わくわく CINEMA PARADISE 映画評論家・高澤瑛一のシネマ・エッセイ

半世紀余りの映画体験をふまえて、映画の新作や名作について硬派のエッセイをお届けいたします。

昆虫が世界を制覇!?「ビッグ・バグズ・パニック」

2009-11-25 19:08:57 | 映画の最新情報(新作紹介 他)

100019a「目が覚めると世界は巨大昆虫に支配されていた…」――なんていうヘンな映画を見てしまいました。題して「ビッグ・バグズ・パニック」(11月28日公開)。主人公のクーパー青年(クリス・マークエット)がオフィスで目覚めると、全身が蜘蛛の糸のようなもので覆われ、さなぎ状態に。そこから抜け出すと、ゴキブリと甲虫の中間のような巨大昆虫の大群に襲われる。そして被害者は、人間の頭をのせた巨大な蜘蛛と化す。クーパーは、生存者を引き連れて避難するが、好きな女の子が昆虫にさらわれて…というストーリー。放射能汚染や環境破壊で昆虫が巨大化した、などという屁理屈がないところがユニークです。
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 思うに、この映画は、「SF巨大生物の島」(61年)とか、巨大な蜘蛛が登場する「スパイダーパニック!」(02年)といった巨大生物映画のパロディなのです。主人公のクーパーは、遅刻や怠慢の連続で会社から解雇されたグウタラ青年、恋した娘からも相手にされないという、およそヒーロー像からはほど遠い存在。彼と行動をともにする人々も、お色気専門のお天気キャスターとか、どこかズレテいる父子など、オカシナ連中ばかり。とりわけ、クーパーの父親は、武器マニアの元軍人で、家には地下シェルターや短波ラジオなどを備え、戦争大好きの軍人グセが抜けずに、この危機を心から楽しんでいる、という具合。
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 脚本・監督は、高校時代から短編を撮り始めたという、アメリカ・インディペンデント映画出身のカイル・ランキン。よほどこの種の映画が好きなのか、まともな怪物映画や恐怖映画にはせず、ひとテンポずれたアクション・パニック・コメディに仕上がっている。当初HDで撮影される超低予算映画になるはずだったが、いつしか大規模な(?)作品になってしまったとか。デジタル効果スーパーバイザーが、「スターシップ・トゥルーパーズ」や「スター・トレック」を手がけたスタッフというので、つい見てしまったのだけど、CGで創造された巨大昆虫も全然コワクなく、ユーモラスなところに魅かれたのでした。

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「目が覚めると、庭の縁台は灰色猫の親子に支配されていた…?」


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