オーストラリア永住権取得は難しくない!

5つの目標を作り始まった、永住LIFEの幸せなオーストラリア永住権への道

幸せなオーストラリア永住権への道 110 ありがとうの意味

2007-07-31 20:45:42 | Weblog
シリンダーズの店内はレッスンを終えて帰ってきた僕達4人と、店番をしていたマークやターニーまでが加わって、ワイワイと楽しい時間は続いていた。レッスンを終えた僕等はビーチ沿いに設置されている公共の水シャワーを浴びて海水を洗い流し、バックルームで順番に着替えをすることにした。

マサヤは海の目の前の自分のアパートで着替えを終えたら、すぐに店に来るように頼んでおいたので一人一人順番で着替えをしていた最後の番の僕が着替え終わるまえに、目が迫るような真っ赤なタンクトップに水色の明細柄のショートパンツという派手な格好で戻ってきていた。

僕は急いで着替えを済まして、シリンダーズの3軒となりにあるナイトウォールというふくろうのマークが看板に書かれている日本でいうコンビニエンスストアーのような店で、4本の炭酸飲料を買ってきてお店の中で座って休憩をしているユウゾウさんとアイコさん、そしてマサヤに手渡した。

「まだアルコールを飲むには少し早い時間なのでジュースで乾杯しましょう。」

「あー、永住ライフずるい。なんでマークと私の分がないの。」

ターニーが僕が4本しかジュースを買ってこなかったのを見て、大きな早口の英語でそう言った。ユウゾウさんが何を言っているのですかといいたげな顔で僕の顔とターニーの顔をキョロキョロと何度か振りかえって見た。

「ターニーとマークは今日のレッスンに参加していないのでジュースはありません。」

僕はわざと意地悪な顔をして言うと、ユウゾウさんは急いでターニーの側の行って「まだ口はつけてないので飲んでください」と日本語で言った。ターニーはジョークで言ったのにそれを真剣に受け止めたユウゾウさんがおかしくて、ケラケラと笑った。そして、自分にもジュースを飲ませてくれようとしたユウゾウさんの優しい気持ちに対して、ユウゾウさんの腕をつかんでサンキューとお礼を言った。

ジュースでのどを潤すとマークがまた発音のおかしいインチキっぽい日本語で二人に話しかけた。

「レッスンは楽しかったですか?二人とも波をキャッチできましたか?」

「僕は乗ることはできなかったけれど、アイコは3本も波に乗れましたよ。日本に帰っても一緒にサーフィンとボディーボードを続けようと思います。」

マークは満足そうな顔でうなずくと、僕の方をむいて軽くウィンクをしてターニーと一緒に水着屋サイドへと帰って行った。あとはお前に任せる、そんな意味のウィンクだった。僕は今回の二人のレッスンの様子を見ていてユウゾウさんアイコさんもとても楽しんでくれていたのを知っていたので、特別に僕の方から営業をする必要はないと分かっていた。何を言わなくても、分からないことや聞きたいことがあったら二人の方から僕に聞いてくれるだろう。

ジュースを飲み終わった二人は立ち上がってボディーボードコーナーを見に行った。しばらく二人で自由に見てもらえばいい、そう思って一息ついたとたんにアイコさんが戻ってきて僕のTシャツをひっぱった。

「ねえ、永住ライフさんも一緒に私のボディーボードを選んでください。色々な大きさや形があって私にはレッスンの時に借りたような綺麗な赤色のボディーボードがいいということしか分からないんです。」

「おっ、アイコさん。日本に帰ってもボディーボードを続ける気になったんですね。それならアイコさんにピッタリな素敵な板を選びましょう。」

僕は立ち上がりアイコさんと一緒にユウゾウさんが待っているボディーボードラックの前に歩いて行った。シリンダーズのボディーボードラックには色、サイズ、形、ブランドを入れると50種類以上のカラフルなボディーボードが並べられている。それはまるで50色のクレヨンが綺麗に並べられているようで、いったいどの色のクレヨンが自分に合うのか探し出すことは、今日サーフィンとボディーボードを始めたばかりの二人にはできなくてあたりまえだった。

「ああ、お願いしますよ、永住ライフさん。アイコに合うボディーボードとフィン、そしてウェットスーツや道具を一式選んであげてください。サーフィンのことだってわからないのにボディーボードのことを聞かれたって僕には分かりませんからね。それに、波乗りに関してはアイコに一歩先をいかれてますからね。」

「永住ライフさん。私達、今まで共通の趣味って無かったの。それは人並みに買い物に行ったり映画を見たりはするけれど一緒に何かをするって素敵なことでしょう。これからは一緒に海に行けると思うの、だから必要な道具を全部選んでください。」

それから僕とアイコさんはボディーボード選びから始まって、フィンの種類選び、腕につけるリーシュコード、ボードを入れるためのケース、ウエットスーツの全ての道具をゆっくりと時間をかけて選んだ。僕はアイコさんの身長や体重、足のサイズや脚力の強さ、さっきのレッスンの時の様子から考えてベストのものを選ぼうとしたし、色やデザインで悩んだときは店で流しているサーフィンビデオを見ながら二人で話しているユウゾウさんとマサヤまで呼んで見てもらった。

アイコさんが言っていた綺麗な赤色の板は軽くて使いやすい、日本人の女の子達から1番人気があるブランドのかわいいデザインの板を選んだ。フィンは脚力の無いアイコさんでも足に負担がかからず前に進むことのできるやわらかいものを選んだ。ウエットスーツはユウゾウさんとマサヤの意見も聞きながら胸にオーストラリア大陸をモチーフにしたロゴが入った綺麗な空色のシーガルを選んだ。

アイコさんはとても嬉しそうに、「見て見て」と言いながらユウゾウさんの前でポーズをつけた。ウエットスーツを着て、自分の物になった真っ赤なボディーボードを脇に抱えると、アイコサンはもうどこからどう見てもいっぱしのボディーボーダーに見えた。そして、僕等はアイコさんが待ってきていたカメラでもう一度、写真をとった。

