オーストラリア永住権取得は難しくない!

5つの目標を作り始まった、永住LIFEの幸せなオーストラリア永住権への道

幸せなオーストラリア永住権への道 148 ひろがった風船とからっぽの中身

2008-04-30 18:36:49 | Weblog
ジュンとノリの「こうほー」、いや広報活動のおかげで南はクーランガッタにあるキラベーカリーの壁から、北はラナウェイベイにあるステーキ屋の看板までRainbow of surfers paradise cupの鮮やかな虹の橋のポスターが張り巡らされた。

サーファーズパラダイスの街中については、ノリが働いている居酒屋のトイレからはじまってバーボンバーやナイトクラブのトイレ、語学学校やツアーオフィスの掲示板、おみやげもの屋の壁、焼肉屋、焼き鳥屋の壁、それこそサーファーズのワーホリ達がバイトをしているすべてと言っていいほどの場所にノリとジュンの強引とも言える「こうほー」活動は進んでいた。

お店のオーナーに頼む前に、そこで働いているワーホリサーファーにジュンとノリの二人が声をかけて説得してから一緒にオーナーにお願いをしにいくという作戦をとっていたので、サーファーズに暮らすワーホリサーファーで二人の顔を知らない人間はいないし、そんな二人にたのまれれば横のつながりの強いこの街で嫌だと断る人間は少なかった。

そして、ほとんどのお店に僕も一緒についていってこの大会の目的や想いを伝えたので、始めは強引なノリとジュンのプッシュに面食らっていた人たちも、このサーファーズパラダイスの街やキッズ達への想いに共感をしてくれ、僕達の夢に賛同してくれる人たちも少しずつ増えていった。

それはジャパニーズサーファーが働いているお店や日本人コミュニティーはもちろん、オージーや他の国から移住してきたお店のオーナーや、お店を営んではいなくても、この街で暮らすオージー達の間にも広げていくことができた。

「僕達の夢に御協力ありがとうございます。貴方のお知り合いや友達で今回の大会のポスターを貼らせてくれそうなお店や、協力をしてくれそうな人がいたら、ぜひ紹介をしてください。」

この言葉は、まるで魔法の言葉だった。

気の良いオージーやお店のオーナーの中には、その場で受話器を取り、友達のお店や他の経営者、なにかコネクションをもっていそうな人に電話をしてくれ、勝手に次の約束を取り次げてくれる人までいた。

「なんだかおもしろいことを言ってるジャパニーズサーファーがいるんだけれど、気のいい奴だからなにか協力できることがあったら力をかしてやってくれ。なんだかこいつらには夢があるらしいんだ。」

知り合いや友達の紹介で会いにいくと、最初から信用をしてくれているので変な疑いを持たれることも無く僕らの話をみんなニコニコしながら聞いてくれた。人は熱い気持ちを心に持って真剣に夢を語ると、応援をしてくれんだということを知って、僕はとても嬉しかった。

そんな、こんなで僕らのRainbow of surfers paradise cupはサーファーズで暮らす人たちの間にだんだんと知られるようになってきた。それでも困った問題があった。それは参加者のエントリーの少なさだった。

シリンダーズでエントリーを受け付け初めて1週間が経つというのにオージーやキッズの参加者は20人を越えているのに対して、ジャパニーズのボディーボーダーからのエントリーはまだ一人もいなかった。

お店のオーナーや僕が直接に話をした人達には、今回の大会への想いや夢が伝わってもポスターを見ただけの人たちには伝わらない。豪華な優勝賞金がでるわけでもなく、毎年恒例になっているような大会でもなく。ましてやサーファーズパラダイスに暮らす日本人の中ではサーフィン人口に比べボディーボード人口は少なく、そのほとんどが女の子達だった。

何か、いい方法はないか僕は考えた。夜のミィーティングでもみんなに相談をしてみたけれど、これと言った解決策もでてこなかった。

ポスターでは大会の日時とイメージしか伝えることができない。そして女の子達は男の僕らに比べて大会に出て、誰かと競うようなことが好きではない人が多い。なんとか、僕らの想いや夢を伝える方法がないかと考えて、すっかりいきずまってしまった。

今夜もミィーティングが終わったのは夜の12時をまわっていた。ターニーの彼氏が心配して自慢のピカピカの四駆で迎えにきたのを合図に今夜はお開きになった。家に帰る道を歩きながら、ネラング大橋の上から川の水面を見ると空に浮かんだ満月が綺麗に反射をしてピカピカと光っていた。

あんなにそこら中にポスターを貼りまくって、大会の開催を宣伝したのはいいけれど、もしこのまま人が集まらなかったら、それこそ街中の笑いものだ。そんな想いが僕の頭と胸をグルグルとまわってなんだか少しだけ悲しくなった。

