感染症内科への道標

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チクングニヤ熱 (感染症新法 分類未)

2009-11-29 | 微生物:ウイルス その他
厚生労働省検疫所 
http://www.forth.go.jp/tourist/kansen/37_chikungunya.html
国立感染症研究所 感染症情報センター 
http://idsc.nih.go.jp/idwr/kansen/k07/k07_19/k07_19.html
CDC サイト 
http://www.cdc.gov/ncidod/dvbid/chikungunya/
Mandell, Douglas, and Bennett's Principles and Practice of Infectious Diseases: Expert Consult Premium Edition seventh edition

感染経路 
トガウイルス科に属するチクングニヤウイルスによって引き起こされる感染症で、ウイルスを保有するネッタイシマカやヒトスジシマカなどに刺されることで感染。人→蚊→人感染。アフリカでは1952年に初めて流行が報告され、その後、タンザニア、ウガンダ、ジンバブエ、南アフリカ、セネガル、ナイジェリア、中央アフリカ、コンゴで流行し、アフリカ大陸ではコンゴのキンシャサで1999年から2000年にかけて5万人規模の流行が報告されている。その後、感染は拡大し、推定265,000-770,000人が2006年に発症したとされ237人の死亡者を出したとされる。2006年-2007年にかけインドにおいて140万人の発生。
アジアでは1958年にタイで流行が報告された後、カンボジア、ベトナム、ラオス、ミャンマー、マレーシア、フィリピン、インドネシアで流行が報告されている。いままでに日本国内での感染、流行はないが、2006年12月に海外からの輸入症例2例が報告された。

流行地域


症状 
2~12日(通常2~4日)の潜伏期間の後、発熱、関節炎、発疹がみられる。発熱と関節痛は必発であり、発疹は8割程度に認め発症日当日に認められる。関節痛は四肢(遠位)に強く対称性で、その頻度は手首、足首、指趾>膝>肘>肩の順であり、関節の炎症や腫脹を伴う場合もある。関節痛は急性症状が軽快した後も、数週間から数ヶ月にわたって続く場合がある。長期の関節炎はHLA-B27との関連が指摘されている。2/3の症例では2か月以上の関節痛が持続し、13%では6か月以上の関節痛が持続する。
この点がデング熱との鑑別になる。その他の症状としては、全身倦怠・頭痛・筋肉痛・リンパ節腫脹である。また出血傾向(鼻出血や歯肉出血)、 結膜炎や悪心・嘔吐をきたすこともある。また、重症例では神経症状(脳症)や劇症肝炎が報告されている。死亡することはまれ。

病原診断
病原体診断では、血清中のRT-PCR法によるウイルス遺伝子の 検出および蚊由来C6/36細胞やアフリカミドリザル由来のVero細 胞によりウイルス分離を行う。神経症状を呈した場合は、髄液か らもウイルス分離や遺伝子検出を実施する。 血清診断ではIgM捕捉ELISAによるIgM抗体の検出を行う。 急性期に比べ回復期における特異中和抗体価上昇によっても診 断可能である。チクングニヤウイルスに感染したVero細胞は、4日 程度で明瞭なプラークを形成するので、プラーク減少法に よる中和抗体測定は比較的迅速に測定できる

治療・予防 
通常のチクングニヤ熱の場合には、輸液や鎮痛解熱剤投与など対症療法を実施する。ただし、出血傾向を呈する場合もあるのでデング熱に準じて鎮痛解熱剤として出血傾向やアシドーシスを 助長するサリチル酸系のものは避け、アセトアミノフェンが望ましい。
 脳炎を発症した例で、免疫グロブリンが有効であった報告がある。
 予防に関しては、日中に蚊に刺されない工夫が重要である。具体的には、長袖・長ズボンの着用、昆虫忌避剤の使用などである。


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