アイコさんがフィッティングルームでウエットスーツから洋服に着替えている間に、全ての商品からタグをはずして計算をしてユウゾウさんの所に持っていった。それはボディーボードやウェットスーツが日本の約三分の一で買えるとは言ってもオーストラリアで暮らしている僕等にとってはかなりの金額になっていた。

僕やマサヤとあまり年令の変わらないユウゾウさんが驚く表情をするでもなく、まったく普通に財布から100ドル札を何枚も取りだして支払いをしているのを見て、逆にマサヤが少し驚いた顔をしていた。マサヤには日本人のこの若いカップルがとんでもないお金持ちに見えたのかもしれない。

選んだ商品を袋に詰めていると、店の中を見ながら待っていたユウゾウさんとアイコさんがレジのところにやってきた。

「これも下さい。」

二人がそれぞれの手に大事そうに握り締めていたのは僕等のお店「シリンダーズ」のロゴマークが入ったおそろいのラッシュガードだった。シリンダーズ.オーストラリア.ゴールドコースト」と書かれた真っ白のラッシュガードを今回の記念に買って帰りたいということだった。

僕はそんな気持ちが嬉しくて、ありがとうございます。と言いながら今閉じたばかりの大きな袋をもう一度明けて、2枚のラッシュガードをそろえるよう入れた。

二人は何度も僕とマサヤに「ありがとう、ありがとう。」と言いながら嬉しそうに帰っていった。店の外までマサヤと一緒に二人を見送りに出ていたので、二人が何度も振り返って手を振るのが見えなくなるまでそこにいた。

「なぁ、永住ライフ。」

「うん、何マサヤ?」

「あの二人がすごく海を好きになったことは分かるけれど。二人は、すごい金持ちなのかな?あんなにまとめて一式買って、昨日はユウゾウさんのサーフィン道具を一式揃えたんだろ。」

マサヤが純粋にそう思ったのか、少しイヤミで言ったのか、僕にはよく分からなかった。でも、マサヤの心の中にあった何かが少しずつ溶けはじめていることを僕は感じていた。

「マサヤ、僕たちサーファーズパラダイスで暮らしている人間にとっては昨日も今日もいつもと変わらないただの1日だった。でもこの街にハネムーンにやってくる人たちにとっては人生で1度しかないハネムーンの大切な1時間であり、1日なんだ。だから、たくさんお金も使うし買い物もするけれど、それはお金持ちだからじゃないよ。みんな大切な瞬間にお金を払っているんだよ。」

「そうか。それに、お金を払って買い物をしているのになんであんなに何度も頭をさげて、ありがとう、ありがとうって言うんだよ。レッスンの時だってそうだ、こっちがびっくりするほど何度もお礼を言われたよ。むこうはカスタマーだぜ。」

「それは、もうマサヤは気がついていると思ったんだけどな。あんなに何度もお礼を言ってくれたのはマサヤがそれ以上の喜びを与えてくれたからだよ。支払ったお金の何倍も嬉しいと感じてくれたんだよ。あの二人はゴールドコーストでの最高の思い出と、これから二人で一緒に海で過ごす楽しい時間や思いを得ることができたんだよ。だからあんなに喜んでくれたんだ。あっ、そうだ。」

僕はさっきレジから出した20ドル札をポケットから取り出してマサヤに手渡した。マサヤは最初、躊躇していたけれどゆっくりと僕から20ドルを受け取った。

「ありがとう。」
「ありがとう。」

僕とマサヤの声が重なった、二人が同時に同じ言葉を言ったんだ。僕とマサヤは顔を見合わせて笑った。

「マサヤ、今日は本当にありがとう。マサヤのおかでユウゾウさんもアイコさんも楽しんでくれた。二人が喜んで買い物をしてくれたおかげでシリンダーズにもお金が入って僕やマークも嬉しいよ。だから、そのお金は今日マサヤが僕たちみんなに与えてくれた嬉しさや喜びに対する対価なんだ。マサヤ、ありがとう。またレッスンを手伝ってね。」

マサヤは少しだまったまま何かを考えるような顔をしてから、もう一度ありがとうと言った。

「永住ライフ。また明日、一緒にサーフィンに行かないか?」

「うん、いいよ。それじゃあマサヤの家の前に5時に集合だ。」

「OK,Thank you Mate!」

マサヤはそう言うと、もう薄暗くなったサーファーパラダイスの街の中に飛び込んでいった。マサヤの後姿を見ていたら、どこかでアンドレアスが笑っているような気がした。

「アンドレアス、ありがとう。」

僕は振り返ってマークとターニーが待っているシリンダーズの明るい光の中に戻って行った。


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幸せなオーストラリア永住権への道 109 与えられたものと感じたもの

2007-07-25 18:01:32 | Weblog
海から一足先に上がってビーチで休憩をしているマサヤとユウゾウさんのサーフィン組のほうに歩いていくと、レッスンを始める前とは違った楽しそうな笑い声が二人の方から聞こえてきた。ユウゾウさんにとっては初めて挑戦するサーフィンと日本語が話せるとはいえオージーとのハーフのマサヤからレッスンを受けることに緊張していたのだろうし、マサヤにしてみても普段は日本人と触れ合う機会もなく、ましてはお客さんに対してサーフィンを教える経験など今までないのだから種類はちがうといえど同じ緊張感を持っていたようだった。

「おつかれさま!ユウゾウさん、マサヤ。初めてのサーフィンはどうでした?」

二人の打ち解けた雰囲気とユウゾウさんの楽しそうな顔を見れば、マサヤとのサーフィンレッスンが楽しかったのは聞くまでもないけれど、僕はユウゾウさんの口から「楽しかった」という言葉を直接に聞きたかった。そして、その言葉を聞けることがマサヤにとってもいい経験になると僕は思った。

「サーフィン?僕のあれはサーフィンって言っていいんですかね、マサヤさん?」

ユウゾウさんは少しおどけながら、隣に座っているマサヤの顔を覗き込んだ。そんなユウゾウさんに応えるように、マサヤも目を大きく見開いて大げさな表情をして笑って答えた。

