自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆メディアのツボ-48-

2007年03月27日 | ⇒メディア時評

 能登半島地震の被災現場を訪ねた(26日)。家屋被害が集中しているのは、輪島市門前町や河井町などだ。中でも、門前町道下(とうげ)地区では一気に50戸が全壊し、余震があるごとにその数が増えている。以下はそこで見たマスメディアの光景だ。

     倒壊の瞬間を期待するカメラマン

  道下には地元テレビ局をはじめ、東京キー局のSNG車(通信衛星を使った映像素材をリアルタイム伝送)が6台あった。NHK、日本テレビ、TBS、新潟テレビ21(テレビ朝日系)、テレビ東京、石川テレビ(フジ系)と日本のテレビ系列が勢ぞろいしている。朝、昼、夜のニュース番組に中継を入れるためだ。

  通りを歩いていると、テレビカメラを据えつけたグループがあった。中には、スチールカメラを持ったカメラマンもいる。彼らが見つめて方向はただ一点。道路向こうの傾きかけた家屋だ。この家屋が余震で倒壊する瞬間を撮影するためだ。この日も14時46分に震度5弱の揺れがあり、被害は拡大している。

  プロのカメラマンとすると、家屋倒壊の瞬間というのは迫力ある映像に違いない。しかし、住民感情に立てば、隣家が砂ぼこりを立てながら崩れ落ちるを見るのは忍びない。ましてやその家の持ち主にとってはいくら修復は難しいとはいえ、家が倒壊する姿を見るのは心痛だろう。

  確かに、クールにマスメディアの論理で考えれば、被害状況が迫力ある映像を持って放送されることにより、国や地方自治体を動かし、復旧活動も進むという効果はある。しかし、いま住民はそこまで考えてはいない。

 人権侵害でもなく、メディアスクラム(集団的過熱取材)でもない。が、崩れ落ちるのを期待して待つカメラマンの存在に静かな憤りを感じる。これが率直な住民感情であろう。

 ⇒27日(火)朝・金沢の天気  はれ  


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