あんなにたくさんの人たちが協力をしてくれ、ポスターを貼らせてくれたり、知り合いを紹介までしてくれたのに、肝心の参加者が集まらなかったらそんな好意にも応えることができない。

こんなところで弱気になっている場合じゃない。落ち込んだ気持ちを橋の上に落ちていた少し大きめの石ころに込めて、金色の満月が浮かぶ川の水面に向かって投げ込んだ。金色の月は僕の不安をトプンと音をたてて暗い川底に飲み込んでいった。

「ただいまーアッキィー。」

「おかえりなさい永住ライフさん。今日も遅かったですね、大会の準備の方は順調に進んでいるみたいですね。どこにいっても大会のポスターがはってありますよ。この街の人で今回の大会の開催を知らない人はいないんじゃないですか。」

アッキィーはリビングのソファーに半分からだを横にして、新聞を読みながら話かけてきた。まぁ新聞といってもそれほど英語が得意ではないアッキィーが現地の新聞なんかを読むわけはなく。月に一回発行される日本人向けのフリーペーパーだった。オーストラリアや日本のニュースや芸能ネタ、そのほか特集やコラムなんかが書かれたそのフリーペーパーはオーストラリアで暮らす日本人なら誰もが毎月、楽しみにしているものだった。

先月号ではオーストラリアで活躍する日本人を特集していて、メルボルンで活躍している日本人デザイナーやパースでワイナリーを営む事業家、ゴールドコーストでブライダル会社を経営する社長なんかが自分の経験や苦労話なんかをサクセスストーリー風に語っていた。

その瞬間、僕の頭にヒラメキが走った。そしてアッキィーの手から、そのフリーペーパーを取り上げた。僕はあるものを探して表紙から1ページ、1ページ、くいいるように見つめながらどんどんページをめくっていった。

「ちょっとー、なにするんですか。いくら永住ライフさんでも強引すぎますよ。それは僕が今読んでいるんじゃないですか。ねぇ、永住ライフさん。もう、永住ライフさんったら!」

「これだ!」

僕の探していたものは新聞の最後の最後に小さく載っていた。
新聞をやぶりポケットに詰め込んで、明日の作戦を考えるために自分の部屋に向かって、階段を一気に駆け上った。


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幸せなオーストラリア永住権への道 147 小さくて大きい二つの背中

2008-04-23 19:38:02 | Weblog
午後の授業が終わりシリンダーズに出勤をすると、いつものシフトどおりにターニーとマサヤの二人が働いているだけではなくジュンとノリが店の中でバタバタと忙しそうに動き回っていた。それでも二人はマサヤがしているボードショーツのディスプレイを手伝っているわけでもなく、ターニーが作っているフライヤーのデザインを考えているわけでもなかった。

何か、シリンダーズの営業時間に特別にしなければならない作業や二人の手をかりないとならない仕事もないので不思議に思っていると、マサヤが笑いながらそばに来て、何故二人が店に来ているのかを説明をしてくれた。

「さっき、マークから連絡が入って聞いたのだけれど、頼んでいた業者から今日の午後に今回のイベントのポスターが届くらしいんだ。それで、念のためにチュックに報告をしたら、そばで電話の内容を聞いていたジュンがノリを連れてすっとんできたんだ。」

「えっ、でも何をするために?完成したポスターを見たいだけなら毎晩集まっているんだから、夜まで待てばいいのにずいぶん気が早いなぁ」

ちょっとはなれた場所で、なぜかお互いの足首を交互におさえて腹筋運動をしていたノリとジュンがまるで双子が声を合わせて叫んだみたいに僕の方に振り返って大きな声を出した。

「おまえ、アホか!」

二人のアホという声が合わさって聞こえて、怒られているのになんだか可笑しかった。二人はさっきまで夢中になっていた腹筋運動をやめると立ち上がり、せまい店内の通路を恐い顔をしながら二人並んで一直線に僕の方に向かってきた。

「俺達がポスターを早く見たいだけで、プレゼントを待ちきれない小学生みたいにやってきたと思うのかよ?」

99回目のカウントをしていたノリがショッキングイエローのTシャツの腹筋あたりをさすりながら言った。せまいお店の中で二人仲良く一緒になって腹筋をしたり、ストレッチをしていたジュンとノリは小柄な背丈も手伝ってまるで小学生のようだったので僕は少し笑いながら応えた。

「いや、そんなふうには思わないけれどノリとジュンは何をしにきたのかな?楽しい準備運動もいいけれどシリンダーズは営業中なんだよね。店内で腹筋運動はちょっと困るなぁ。」

「何が腹筋運動は困るなぁー、だよ。俺達はできあがったポスターを街中に貼るためにやってきたんだよ。お前等は店が開いている時間は動けないだろう。だから俺達が貼るんだよ。それもあれだろ、あのなんとかって係の仕事なんだろ。」