「立派なサーフィンでしたよ。ユウゾウさんの未知なる世界にトライするハートはもうサーファーですよ。」

ユウゾウさんは嬉しそうに満足そうにうなずいて、マサヤにありがとうともう一度お礼を言った。

「ありがとう、マサヤさん。サーフィンは凄く楽しかったです。何度も波に巻かれて水を飲んで、鼻から海水が入ってキーンとしたりもしたけど、あんなに海や波と一緒になって夢中になれたのは子供の時以来ですよ。サーフィンは難しいけれど本当に楽しいです。」

ユウゾウさんの言葉を聞きながら、マサヤもとても嬉しそうだった。自分が何かをしたことによって相手が喜んでくれることは本当に嬉しいし、幸せなことなんだ。

「それじゃあ、最初に言ったようにこれからの20分、いや30分は今日のレッスンの成果をお互いに披露する時間です。ユウゾウさん、アイコさん、じゃんけんをして勝ったほうの人から先にスタートです。いいですか、じゃん、けん、ぽい。」

アイコさんが小さな手でグーをだし、ユウゾウさんが大きな手をいっぱいに開いてパーをだした。僕はユウゾウさんの方を向いて、がんばってくださいという意味をこめて右手の拳を握り親指を突き出した。

「いいですか、ユウゾウさんとマサヤのサーフィン組からスタートですよ。スリー、トゥー、ワン、スタート!」

僕は腕時計の長針にサーフィンの大会の時に使う15分計を合わせてから右腕を空に高くつき上げた。僕が大きな声をだしたので、マサヤもユウゾウさんもびっくりしながら急いで立ち上がった。何をすればいいのかわからないというように、その場に立ち尽くすユウゾウさんにマサヤが声をかけて、ビーチに寝かしておいてあったサーフボードをすばやく脇にかかえさせ海へ向かって二人は走り始めた。それはまるでサーフィンの大会のときに鳴り響く、試合開始をつげるホーンの音が鳴ったあとのような緊張感と躍動感が伝わってきた。

波打ち際から海水にモモまでつかるくらいの場所まで二人は走っていき、リーシュコードを足に巻きつけた。すぐにマサヤはユウゾウさんにパドリングをする姿勢をとらせ、自分もその横でボードの上に寝て沖へと向けてパドリングを始めた。沖から入ってくるいくつもの白い波をマサヤは綺麗にくぐり、まだドルフィンスルーのできないユウゾウさんは波に押し戻されないようにと必死にボードの上でもがいていた。ユウゾウさんが波に戻されると、マサヤは後ろを振り返り追いつくことができる位置をキープしていた。

遠くから見ていても、波と海に負けないようにユウゾウさんががんばっているのが感じられた。二人がテイクオフをして波の上に立つ練習をするのに丁度良い場所にたどり着くと、マサヤは波待ちをするようにボードの上にまたがって沖を見ながら座り、ユウゾウさんはいつでもパドリングを始めることができるようにビーチの方を向いてサーフボードの上に寝転んだ姿勢になった。

マサヤが何か合図を出したらしく沖から入ってくる白い波に狙いをさだめてユウゾウさんがパドリングを始めた。必死に水をこいでいる様子は見えるけれど体の余計な部分に力が入っているので思うようにはボードはスピードをつけていかない。厚く白い波がボードの裏のボトムの部分を押し上げ、ユウゾウさんの体と一緒に一回転をさせて海の中へ巻き込んでいった。

「ああ・・。」
「ああ・・。」

僕の口と、アイコさんの口から同時に声がもれ、すぐに笑い声に変わった。それは決してユウゾウさんを馬鹿にした意味の笑いではなく、波に巻かれてもすぐに立ち上がりボードを返し、またボードの上に寝て、次の波に挑戦しようとしているユウゾウさんの姿に「がんばれ、がんばれ」って応援をするような明るい笑い声だった。

ユウゾウさんは次の波にも、その次の波にも乗ることはできなかった。ただ何度、失敗しても、何度でも立ち上がり、また慣れないパドリングで水を掻き続ける姿は、たしかに不恰好だけれど不思議と気持ちよくて、かっこよくさえ見えた。

僕の右手の腕時計の中で15分はあっという間に過ぎた。まだ波に乗れていないユウゾウさんのためにもう少し時間を延長しようとも思ったけれど、時計の分針がもう3回余計に周った後で僕は立ち上がり、沖で波待ちの姿勢で周囲に気を配っているマサヤに向かって両方の腕を頭の上でクロスさせ右腕の時計の部分を2回、パンパンと叩いて時間が来たことを伝えた。

ハアハアと息を荒げて戻ってきたユウゾウさんの顔は少し悔しそうな、それでもなんだか満足したような気持ちの良い顔をしていた。となりのマサヤに向かって、レッスン中には2回立つことができたのに見せることができなくて残念だと同意を求める姿は、まるで子供のような純粋さを感じさせた。

僕は右腕の腕時計をはずし、マサヤに投げて渡した。重い金属でできた腕時計は弧を描いて空中を飛びマサヤの手の中にキャッチされた。僕と同じように長針に15分計をあわせている姿を見て、自分の順番がやってきたことを感じたアイコさんは小さな手をギュと握ってから、一度何かに祈るように目を閉じた。

「オーケー。スリー、トゥー、ワン、スタート!」

マサヤがクールな声でカウントダウンからスタートをつげ、僕とアイコさんはボードとフィンを持って波打ち際まで一気に走った。アイコさんが波打ち際の砂の上に座りフィンを履いている間に、今回はボードを押すか、押さないでトライするのかを確認した。

「ボードは押さないで大丈夫。自分の力で波をつかまえてみせるわ。ユウゾウさんもがんばっていたし、それに・・。」

「それに、なんですか?」

「それに、私以外に本番に強いんです。永住ライフさん、乗れる波がきたら教えてくださいね。」

アイコさんはそう言ってニコリと笑うと、海の方をむいて沖をみつめた。ボディーボードを始めたばかりとはいえ、その横顔はすでに、サーファーが波を見つめる時の目と同じ目をしていた。

