アンドレアス、それは僕に初めてできた外国人の親友だった。僕等はサーフィンをしているときに海で知り合い、二人の付き合いは僕がアンドレアスにサーフィンを教え、奴は僕に英語を教えるという約束から始まった。それから僕等はほとんど毎日一緒にサーフィンをして、よく遊び、1ヶ月後には二人でアパートを借りて暮らし始めた。
大雑把で乱暴ものだけれど、とても心の優しいノルウェー人のアンドレアスと僕は沢山ケンカもしたけれど、お互いに心の中では相手をリスペクトしながら付き合える、兄弟のような絆で結ばれていた。奴がお母さんの病気の付き添いをするためにノルウェーに帰ると決めた時には、人間がさらに成長をしていくためには時には何かを手放して次のステージに進んでいかなければならないことを感じた。
「マサヤはアンドレアスを知っているの?」
僕は波を追いかけることも、遠くから入ってくるうねりを見つけることも、海の中でのサーフィンの全てを放棄して、マサヤの側に戻った。
「ああ、知ってるよ。仲の良い友達だったわけじゃないけれど、彼とはグリフィスのジムで何度か顔を合わせたことがあったんだ。そして、そして。」
マサヤも僕と同じように波を見つけることも、ボードの上に座りながら入ってきたうねりに対していつでも飛び出していけるように心と体を準備させていることも、そのすべて辞めてしまっていた。ただボードの上に座った一人の素の状態の人間になっていた。サーフィンをするという海や波に対しての臨戦態勢が全て抜けてしまい、サーファーが海に入っている時に放つ独特のオーラーのようなものが消えてしまっていた。
「マサヤ、ちょっとビーチに上がって話そうか?」
マサヤも僕の意見に賛成して、次に入ってきた小さな波にボードの上に腹ばいに寝たまま、波に背中を押されるようにしてビーチまで戻った。そして、ビーチの入り口の階段の脇にある小さな木がつくった日陰の下に入り僕等は座って話し始めた。
「アンドレアスのことはグリフィスのジムで見かけていたんだ、ぬけるようなブロンドの髪に青い瞳の色をしていたから、きっとこいつはヨーロッパから来ているんだろうなと思ったんだ。そして、何度か同じノルウェーから来ている友達と話しているのを見たことがあったから、ああやっぱりスカンジナビアの人間だなと思ったんだよ。」
「スカンジナビアの人間だとなんなの?」
「これは俺の偏見かもしれないし、もし失礼だったら謝るけれど。日本人って海外にいても必ず日本人ばかりでまとまっているだろ、そして他の国の人間のコミュニティーにはほとんど入っていかない。俺の中に半分流れている日本人の血がそうさせるのかもしれないけれど、オーストラリアで生まれた俺にはそれが変なコンプレックスになって、そんな日本人を見ていると悲しくなるんだ。それに、スカンジナビアの人間はよく似ているんだよ。ノルウェーやスゥエーデンから来た同士で、いつもつるんでるんだ。」
僕は、マサヤの話を聞いて一瞬ムカッとして反論をしようと思ったけれど、マサヤ自身がお父さんからもらったルーツを否定することは本当は自分自身を否定していて、自分を受け入れることができていないんだということに気がついて、マサヤの話を最後まで聞いてみることにした。
「だから、あんまり良い印象はなかったんだ。彼もよくジムに来ていたし、俺も週に数回は行っていたから顔は知っていたんだけどね。ある日、アンドレアスのほうから俺に話しかけてきんだ。それもいきなり、お前は日本人かって。なんて失礼なやつだと思ったよ。初めて話しかけるのに、それはないだろってね。
俺は、頭にきたんだ。それで質問には答えずに逆に言ってやったんだ。お前はどうせノルウェー人だろってね。そしたら、いきなり大きな声で笑い始めて自分の足に入っているタトゥーを見せるんだよ。」
「あっ、僕の時とおんなじだ。僕がアンドレアスと初めて出会ったときも、日本人だと応えたら嬉しそうに足のタトゥーを見せてきたんだ。龍って文字が大きく入ってるんだよね。」
「そう、そのとおり。彼の足にはドラゴンって意味の漢字が入っていたらしいんだ。でも、俺にはそんな難しい漢字は分からなかった。だから、俺には意味がわからない、俺には日本人の血は半分しか流れてないって言ってやったんだ。するとアンドレアスは、これは日本語でドラゴンという意味なんだと勝手に説明をすると、またバーベルのあるコーナーの方に戻ってトレーニングを始めたんだ。なんて嫌なやつだと思ったよ。」
僕は思わず声を出して笑ってしまった。それは僕が知っている、アンドレアスそのままだったからだ。きっとアンドレアスには何の悪気もなくて、自分のタトゥーの意味がわかりそうな人間を見つけたから、話し掛けたかっただけだろう。それに、もしかしたらそれは僕とアンドレアスが一緒に暮らし始めた後のことだったのかもしれない。アンドレアスは僕というフィルターを通して日本人を見ていたし、僕のことを好きになるのと同時に日本や日本人のことに興味を持って好きになっていたからだ。
