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5つの目標を作り始まった、永住LIFEの幸せなオーストラリア永住権への道

幸せなオーストラリア永住権への道 105 時間と空間を越えて

2007-06-25 16:50:54 | Weblog
アンドレアス、それは僕に初めてできた外国人の親友だった。僕等はサーフィンをしているときに海で知り合い、二人の付き合いは僕がアンドレアスにサーフィンを教え、奴は僕に英語を教えるという約束から始まった。それから僕等はほとんど毎日一緒にサーフィンをして、よく遊び、1ヶ月後には二人でアパートを借りて暮らし始めた。

大雑把で乱暴ものだけれど、とても心の優しいノルウェー人のアンドレアスと僕は沢山ケンカもしたけれど、お互いに心の中では相手をリスペクトしながら付き合える、兄弟のような絆で結ばれていた。奴がお母さんの病気の付き添いをするためにノルウェーに帰ると決めた時には、人間がさらに成長をしていくためには時には何かを手放して次のステージに進んでいかなければならないことを感じた。

「マサヤはアンドレアスを知っているの?」

僕は波を追いかけることも、遠くから入ってくるうねりを見つけることも、海の中でのサーフィンの全てを放棄して、マサヤの側に戻った。

「ああ、知ってるよ。仲の良い友達だったわけじゃないけれど、彼とはグリフィスのジムで何度か顔を合わせたことがあったんだ。そして、そして。」

マサヤも僕と同じように波を見つけることも、ボードの上に座りながら入ってきたうねりに対していつでも飛び出していけるように心と体を準備させていることも、そのすべて辞めてしまっていた。ただボードの上に座った一人の素の状態の人間になっていた。サーフィンをするという海や波に対しての臨戦態勢が全て抜けてしまい、サーファーが海に入っている時に放つ独特のオーラーのようなものが消えてしまっていた。

「マサヤ、ちょっとビーチに上がって話そうか?」

マサヤも僕の意見に賛成して、次に入ってきた小さな波にボードの上に腹ばいに寝たまま、波に背中を押されるようにしてビーチまで戻った。そして、ビーチの入り口の階段の脇にある小さな木がつくった日陰の下に入り僕等は座って話し始めた。

「アンドレアスのことはグリフィスのジムで見かけていたんだ、ぬけるようなブロンドの髪に青い瞳の色をしていたから、きっとこいつはヨーロッパから来ているんだろうなと思ったんだ。そして、何度か同じノルウェーから来ている友達と話しているのを見たことがあったから、ああやっぱりスカンジナビアの人間だなと思ったんだよ。」

「スカンジナビアの人間だとなんなの?」

「これは俺の偏見かもしれないし、もし失礼だったら謝るけれど。日本人って海外にいても必ず日本人ばかりでまとまっているだろ、そして他の国の人間のコミュニティーにはほとんど入っていかない。俺の中に半分流れている日本人の血がそうさせるのかもしれないけれど、オーストラリアで生まれた俺にはそれが変なコンプレックスになって、そんな日本人を見ていると悲しくなるんだ。それに、スカンジナビアの人間はよく似ているんだよ。ノルウェーやスゥエーデンから来た同士で、いつもつるんでるんだ。」

僕は、マサヤの話を聞いて一瞬ムカッとして反論をしようと思ったけれど、マサヤ自身がお父さんからもらったルーツを否定することは本当は自分自身を否定していて、自分を受け入れることができていないんだということに気がついて、マサヤの話を最後まで聞いてみることにした。

「だから、あんまり良い印象はなかったんだ。彼もよくジムに来ていたし、俺も週に数回は行っていたから顔は知っていたんだけどね。ある日、アンドレアスのほうから俺に話しかけてきんだ。それもいきなり、お前は日本人かって。なんて失礼なやつだと思ったよ。初めて話しかけるのに、それはないだろってね。

俺は、頭にきたんだ。それで質問には答えずに逆に言ってやったんだ。お前はどうせノルウェー人だろってね。そしたら、いきなり大きな声で笑い始めて自分の足に入っているタトゥーを見せるんだよ。」