「それじゃあ、いきましょう。僕が先に泳いでポイントまで行くのでアイコさんはついてきてください。」

両足にフィンを履き終えて立ち上がったアイコさんに声をかけて僕は海の中を走り、飛び込んでクロールを始めた。少し泳いでから後ろを振り返ると、白い波に時々押し戻されながらも背筋を伸ばして一生懸命に沖を目指しているアイコさんの姿が見えた。

「OK、この辺で大丈夫です。乗れる波が来たらまた声をかけます。さっきみたいに少し早めに声をかけるので諦めないで最後までキックしてください。もう駄目だ、置いていかれるって思った瞬間からあと5回キックしてください。
最後の1,2,3,4、5が蹴れれば必ず波をつかまえることができますよ。」

アイコさんは大きくうなずくと、振り返ってビーチのほうを向いてボディーボードの上に上半身を乗せるようにして準備をした。一息つくのと同じタイミングで沖の方から厚い白い波が押し寄せてくるのが見えた。

「はい、波が来ましたよ。こいで、こいで、こいで、こいで、こいで!」

フィンの付いた足で海水をキックしていたアイコさんの足と、背中を白い波が包み込みボディーボードとアイコさんの体が一瞬ふぁっと少し上に押し上げられた。

「そこから、1,2,3,4,5!」

僕が叫ぶのと同時にアイコさんの体が見えなくなって、次の瞬間には波と一緒にその場所から見えなくなった。厚い白い波を二本の足でつかまえて彼女は波の上を滑って行った。沖にいる僕からは彼女の姿も顔も見ることはできないけれど、きっと最高の笑顔で波の上にいるに違いないと思った。

「本当に1本目から乗っていったよ!やったぁー。」

僕は嬉しくなって思わず叫んだ。ビーチを見てみるとユウゾウさんとマサヤも立ち上がって手をたたいて喜んでいる。波打ち際まで波と一緒に運ばれて行ったアイコさんは立ち上がり、ユウゾウさんとマサヤに手をふって応えた。そして、振り返るとニッコリと笑って沖で待っている僕のほうにむけてまた戻ってきた。

マサヤが大きく手を振ってタイムアップを伝えるまでの間に、彼女はあと2本の波をつかまえて満足そうな顔で15分のショータイムを終えた。海から上がり、ユウゾウさんとマサヤの方にむけて歩いていくと嬉しくて興奮したユウゾウさんがこちらに向けて走ってきた。マサヤもその後ろをゆっくりとあるいてやってきた。

「すごいよ、すごいよ!3本も波に乗っていたじゃないかぁ、かっこよかったよ本当に!」

「ありがとう。波の乗るのって本当に気持ちよくて楽しいの!海ってすごい楽しいのね。」

二人があまりにも楽しそうに話しているので、僕はそんな幸せそうな二人をだまって見つめていた。気がつくとマサヤが僕のとなり立っていて手のひらを開いて笑っていた。僕は二人に気付かれないようにマサヤの手のひらを軽くパチンと叩いて今回のレッスンが成功したことをマサヤと確認しあった。僕もマサヤも、その場では何も言葉にはしなかったけれど同じ気持ちでいることはたしかに感じられた。

サーファーズパラダイスの太陽が斜めにかたむいて、海面を光の粒みたいに反射させ僕等をキラキラと優しい光で包んでいた。


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幸せなオーストラリア永住権への道 108 宝物を見つけた瞬間

2007-07-17 18:37:55 | Weblog
僕とアイコさんのボディーボード組とマサヤとユウゾウさんのサーフィン組に別れてのレッスンは続いていた。アイコさんは最初の1本の波に乗ってから海の中にいること、波の上をすべることが楽しくてしょうがないという様子で何度も何度も、白いスープの波に乗る練習を続けていた。

1本の波に乗っては、また僕が待っている沖の方までバシャバシャと慣れない動作で一生懸命に足ひれを使って戻ってくる。そして、簡単なアドバイスをしながら海の中で少し休んでは、また次の波に向かって足ひれでバタバタと海水をこぐ。その度に僕は後ろからアイコさんのボディーボードを押してボディーボードが波のスピードに追いついて、波に乗って進んでいくことができるようにサポートをする。

「アイコさん、とても上手に波に乗ることができるようになりましたね。今までは波の上をすべる楽しさを知ってもらいました。残りの30分は、今度はアイコさんが自分だけの力で波に乗ることができるようになるための練習です。今までは僕が後ろからボディーボードを押していましたが、次から僕はボードを押しません。アイコさんの足のキックだけで波をつかまえるんです。アイコさんなら、きっとできるようになりますよ。波に乗ることの楽しさをもう知っているんですから。」

「やってみます。」

アイコさんは、少し不安そうな顔をしながらうなずいた。サーフィンでもボディーボードでもパドリングや足のキックでボードにスピードをつけて、波のスピードにボードの進むスピードが追いつかなければ波をつかまえることはできない。波の上でボードの上に立つことの前に、自分自身の腕や足の力で波をつかまえることができてはじめて波の上をすべることができるんだ。それは初めてサーフィンやボディーボードをやる人にとっては決して簡単なことじゃない、そしてその練習はとても地味で面白いものではない。

アイコさんは、さっきまでの楽しそうな顔とは変わって少し緊張した顔をしながら今まで同じようにボディーボードの上に乗ってビーチ側を向いた。ちょうどいいタイミングで乗ることができそうな波が少し奥から入ってきた。

「さあ、アイコさん。こいで、こいで、こいで!」

彼女は一生懸命に足をバタバタと動かして、さっきまでと同じように波に乗ろうとフィンのついた足でキックをした。でも波のスピードにはおいつけずにそのままの場所に置いていかれてしまった。なんだか勝手がちがうという表情をしながら彼女は少しさみしそうな顔をした。そして、その後も、またその後も何度も同じ場所で波に乗ろうと足で海水をこいでは、同じ場所に取り残されていた。5回目も6回目も波を捕まえることはできなかった。

