一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

『単純な脳、複雑な「私」』

2009-11-10 | 乱読日記
若手脳科学者の池谷裕二氏が出身高校で行った講演を本にしたもの。


私たちのココロの活動は、それを形作る前提(原因?)となっている無意識から切り離しては考えられない、ではその無意識を生み出す脳の活動はどのようなメカニズムでできているんだろう、ということを、脳の中のニューロンでおきる単なる化学反応が、知覚や運動や意識につながっていく過程を、意識=「私」の側とニューロンの側から身近に経験する事柄を例に引きながら説明してくれています。

面白いエピソードがたくさんありすぎて、しかもそれらが繋がっているので、代表的・象徴的な部分の引用、というのにはなじまないくらい盛りだくさんな内容です。


池谷氏は研究活動の他にこういう一般書や講演・イベントなどの「アウトリーチ活動」と呼ばれる社会活動を積極的におこなっていて、今までにも多数の著書が人気になっているようです。

専門家にとっては厳密さを犠牲にして分かりやすさを優先しながらも、誤解や早とちりをさせないような講義をしたり文章を書くのは、かえって学術論文より難しいのではないかと思います。


友人の研究者と話をしていて、彼の専門分野のことについて「それって○○ということ?」と自分なりに咀嚼したつもりで整理して聞いてみると、「うーん、まあ、そういう風に理解してもらっても間違いじゃないよ」などと微妙な肯定をされたりします。
これが酒飲み話でなく、講演や書籍となると、そこの匙加減ははるかに難しくなるわけでこういう良質の科学書は本当にありがたい存在です。




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