「あっ、僕の時とおんなじだ。僕がアンドレアスと初めて出会ったときも、日本人だと応えたら嬉しそうに足のタトゥーを見せてきたんだ。龍って文字が大きく入ってるんだよね。」

「そう、そのとおり。彼の足にはドラゴンって意味の漢字が入っていたらしいんだ。でも、俺にはそんな難しい漢字は分からなかった。だから、俺には意味がわからない、俺には日本人の血は半分しか流れてないって言ってやったんだ。するとアンドレアスは、これは日本語でドラゴンという意味なんだと勝手に説明をすると、またバーベルのあるコーナーの方に戻ってトレーニングを始めたんだ。なんて嫌なやつだと思ったよ。」

僕は思わず声を出して笑ってしまった。それは僕が知っている、アンドレアスそのままだったからだ。きっとアンドレアスには何の悪気もなくて、自分のタトゥーの意味がわかりそうな人間を見つけたから、話し掛けたかっただけだろう。それに、もしかしたらそれは僕とアンドレアスが一緒に暮らし始めた後のことだったのかもしれない。アンドレアスは僕というフィルターを通して日本人を見ていたし、僕のことを好きになるのと同時に日本や日本人のことに興味を持って好きになっていたからだ。

僕が声を出して笑ったのでマサヤは少し不満そうな顔をしたけれど、すぐに機嫌を取り戻して話を続けた。

「その後も何度かジムで顔を見たけれど挨拶もしなかったな。実際、俺は彼をさけていたんだ。そして、ある小さな試験が終わった週末に大学の友達3人でナイトクラブに出かけたんだ。ナイトクラブに行く前に友達の部屋でビールを5,6本飲んでエンジンをまわしてから行ったこともあって、深夜になってクラブが盛り上がるころには俺も友達もずいぶんと酔っていたんだな。仲間の誰かが、そのナイトクラブにいたカップルの女に声をかけたとか、かけないとかくだらないことでケンカになっちゃたんだよ。

軽い小競り合いになって、ナイトクラブのセキュリティーに止められて店の外に出されたんだけど、しばらくすると店の中で小競り合いをしていた奴が数人の仲間と一緒に店からでてきて、裏道でまたケンカがはじまったんだ。こっちは酔っ払いが3人だし、俺以外はもう戦意喪失でケンカを止めるのに必死で俺だけ二人相手に殴られていたんだ。そしたら、そこに急にアンドレアスが現れたんだ。

大きな声で叫んだと思うと俺の上に乗っかっていた奴を引っぺがして、もう一人の奴にパンチをいれたと思ったらあとは俺を最後まで殴っていた奴をボコボコだよ。俺は何が起きたのかよく分からなかった、そこに誰かが呼びに行ったのか警察がやってきて逆にアンドレアスを投げ飛ばして押さえつけ、そのまま全員パトカーの後ろの鉄格子みたいなボックスに押し込まれて、そのまま警察に一泊だよ。

つぎの朝、釈放される前に奴に会える機会があったんだ。その時になんで俺を助けてくれたのか聞いてみたんだ。そしたら、アンドレアスはこう答えたんだ。

俺には日本人の兄弟がいる。お前の半分は日本人なんだろ?」

胸の内側から懐かしさと、温かさが一気にこみ上げてきた。それは、もう1年近く前の事で僕が知らない出来事だった。アンドレアスは酔うとよくケンカをしてケガをして帰ってくることもあった。そのたびに僕はあきれて注意をしていた。でも、あの日のあの夜にアンドレアスがそんな理由でケンカをしていたのを僕は知らなかった。

「マサヤ、それって9月頃のことじゃない?サーファーズの警察に泊められて引き受け人が行かないと帰らせてもらえなかったよね。」

「ちょっと、まてよ。ああ、たしかに9月頃の話だ。」

「その事件があった日の朝に、家に警察から電話があったんだ。アンドレアスは警察にいる、身元引受人として警察に来てくださいって。」

「それじゃあ、アンドレアスが言っていた。日本人の兄弟って、もしかして永住ライフのことなのか?」

「僕等は毎日一緒にサーフィンをして、ケンカもして、兄弟のように暮らしていた。僕はアンドレアスをノルウェーの兄弟だと思っているし、アンドレアスもそう思っていてくれたはずだよ。」