「そろそろ一度、休憩をしましょうか?」

僕は何度も波に乗ろうとしては、波をつかまえることができずにいるアイコさんが疲れてきたのではないかと思って声をかけた。

「あと、何分ありますか?」

「えっ、何がですか?」

僕は彼女が言っている意味がわからなかった。

「ボディーボードのレッスンが終わって、今日の成果をユウゾウさんやマサヤさんに見せるまでに、あとどれだけ時間がありますか?」

僕は海に入るときにいつも付けているお気に入りのサーフィン用の時計に目をやった。さっき、確かにお互いのレッスンの今日の成果を見せるために1時間後に集まろうと言った。サーフィン組のマサヤ達と別れてからはちょうど45分がたっていた。

「あと15分位です。あと残り15分くらいなので、あと2,3本の波を最初と同じように僕が後ろからボードを押すので今回のレッスンはこのぐらいにしておきましょうか?」

「永住ライフさん、私休まなくても大丈夫ですよ。もう時間もないし、このまま練習を続けてもいいですか。私、波をつかまえて自分の力で波に乗ってみたいんです。日本に帰ってからも海を楽しむことができるように自分の力で波をつまかえることができるようにならないと。」

アイコさんは、それだけ言うとビーチ側に顔を向けてボディーボードの上に寝転んだ。僕は、アイコさんが海は楽しいと感じてくれて今日のレッスンを終わることができればいいと思っていた。だけど、彼女の言うとおりだった後ろからボードを押してくれる僕や他の誰かがいなくても波をつかまえることができるようにならなければ、日本に帰ってからもボディーボードを楽しむことができるかはわからない。彼女は海は楽しいということの、もう先を見ていた。

「はい、こいで、こいで、こいで」

それでも簡単に波をつかまえることはできなかった。なんども惜しいと思う時や、あとひとかきで行けると思う瞬間に彼女は足をけることをやめてしまった。なんとか、彼女に自分の自分の力で波をつかまえることができるようになって欲しいと僕は思った。なんで彼女が波のスピードにおいつくことができないか、僕は彼女が波に置いていかれてしまうたびに考えた。

「アイコさん、今度はいつもより早いタイミングで声をかけます。だから、いままでより長い時間足でこぎ続けてください。そして駄目だと思っても諦めないで、波が完全に自分の前を通り過ぎてしまってもそのままキックを続けてください。最後まで諦めないでキックを続けるんです。」

時計の針を見ると、ちょうどマサヤとユウゾウさんとした約束の時間になっていた。レッスンに夢中になっていて二人の方を気にすることをすっかりと忘れていたけれど気がついてみるとマサヤとユウゾウさんはレッスンを終えて海からあがるところだった。

最後の一本だな、僕は心の中でそう思った。今回のレッスンの責任者としても、自分で言った約束は守らないとマサヤとユウゾウさんに申し訳ない。

沖から、最後の一本になる波がゴーッという音をさせながらこっちに向けて入ってくる。いつもの僕のタイミングならあと20メートルくらい側まで来たときに声をかける。でも、脚力の足りないアイコさんには、早くからキックをして水をこぎスピードをつけて波のスピードにおいつかなければ波をつかまえることができないのかもしれない。

「よし、波がきましたよ。こいで、こいで、最後まであきらめないでこいで!」

アイコさんはひっしで足でキックをしながらバシャバシャと海水を後方へ押しやる、彼女と真っ赤なボディーボードが少しずつ前へ前へと進んでいく。波がやってきるまで、あと10メートル。アイコさんが疲れてきたのが後ろから見ている僕にも、足のキックや少し左右にゆれてしまっている体から分かることができた。

「まだまだ、あきらめないで最後までこいで、こいで、こいで!」

疲れて少し遅くなっていた彼女の足がまた力を取り戻し、さっきよりも力強く水をキックする。左右にゆれてしまっていた背中も背筋がのびて前をむいて一直線に進んでいく。波が彼女の足とボードの後ろをぐいっと押して、ボードと彼女の体を前へ押した。

「いけー!」

僕は叫んだ。彼女のキックしていた二本の足と背中が白い波に包まれて僕から見えなくなった。遠い、遠い、場所からうねりになって届き、このサーファーズパラダイスのビーチにやってきた波は彼女と一つになって波打ちぎわに打ち寄せられた。アイコサンは立ち上がり、初めて自分の二本の足の力で波に乗ることができた喜びに感動をした表情をしていた。僕もクロールをしながら次の波に乗り、一気に波打ち際まで戻っていった。

「ヤッター!アイコさん。乗れたじゃないですか、アイコさんの力だけで波をつかまえることができたんですよ。本当にすごいですよ。」

「わたし、できた。波をつかまえることができた。本当に、本当に、嬉しい。最高な気分。」

アイコさんは嬉しそうな顔をして笑っていた。綺麗に整えていた髪は、さっきよりもぐしゃぐしゃに、顔も日焼けで真っ赤になっていた。でも、その顔は宝物をみつけたような最高の笑顔になっていた。

僕は自分が始めて波に乗ることができた、あの日を思い出した。サーフィンを始めてから、もう何年がすぎただろう。いくつもの波に乗り、たくさんの海に入ってきた。でも、あの時の感動は今も僕の心の中に鮮明に生きている。そんな宝物のような大切な瞬間を彼女が今、感じることができて僕はとても嬉しかった。


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幸せなオーストラリア永住権への道 107 それぞれのレッスン

2007-07-10 19:58:52 | Weblog
マサヤが約束どおりにサーフィンレッスンの手伝いにお店に来てくれたので、僕はとても嬉しかった。マサヤのサーフボードを店の入り口の脇に立てかけて、カウンターの裏に座っていたマークに紹介をした。マサヤとマークはゴールドコーストに長く生活しているネィティブらしく、明るくフレンドリーに海やサーフィンの話をしてお互いの距離をはかっていた。マークは店のオーナーらしく振る舞い、マサヤは僕の友達のローカルサーファーというスタンスだった。

