ガウスの旅のブログ

学生時代から大の旅行好きで、日本中を旅して回りました。現在は岬と灯台、歴史的町並み等を巡りながら温泉を楽しんでいます。

旅の豆知識「鎌倉文化」

2019年12月24日 | 旅の豆知識
 鎌倉時代に花開いた文化で、鎌倉幕府が成立する12世紀末からその滅亡する14世紀前期までの文化です。その特徴は、①鎌倉幕府を支える武士の生活と関わったものであること、②伝統的な貴族文化も継承しつつ、大陸からの文化も取り入れていったこと、③新しい鎌倉仏教の普及にも伴って、武士や庶民にも指示されたものであったこと、などとされてきました。
 貴族中心の支配体制が崩れ、本格的な武士の政権が誕生し、続いていきましたが、2回の元寇によって、御家人の不満が高まって、鎌倉幕府は衰退していきます。この時代には、新しい仏教の宗派が生まれて、民衆への布教活動が活発化しました。浄土宗の法然、浄土真宗の親鸞、法華宗の日蓮、時宗の一遍などが活躍し、その足跡が日本中に印されています。地方を旅すると○○が流刑になった所だとか、布教活動をした地だとかにめぐり会うことがよくあります。それとともに民衆の中に根付いていった仏教文化の奥深さを感じざるをえないのです。
 その代表として、東大寺南大門(大仏様)、正福寺千体地蔵堂・円覚寺舎利殿・功山寺仏殿・浄土寺浄土堂(唐様)、石山寺多宝塔・蓮華王院本堂[三十三間堂](和様)、観心寺金堂(折衷様)などの仏教建築、東大寺南大門金剛力士像・僧形八幡神像・重源上人像、興福寺金剛力士像・無著象・世親像・天灯鬼像・竜灯鬼像、蓮華王院本堂[三十三間堂]千手観音坐像、六波羅蜜寺の空也上人像、高徳院阿弥陀如来坐像[鎌倉大仏]、明月院上杉重房像、浄土寺阿弥陀三尊立像などの彫刻、一遍上人絵伝、法然上人絵伝、石山寺縁起絵巻などの絵巻物、親鸞聖人像、明恵上人樹上坐禅、蘭渓道隆像などの絵画も残されています。また、文学としては、『新古今和歌集』、『山家集』、『金槐和歌集』などの和歌集、『水鏡』、『愚管抄』、『吾妻鏡』などの歴史書、『十訓抄』、『古今著聞集』、『沙石集』などの説話集、『保元物語』、『平治物語』、『平家物語』、『源平盛衰記』 などの戦記物語、『海道記』、『東関紀行』、『十六夜日記』などの紀行文、『方丈記』、『徒然草』などの随筆が書かれました。その中で、多くの分野に独特の創造的・個性的文化を生み出していきます。
 尚、庶民の生活と関わって、瀬戸焼、常滑焼、備前焼などの陶器が発達し、武士の生活と深く関わって、刀剣・甲冑も優れたものが製作されました。

