【八夜 ★抹殺】 から
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坂本繁二朗画伯の絶筆となる<幽光>を天空に観た先月七日が切っ掛けとなり、星の落とし子な入院前の色音ばかりを紐解く日々が立ち続いてくれる、その日も話しかけて日常が始まった八月の鼓動から生まれた会話でした。
いきなり〝昨日に出席できない白々しい法要〟を御山から俯瞰するのです。
ここからです、吹き抜き屋台となった〝家〟から甘さ控えた未完の大器だけを、互いに院長夫妻を除いた師範だけの思い出話で終始できた三十六時間でした。
もし、この娘との出会いがなければ私は間違いなく堕落していた。
桜月から秋風の月、幽閉される御山も朧に晴れてきて、やっと彼女を探し出せる阿蘇でした。狂いの五年は長かったぁ。
「逢わせてくれるんだ」
マリッジリングなる必殺の天使の虹彩に素通しになる行き交った師範との百夜が悪戯っぽく笑む。
噴煙が大気に語りかける其色月は晩夏を見つける天蓋の下『青春キャンパス』と名付けた野外劇場で第六幕が神妙に開いた。
四十路も迎えようとする荒れ肌を忘れさせる週末の騒ぎが治まり、のんびり起きだした月曜の閑散とする風の朝。秋の気配を聞きだす二十五日、わナンバーの車が駐車場に停まる。
閑居を回転軸として忘れていたり思い出したり、磁極は揺れる。
視野に入る扇面の天地が常の舞台。
パイプカットの下半身麻酔から痛む背を主軸としてざわついていたのは師範だったと、この一ヶ月余りで思い出せていた。昨日が、五才になる天使の誕生日でした。
テニスコート横を下り、ふたりの娘がこちらに歩いてくる。花道みたいな明るさで。
「テニスをさせてください」
呼びかけられた私はラケットや靴を貸し出しながら何時ものように話しかける。
「何処から来たの?」
「両親の名代で茶の先生の法事に来たんです」
私の動きが止まる。靴を落とし、押し黙ってしまう。後に聞いたのだが瞬時に顔色まで変わったらしい。
「どうされたんですか?」
つい私は娘たちの一人に尋ねてしまう、
「〇〇さん?」
「どうして知ってあるんですか?」
中の一人が驚き、かなり動揺している。
もう一人からの〝なぜ?〟な顔つきに、
「有名だから」
友達に答えてあげた娘は、その娘と小声で話し合う仲となった。