店の入りぐちのほうから男女の楽しそうな日本語の声が近ずいてきて、今日サーフィンレッスンとボディーボードレッスンを受けることになっている新婚さんが「こんにちは」と言いながらお店の中に入ってきた。昨日、ゆっくりと時間をかけて、いろいろな話をしたので二人ともずいぶんとリラックスしてくれたようだった。二人が入ってくると、それまで英語で話していた僕等3人の共通語が、マークの少し怪しい日本語とマサヤの教科書のようなかための日本語にシフトチェンジをした。

「こんにちは、ユウゾウさん。アイコさん。今日の波はそれほど大きくないので始めてサーフィンやボディーボードに挑戦するにはピッタリですよ。今日は一緒に楽しみましょうね。」

そう話し掛けると二人は少し驚いた顔をした後に、嬉しそうに大きくうなずいた。二人が喜んでくれたのを見て、昨日二人の名前を聞いて覚えておいてよかったと思った。そして、マサヤを呼んで二人の正面にきてもらい紹介をすることにした。

「今日はサーフィンのレッスンとボディーボードのレッスンをします。最初に二人一緒にビーチで乗り方の練習をしてから、みんなで海の中に入って練習をします。危なくないように一人に一人ずつコーチがつくので安心ですよ。彼はマサヤといってサーファーズパラダイスに住むローカルサーファーです。彼は日本語を上手に話すことができるので分からないことや聞きたいことがあったらどんどん聞いてくださいね。」

そして、マサヤに自己紹介をするように目で合図をした。少し緊張した顔をしていたマサヤも覚悟を決めたようにニッコリと笑い、少し恥ずかしそうにしながら話し始めた。

「こんにちは、僕はマサヤと言います。今日はよろしくお願いします。」

マサヤが自己紹介をするとユウゾウさんとアイコさんも自分の名前を言い、よろしくお願いしますと頭を下げて礼儀正しく挨拶をした。マサヤも二人につられて慣れない動作に戸惑いながら斜めに角度がついた変なお辞儀をした。僕はそんなマサヤがおかしくてたまらなかったけれど、笑う代わりにウィンクをしてマサヤに良いよって合図をした。

アイコさんがレンタルのウェットスーツに着替えている間に、昨日シリンダーズで買ったウェットスーツをホテルから来てきてくれたユウゾウさんとマサヤと3人で昨日はどこでご飯を食べたとか、明日はカランビンサンクチュアリにコアラを見にいくなんていう雑談をしながら過ごした。僕は意識的にマサヤに会話を振ってユウゾウさんと仲良くできるようにした。これからマサヤにはユウゾウさんにサーフィンレッスンをしてもらうことになっているからだ。マサヤはお客さんにレッスンをするのは初めてだけれど、応対はしっかりとできていたので僕自身も安心をすることができた。

10分位して着替えを終えたアイコさんが、マークからレンタル用の真っ赤なボディーボードを手渡されて店の入り口に戻ってきたので、今度は僕がバックルームに行って急いで着替えをして全ての準備を終えて3人が待っている場所に戻った。

「お待たせしました。それじゃ海に行きましょう。」

僕がそう言うとアイコさんがちょっと待ってくださいと言った。話を聞いてみるとカメラを持ってきているので海に入る前に写真を撮って欲しいということだった。そして、カメラは着替えと一緒にバックルームに置いてあるので一度取りに行きたいと言った。僕はもちろんOKですと言ってアイコさんがカメラを取りにいくのを待つことにした。

考えてみたら二人はハネムーンの最中で、ゴールドコーストに来るのもサーフィンやボディーボードに挑戦するもの初めてなのだから思い出の写真を残しておきたいと思うのは当然だろう。それに海に入った後では化粧も落ちてしまうし髪もグシャグシャになってしまうから、その前に撮っておきたいと思うのは女の子の気持ちなのかもしれない。

僕とユウゾウさんが二人で話し始めると、マサヤが僕の後ろでかなり早口な英語であることを言った。

「日本人はいつでも写真、写真だな。」

「マサヤ、今日は4人で一緒にいるんだから英語じゃなくて日本語で話してよ。その方がみんなが理解できるし、安心だからね。」

僕はマサヤの方を振り返って厳しい口調にならないように、そしてお客さんが不安になならいように日本語で伝えた。相手がわからないと思って、目の前で英語で話すのはとても失礼なことだし、たとえ言葉が伝わらなくても気持ちや感情は必ず相手に伝わってしまうからだ。それに、アンドレアスが言ったようにマサヤの半分は日本人なんだ。日本人を否定することはマサヤにとって自分自身の片割れを否定することになるんだ。

「ごめんなさい。」

マサヤは日本語で素直に誤った。今はお手伝いといえど僕にとって大切なお客さんを相手にしていることと、これは遊びでやっているのではないということを理解してくれたようだった。アイコさんがカメラを持って小走りに戻ってきてお願いしますと僕にカメラを手渡したので、二人にサーフボードとボディーボードを小脇に抱えてもらいシリンダーズの看板が綺麗に入るようにシャッターを切った。

カメラのファインダーの中の二人はとても幸せそうに微笑んでいて、僕等にとっては通常のフリーレッスンでも彼等にとっては人生でたった1回のハネムーンの中の大切な大切な1日なのだということを感じた。二人が素敵な思い出を作り、楽しい時間を過ごすことができるようにしたいと僕は思った。

ビーチに着くと波打ち際から少し離れた位置に二人に座ってもらい簡単な海のルールの説明をした。今日もサーファーズパラダイスの空はどこまでも青く澄んでいて、海はキラキラと輝いていた。真っ白い砂浜に腰掛けた二人は足元の砂を手ですくい上げては、指の隙間からパラパラとこぼれ落とさせていた。