僕が声を出して笑ったのでマサヤは少し不満そうな顔をしたけれど、すぐに機嫌を取り戻して話を続けた。
「その後も何度かジムで顔を見たけれど挨拶もしなかったな。実際、俺は彼をさけていたんだ。そして、ある小さな試験が終わった週末に大学の友達3人でナイトクラブに出かけたんだ。ナイトクラブに行く前に友達の部屋でビールを5,6本飲んでエンジンをまわしてから行ったこともあって、深夜になってクラブが盛り上がるころには俺も友達もずいぶんと酔っていたんだな。仲間の誰かが、そのナイトクラブにいたカップルの女に声をかけたとか、かけないとかくだらないことでケンカになっちゃたんだよ。
軽い小競り合いになって、ナイトクラブのセキュリティーに止められて店の外に出されたんだけど、しばらくすると店の中で小競り合いをしていた奴が数人の仲間と一緒に店からでてきて、裏道でまたケンカがはじまったんだ。こっちは酔っ払いが3人だし、俺以外はもう戦意喪失でケンカを止めるのに必死で俺だけ二人相手に殴られていたんだ。そしたら、そこに急にアンドレアスが現れたんだ。
大きな声で叫んだと思うと俺の上に乗っかっていた奴を引っぺがして、もう一人の奴にパンチをいれたと思ったらあとは俺を最後まで殴っていた奴をボコボコだよ。俺は何が起きたのかよく分からなかった、そこに誰かが呼びに行ったのか警察がやってきて逆にアンドレアスを投げ飛ばして押さえつけ、そのまま全員パトカーの後ろの鉄格子みたいなボックスに押し込まれて、そのまま警察に一泊だよ。
つぎの朝、釈放される前に奴に会える機会があったんだ。その時になんで俺を助けてくれたのか聞いてみたんだ。そしたら、アンドレアスはこう答えたんだ。
俺には日本人の兄弟がいる。お前の半分は日本人なんだろ?」
胸の内側から懐かしさと、温かさが一気にこみ上げてきた。それは、もう1年近く前の事で僕が知らない出来事だった。アンドレアスは酔うとよくケンカをしてケガをして帰ってくることもあった。そのたびに僕はあきれて注意をしていた。でも、あの日のあの夜にアンドレアスがそんな理由でケンカをしていたのを僕は知らなかった。
「マサヤ、それって9月頃のことじゃない?サーファーズの警察に泊められて引き受け人が行かないと帰らせてもらえなかったよね。」
「ちょっと、まてよ。ああ、たしかに9月頃の話だ。」
「その事件があった日の朝に、家に警察から電話があったんだ。アンドレアスは警察にいる、身元引受人として警察に来てくださいって。」
「それじゃあ、アンドレアスが言っていた。日本人の兄弟って、もしかして永住ライフのことなのか?」
「僕等は毎日一緒にサーフィンをして、ケンカもして、兄弟のように暮らしていた。僕はアンドレアスをノルウェーの兄弟だと思っているし、アンドレアスもそう思っていてくれたはずだよ。」
なんて不思議なつながりなんだろう、アンドレアスが時間と空間を越えて僕とマサヤにパスを送ってくれているように感じた。僕とマサヤが自分が国に帰って数ヶ月後に出会うなんてアンドレアスは想像していただろうか。マサヤに始めて出あったときに感じた、懐かしい仲間と再会しような不思議な感覚はアンドレアスとマサヤが繋がっていたからなのかもしれない。
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「マサヤはアンドレアスを知っているの?」
僕は波を追いかけることも、遠くから入ってくるうねりを見つけることも、海の中でのサーフィンの全てを放棄して、マサヤの側に戻った。
「ああ、知ってるよ。仲の良い友達だったわけじゃないけれど、彼とはグリフィスのジムで何度か顔を合わせたことがあったんだ。そして、そして。」
マサヤも僕と同じように波を見つけることも、ボードの上に座りながら入ってきたうねりに対していつでも飛び出していけるように心と体を準備させていることも、そのすべて辞めてしまっていた。ただボードの上に座った一人の素の状態の人間になっていた。サーフィンをするという海や波に対しての臨戦態勢が全て抜けてしまい、サーファーが海に入っている時に放つ独特のオーラーのようなものが消えてしまっていた。
「マサヤ、ちょっとビーチに上がって話そうか?」
マサヤも僕の意見に賛成して、次に入ってきた小さな波にボードの上に腹ばいに寝たまま、波に背中を押されるようにしてビーチまで戻った。そして、ビーチの入り口の階段の脇にある小さな木がつくった日陰の下に入り僕等は座って話し始めた。
「アンドレアスのことはグリフィスのジムで見かけていたんだ、ぬけるようなブロンドの髪に青い瞳の色をしていたから、きっとこいつはヨーロッパから来ているんだろうなと思ったんだ。そして、何度か同じノルウェーから来ている友達と話しているのを見たことがあったから、ああやっぱりスカンジナビアの人間だなと思ったんだよ。」
「スカンジナビアの人間だとなんなの?」
「これは俺の偏見かもしれないし、もし失礼だったら謝るけれど。日本人って海外にいても必ず日本人ばかりでまとまっているだろ、そして他の国の人間のコミュニティーにはほとんど入っていかない。俺の中に半分流れている日本人の血がそうさせるのかもしれないけれど、オーストラリアで生まれた俺にはそれが変なコンプレックスになって、そんな日本人を見ていると悲しくなるんだ。それに、スカンジナビアの人間はよく似ているんだよ。ノルウェーやスゥエーデンから来た同士で、いつもつるんでるんだ。」
僕は、マサヤの話を聞いて一瞬ムカッとして反論をしようと思ったけれど、マサヤ自身がお父さんからもらったルーツを否定することは本当は自分自身を否定していて、自分を受け入れることができていないんだということに気がついて、マサヤの話を最後まで聞いてみることにした。
「だから、あんまり良い印象はなかったんだ。彼もよくジムに来ていたし、俺も週に数回は行っていたから顔は知っていたんだけどね。ある日、アンドレアスのほうから俺に話しかけてきんだ。それもいきなり、お前は日本人かって。なんて失礼なやつだと思ったよ。初めて話しかけるのに、それはないだろってね。
俺は、頭にきたんだ。それで質問には答えずに逆に言ってやったんだ。お前はどうせノルウェー人だろってね。そしたら、いきなり大きな声で笑い始めて自分の足に入っているタトゥーを見せるんだよ。」
「あっ、僕の時とおんなじだ。僕がアンドレアスと初めて出会ったときも、日本人だと応えたら嬉しそうに足のタトゥーを見せてきたんだ。龍って文字が大きく入ってるんだよね。」
「そう、そのとおり。彼の足にはドラゴンって意味の漢字が入っていたらしいんだ。でも、俺にはそんな難しい漢字は分からなかった。だから、俺には意味がわからない、俺には日本人の血は半分しか流れてないって言ってやったんだ。するとアンドレアスは、これは日本語でドラゴンという意味なんだと勝手に説明をすると、またバーベルのあるコーナーの方に戻ってトレーニングを始めたんだ。なんて嫌なやつだと思ったよ。」
僕は思わず声を出して笑ってしまった。それは僕が知っている、アンドレアスそのままだったからだ。きっとアンドレアスには何の悪気もなくて、自分のタトゥーの意味がわかりそうな人間を見つけたから、話し掛けたかっただけだろう。それに、もしかしたらそれは僕とアンドレアスが一緒に暮らし始めた後のことだったのかもしれない。アンドレアスは僕というフィルターを通して日本人を見ていたし、僕のことを好きになるのと同時に日本や日本人のことに興味を持って好きになっていたからだ。
僕が声を出して笑ったのでマサヤは少し不満そうな顔をしたけれど、すぐに機嫌を取り戻して話を続けた。
「その後も何度かジムで顔を見たけれど挨拶もしなかったな。実際、俺は彼をさけていたんだ。そして、ある小さな試験が終わった週末に大学の友達3人でナイトクラブに出かけたんだ。ナイトクラブに行く前に友達の部屋でビールを5,6本飲んでエンジンをまわしてから行ったこともあって、深夜になってクラブが盛り上がるころには俺も友達もずいぶんと酔っていたんだな。仲間の誰かが、そのナイトクラブにいたカップルの女に声をかけたとか、かけないとかくだらないことでケンカになっちゃたんだよ。
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「マサヤ、それって9月頃のことじゃない?サーファーズの警察に泊められて引き受け人が行かないと帰らせてもらえなかったよね。」
「ちょっと、まてよ。ああ、たしかに9月頃の話だ。」
「その事件があった日の朝に、家に警察から電話があったんだ。アンドレアスは警察にいる、身元引受人として警察に来てくださいって。」
「それじゃあ、アンドレアスが言っていた。日本人の兄弟って、もしかして永住ライフのことなのか?」
「僕等は毎日一緒にサーフィンをして、ケンカもして、兄弟のように暮らしていた。僕はアンドレアスをノルウェーの兄弟だと思っているし、アンドレアスもそう思っていてくれたはずだよ。」
なんて不思議なつながりなんだろう、アンドレアスが時間と空間を越えて僕とマサヤにパスを送ってくれているように感じた。僕とマサヤが自分が国に帰って数ヶ月後に出会うなんてアンドレアスは想像していただろうか。マサヤに始めて出あったときに感じた、懐かしい仲間と再会しような不思議な感覚はアンドレアスとマサヤが繋がっていたからなのかもしれない。
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