折々の記

日常生活の中でのさりげない出来事、情景などを写真と五・七・五ないしは五・七・五・七・七で綴るブログ。

音楽の『厳しさ』と『楽しさ』~二つのチャリティー・コンサートを聴く

2008-05-13 | 音楽

開場前にもかかわらず、ホールには長蛇の列ができていた


この1ヶ月の間に2回もコンサートを聴く機会に恵まれた。

いずれのコンサートも、地元の新聞販売店が企画したチャリティー・コンサートであるが、お互いに張り合ったわけではないだろうが、プログラムにそれぞれの新聞社の特徴というか、カラーが良く出ていて興味深かった。


最初に聴いたA新聞が企画したプログラムは、ヴァイオリンの独奏者に若林 暢(のぶ)さんを迎え、第一部は『巨匠が遺した珠玉の名品』と題して、パガニーニ、没後100年のサラサーテ、生誕150年のイザイ、同じく生誕150年のフバイといったヴァイオリンの大家の作品を取り上げたプログラムでわかりやすく、親しみやすいメロディとヴァイオリンの妙技が程よくミックスされた選曲で、聴衆の『耳』と『目』を楽しませてくれた。

第二部のベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ『クロイツェル』は、一転してはりつめた緊張感が漂い、若林さんの熱演に聴衆は息を詰めて聴き入っていた。

小生の場合、この曲はいつもなら途中で集中力が途切れがちになるのだが、ライブ演奏のすごみというのだろうか、グイグイと引き込まれて、一気に聴き終わっていた。

そして、何か久しぶりに音楽の『厳しさ』と真っこう向き合ったような気持ちになった。


音楽の『厳しさ』とヴァイオリンの演奏テクニックといった言わば「直球」勝負の内容は、いかにも、生真面目で、ちょっとアカデミックな雰囲気が売り物のA新聞らしいプログラムだと思った。


一方、Y新聞が企画したプログラムは、『初夏を彩る名曲ロマンの旅』~日本の歌・世界の歌と題して、出演したソプラノ歌手(塩野雅子、安永淑美)、テノール歌手(安保克則)が『初恋』(石川啄木・越谷達之助)、この道(北原白秋・山田耕筰)、『カタリ・カタリ』(カルディッロ)と言った耳になじんだ、おなじみの曲を次々に歌い、会場はリラックスした雰囲気で音楽を楽しんでいた。

小生は、マイクなしで歌う生の声を始めて聴いたが、朗々と会場に響き渡る『声』は、まさに『楽器』だな、と改めて実感した。

このコンサートには、先般、Kさん邸でホームコンサートを開いてくれたヴァイオリニストの上野真理さんも出演されていて、モーツアルトの『ピアノ三重奏曲第3番』をメインにヨハン・シュトラウスの『ウィーン風小行進曲』、バッハの『主よ人の望みの喜びを』を演奏した。

彼女が登場すると、大輪の花が咲いたように会場が華やぎ、抜群の存在感であった。

小生は、中央の前から5番目という絶好の場所で、Kさん邸で聴いたヴァイオリンの響きを思い浮かべ、重ね合わせて聴き入った。


Y新聞の企画したプログラムは、A新聞と全く対照的にお客さんに『楽しんでもらう』、『喜んでもらう』、『くつろいでもらう』というポリシーで一貫していて、いかにも『大衆的』を自負するY新聞のイメージにぴったりのプログラムだと感じた。



音楽の『厳しさ』も、音楽の『楽しさ』も共に音楽にとって必要不可欠な要素である。

その両方を、今回のチャリティー・コンサートで聴くことができたのは、本当に幸せであった。

帰り際に、『良かったよ』、『満足したよ』、『ありがとう』と感謝の気持ちを込めてコンサートの趣旨に賛同して、ささやかな募金をして家路についた。


<チャリティー・コンサートプログラム>

1・ 若林 暢 チャリティー・ヴァイオリンリサイタル

・ ソナタイ長調作品2-2RV31(ヴィヴァルディ) ・ カンタービレ(パガニーニ)
・ モスクワの思い出(ヴィニァフスキ)  ・ アンダルシアのロマンス(サラサーテ)
・ 2つの小品130-1,2(イザイ)  ・ カルメン幻想曲(フバイ)
・ ヴァイオリン・ソナタ第9番イ長調作品47「クロイツェル」(ベートーヴェン)


2・ 初夏を彩る名曲ロマンの旅~日本の歌・世界の歌

 ソプラノ独唱  塩野雅子(ソプラノ) 菊川菜々(ピアノ) 

・ 好きな風景(やなせたかし作詞・上明子作曲) ・ 初恋(石川啄木作詞・越谷達之助作曲)  ・ 月夜のららばい(伊豆裕子作詞・加藤由美子作曲)

 ソプラノ独唱  永安淑美(ソプラノ) 菊川菜々(ピアノ) 

・ すてきな春に(峯陽作詞・小林秀雄作曲) この道(北原白秋作詞・山田耕筰作曲)
・ 歌に生き恋に生き(プッチーニ)

テノール独唱  安保勝則(テノール) 菊川菜々(ピアノ) 

・ 待ちぼうけ(北原白秋作詞・山田耕筰作曲) ・『カタリ・カタリ』(カルディッロ)
・ 女心の歌(ヴェルディ)

 ピアノと弦楽器の調べ

・ ピアノ三重奏曲第3番変ロ長調K502(モーツアルト)
上野真理(ヴァイオリン) 嶋田拓夫(チェロ) 斉木佳奈(ピアノ)

 歌と弦楽器でたどる世界の旅

・ 庭の千草 ・ ローレライ ・ オー・ソレミォ ・ 白鳥 ・ 野ばら ・帰れソレントへ 
・ ウィーン風小行進曲 ・ 峠の我が家 ・ 主よ人の望みよ喜びを
・ メリー・ウィドウのワルツ

最新の画像もっと見る

コメントを投稿