「いいですか、海に入って誰かがすでに乗っている波には他の人は後から乗ってはいけないことになっています。これはワンマン、ワンウェーブと言って海の大切なルールです。誰かの邪魔をしたり迷惑をかけてはいけないということです。本当に大切なことなのでこれだけは覚えてくださいね。でも、今日は僕とマサヤが必ずそばについているから安心してくださいね。波に乗るときも、練習をするときも声をかけて教えますから大丈夫ですよ。」

二人は真剣な顔になってうなずきながら僕の説明を聞いてくれた。他にも幾つか海に入るうえで危ないめにあわないように注意をすることと、危険を回避する方法を説明した。そしてレッスン中に苦しくなったり、どこかおかしいなと思ったらすぐに手を上げて教えてくださいとお願いをした。

サーフィンとボディーボードに共通する説明は終わったので、僕とアイコさんのボディーボード組とマサヤとユウゾウさんのサーフィン組に分かれてレッスンを始めることにした。あまり近すぎても遠すぎてもお互いに甘えてしまったり、不安になってしまうので丁度良い距離感でお互いにレッスンをすることにした。特に海の中に入ったあとは4人固まってレッスンをしていてはサーフボードが流れて体を傷つけたりしてケガをしてまう可能性があるからだ。マサヤにも説明をして、お互いに1時間くらい練習をしたあとに最後の30分は全員が集まってお互いのレッスンの成果を見せるという方法をとることにした。

「それじゃあ、今から1時間は別々に分かれて練習をしましょう。1時間後にここに集合して今日の成果をユウゾウさんはアイコさんに、アイコさんはユウゾウさんに見てもらいましょう。二人とも相手にますます素敵と思われるように、楽しみながらがんばりましょう!」

「ハイ!」
「がんばります!」

相手が何をやっているのかは見ることができるけれど会話の内容までは聞き取ることができないくらいの距離で僕はボディーボードの乗り方について砂浜の上にボディーボードを置いて、その上に乗りながら説明をした。少し離れた場所でマサヤも同じようにサーフボードを砂浜に置いて、ユウゾウさんをその上にパドリングをする状態で寝かせてパドルと波の上でサーフボードに立つ練習をしているのが見えた。

ひととおりビーチでできる練習をしたあとに僕等は海の中に入った。ビーチから20メートルくらい入った場所の、もうすでに崩れてしまった白い波がくるあたりでボディーボードの上に寝転んでもらい僕が合図をしたら、思い切り足でバタ足をするようにしてこいでくださいと伝えた。

アイコさんは少し不安そうな顔をしていたけれど、僕に言われたようにビーチ側に顔を向けて真っ赤なボディーボードの上に寝転んだ。スープになってしまい、もう誰も乗っていない太ももくらいの高さの波が僕等の手前10メートルくらいまできていた。

「ハイ、こいで。こいで。こいで。」

大きな声で言うと、彼女はバシャバシャと水を叩くように慣れないフィンをつけてバタ足をはじめた。スープの白いが波がすぐ後ろまで来たので、スピードがついて波に乗ることができるように僕はボードの後ろを前に強く押した。

グイットいう感じがして、つかんでいたボディーボードが波に乗って走りはじめたのを手で感じながら僕はボードを離した。後ろから見守っていると真っ赤なボディーボードとその上に寝たアイコさんが一直線にビーチに向けて波と一緒に進んでいくのが見えた。彼女が最後まで乗っていって立ち上がったのを確認してから、僕は次に入ってきた厚いスープの波にボディーサーフィンで乗って彼女がいる場所まで行った。

さっきまで不安そうな顔をしていたアイコさんは楽しそうにケラケラと笑っていた。髪の毛は顔にくっついて顔の化粧は落ちかけていたけれど、それは子供のような純真な楽しそうな笑顔だった。

「すごいじゃないですか。1回目から波に乗れましたよ。どんな感じでした。」

「すごい、すごい。なんか雲の上をスーって滑っているみたいな感じだった。こんな楽しいの初めて。海って面白い。」

「そう、波の上をすべる感触はとても気持ちいいでしょ?それじゃあ、もう1回行きましょう。」

僕は彼女が海って面白いと言ってくれたことが嬉しかった。海の楽しさを、自然と遊ぶ気持ちのよさを感じてもらえばきっとボディーボードやサーフィンのことを大好きになってくれる。僕はシリンダーズがきっかけになって二人が海を大好きに、サーフィンとボディーボードを日本に帰ってからも続けて楽しむことができるようになってもらうことができたら、それが一番嬉しいと思った

振り返って、マサヤの方を見てみると丁度ユウゾウさんが波にのまれてサーフボードと一緒に1回転しているのが見えた。たちあがったユウゾウさんの顔ははずかしそうに笑っていた。マサヤもそこに進みよって笑っているのが見えた。

サーフレッスンは始まったばかりだ。レッスンの後にどんな成果がでるのかが僕はますます楽しみになった。


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幸せなオーストラリア永住権への道 106 二つのお願い

2007-07-03 20:25:19 | Weblog
僕とマサヤは朝のまぶしい太陽を避けて、ビーチの階段の脇にある小さな木陰の下でお互いに別の場所、別の境遇で、同じ季節に出会っていたアンドレアスについて話していた。僕にとっては兄弟のようなアンドレアスがマサヤにとっては嫌な奴で、そしてある9月の夜にそんなアンドレアスがマサヤのことを助けていた。僕は懐かしく、そして少しあたたかな気持ちに包まれていた。

「ねぇ、マサヤ。それで、その事件以来アンドレアスとは仲良くなったの?」

マサヤは鼻から一呼吸、大きく息を吸い込むとそれをすぐにため息に変えて口から吐き出した。

「それが、そのままにしてしまったんだ。本当ならお礼を言わなければいけなかったのに、アンドレアスが俺を助けた時に言った言葉が気になって素直にありがとうって言えなかったんだ。俺は彼をさけるように大学のジムには行かなくなったんだ。」