なんて不思議なつながりなんだろう、アンドレアスが時間と空間を越えて僕とマサヤにパスを送ってくれているように感じた。僕とマサヤが自分が国に帰って数ヶ月後に出会うなんてアンドレアスは想像していただろうか。マサヤに始めて出あったときに感じた、懐かしい仲間と再会しような不思議な感覚はアンドレアスとマサヤが繋がっていたからなのかもしれない。



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幸せなオーストラリア永住権への道 104 不思議な糸によって

2007-06-19 20:46:44 | Weblog
僕はマサヤと待ち合わせの約束をした古いアパートの前にやってきた。このアパートは僕等のお店の前にある大きなホテルとバンジージャンプの間にある建物で、僕がサーファーズパラダイスの街にやってきたばかりの頃に最初にできた友達が住んでいたアパートだった。

古いながらも上の方の階の部屋のベランダからは正面の海を見渡すことができて、朝起きて自分の部屋から波のサイズやコンディションをチェックすることができる最高のロケーションだった。少しすると、マサヤが派手な色彩で有名なオージーだけに人気のあるサーフブランドのボードショーツをはいて、アパートの入り口のドアから外にでてきた。

「おはよう永住ライフ、歩いてきたんだ?ていうことは今日は正面でサーフィンだね。部屋から波をチェックしてみたけれど胸から頭くらいのサイズで十分に遊べる感じだったよ。」

「おはようマサヤ。今日は学校があるから他のポイントまで行っている時間がないんだ。正面の海でもいいかな?」

「OK、全然問題ないよ。俺は車を持っていないからほとんど正面で入っているし、ここの波は大好きだよ。」

マサヤが持っているサーフボードを見ると、ノーズのあたりから先3センチくらいが真横に切れた状態で無くなっていた。多分、ビーチで入っている時に波に巻かれて砂の中に刺さってしまったのか、バーレーヘッズやスナッパーロックスのような岩があるポイントで壊してしまったかのどちらかだろうと思った。マサヤは顔は日本人とオーストラリア人の混ざったエキゾチックな顔立ちをしているけれど、ボードショーツのセンスを見るとやはりゴールドコーストで育ったオージーなのだと思った。

僕とマサヤはサーフボードを脇に抱えながらビーチ沿いの遊歩道、エスプラネードにでて、波が割れている左側のポイントの方を目指して歩いていった。朝のエスプラネードは犬を連れて散歩をしている人や、胸に心拍数を測る機械を付けてジョギングをしている人たちが行き交い、早朝の新鮮な空気と太陽の光を受けてキラキラと輝いているように感じた。

波が割れ始めるピークの正面からビーチに続く階段を下りると、マサヤは急に走しりだしたかと思うと、波打ち際でサーフボードを海面にすべるように投げ入れて自分もその上にジャンプして飛び乗り、器用に波打ち際から海の中へボードと一緒に滑って乗っていった。そして、すぐにボードの上に横になると波のピークを目指して勢いよくパドルをして沖に行ってしまった。

スキムボートと言って、波打ち際でレモンのような形をした薄い板を投げ入れて乗る遊びがあるけれど、サーフボードを使って上手に滑っていくのを見るのは初めてだった。失敗して、サーフボードが壊れてしまうんじゃないかと心配して今まで挑戦したことはなかったけれどマサヤのクールな海の入り方を目の前で見ると、僕も是非、やってみたいと思った。

僕はすぐに海に入りたい気持ちを抑えて砂浜の上に寝転んでストレッチを始めた。日本にいるときから海に入る前にはストレッチをする習慣が付いていたし、去年ひざのじん帯を伸ばしてからは余計念入りにするようになっていた。でも、ほとんど毎日、海に入っているようなオージーのサーファー達が準備体操しているのを見たことがなかった。マサヤが何の準備体操もしないで海に飛び込んでいったことも、彼がゴールドコーストで育ったオージーサーファーなんだということをより強く感じさせた。