真剣な顔付きで僕の顔を見ているジュンの顔を見て、何日か前にシリンダーズの営業が終わった後にみんなが集まってそれぞれの係やおおまかな担当を決めた夜のことを思い出した。

マークはボディーボードブランドのスポンサーを取ってきたり、業界の人たちとの連絡や準備を進める担当。チュックには長年の顔を生かしてもらって開催場所の確保やジャッジの確保、地元との連絡と交渉。ターニーにはポスターやフライヤーのデザインやTシャツの作成や当日の物品販売の担当をしてもらう。マサヤには大会の参加者の管理と大会当日の運営責任者。そして僕は全体の統括とすべての仕事と雑用。そこまではすんなり決まった。


だけど、そこまで決まると次がすんなりとはいかなかった。ジュンとノリに何をやりたいかと聞いても、二人ともいまいちピンときていなかったようだし、二人に何をたのんでいいかもすぐにはうかばなかった。サーファーズパラダイスに住むジャパニーズサーファー達の間では、もう何年もこの街でサーフィンをしている二人は顔がきいたけれど、ボディーボードが中心になった今回の大会に関しては、適材適所を決めるのが少し難しかった。

それじゃあ俺達は何をやればいいんだ。俺達の担当や係はないのかと、へそをまげそうになったノリとジュンの二人に僕がとっさの思いつきで広報という担当をお願いしたんだった。僕はその時の会話をもう一度、思い出した。

「そうだ、ノリとジュンには大切な役割をやってもらいたい。それは広報という係だよ。」

「広報?なんだよそれ?」

あの時も二人は声をそろえてそう言うと、二人並んで僕の顔をまっすぐに見ていた。

「大会の宣伝はもちろんのこと、ぼくらが何をやろうとしているか、どんなことをやりたいかを街中の人に伝える係だよ。どんなにいい企画や大会を開催しようとしても人が集まらなかったら意味がないよね。だからこの街のことを知りつくしているノリとジュンに中心になってやってもらいたいいんだ。」

「ほんとか!永住ライフ、それはすげー重要な仕事じゃねーかぁ。なぁ、ノリ。俺とお前にしかできないピッタリな役割だぜ。」

「そうだな、ジュン。この街で暮らすジャパニーズサーファーやショプで俺達が知らない奴や、行ったことのない店はないからな。いいぜ、永住ライフ。その、なんとかって係、俺達が引き受けたぜ。」

僕の頭の中にゆっくりとその時の記憶がよみがえり、あの夜の二人の真剣なまなざしと、いま目の前に立って僕の顔をじっと見つめている二人の顔が重なってひとつになった。

あの時も、今も、ジュンもノリの視線は真剣だった。本気で今回の大会を成功させたいと思い、そのために自分達にできることを全力でやろうとしている目だった。そして、自分達にピッタリの仕事があったことを二人とも心から喜んでいた。

「ごめんよ、ジュン、ノリ。そんなにも二人が真剣に考えて、それぞれの受け持ちのために行動をしてくれているなんて気がつかなかったよ。二人は自分の仕事を精一杯やろうとしていたのに、からかって悪かったよ。」

僕は二人に本当に失礼なことを言ったと思い、素直に謝った。そして、二人のハートをそこまで理解できていなかった自分をはずかしく思い、目の前の二人とその気持ちに対してもう一度頭を下げた。二人は顔を見合わせるとニヤリと笑い、僕の方を向きなおしてから言った。

「その、なんだ。こうほーってやつはポスターを貼って宣伝をする以外にもしなきゃいけないことがあるんだろ。なんだか説明したり、俺達がやろうとしていることを伝えたりするような。だから、永住ライフも助手として俺達についてこいよ。サーファーズの街中にポスターを貼ってやるぜ。」

僕は、ノリの言葉を聞きながら嬉しくって何度もうなずいた。二人の気持ちが嬉しすぎて
胸が熱くなってなんだかジーンときて涙があふれそうになったので、ほっぺたの内側の肉をおもいきり噛んで我慢しようとしたけれど、店の反対側から僕等の様子を一部始終みていたターニーに目ざとく見つけられて、からかわれた。

「あー永住ライフが泣きそう、泣きそう。」

「そんなことないよ。うるさいなー。」

ターニーがカウンターの上に置いてあったディスプレイ用の真っ赤なビキニを僕に向かってふざけて投げると、パンツの部分がふわりと僕の頭の上に乗った。僕はすぐに気がついてそれを投げ返したけれど、真っ赤なパンツは宙を舞っただけでターニーには届かなかった。マサヤもターニーもジュンもノリも、そして僕も大きな声で笑った。

「すいませーん。シリンダーズさんはこちらでよろしいですか?」

入り口のドアを振り返ると、配達用の手押しの荷台車の上に山のような紙の包みを積んだ配達員さんがこちらを向いて立っていた。その荷台に詰まれた荷物は封をきらなくても中に何が入っているかすぐに分かった。

