株価の急落、急激な円高のニュースを大きく報じる新聞
日経平均株価が8,000円の大台を大きく割り込んでバブル崩壊後の安値に迫り、円相場も対ドルで13年2ヶ月ぶりに90円台を記録するなど、日本経済は世界的な金融危機に激しく揺さぶられている。そのニュースを新聞は1面トップで大きく報じている。
季節は心地よい秋だが、われわれの生活は一気に厳しい冬の季節を迎えたような雰囲気である。
「歴史は繰り返す」と言うが、この「株安」現象を目の当たりにして、今から6年前、定年退職を3ヵ月後に控えた2002年(平成14年)10月末の体験を思い出す。
その時は、退職を目前に控え、定年後の生活設計なかんずくお金の運用をどうしようかと頭を悩ませていた。
と言うのは、当時は「預金利息」は限りなくゼロに近く、また、株式市場も「閑古鳥」が鳴く有様で、「運用」環境はまさに最悪であった。
だから、選択肢は
「何もしない」か、「リスクをとるか」の二者択一であった。
そして、小生が選んだのは、後者、即ち「株」であった。
最大の理由は、当時不振を極める「株式市場対策」の一環として、当局が打ち出した「特例の非課税措置」(注1)の存在であった。
「買った株を3年間売らずに持っていて、その後2年以内に売却して得た利益には税金がかからない」これこそ、小生の「長期保有」という投資方針(注2)にぴったりの、まさに「願ったり、叶ったり」の制度であり、この制度が「株」での運用の決め手となった。
しかし、方針は決まったものの一つ問題があった。
この特例措置を利用するには、12月31日までに株式の購入を済ましておかなければならないという点である。
退職金を手にするのは、早くても翌年の2月以降なので、必然的にタイムラグが生じてしまう。
運用に「余裕資金」を振り向けるのは、基本中の基本である。
しかし、それでは間に合わない。
一時的にせよ、生活資金に手をつけるべきかいなか、悩みはその点にあった。
そして、「特例の非課税措置」の適用期間の終了まで残す所あと2ヶ月となった段階で、「タイム・リミット」に背中を押されるかたちで、11月、12月に約20銘柄ほどの株式を購入したのであった。
購入後しばらくして日経平均は最安値をつけたが、「長期保有、最短3年間は塩漬け」と言う方針に基づいて購入したので、最安値をつけようが株価には一喜一憂することは全くなかった。
そして、この間、株価は順調に回復し、小生も昨年その時購入した株式を売却し、この「優遇措置」の恩恵に預かることができたのであるが、その折購入した銘柄の購入単価、配当利回りを週末の株価、配当利回りと比較したのが、次の数字である。
日経平均 7,649・08円 8,756・59円
(2008・10・25) (2002・10・30)
S建設 395円(1・8%) 345円(1・4%)
O製紙 380円(3・2%) 500円(1・6%)
MUFJ 683円(2・1%) 770円(0・5%)
N証券 1,055円(3・2%) 1,350円(1・1%)
Mレーヨン 181円(6・1%) 255円(2・3%)
A化成 320円(4・1%) 259円(2・3%)
I 忠商事 419円(4・3%) 220円(2・2%)
H不動産 220円(5・5%) 230円(3・4%)
T電力 2,765円(2・3%) 2,200円(2・7%)
株式用語の一つに「いって来い」という言葉がある。
相場や株価が値上がりまたは値下がりした後に、結局はもとの水準まで逆戻りしてしまうことを言うのだが、週末の株価で見ると、日経平均は2003年4月の最安値に「ツラ合わせ」であり、小生の購入した銘柄も半数以上が「いって来い」状態となってしまっている。
歴史は繰り返すというが、今の状況も6年前とよく似ているが、前回の危機の要因が「バブルの崩壊」という専ら国内要因に起因していたのに対し、今回は米国を震源地として全世界を巻き込んでいるという点において、スケールが全く違っている。
それだけに、単に株価水準だけで「買場」と一概に判断するわけにはいかないだろうが、東証第一部の株価は、企業を解散して資産を処分した場合の価値をかなり下回る、という異常な安値になっているのも事実である。
市場の動向、落ち着き具合、今後の株安対策等々まだまだ見定めなければならない要素は多いと思うが、6年前と同じようにリスクをとる「勇気」と「決断力」を忘れず、今後の推移を見守って行きたいと思っている。
(注1)「特例の非課税措置」=平成13年11月30日から平成14年12月31日までに購入した上場株式を、平成17年1月1日から平成19年3月31日までの間に証券会社を通じて売却し、一定の手続きをした場合、買付価額1,000万円までについて「売却益は非課税(所得税・住民税)」という制度
(注2)「投資方針」
・ 余裕資金を当てる ・ 長期保有、3年間は「塩漬け」にする ・ 銘柄は、各業界のトップもしくはそれに順ずる企業で配当利回りが1%以上