ストレッチを終えて、足首にリーシュコードを巻きつけて海に入っていくと沖のほうから派手なボードショーツを履いたサーファーがレギュラーサイドの波に乗りながら走っているのが見えた。マサヤだ!波のボトムから角度をつけてリップに板を当て込み、僕がいるインサイドまで綺麗に乗りつないで最後にクルンと1回転するように波の上からプルアウトをして降りた。

「おーい永住ライフ、早く来いよ。結構、いい波だぜ。」

「今行くよ、マサヤ。今の、いい波だったね。」

僕も海に上にボードを浮かべて腹ばいになり、パドリングをしながら先に沖に向けて戻っていくマサヤの後を追いかけた。2箇所ほど波が厳しく割れていて、沖にでるのが少し厳しい場所があったけれど一番沖まで出ると今日は風が無いので、海面がやわらかいゼリーのように丸く平らで朝の太陽の光を反射して金色に輝いていた。僕は優しいものに包まれているような気分になった。

「ねぇ、マサヤ。今度は僕が行くよ。」

左の奥の方から、平らな海面の内側からだんだんと盛り上がるように綺麗なうねりが大きくなりながら僕等の方に向かって近ずいてきた。僕は波が割れ始める場所を予測して勢いよくパドルをして、その大きな1枚のうねりが崩れ始める少し手前の最高のポジションを取ることができた。

一瞬、後ろを振り返って波のピークの位置と方向を確認して波に乗るために勢いよくパドリングを始める。僕とサーフボードのスピードが加速して波のスピードに追いつく、体がボードにのったまま上に引き上げられるのと同時に両方の手でボードについて押し込むと一気にボードが前に向かって走り出す。僕はボードの上に立ち上がるのと同時に深くターンをして再び波のトップへと駆け上がる、アップスとダウンスをくりかえしながらスピードをつけて波のトップで弧を描くように水のスプレーを飛ばす。

1本の波を最後まで丁寧に乗りつないで、またマサヤのいる沖のラインまでもどってくるとマサヤは楽しそうに笑いながら、手のひらを出していたので僕はすぐそばまで近ずいて、ボードの上に寝たままマサヤの手のひらを僕の右の手の平でたたいた。

その後、僕らは順番にたくさんの波に乗った。サーフィンのレベルはマサヤのほうが上手だったけれど、まわりに他のサーファーがいなかったこともありゆったりとした時間が流れる中で、お互いのサーフィンを確認しながら、少しずつ会話をした。生まれてきた場所や年齢も違うけれど、同じ仲間だと胸の奥の方で自然に感じた。

「マサヤは大学生なんだよね?どこの大学に通っているの?」

僕はボードの上に座り、次の波がやってくるのを待ちながら何の気なしにそんな質問をした。

「うん、グリフィス大学の2年生だけど。」

「グリフィス大学かぁ・・。」

グリフィス大学の名前を聞くと、僕はいつも同じ風景と過去の楽しい思い出を思い出す。アンドレアスと一緒に潜り込んだグリフィス大学のジムやコンピュータールーム。大きな体のアンドレスが使っていたバーベルを渡されて足の上に落としそうになったり、二人でインターネットでセクシーな画像を見たり。

「アンドレアス、今頃なにしてるかなぁ。」

「えっ、アンドレアス?」

「あっ、ごめん、マサヤ。ちょっと思い出してぼーっとしていただけだよ。何でもない、何でもないよ。」

ボーっとしていて思わず心の中で思っていたことを無意識に口に出して言ってしまった。僕は少し恥ずかしくなって、その時ちょうどよいいタイミングで右側から次のうねりが入ってきたので、パドリングをしてその場から離れようと思い、水を漕ぎ出した瞬間にマサヤが大きな声で叫んだ。

「永住ライフ。今、お前アンドレアスって言わなかったか?」

「ああ、アンドレアスって言ったけどそれがどうしたの?」

「永住ライフ、お前アンドレアスを知っているのか?」

振り返るとマサヤが急に真剣な顔になって、僕の方を見ながら確かにそう言った。
マサヤはアンドレアスのことを知っている・・・
僕の中で不思議な糸が、また繋がり始めた。


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幸せなオーストラリア永住権への道 103 夢のはじまりの1枚

