エスペラントな日々

エスペラントを学び始めて27年目である。この言葉をめぐる日常些事、学習や読書、海外旅行や国際交流等々について記す。

三文小説

2017-06-04 | 読書ノート


 近代演劇界に大きな影響を与えたブレヒトの小説。ドイツ語からの翻訳。有名な戯曲に「三文オペラ」があるが、同じような設定の上にかなり異なるストーリーを組み立てた小説である。極度に惨めな人々(その象徴が表紙の傷病兵)を利用して利益を上げる「実業家」たちの物語。
 正直なところかなり読みにくい。いわゆる翻訳調ではなく、エスペラント自体はそれほど難しくはないし、ストーリーも大衆的で面白いのだが、細部(時には重要な細部)がつかみにくい。たぶんこれは原作がそのように書かれているのだろうと思う。日本語訳とも比較してみたが、単語の選び方がかなりちがっていて分かりやすかった。エスペラント訳の方はもっと原作に近いのかも知れない。どっちにしろ、私の読解力がまだまだだと感じた。

 例えばこんな一文:
 ”Mi scias ion pri la laborforto", gxi diris lauxte. "Se iu enigas sian laborforton en ion, tiam gxi farigxas pli valora. Sxtonoj ne estas multe, sed jes domo, komprenite!"
 これは百科事典の一冊(最初の gxi)が証言しているシーンである。「労働力についてならいくらか分かります」「もし誰かが自分の労働力を何かに注ぎ込めば、それはより価値が増すのです。石にはたいした価値はありませんが、しかし(石で作った)家になれば、分かるでしょう!」(私の拙訳)

 面白かった、または私が初めて知った表現をいくつか紹介しよう。前後関係や PIV などで調べて分かった表現もあるが、日本語訳を参照しないとわからなかったものもある。

 cxiontranslipiganto:弁の立つ人
 cxarpenti ekzistadon por mi kaj vi:自分たちの生存のために工作する
 homereska ridegado:ホメロスのように笑う(大声で、とめどなく笑う)
 kaplikornulo:山羊座の人
 ludi unu partion de damoj:partio には「試合」の意味があり、damoj にはチェッカーの意味がある。
 kovri sian seksan bezonon:kovri 「覆う」だから性的欲求を隠すのかと思ったが、この場合は「埋め合わせをする」「満たす」の意味らしい。
 edzeco pro inklino:恋愛結婚
 fermita mieno:不可解な面持ちで
 blondega viro:栗色の髪をした男
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする