4割の人が従事し、障害者であってもサービス産業への従事が可能であることを証明しています。
日本でも有名な「イケア」でも、多くのサムハルの人たちが仕事をしているとのことです。
それは、個々のハンデに応じた教育プログラムがあり、適性のある仕事を見つけ、雇用された人財の開発と管理をするマネジメントが徹底して行われているからのようです。
日本でも、このような会社は可能でしょうか?との問いに、西野氏は仰いました。
「日本で作らないかと言われることもあるが、それは無理。すぐに倒産してしまう。」
それは、「国家・国民の思想が違うからだ」というのが理由のようです。
サムハルを支える思想 ―それは、スウェーデン政府が作り上げてきた、「国家は国民の家」という思想に表わされています。
国家は良き父として、国民の要求・要望を包括的に規制・統制・調整をして、「家」の機能と役目を果たすことが図られてきました。
「誰も抑圧されることなく、助け合う社会」の目標のために、雇用格差の解消、経済的平等、教育の平等、社会福祉制度の充実、雇用保障、民主主義の確立を、政治がリードして実現してきたのが今のスウェーデンです。
西野氏は、「国家の思想を考えないと政策論だけでは無理な時代になった。」と仰っていました。
日本も今、総選挙を控え、どういう国家であるべきか、その思想が問われています。
どんなに優れたシステムがあってもそれを運用するのは人間であるということ、どういう国にするかは、国民一人一人がどういう選択をするかということ―ということを、改めて感じた2時間でした。
代理として、岡野守也氏をお招きしお話を伺います。詳しくは、―こちら―をご覧ください。
Samhall ― 「サムハル」という企業をご存知でしょうか。
これは、スウェーデンのストックホルムの中心に本社を置く企業の名前です。
設立は1980年、従業員数は2万2千人、収入は868億円を超え(2007年度)、自己資本利益率は9%、自己資本比率も38%という、収益力のある大企業です。
このサムハルの大きな特徴は2つ。
政府が100%の株を保有する特殊法人であること、
従業員の90%が何らかの障害を持っていること、です。
8月25日(火)、東京・六本木のスウェーデン大使館において、
「スウェーデン・サムハルから見た、働くということ:
3万人の障害者を雇用する企業から考える雇用問題」
と題した講演会に参加してきました。
お聞きしたところによると、98名定員の会場に、申し込みが150名程あり、残念ながら参加をお断りしたそうです。そのくらい、盛況な集まりでした。
講師に立たれたのは、(株)プロシード代表取締役社長・西野弘(にしのひろし)氏です。
スウェーデンでは、「就労と納税」はセットで考えられており、そのために「誰もが働いて納税できる」ことを目的とした、雇用の機会均等政策があります。
「pride of taxpayer」という言葉もあり、納税をして国を支えることにたいへんな誇りを持っている民族だと聞いた事があります。
それは例外なく、障害のある方も対象となっています。
「障害者」とは、何らかのハンディキャップのある人のことを指し、身体的・知的はもちろんのこと、アルコール依存症患者や麻薬中毒患者も、「精神的な障害を持つ人」と見なされています。
また、外国からの移民の人々も、「スウェーデン語を話せない」「生活習慣が違う」ハンデ(=障害)を持つと考えられているようです。つまり、「障害」という言葉には、我々日本人がもっている認識よりも幅広い内容が含まれます。
スウェーデンでは、みな何かしらのハンデを持っているのは当たり前、という前提が国民感情としてあるようで、あくまでも「一人の人間」として接し、政府もその個々の要望に応える支援策を打ち出しています。
そのひとつがサムハルです。
サムハルとは驚くべき会社です。下記をご覧ください。
○経営ビジョン
障害者を積極的に採用し、その社員に成長の可能性とチャンスをもたらす魅力的な職場を創出していくこと
○企業理念
スウェーデンにおける最も成功した企業体を目指す
経営結果としても人間の価値を創造する面を両立させる
我々の試みが社員・顧客・社会に対して利益を生むものでなければならない
○企業目標
障害者雇用数の増大(実質稼働時間が政府によって決められている)
雇用優先障害カテゴリーの充実(重度の障害者の雇用%が政府によって決められている)
サムハルグループ外企業への転職
企業利益の拡大
これだけを見ても、日本の障害者施設とは、大きく違うことがわかると思います。
日本では、個人の要望に関係なく、できる「作業」を与え、政府は補助金だけを出し、そこには「個人の成長の手助け」はなく、「弱者の救済」という思想があるだけです。
そして、企業の障害者雇用枠には重度・軽度のカテゴリーがなく、重度障害や複数の障害のある方々の就労のチャンスはかなり少ないのではないでしょうか。
サムハルでは企業のオーナーは政府ですが、数値目標はしっかり定められており、利益をあげるための要求もしています。
サムハルの経営者は、常にこれらの理念・目標を達成する経営のプロであり、価値のある一企業として、他企業とのパートナーシップを目指しています。
1981年には政府からの補助金は170%だったのが2008年には90%まで減少し、利益を上げ、配当までしているという実際のデータもあります。
そして現在では、製造業に3割、サービス業に4割の人が従事し、障害者であってもサービス産業への従事が可能であることを証明しています。
日本でも有名な「イケア」でも、多くのサムハルの人たちが仕事をしているとのことです。
それは、個々のハンデに応じた教育プログラムがあり、適性のある仕事を見つけ、雇用された人財の開発と管理をするマネジメントが徹底して行われているからのようです。
日本でも、このような会社は可能でしょうか?との問いに、西野氏は仰いました。
「日本で作らないかと言われることもあるが、それは無理。すぐに倒産してしまう。」
それは、「国家・国民の思想が違うからだ」というのが理由のようです。
サムハルを支える思想 ―それは、スウェーデン政府が作り上げてきた、「国家は国民の家」という思想に表わされています。
国家は良き父として、国民の要求・要望を包括的に規制・統制・調整をして、「家」の機能と役目を果たすことが図られてきました。
「誰も抑圧されることなく、助け合う社会」の目標のために、雇用格差の解消、経済的平等、教育の平等、社会福祉制度の充実、雇用保障、民主主義の確立を、政治がリードして実現してきたのが今のスウェーデンです。
西野氏は、「国家の思想を考えないと政策論だけでは無理な時代になった。」と仰っていました。
日本も今、総選挙を控え、どういう国家であるべきか、その思想が問われています。
どんなに優れたシステムがあってもそれを運用するのは人間であるということ、どういう国にするかは、国民一人一人がどういう選択をするかということ―ということを、改めて感じた2時間でした。
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