2007-06-12 20:59:39 | Weblog
急に何十枚ものサーフボードをお店に置きだしたことが原因で、ここ数日の間僕等のお店には今までよりもずいぶんとたくさんの人がやってくるようになった。そのほとんどが地元に住んでいるオージーやワーキングホリデーで滞在しているサーファー達で、もともとシリンダーズというボディーボード専門店だったお店がサーフショップになったという認識が強いようだった。

とにかく、みんなもの珍しそうに壁一面に並べられたチュックのサーフボードを眺めたり、僕に話し掛けてきたりした。これはどこのサーフボードなのかとか、新しいブランドなのかとかたくさんのことを聞いてきた。でも、年令のいった地元のサーファーの何人かはチュックのことを知っていて、あのチュックがまたシェーパーとしてサーフボードを削りはじめたのかと言って喜んで帰る人もいた。

そんな調子だからほとんどのお客さんは冷やかしや興味本位で来ていて、なかなか真剣にサーフボードを買いたいと思っているお客さんに出会うことはできなかった。僕は、そんな状況でもたくさんの人がお店に来てくれることが嬉しかったし、地元の人たちにもだんだんとサーフショップシリンダーズが浸透していってくれればいいと考えていた。

今日も学校が終わり3時にお店に行くと、すでにサーフショップサイドの扉は空いていて中には3人ほどお客さんがいた。マークが30代の夫婦のように見えるカップルに男性用の大きなサイズのボディーボードを見せて一生懸命に接客をしていたので、僕はバックパックをカウンターの裏に置いて一人でサーフボードは眺めている男性に話かけることにした。

「ハーイ、調子はどう?何か見たいものがあったら言ってね。ここにあるサーフボードはLIVING OCEANといって新しいブランドなんだ。」

「ありがとう。これはどこのサーフボードなの?ゴールドコーストの板なのかな?」

壁に立てかけてあるサーフボードをじっくりと見ていた男性が振り返ると、黒い髪に黒い瞳をした東洋と西洋がうまくおりまざったようなエキゾチックな顔だちをしていた。この人はオージーなのかそれともどこか別の国の人なのか僕には一瞬で判断をすることができなかった。

「うん、これはバーレーヘッズにファクトリーを持っているチュックというシェーパーのサーフボードなんだ。彼はゴールドコーストで20年以上シェーパーとして板を削り続けているから、この辺の海の波については誰よりも詳しく知っているよ。」

その男性はうんうんとうなずきながら、自分の綺麗に刈り込まれたあごのひげを触っていた。そして、またゆっくりとサーフボードの方に向きなおして右の手のひらで優しくボードの裏をなぜた。

「そのサーフボード、よかったら出してよく見てみれば?ここにあるサーフボードは全て最近入荷したばかりで、僕も興味のある人に見てもらったら嬉しいんだ。」

彼はまた僕の方を振り返って、一度ニコリと微笑むとちょっと見てみたいと言った。僕は彼が気になっている6,1のサイズのサーフボードをラックから取り出して、お店にそなえつけてあるサーフボードを置く台の上に静かに乗せた。彼は、またゆっくりとボードの裏側の下のほうを何かを確認するかのようになでて、今度はサーフボードの先のほうを持って全体の形状を確かめた。

「ありがとう。とても良い板だね、今日は買うことはできないけれど参考にさせてもらうよ。今週末に給料が入ったら新しいボードを買う予定なんだ。いろいろ親切にありがとう、君の名前は?」

「僕は永住ライフ、毎日3時過ぎにはお店にいるよ。君の名前も聞いてもいいかな?」

「僕の名前はマサヤ。最近、目の前のホテルの隣にたっているアパートに引っ越してきたんだ。」

マサヤはそう言うと、今までもよりもさらに大きな笑顔をしながら右手を突き出して握手を求めてきた。僕はマサヤの身長の割に大きな手をとって力強く握り返した。相手の目をみて力強く握る握手は、親愛の気持ち、力なく握るのはあまり興味のないしるしと、いつかマークが教えてくれた。

「失礼だったらゴメンね。マサヤって、もしかしてハーフなの?」

「ああ、お父さんが日本人でお母さんがオージーなんだ。でも、僕自身は日本で暮らしたことは3年しかないし、生まれも育ちもゴールドコーストだよ。日本語は大学で勉強しているのと、小学生の頃に少しだけ日本に住んだことがあるから、まあ難しくない程度ならOKかな。」

マサヤは嬉しそうに、そして少し照れくさそうに笑った。僕は、そんなマサヤになぜか親近感を覚えた。

「ねぇ、マサヤ。よかったら明日の朝にでも一緒にサーフィンに行かない?」

僕は急に、マサヤに日本語で話し掛けてみた。マサヤは何の抵抗もなく、そしておかしな間が空くことも僕の目を見ながら普通に日本語で応えた。

「いいね。明日は午後まで時間があるから一緒にサーフィンしよう。それでどこで入る?」

「僕は学校があるから6時にマサヤのアパートの前で待ち合わせしよう。」

「Sounds Good!それじゃあ、6時にまっているよ。」

マサヤはそう応えるともう一度、握手を求めてきた。僕は笑ってマサヤの手を握り返すと今度はマサヤも僕の眼を見ながら力強く握り返してきた。僕とマサヤの間に一瞬気持ちの良い風が吹いたような気がして、僕は何かの予感を感じた。なんの予感は分からないけれど、きっと僕とマサヤは自然に繋がっていくだろうなと思った。それは言葉では表せない不思議な感覚だった。

「おーい、永住ライフ。こっちの男性に合うサイズのウエットスーツを探してくれ。」

振り返ると店の反対側では、マークがさっきの夫婦の目の前で大きなボディーボードにマイナスドライバーを付き立ててリーシュキャプを取り付けるために穴を空けていた。ボードに穴を空けているということは、彼等がボディーボードの購入を決めたということだった。

一度大きな買い物を決断したお客さんは、それに伴うケースやアクセサリーなどの備品、そしてウェットスーツやラッシュガードなどのオプションも一緒に買っていってくれることが多かった。いきなり50ドルの買い物をするのには躊躇しても400ドル近いボディーボードを買ったあとでは、400ドルも500ドルもそんなに変わらないという気分になっているためだと思う。

僕は、お客さんの体をざっと見てLサイズとMサイズの同じデザインのウエットスーツをフィティングルームの前に持っていった。お客さんを中に通して先にMサイズを渡してカーテンを閉める、しばらくすると中でガサゴゾと着替えている音がしなくなったので声をかけると、少しきついという返事だった。次にLサイズを渡すと、今度はきつくないと言ってすんなりと買っていってくれた。

マークは、そんな様子をみて満足そうな顔をしていた。これも、むかしマークが教えてくれたことだった。丁度良さそうなサイズをいきなり持っていくよりも最初にちょっときつめのサイズを着てもらって、次にピッタリのサイズを渡したほうが決断が早いって。僕は、あまり小細工のようなことをするのは好きではないけれど、実際の販売の経験からも似たようなことを沢山覚えていた。無理に買ってもらうのは好きではないけれど、喜んで買っていってくれるのを見るのはとても嬉しかった。

「ねぇ、マーク。今おもしろそうな奴と出会ったよ。」

「うん、おもしろそうって何がおもしろそうなんだ。さっき、お前が話していたハーフのサーファーか?別に特別変わったところもないし、俺には普通に見えたけどな。あいつ、なんかおかしなことをお前に言ったのか?」

「ううん、そんなんじゃないんだ。なんか、仲良くなりそうだなって直感的に思ったんだ。」

「なんだ、永住ライフ。お前その気があったのか?アッハッハッ、おーい、ターニー。永住ライフがおかしなこと言ってるぞー。」

「そんなんじゃないよ。アッキィーと出会ったときもアンドレアスと出会ったときも同じように感じたんだ。初めてあったのに、なんだか近い人のような気がしたんだ。マークはそんな気分になったことない?」

「俺かぁ、俺は今のワイフと出会ったときにこいつはなんて素敵な女性なんだって、この女性と結婚できたら幸せだろうなと感じたかな?でも、実際に結婚はしちまったが、幸せかどうかは今でも分からんな。アッハハ。」

「もう、いいよ。」

マークが僕をからかって一人で大笑いをしているところに、日本人の新婚さんがサーフショップサイドに入ってきた。僕はすぐには声をかけずに二人が何に興味を持っているのかを、少しの間観察をすることにした。二人はサーフボードの前を行ったりきたりしながら何枚かのサーフボードに手を触れていた。普通の場合は女性の方はサーフボードにはあまり興味を持たずに水着屋サイドに自分の水着やワンピースを見に行ってしまうのに、この二人は違っていた。

あまり興味のなさそうな様子でも奥さんのほうもじっと傍にいながら二人でサーフボードを見ている。もしかしたら・・・

「こんにちは、日本はどこからですか?」

旦那さんのほうが少し緊張しながら、その質問に応えてくれた。

「東京です。」

その後も僕はサーフボードとは関係のない質問をいくつもして二人の緊張を和らげた。いきなり確信に触れてしまうと人は売り込まれると思って気持ちが引いてしまうからだ。できるだけたくさんの話をして、相手が何をしたいと思ってこのお店に入ってきてくれたのかを僕は考えた。

「ゴールドコーストでは何をしたいんですか?」

「ええ、実は僕はサーフィンを始めたいんです。それで彼女はボディーボードに挑戦してみたいと言っていて、でもまるで初めてなので、どんなサーフボードを選んでいいのかどこでやればいいのかまったく分からなくてこまっていたんです。ほかのサーフショップでどんな板をお探しですか?と聞かれたんですが。どんな板がいいのかが分からないので、はずかしくなって出てきてしまったんです。」

「よかったら、これからサーフィンを始める人にピッタリあうサーフボードをお教えしますよ。それで、もし気に入って買ってもらえたら僕が一緒に海に行って無料でサーフレッスンをしますよ。それに僕、ボディボードのレッスンもできるんです。」

それからは話がとんとん拍子に進んで行った。二人は僕を信用してくれてチュックが削ってくれた初心者用のサーフボードを気に入ってくれた。日本の約3分の一の値段でウエットスーツも買うことができると知ると一緒に欲しいと言ってくれた。奥さんの方も本当にボディボードをやってみたいと思っているらしく明日の午後に3人でサーフィンとボディーボードのレッスンをして、自分にもできるようならボディーボードが欲しいと言ってくれた。

僕は接客をしながら自分の内側がどんどん高揚していくのを感じた。もうすぐシリンダーズではじめてのサーフボードを売ることができる、そう思うと楽しくて楽しくてたまらなかった。

「永住ライフさん、ありがとうございます。明日、楽しみにしていますね。」

「ありがとうございます。水着とタオルだけ持ってきてくださいね。」

結局、二人はサーフボードとウェットスーツ、リーシュコードにデッキパットそして日本に持ってかえるためにサーフボードケースを買って、そのうえ僕にありがとうと言って帰っていった。僕は二人が店をでるのと同時にマークとターニーのところに走って行った。

「マーク、ターニー!やったよシリンダーズではじめてのサーフボードのお買い上げだ、二人とも喜んで帰って行ってくれたよ。

僕らは、最初の1枚が売れた喜びを3人でかみ締めた。
それは、これから僕らが続けていく夢のはじまりの1枚だった。


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幸せなオーストラリア永住権への道 102 ようこそ、シリンダーズへ

2007-06-05 16:42:40 | Weblog
車の後部座席から後ろの荷物収納のためのスペースいっぱいに何枚ものサーフボードを積み込んで、サーファーズパラダイスの街に向けて、僕は最高の気分で車を走らせていた。バックミラーを見てもエアパッキンを巻き、ぎゅうぎゅうに乗せたサーフボードのせいで何も見えないけれど、僕はバックミラー越しに何枚ものボードが積まれているのが見えるのが嬉しくて、用も無いのに何度もバックミラーを見ては楽しい気持ちになっていた。

チュックのファクトリーで僕は全部で25本のサーフボードを選らんだ。上級者用の5‘11の短くて薄いサーフボードから初心者や体の大きな人でも楽しむことができる7,6のファンボードまで色々なサイズ、さまざまなシェープの板を選び出した。そして、1本1本の全てのサーフボードについての特徴やどんな波に適しているか、またどんなレベルのサーファーに合っているか、そしてどんなサーフィンをしたいサーファーに適しているサーフボードなのかをチュックに詳しく聞いてメモをした。