配達員さんの持ってきた受け取り表にサインをして、急いで茶色の包み紙をやぶると中からは綺麗な波と空と太陽の光のグラデーションの上に、七色の虹の掛け橋がかかったターニーのデザインした絵が書かれたポスターが何十枚、何百枚と飛び出した。美しくデザインされた大会ポスターの一番上にははっきりとした文字でこう書かれていた。

Rainbow of surfers paradise cup
The arch of the rainbow心と心に虹の橋を架けよう

ノリとジュンがバックルームに用意をしていた大きな紙袋に、いま届いたばかりのポスターをみんなで綺麗に丸めて何本も詰めていった。二つの紙袋がいっぱいになるとノリとジュンは僕に目で合図をして勢いよく立ち上がった。

「おーし、永住ライフ。これが全部なくなるまで今日は帰らないからなー。マサヤ、ターニー、ちょっと永住ライフを借りるぜ。それじゃあ、こうほーに行ってくるぜ。」

ジュンとノリが店をでると同時に走りだすので、僕も二人の背中をひっしに追いかけた。小柄だと思っていた二人の背中が今日は随分と大きく頼もしく見えた。

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幸せなオーストラリア永住権への道 146 虹の橋を架けよう

2008-04-16 19:04:26 | Weblog
大会イベントの開催日と場所が決まってからの僕等の行動は早かった、それまではそれぞれが漠然とこんなことをやりたいとだしあっていたアイデアを現実的にしていき、それぞれが責任をもつように各担当を決めていった。

営業時間が終わってからのシリンダーズには毎日、シリンダーズの7人の仲間が集まり遅くまで会議をしていた。イベントの内容はメインとしてオージーとジャパニーズそしてサーファーズという三つのカテゴリーが一緒になったボディーボードの大会をすることに決まった。

当初の予定ではサーフィンの大会も同時に開催しようという意見が多かったのだけれど大会の開催日までに時間的な余裕があまりないことと、今回はシリンダーズの存続をかけてのイベントなのでシリンダーズのメイン商品になっているボディーボードにターゲットをしぼりこむことになった。

ノリとジュンは最後の最後までサーフィンの大会の開催にこだわっていたけれど、何十年もサーフボードシェーパーとしてこのゴールドコーストで仕事をし、誇り高きクラフトマンシップの塊のようなチュックがまでが、今回はボディーボードの大会のみにしぼったほうが良いだろうと言うので今回はその意見にしたがうことにした。

実はボディーボードの大会のみを開催するのには、それ以外にもいくつか理由があった。ジャパニーズだけが参加するようなサーフィンの大会やオージーとジャパニーズの両方が参加できるような小さな大会が、過去にサーファーズパラダイスで開催されたことはあってもボディーボードで、そんな趣旨の大会が開催されたことは今まで一度も無いそうだ。

マークが言うには、誰も今までやっていないことをすること、そしてニッチな分野でトップに立つことがシリンダーズのように大きな資本が無い店には必要なんだそうだ。そして、マークはおもしろそうなことをしているところに人もお金も集まりやすいということをバックルームでマークと僕がたまたま二人になった時に話してくれた。

「いいか永住ライフ。今回のジャパニーズツナミのおかげで今まで俺達に好意的だったボディーボードブランドがみんなそっぽをむいちまったのは、新しくできるジャパニーズショップの方が販売力があり、あちらの方がおもしろそうだと判断したからなんだ。俺達は今までこの街で唯一のボディーボードショップだったから魅力もあったし、奴等にしてもおもしろかったんだ。いきなり態度が変わって薄情だなと思ってもそんなもんなんだ。俺達とメーカーの付き合いはビジネスという名前の掛け橋だからな。

だから、もっと俺達が奴等にとっておもしろくしてやればいいんだ。今回の大会のスポンサーを俺達に態度を変えたボディーボードブランドに頼もうと思っている。今回の大会が注目されればされるほど奴等にとっておもしろくなるんだ。奴等も何年もこの業界で生きているプロだからな、今回の大会がおもしろそうだと判断すれば、きっと協力してくれるはずだ。シリンダーズとそっぽを向いたブランド達の間にもういちど大きな橋をかけるんだ。」

マークが久しぶりにキラキラした目をしながらグイッと長袖シャツの袖をまくりあげた。ここのところ元気がなくて少し小さく見えていたマークが、またいつものようにたのもしく大きく見えた。マークは初めて出会ったときから僕にいろいろなことを教えてくれた。看板や棚の作り方からペンキの塗り方、お店の商品の選び方からお金や伝票の管理の仕方、スタッフとの付き合い方やお店を運営する方法、そして今度はピンチをチャンスに変えることを教えてくれようとしている。

マークの教え方は実体験を通してなので、いつも少しだけ痛いけど、それをやりとげた時にはいつも自分が成長して自分自身を褒めてあげることができるようになっていた。僕はマークとシリンダーズからいろいろなことを教えてもらっている。楽なことには成長はない、痛みを感じた時と夢を感じたときにだけ僕等は成長ができるんだ。

「さすがだね、キャプテンマーク。それに今回はシリンダーズだけでなくサーファーズの海と街、そしてこの街の将来を生きるキッズ達のためにも意味のあるものにしたいんだ。キッズ達が夢中になっているのは大きくて乗りこなすのも難しいサーフボードではなくて、彼等にも手に入りやすくて誰でもすぐに波と一つになることができるボディーボードだからね。」

「お前の純粋な気持ちがきっと最後には、この街にも届くだろう。お前がこの街や国にとって本当に必要な人間ならば、いつかお前を受け入れてくれるはずだ。がんばろうな、永住ライフ。」

マークはニッコリと笑って、いちど天井を見つめて何かを考えるような顔をしてから僕の右の胸板をゲンコツで2回軽く叩いた。そして、力強い眼差しで僕の目をじっとみつめると節くれだった右手を開いて僕の方へ向けた。なんだか少し照れくさかったけれど、それ以上にマークにエネルギーが戻ってきたことと、あたたかいものを感じて嬉しかった。僕はマークの目を同じようにじっと見ながら、僕より少しだけ大きいマークの右手を強く握りしめた。

二人でバックルームからみんなが集まっているショップサイドに戻ると、蛍光灯の光がとてもまぶしく感じられた。そして、眩しいのは蛍光灯のせいだけで無く、ここにあつまっている一人一人が今キラキラと輝いているようにも感じられた。そっとまぶたに手をあててこすってみると和らいだ灯りの下に5人の仲間達が見えて僕の心はやわらかく膨らんだ。

「おーい、そこの師弟コンビはどこに行ってたんだよ。バックルームでいちゃいちゃしてんじゃねーぞー。」

「今、このイベントのキャッチフレーズを決めていたんだよ。ターニーがデザインしてくれたTシャツとポスターにも使おうと思って。」

ジュンが僕をからかい、マサヤが笑いながら手招きをして僕とマークをみんなが座るイスの円の中に座らせた。ターニーがデザインした綺麗な絵の上には紙に書かれて短冊上に切り分けられたいくつかの言葉が並べられていた。

それはどれも素敵な言葉で今回の大会のキャッチフレーズに使うのに問題が無いような気がした。それでも上から下にと視線を下ろしていくのと同時にある一行の言葉が書かれた短冊の上に目がとまった。そして、それを見てからは僕の視線は、もうそこから動かなくなってしまった。

「おーし、永住ライフとマークも戻ってきたことだしそろそろ決を取るぞ。俺がスリー、ツー、ワンと言ったらみんなワンのタイミングで一番気にいった短冊を指差してくれ。いいかい?」

司会役のマサヤが説明をして、みんなの顔をぐるっと一周見渡した。そして深呼吸をして大きく息を吸い込んだ。

「スリー ツー ワン!」

7本の指が一斉に小さなテーブルの上に置かれた紙に向かって振りおろされて一ヶ所で止まった。その時、全ての手と手がぶつかるほど近づいて、みんなが1枚の同じ短冊を指で指していた。

「おおー、みんな同じ意見かぁ。それじゃあ今回のイベントのキャッチフレーズは決定
だな。もう一度念のため永住ライフから発表してもらおう。いいかい?永住ライフ。」

僕は、みんなの指と心が一つの場所を指していたこと、みんなが同じ方向を向いていることがとても嬉しかった。今回のイベントの全ての意味と気持ちがこの言葉の中に込められていて、それを大切に表してるような気がした。

「お互いの心と心に虹の橋をかけよう。The arch of the rainbow。」

僕が口にだして言うと、そこにいるみんなも口にだして言った。
僕等が架ける虹の橋はどこまで届くことができるのだろうか。


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幸せなオーストラリア永住権への道 145 I am just a surfer

2008-04-09 19:04:03 | Weblog
アッキィーと二人で久しぶりに早朝のサーフィンをした日から、僕はまた何かを思い出したように週のうち半分は朝のサーフィンをするようになっていた。昼間は学校に行かなければならないし、学校が終わればシリンダーズの仕事がある。そしてお店の営業時間が終わってからはマークやマサヤ、ターニー、シリンダーズの仲間たちとミーティングと大会を開催するための準備をしている。一日のタイムスケジュールはすでにいっぱいにつまっていた。

それでも早朝にサーフィンをするために眠たい目をこすり、ベットから起きだして海に入るのは体力的にはきつい部分もあるけれど、精神的にはずいぶんと楽になるように思えた。体の疲れは睡眠をとれば癒すことができても精神的な疲れや疲労は眠るだけでは癒すことができないからだ。そして、海を愛して海に接していることが今回の大会を開催していくのにも大切なことのように感じられていた。

僕は海に行くと積極的にローカルのオージーやキッズ達に声をかけて話を聞いた。シリンダーズで働いていること、その前は同じサーファーズパラダイスの街にある大手のサーフショップで働いていたことも手伝って何人もの人が僕の顔を覚えていたり、顔を見かけたことがあると言ってくれた。

それまでも海の中で挨拶をするくらいの関係の人や、逆に特定の中の良い友達はたくさんいたけれど自分から積極的に声をかけて話をしていると、この街のサーファーやボディーボーダー達が今まで以上に身近に感じられるようになった。そして今まで、この街ではどこか、まだお客さんだと感じていた自分自身も、すでにこの街の一部なのだということに気がついた。

シリンダーズを愛することは自分自身を愛することで、サーファーズパラダイスの街を愛することで、初めて自分もこの街の一部なのだと気がつくことができた。そして、そんなことを考えるようになってから、以前はとてつもなく巨大で恐ろしいと感じていた新しい店の出店もそれほどの脅威であるとは感じなくなってきていた。

海の帰りに工事中の新しいお店の前を通ると、お店の内装はほぼ完成しているようだった。白とピンクを基調にしたパステル色の美しい壁、ピカピカと光る大きな鏡に大きなボディーボードラック。それは全てが最初から完成された美しさでどこかにあった綺麗なお店をそのまま切り取ってここに運んできたような、まるでモデルハウスのような美しさだった。

「おーい、このまえのお兄ちゃんじゃないか。ジャパニーズサーファーのお兄ちゃんだろ。」

振り返ると、2週間前にこの場所に日本人経営のお店がオープンすることを教えてくれたワーカーのおじさんが店の前に停めてあったピックアップトラックの運転席に座っていた。僕が笑って挨拶をすると、おじさんも笑いながらポケットからタバコを取り出してうまそうに一服つけて大きな白い煙を空に吐き出した。

「お兄ちゃんが楽しみにしていたサーフショップ。思っていたよりはやくオープンできそうだよ。最初の予定よりもずいぶんと急がされてな、もう内装はほぼ完成だよ。後、ちょいっと手直しすればもう問題ないだろ。よかったなジャパニーズサーファーのお兄ちゃん、お仲間の店がオープンすればあんたらジャパニーズもこの街でサーフィンしやすくなるだろ。」

おじさんはそう言うと、二服目のタバコを深く吸い込んでから、一服吸うかいと言うように僕にもタバコを勧めてくれた。僕はありがとうとお礼を言ってから、丁寧にそれを断った。何も知らないおじさんの好意には感謝をしたけれど、なんだか今はタバコを吸いたい気分ではなかった。

「おじさん、僕はジャパニーズサーファーだけれどその前にただのサーファーなんだ。そして今はこの街のただのサーファーだよ。サーファーズパラダイスのただのサーファーだよ。」

「ほー、そうかい面白いこと言うなぁ。俺は海に入らないからよくわからないけどな。I am just a surferかぁ。それじゃあ、この街はおにいちゃんにとってパラダイスだな。なんせ、この街の名前はサーファーズパラダイスなんだからな。ここはサーファー達の楽園だろ。」

「うん、ここはサーファー達の楽園だよ。おじさん、ありがとう。僕もう行かなきゃ。」

僕はおじさんに手を振ると、脇にサーフボードを抱え直してシェブロンの自分の家までの道を思いっきりダッシュで駆け出した。ゴールドコーストハイウェイを横切る横断歩道を渡り、ネラング川の大橋が見える頃にはボルテージが最高まで上がってきた。

2週間前、始めてあの工事中のお店を見つけたときには僕の心の中にはジャパニーズツナミへの恐怖でいっぱいだった。恐怖を怒りにすりかえて僕の心はビクビクとおびえていた。でも今の僕の心の中はワクワクとした気持ちと、新しいことへの挑戦で興奮さえしていた。僕はシェブロンの大橋の上で大きく一回ジャンプをして、家までの道を脇にかかえたサーフボードと一緒に駆け抜けた。

サーフボードを家の前の芝生の上に静かに置き、玄関のドアを空けて家の中に入るとテーブルの上に1枚の紙切れとチョコレートバーが置いてあるのが見えた。それは今日は朝からの勤務で少しまえに仕事に出かけていったアッキィーからの伝言だった。

永住ライフさんへ。おかえりなさい、さっきマークから電話があって緊急で連絡を取りたいと言っていました。帰ってきたらマークの家に電話をしてください。それでは行って来ます。数十分前のアッキィーより。

僕はアッキィーが置いておいてくれたチョコレートバーの包み紙を歯で噛み切って、かじりつきながらキッチンの脇にある電話のコールボタンを押した。マークから緊急の連絡ってなんだろう。恐妻家のマークが朝から自宅に電話をしてくるように言うなんてめずらしいこともあるなと考えていた。

リーン、リーン、何度目かのコールの後に、騒がしい子供達の声や朝のテレビショーの音と一緒に電話の向こうからマークの大声が聞こえてきた。

「おーい、永住ライフか?朝のサーフィンからやっと帰ってきたのか。早く電話しろとアッキィーに伝えただろ。」

「ごめん、ごめん丁度、いま帰ってきたんだよ。だけど、それにしてもマーク。そんなに大きな声を出さなくてもちゃんと聞こえているよ。マークの家はさわがしいかもしれないけれど、こっちは静かなんだから。」

「ああ、そうかじゃあ普通に話すぞ。これで聞こえるか?」

マークはちょっと声のトーンを落として話しはじめた。まわりの音に少しだけかき消されたけれどマークの声はしっかりと聞き取ることができた。

「うん、聞こえるよマーク。話の続きをよろしく。」

「ああ、さっきチュックから電話があってな。普通はこんなに日程がせまっていたらどうにもならないんだがな、チュックが昔の顔をきかせてずいぶんと動き回ってくれたんだ。いいか、永住ライフ。大会の場所と日時が決まったぞ。ちょうど一ヶ月半後の25日の日曜日だ、場所はサーファーズパラダイスの南側ブロードビーチとの中間あたりだ。」

僕はビックリして口にくわえていたチョコレートバーを吐き出した。両手を開けて、肩と耳で挟んでいた受話器を両手で掴みなおして、耳に大事に当てて持ち直し、もう一度マークに問いただした。

「なに!聞こえないよマーク。もう一度大きな声で言ってくれよ。」

「だから!大会の日時と場所が決まったと言ったんだぁ。場所はサーファーズパラダイスの南側、8週間後の日曜日だぁ。聞こえたかぁ。」

「ああ、もう一度言ってよ!マーク。」

「だからぁー、大会の場所と日時が決まったんだって。おい、永住ライフ。お前、本当はもう聞こえてるんだろ!」

「やったぁーマーク!最高だ、いいニュースをありがとう。」

「ほれみろ、やっぱり聞こえてたんだ。」

受話器からマークの怒っているような、やっぱり喜んでいるようなぼやきが聞こえてきた。僕はそれから何度も喜びの声をあげ、マークは受話器の向こうで嬉しそうに微笑んでいた。


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幸せなオーストラリア永住権への道 144 空と海と太陽からのウィンク

2008-04-02 19:01:26 | Weblog
新しい朝が僕等の暮らすサーファーズパラダイスの街にやってきた。ここ数日間はシリンダーズに毎日遅くまで残ってイベントのためのアイデアを出し合ったり、それぞれが家で考えてきた、このイベントでやりたいことを話し合ったりで朝の早い時間に起きることができなかった。一昨日はイベントのTシャツを作りたいとデザイン画を持ってきてくれたターニーと一緒に夜中まで話していたし、昨日はおにぎりを差し入れてくれたノリと一緒に1時過ぎまでお店に残っていた。

昨夜、帰宅したあとに自分の力では太陽が昇るのと一緒にベットから抜け出すことは難しいだろうと思って、リビングのテーブルの上にアッキィーへの伝言を残しておいた。

おはよう、アッキィー。お願いがあるんだ、最近朝のサーフィンをさぼっているけれど今日はどうしても朝の太陽と一緒に金色の波の上を滑りたいんだ。ということで、この伝言を読んだら、僕の部屋に直行してドアを蹴破ってベットの上で死んだように寝ている僕を起こして一緒にサーフィンに連れていってください。数時間前の永住ライフより。

ドン、ドン、ドン。

「おはようございまーす!朝練の時間でぇーす。永住ライフさん、起きてくださぁーい。」

静かで穏やかな気持ちの良い眠りの世界を楽しんでいた僕の夢の中に、ボードショーツ1枚で手にはなぜか拡声器を持ったアッキィーが大声で何かを叫びながら突然に乱入してきた。そして、帰りたくないと逃げようとする僕の首根っこをつかんで無理やりにどこかに連れていこうとする。

「なんだよ、やめてよ、アッキィー。うるさいよ、もうちょっとこのままいさせてくれよ。」

あたたかい繭に包まれているような僕の体に巻きついているシーツをアッキィーが力いっぱいに剥ぎ取った。心地よい空間から突然に現実に引き戻されて、寒いやら、頭にくるわで僕は思わず大声でさけんでいた。

「やめてくれよ!」

次の瞬間、僕から剥ぎ取ったシーツを丸めたアッキィーが僕よりもさらに大きな声をあげながらぐずぐずとしている僕の体をシーツで作った大きなボクシンググローブで何度も何度も叩き始めた。

「なにがやめてくださいですか。勝手に伝言なんか残して、起こしてくれと頼んでおいて。何が金色の太陽ですか、何が波の上を滑りたいですか。この怠け者の永住ライフ、早く起きろ。」

「誰が怠け者だよ。しかも先輩に向かって呼び捨てかっ。」

僕はアッキィーに叩かれた腹筋や背中の衝撃よりも、怠け者と呼ばれた上に呼び捨てで呼ばれたことに反応して一気に目が覚めた。アッキィーは大声を出して急に起き上がった僕の寝ぼけ顔と行動が可笑しかったらしく、手を叩いて笑っていた。そんなアッキィーを見ていたらだんだんと目が覚めていくのと同時に、起こしてくれと頼んでおきながら逆ギレしている自分自身が可笑しくて、いつのまにか僕も笑っていた。

「よーし、永住ライフ。やっと起きたかぁ。ボードショーツに着替えて5分後に玄関に集合だからな、ボードとリーシュコードも忘れるなよ。わかったか、この怠け者。」

アッキィーは軍隊の鬼教官のようにわざと大声でそう言うと、手に巻きついていたシーツをおおげさにベットの上に叩きつけて回れ右をして部屋から出て行った。アッキィーの振り返った背中越しにサンキューと声をかけると、こちらを振り返りもせずに右手を上げて階段を下りていったのがさらにおかしかった。

僕は鬼教官にこれいじょう怒鳴られないように急いでベットから飛び起きて、顔を洗いボードショーツに着替えて玄関に集合した。教官はすでに家の前の芝生の上に僕のサーフボードを出して準備をしてくれていたのですんなりと海に向かうことができた。二人で並んで渡るシェブロンの大橋の下を流れるネラング川は、今朝も光の粒をまわりにたくさん輝かせてキラキラと輝いていた。

サーファーズの正面の海に着くと、夜明け前に家を抜け出してきたキッズ達がすでに何人もいてインサイドのダンパー気味の波をすべりエルロロという技を決めていた。少し前まではあの中にシャーキィーがいて、他のだれよりも美しく華麗に技を決めていたのを思い出した。そんなシャーキィーも今ではボディーボード雑誌に毎回、顔をだすようになりすっかりキッズ達のヒーローになっていた。

最近は遠征に行った先のマーガレットリバーで知り合ったプロのボディーボーダーの家に長期ステイをして、さらに技に磨きをかけながら大会に出場して活躍をしているらしい。まぁ、実はその情報も先週読んだボディーボードマガジンに書いてあった情報で雑誌の中のシャーキィーはあの頃と同じサメのような八重歯と天使のような笑顔で微笑んでいた。

今日のサーファーズの海はかなり沖の方で波が割れていて頭オーバーのサイズの良い波だった。それでも遠く続く海の先は、朝の太陽のまぶしい光に包まれて全てが金色に輝いて、いったいどこまでが海でどこまでが空なのかわからないほどだった。

僕とアッキィーが沖にパドルアウトするとビーチからは眩しくてよく見えなかったけれどすでに10人以上のオージーサーファー達がラインを作って波を待っていた。おはようと声をかけると、ボードの上に座りうねりを待ちながらはるか遠くを見つめていたサーファー達のほとんどが、おはようと挨拶を返してくれた。僕は心の中で、おはようサーファーズパラダイス、おはよう海と波と太陽、と周りにあるすべてに感謝をした。

いくつもの波をシェアしながら、時にはゴーゴーと声をかけて波をゆずり合いながら朝の気持ちの良い時間が流れていく。朝のサーフィンと海が気持ち良いことは頭では覚えていたけれど、こんなに素晴らしい時間が流れていることを少しの間、心と体は忘れかけていた。

いったいどのくらいの時間、波を追いかけていたのだろう。気がつくと太陽ははるか空の上の方まで上ってきて、まばらだった海の中にも沢山のサーファー達が入ってきていた。その中にはオージーも日本人もそれ以外の人種もいて、丘の上ではそれぞれの国籍やコミュニティーがあるのかもしれないけれど海の中では僕等はサーファーという一つの生き物だった。

次の瞬間、金色に輝いていた海と空と、海に入る時に見たキッズ達と、雑誌の中で見たシャーキィーの笑顔、そして今海の中に浮かぶ沢山のサーファー達の姿が僕のイメージの中で重なって一つにはじけた。そして僕は嬉しくて思わず笑ってしまった。それは隣で波待ちをしていたアッキィーが驚いて、こちらを振り返るほどだった。

「アッキィー、今度のイベントで僕がやりたいことが見つかったよ。ナショナリティーを越えて海を愛する人たちが仲良くなれる大会をしたい。そして集まったお金はシリンダーズのためだけじゃなくて半分はこの町のキッズ達のためになることに使おう。」

するとサーファーズパラダイスの海と空と太陽が、いっせいに僕にウィンクをしてくれたように感じた。

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