〇鎌倉文化を巡る旅六題

 旅先で鎌倉文化の関係地を訪れ、良かった所を6つ、北から順に紹介します。

(1) 称名寺と金沢文庫<神奈川県横浜市金沢区>

 称名寺は、真言律宗別格本山の寺院で、山号は金沢山といい、本尊は弥勒菩薩です。この寺は、金沢北条氏一門の菩提寺で、鎌倉幕府の要人・北条実時が、1258年(正嘉2年)に六浦荘金沢の屋敷内に建てた持仏堂が起源とされています。その後、北条実時の孫・金沢貞顕が平泉の毛越寺をモデルに金堂や三重の塔を含む七堂伽藍を完備し、庭園などを整備ましたが、鎌倉幕府滅亡とともに金沢北条氏も滅び、以後寺運も衰退しました。しかし、江戸時代に入って大幅な復興が実現し、現存する建物が作られました。現在、境内は国の史跡に指定され、赤門、仁王門、金堂、釈迦堂などがあります。また、金堂前の阿字ヶ池を中心とする浄土式庭園は、1972年(昭和47)からの大がかりな発掘調査を経て、1987年(昭和62)に復元されたものです。この浄土庭園の向こうには、緑豊かな金沢三山(金沢山・稲荷山・日向山)を見ることができます。春の桜、初夏の黄菖蒲、秋の紅葉と四季折々の景観が美しく、遠く鎌倉時代に心馳せさせてくれます。金沢文庫は、1275年(建治元)頃、北条実時の邸宅内に造った武家の文庫が起源とされています。蔵書の内容は政治・文学・歴史など多岐にわたるものでしたが、金沢北条氏滅亡後は、菩提寺の称名寺に文庫の管理がゆだねられたものの、寺運の衰退とともに蔵書も次第に散逸したとのことです。現在の金沢文庫は1930年(昭和5)に、神奈川県の施設として復興したもので、1990年(平成2)には新館が完成し、現在は、中世文化に関する博物館兼図書館の役割を果たしています。国宝の金沢北条氏歴代(実時、顕時、貞顕、貞将)の肖像画と文選集注を収蔵していることで有名です。

(2) 鎌倉<神奈川県鎌倉市>

 やはり、この時代を巡るには神奈川県鎌倉市に行くのが一番です。三方を山に囲まれ、南は相模湾に臨む要害の地で、鎌倉幕府が置かれ、当時の政治、文化、経済の中心でした。中央に鶴ケ岡八幡宮が鎮座し、往時をしのばせる円覚寺、建長寺などの寺々や鎌倉大仏等が狭い地域にひしめきあっています。その所々に源氏や北条氏の縁の地がちりばめられていて、鎌倉時代の歴史をたどることができます。鎌倉幕府の興隆から衰退に至るまでを様々な寺院や史跡に見い出し、時代を知ることができるのです。

(3) 塩田平<長野県上田市・青木村>

 上田市の西南に広がる塩田平一帯は、“信州の鎌倉”と呼ばれています。それはかつて、塩田北条氏三代の居城「塩田城」があったからで、鎌倉幕府の要職にあった北条義政から、その孫まで、三代に渡り約六十年間、信濃の一大勢力としてこの地方を統治していました。それによって、鎌倉時代から室町時代にかけて造られた神社仏閣など、数多くの文化財が残されているのです。中でも、安楽寺の木造八角三重塔は、1290年代(鎌倉時代末期)には建立されたと考えられ、木造の八角塔としては全国で一つしかないという貴重な建築です。1952年(昭和27)に、長野県では一番早く国宝に指定されたもので、見ごたえがあります。また、青木村にある大法寺の三重塔は、東山道を旅する人々が「見返りの塔」といったと言われ、美しい塔の姿が有名です。この塔は、1333年(正慶2)の鎌倉時代から南北朝時代に造営されたもので、これも国宝に指定されています。それ以外にも、常楽寺、前山寺など鎌倉時代縁の寺があり、塩田城跡と共に巡るとまさに鎌倉時代の散策気分です。

(4) 東大寺・興福寺<奈良県奈良市>

 この聖武天皇発願の廬舎那仏(奈良の大仏)で有名な奈良時代を代表する東大寺は、平安時代になると、失火や落雷などによって講堂や三面僧房、西塔などが焼失、南大門や大鐘楼も倒壊したのです。しかも、1180年(治承4)に、平重衡の軍勢により、大仏殿をはじめ伽藍の大半が焼失してしまいました。しかし、鎌倉時代に俊乗房重源によって再興され、鎌倉文化が凝縮されているのです。この時代の建築物では天竺様の南大門と開山堂が残され、国宝となっています。その南大門に佇立する仁王像を作った運慶、快慶を代表とする慶派の仏師の技はすばらしいものです。また、近くにある興福寺も、鎌倉時代に復興され、その時に建造された北円堂、三重塔が残り、国宝館には、金剛力士像、無著象、世親像、天灯鬼像、竜灯鬼像などの慶派の傑作があって、いずれも国宝に指定されています。そして、1998年(平成10)に、この2つの寺は、「古都奈良の文化財」の一部として世界遺産(文化遺産)に登録されました。

(5) 蓮華王院<京都府京都市東山区>

 鎌倉時代の代表的な建築様式和様の本堂(三十三間堂)が有名で、1952年(昭和27)に国宝に指定されています。その中には、本尊である鎌倉時代の仏師湛慶作の国宝の木造千手観音坐像(寄木造)をはじめ、木造千手観音立像(1,001躯)、木造風神・雷神像、木造二十八部衆立像など、鎌倉時代の仏像が多数並んでいて、圧巻です。また、江戸時代には各藩の弓術家により本堂西軒下(長さ約121m)で矢を射る「通し矢」の舞台となったことで知られています。

(6) 功山寺<山口県下関市>

 ここの仏殿は、鎌倉時代の代表的な唐様建築と呼ばれるもので、鎌倉時代の建築様式の推移を見る上でとても貴重なので、1953年(昭和28)に国宝に指定されています。寺伝には、1327年(嘉歴2)創建とありますが、 柱の墨書により1320年(元応2)の建立と判明しています。木造の禅宗様建築で、典型的な唐様仏殿としては、我国最古の物です。二重屋根入母屋造りの桧皮葺、扇垂木に花頭窓、柱は上下部を細めた粽型で礎石と柱との間に礎盤を入れ、内陣の天井は鏡天井で石南花を描き、外陣は化粧屋根裏、床は四半瓦敷で建物は一切彩色していません。鎌倉の円覚寺舎利殿と共に仏殿建築の代表と云われて、堂内には本尊千手観音坐像を安置しています。

☆鎌倉文化の主要な文化財一覧

<建築>

・東大寺南大門(奈良県奈良市)…大仏様[国宝]
・正福寺千体地蔵堂(東京都)…唐様[国宝]
・円覚寺舎利殿(神奈川県鎌倉市)…唐様[国宝]
・功山寺仏殿(山口県下関市)…唐様[国宝]
・浄土寺浄土堂(兵庫県)…唐様[国宝]
・石山寺多宝塔(滋賀県大津市)…和様[国宝]
・蓮華王院本堂[三十三間堂](京都府京都市)…和様[国宝]
・観心寺金堂(大阪府)…折衷様[国宝]

<彫刻>

・東大寺南大門金剛力士像…運慶、快慶作[国宝]
・東大寺僧形八幡神像…快慶作[国宝]
・東大寺重源上人像…[国宝]
・興福寺金剛力士像…伝定勝作[国宝]
・興福寺無著象・世親像…[国宝]
・興福寺天灯鬼像・竜灯鬼像…[国宝]
・蓮華王院本堂[三十三間堂]千手観音坐像…湛慶作[国宝]
・六波羅蜜寺の空也上人像…康勝作
・高徳院阿弥陀如来坐像[鎌倉大仏]…[国宝]
・明月院上杉重房像
・浄土寺阿弥陀三尊立像

<絵画>

・一遍上人絵伝…円伊作[国宝]
・法然上人絵伝…[国宝]
・石山寺縁起絵巻…高階隆兼作[国宝]
・北野天神縁起絵巻…[国宝]
・平治物語絵巻…[国宝]
・蒙古襲来絵巻
・男衾三郎絵巻
・後三年合戦絵巻
・紫式部日記絵巻
・餓鬼草紙…[国宝]
・病草紙…[国宝]
・地獄草紙…[国宝]
・伝源頼朝像…[国宝]
・後鳥羽上皇像…[国宝]
・親鸞聖人像…[国宝]
・明恵上人樹上坐禅図…[国宝]
・蘭渓道隆像…[国宝]

<文学>

・『新古今和歌集』(藤原定家ら撰)
・『山家集』(西行法師著)
・『金槐和歌集』(源実朝著)
・『小倉百人一首』(藤原定家撰)
・『保元物語』
・『平治物語』
・『平家物語』
・『源平盛衰記』
・『方丈記』(鴨長明著)
・『徒然草』(吉田兼好著)
・『水鏡』
・『愚管抄』(慈円著)
・『吾妻鏡』
・『海道記』
・『東関紀行』
・『十六夜日記』(阿仏尼著)
・『十訓抄』
・『古今著聞集』(橘成季者)
・『沙石集』(無住著)


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