奈良

不比等

古都奈良・修学旅行と世界遺産の街(その509)

2018-01-15 08:15:00 | 奈良・不比等
歴史ミステリー小説 北円堂の秘密

今年初め(平成30年1月13日・第2土曜日)の興福寺仏教文化講座は多川俊映・貫首の中金堂再建の話の後、本講は偉大な数理経済学者・宇沢弘文(うざわひろふみ1928~2014)氏の娘さんに当たる「占部まり」女史(慈恵医大卒・内科医)の登壇であった。最初に宇沢弘文をご存知の方はとの問い掛けに会場二百数十名程度の中で十数名が挙手なさっていた処を見ると宇沢弘文氏は結構有名な経済学者であったのだなと思った。-----
講義は宇沢弘文氏の生涯の紹介と、その研究に関わる人間尊重の宇沢経済学の有用性を説き、更には、占部まり女史の現職である医療の世界の喫緊の問題(終末期医療)を結び付けて「メメントモリ協会」を立ち上げているので此の活動を東京だけでなく全国に広げるべく講演を続けていると仰っていた。-----
宇沢弘文氏を知るには次の書籍のどれかがフィットするだろうとのことで複数を挙げられていた。「人間の経済・新潮新書」「社会的共通資本・岩波新書」「自動車の社会的費用・岩波新書」「経済学は人々を幸福にできるか・東洋経済新報社」「生命人間経済学・日本経済新聞出版社」「宇沢弘文の経済学社会的共通資本の論理・日本経済新聞出版社」「宇沢弘文傑作論文全ファイル・東洋経済新報社」「地球温暖化を考える・岩波新書」「経済学の考え方・岩波新書」「算数から数学へ・岩波新書」「日本の教育を考える・岩波新書」「成田とは何か・岩波新書」「経済学と人間の旅・日本経済新聞出版社」「宇沢弘文のメッセージ・集英社新書」-------
印象に残った一つは社会的共通資本の定義としての三本柱の、背景としての自然・公共インフラ・社会福祉制度は決してサービスとして捉えてはならない、信任であらねばならないとのこと。社会福祉制度に含まれる医療もサービスではなくて信任であるのだと、強調されたそうである。娘さんにしてもお父上の数理経済学的な業績は読みこなすのが難しいそうであり、詳しくは先の書籍をご一読あれと云われていた。宇沢弘文氏のエピソードは数々あるようで、ローマ法王や昭和天皇にご進講されたり、36歳でシカゴ大学教授となりながら帰国後は東大助教授とされたなど破天荒な活躍であったようだ。然(しか)しながら日本に帰国すると、日本の経済発展の貧しさが透けて見えて「真に豊かな社会を築くには経済学の役割はどうすれば良いのか」の観点に研究の方向が向かって行ったようである。-------
都道府県や市町村のビューロクラートには必読の書であり、既に宇沢弘文経済学のファンも多いのだろうと思った。
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