「俺には日本人の兄弟がいる。お前の半分は日本人なんだろ?だっけ?」

「ああ、嫌な奴だと思っていたいたアンドレアスに俺は助けられて、その上それが俺の半分が日本人だという理由だと考えると、どうしても気持ちの整理がつかなかったんだ。ごめん、永住ライフお前も日本人なんだよな。」

「いいよ、気にしないで。僕は日本人もオージーもノルウェー人も大好きだから。それに、僕は僕であることに感謝しているよ。」

「そうか、俺はそんなふうに考えたことはなかったな。いつも、どこか落ち着かないような気分になるんだ。まぁ、それはいいとして、結局そのまま何ヶ月も過ぎてしまったんだ。でも、ある日急に思い直してジムに行ったんだ。でもアンドレアスには会えなかった。次の日も、その次の日もジムに行ってみたけれどやっぱりアンドレアスはいなかった。
諦めて家に帰ろうと思いグリフィスのバス停に行く途中で偶然、前にアンドレアスが話していた彼のノルウェー人の友達を見つけたんだ。

どうしようかと思ったよ。そいつとは一度も話したことがなかったしね。でも、ずっと気になっていたから話し掛けたんだ。アンドレアスを知らないかってね。そうしたら、そいつは応えたよ。アンドレアスなら先月、国に帰ったって。」

「マサヤはアンドレアスにありがとうが言えなかったんだね。アンドレアスはきっと気にしていないと思うけれど、マサヤの中の気持ちは消化できなかったんだね。」

僕は、マサヤが元気がないのを見てマサヤの心の中にある何かが、ずっとそのまま残ってしまっているのかもしれないと思った。その時、僕の中に何かが突然、ひらめいた。

「ねぇ、マサヤ。ちょっとお願いがあるんだけれど。」

「うん、お願いって何?」

マサヤが自分の心の中の世界から、僕が急に出したお願いという言葉に反応して戻ってきた。意外な展開に少し驚いて、黒い大きな瞳をさらに大きくさせて僕の顔を見た。

「マサヤに手伝って欲しいことがあるんだ。今日、日本人の新婚さんにサーフィンレッスンとボディーボードレッスンをするんだ。旦那さんのほうは昨日、シリンダーズでサーフボードを買ってくれて、奥さんは今日、ボディーボードレッスンを受けておもしろかったらボディーボードを買いたいと言ってくれている、だから大切なお客さんなんだけれど、サーフィンのレッスンとボディーボードのレッスンを同時にするのは難しいだろ。だから、マサヤにサーフィンのレッスンをして欲しいんだ。もちろん、バイト代も払うし海には4人で一緒に行って基本を教えながら危険がないように見ていてくれればいいんだ。どうかな?」

マサヤは少し考えるような表情をした後に、眉を上に引きあげて軽くうなずきながらOKと言った。喜んで手伝うという雰囲気でもなく、かといって嫌だというわけでもなく、まぁわかった、やるよというニュアンスのOKだった。

「ありがとうマサヤ、助かるよ。それじゃあ3時にシリンダーズに集合で。お店で着替えてもいいし、面倒だったらボードショーツにサーフボードだけでも来てもいいよ。」

僕とマサヤは約束をすると、そろそろ学校に行かなければならない時間だと言ってお互いの家に帰って行った。マサヤにはバイト代を払うと言ったけれど、フリーレッスンをマサヤに手伝ってもらうこともマークに何も相談する前に僕一人で勝手に決めてしまった。こんなことは初めてだったので、あとでマサヤがお店に来る前にマークに話をしておかなればいけないと思った。

その日の学校はクラスメイトのタクヤが日本に帰る前の最後の授業だった。タクヤとはこの学校に入ってからほとんど同じクラスで付き合いが深かったこともあって正直少し寂しかったけれど、日本に帰って車の輸出入の仕事を始めるとキラキラした目で夢を語るタクヤの最後の挨拶を聞くと、頑張れタクヤと心から送り出すことができた。みんな何かに向けて、何かを得るために、この国に来て、そして次のステージに向けて旅立っていくんだ。

午後の最後の授業が終わり、クラスメート達と一緒に学校の前でタクヤと最後のお別れをした。いつまでも手を振りながら嬉しそうに歩いていくタクヤの前にはもう次の道があって、そこに向かってまっすぐに歩いていくように感じた。僕はタクヤを見ながら、もう一度自分の道を確かめた。僕の道は、ここにある。

そんな想いを感じながら、一度お店の前で立ち止まって大きく深呼吸をしてからシリンダーズに入っていった。

「おはよう、マーク。ちょっとお願いがあるんだ。」

ボディーボードサイドのカウンターの上に新聞を広げて、暇そうにしていたマークが僕の声を聞いて顔をあげた。

「なんだ、なんだ、永住ライフ。やってくるなりいきなりお願いか?それは、いったいどういう種類のお願いなんだ。
俺にかみさんや子供達がお願いがあるって言ってきたときは、そのあとは対外困ったことになるんだがな。」

「うん、今日これから昨日サーフボードを買ったお客さんにサーフィンレッスンとボディーボードレッスンをするのは知っているよね。その時に、助手を一人雇いたいんだ。お客さんに楽しんでもらって、レッスンの後に必ずボディーボードを買ってもらうから、その人にアルバイト代を払ってほしいんだ。」

「ほー、永住ライフ。フリーレッスンをするのにバイトを雇いたいのか?それは別にかまわんが、お前必ず売るといったよな?もしボディーボードが売れなかったときはどうするんだ?」

マークは何か面白いものを見つけたようないたずらな顔つきになって、カウンターの上に広げた新聞を半分に閉じた。暇つぶしに読んでいた新聞なんかよりも、マークにとっても楽しそうなことが起こったからだ。

「その時は、僕の給料からバイト代を払うよ。」

僕が、そう言い終えると同時にボードショーツにラッシュガードを着たマサヤがお店の中に入ってきた。
僕とマーク、そしてマサヤの視線が重なって、これから起こる新しい挑戦がスタートした。


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