それぞれが自分にあったサーフボードを注文するオーダー制の販売ではなくて、お客さんのレベルやしたいサーフィンに合わせてピッタリの板を選び出し、それを薦めてあげるためには誰よりも詳しく、お店の全てのサーフボードに関して知っていなければならないと思ったからだ。

それぞれの板やシェープに対して、チュックにはクラフトマンとしての1ミリ単位の考えや思い入れがあるらしく、僕が板の特性や形状について質問すると、真剣な表情で板を裏返したりなでたりしながら一生懸命に説明をしてくれた。こんなに真剣に乗る人のことを考えながら1ミリ単位の手仕事を経て完成したサーフボード達をシリンダーズで売らせてもらえることが、とても嬉しかったし、このサーフボードを手にしてくれた人たちに対して自信と責任を持って売ることができると感じることができた。

今までのように、ただ与えられた物を右から左に仕事として売るのではなく、チュックの気持ちや、これからこのサーフボードを手にして海へ出て行く人達に対して敬意を払い、シリンダーズに置く商品を自分で選んだことによって売上やお店の全てのことにおいて責任を感じるようになった。

これがマークが言っていた準備が無いところには物事は起きないと言っていた本当に意味なのかもしれない。サーフィンが大好きで、大好きなサーフィンに関する仕事がしたいと考えていた頃は仕事に自分の楽しみだけを求めていた。もちろん今でも大好きなサーフィンの仕事をしながらビジネスビザを取ってこの大好きなオーストラリアでずっと暮らしていきたいと考えている。でも、僕がやったことで誰かが喜んでくれたり、何かを始めてくれたり、たくさんの人が海やサーフィンを好きになってくれたらいいなと思うようになった。その喜びの量が僕の仕事の価値だと思うようになってきた。

「さあ、急いで帰ろう。あと2往復はしないと今日中に運びきれないぞ。」

僕は、ファルコンのエンジンペダルを強く踏み込んで停止信号が青に変わるのと同時に走り出した。サーファーズの街と海が夕焼けに包まれて、夕方から夜に変わる準備を始めていた。

「ただいまー、マーク、ターニー。サーフボードを持ってきたよ。」

「おー、おかえりマネージャー。いいボードを選んできたか?早く見せてみろ。」

「えっ!永住ライフ、なかなか来ないと思ったらチュックの家からサーフボードを持ってきたの?本当に大丈夫なの?」

マークは嬉しそうに笑い、ターニーは心配そうに見ていた。僕は嬉しくて、そしてマークの顔を見たら感謝の気持ちでいっぱいになって二人の前に小走りに歩み寄った。

「ターニー、別に盗んできたわけじゃないから心配しないでよ。僕はシリンダーズで販売するサーフボードを仕入れてきただけだよ。マーク、僕・・僕、嬉しいよ。シリンダーズにこんなにたくさんのサーフボードを並べることができる日がくるなんて、ありがとうマーク。」

「なんだ、なんだ、永住ライフ。ありがとうって、シリンダーズはお前一人の店じゃないんだぞ。それなら俺からも、ありがとうだ。ここまでくるのに半年近くかかっちまったからな。これからもよろしく頼むぞ、永住ライフ。」

「うん!よろしくマーク、ターニー。」

僕は店の目の前に停めた車の後部のドアを開けて、10枚のサーフボードを取り出して1枚、1枚、大切にサーフボードラックに立てかけていった。からっぽだったサーフボードラックに板が収まり、僕が作ったサーフボードラックもそしてシリンダーズ全体も喜んでいるように感じた。

からっぽだったお店も、穴を開けた壁も、綺麗にマットを引いた剥き出しだったフロアも、今サーフボードがお店に最後に収まって全てがしっくりといった。何もなかったシリンダーズが今、やっと本当の意味でサーフショップとしてオープンしたんだ。

サーフショップサイドのドアから3人のオージーのサーファーが店内の様子を見て、興味を引かれたようにワイワイいいながら入ってきた。

僕は振り返って挨拶をした。

「ようこそ、サーフショップ、シリンダーズへ。」



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