ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

アクトレス ~女たちの舞台~

2015-10-21 19:28:19 | あ行

素晴らしい!
映画と、女優に拍手したい。


「アクトレス ~女たちの舞台~」80点★★★★


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大女優マリア(ジュリエット・ビノシュ)は
有能なマネージャー、ヴァレンティン(クリステン・スチュワート)を伴って
ある授賞式のため
スイスのチューリッヒに向かっている。

マリアには、いま
自身の出世作である舞台のリメイク版への
出演オファーがきている。

だが、かつて自分が演じた役は
若い女優ジョアン(クロエ・グレース・モレッツ)が
演じることになっていた。

オファーを受けるかどうか悩むマリアだったが――。


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「夏時間の庭」(08年)オリヴィエ・アサイヤス監督作品。

女優と若いマネージャー、そして若い女優という
女3人が絡むドラマなんですが

いやいや、全然ドロドロじゃなく、でもリアルで深くて
ガチでおもしろい。


役者が“役者”を演じる映画って
よく役と自分自身が混じったリ、虚構と現実があいまいになったり……とか
混迷方向に行きがちじゃないすか?
(特に男性主人公ものに多い気が……。苦笑

この映画にはそういうことがないんですねえ。
終始、生身な“女優”がそこにいる感じで、
ひとときも現実から離れない。

ゆえに、女優業の大変さを、
ここまでリアルに痛感したのも初めてだなと。


かつて一世を風靡した大女優マリア(ジュリエット・ビノシュ)と
有能な若いマネージャー(クリステン・スチュワート)。

そしてマリアは昔の自分の当たり役を、
若い女優(クロエ・グレース・モレッツ)
取って代わられようとしている。


でもここに描かれるのは
若さへの嫉妬とか、過去の栄光への郷愁とか
そんな単純なものじゃあない。

もっとでかいもの
人間が向き合わねばならない自分自身や、
一人で立つ勇気、孤独を感じさせるというのかな。

大女優だって、マネージャーだって、いろいろ悩むんだけど
それに向き合う覚悟がにじみ出ているというか。
とにかく、この女性たちは
甘くなくってカッコいいんですわ。

特に
ビノシュとクリステン・スチュワートの関係は
尊敬と対等のバランスをうまく取っていて
サバサバと潔く、
見ていて気持ちがよかった。


感情や余韻を引きずらず
暗転でパスッと次に行く、場面転換も効いている。

唯一、合間に挿入されるアルプスの美景が
感傷を一手に引き受けているような。


しかし
「アリスのままで」でもうまいと思ったけど
クリステン・スチュワートって
本物ですよ、ホント。
特に、年上女性との演技合戦で輝くタイプなのかもね。


10/24(土)ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテほか全国で公開。

「アクトレス ~女たちの舞台~」公式サイト

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