ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

ハロルドとリリアン ハリウッド・ラブストーリー

2017-05-27 16:18:20 | は行

あの映画の、あの名シーンを生んだのは
このカップルだったのか!


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「ハロルドとリリアン ハリウッド・ラブストーリー」69点★★★★


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1960年代以降のハリウッド映画100作以上に関わり、支えた
すんごい裏方夫妻のドキュメンタリーです。


夫のハロルドは、絵コンテ職人。
脚本のイメージを視覚化するだけでなく
カメラで撮ったときの画角や構図もちゃんと計算して、絵を描く。

ヒッチコックの「鳥」のあのシーンも
「卒業」で足の間にダスティン・ホフマンが映るあのシーンも

演出の要といえる名場面は
すべて彼が描いたコンテのとおりだったのか!とびっくり。

裏方の仕事にスポットを当てるって、素晴らしい。
というか、もっときちんと、表に出すべき!
(ハロルドはのちに、プロダクション・デザイナーや美術監督として
映画にクレジットされるようになったけど)。


さらに
彼と60年以上連れ添った妻リリアンは
映画のリアリティの要となるリサーチャーとして大活躍。

その調査能力のすごさは関係者を表して
「CIAも欲しがるだろう」と言わせるほど。

インタビューに答える彼女は
もうオーバー80歳だけど
若々しく言葉も明瞭で、チャーミング。

出入りしていたトム・ウェイツのことを
「素敵なハスキーボイスで、
彼が話すことはみんな警察での自白みたいだったわ」なんて(笑)
言い得て妙!(笑)


二人の仕事の功績のすごさに加え、
夫婦のヒストリーにもグッとくる。

リリアンの生い立ちや、駆け落ち婚、そして息子のこと・・・
さまざまなアップダウンがあっても
二人は常に一緒にそれを乗り越える。

仕事への誠実さ、真摯さが
パートナーへの関係にも現れているのが
素敵なんですねえ。


本作の監督、ダニエル・レイムは学生だった97年にハロルドと出会い、
00年ごろから撮影をスタートしたらしいですが
このタイミングが本当によかった。

というのも
このころからハロルドは体調を崩し始めていたようなんです。
そして07年に亡くなった。

絵コンテを見せながら
嬉しそうに話をする彼を、カメラに残せたのはすごい。
人の歴史を記録するのはタイミングだとつくづく。

映画ファンには絶対楽しいし
「映画って、こうやって作られるのか!」と勉強になると思います。


★5/27(土)からYEBISU GARDEN CINEMAほか全国で公開。

「ハロルドとリリアン ハリウッド・ラブストーリー」公式サイト
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家族はつらいよ2

2017-05-25 23:51:40 | か行

シリーズ化は大正解!


「家族はつらいよ2」72点★★★★


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前回、熟年離婚問題でもめた
平田家の主、周造(橋爪功)。

車好きの周造は、今日も車を運転して出かけていくが
最近、車体にへこみや傷が目立ってきた。

「重大事故を起こす前に、お父さんから免許を取り上げないと!」と
長男の嫁(夏川結衣)や長女(中嶋朋子)らは心配するが

周造は
「死ぬまで運転を続ける!」と激怒していまい――?


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山田洋次監督による
“究極のニッポン家族喜劇”第二弾。


シリーズものにはどうしても懐疑的になってしまうワシですが
これに関しては、大正解だと賛同します。


「家族はつらいよ」に続き、
どこにでもありそうな、
家族のゴタゴタを社会問題に絡めて描く
そのネタが絶妙で

今回は高齢ドライバー問題に
下流老人の孤独など、格差社会の問題が絡む。


一家の主(橋爪功)と同居するひねくれた長男(西村雅彦)と、
しっかり者の美人妻(夏川結衣)。

理路整然でおっかない長女(中嶋朋子)と
受け身キャラのその夫(林家正蔵)。

お人好しの三男(妻夫木聡)に
これまたきちんと心持ちの良い嫁(蒼井優)。

前回でお披露目された一家のキャラクターがすっかり定着し、
サザエさんを見るくらいに、安心していられる(笑)

高齢者や死にまつわる
タブーそうな笑いが全然オッケー!なのも
やっぱり監督の年の功と品性で。

顔を合わせれば衝突してしまう彼らを見ながら
自分を客観的に振り返ったり、
普段見過ごしちな“幸せ”を、ホロリと感じるきっかけにもなると思います。

「男はつらいよ」の寅さんが、時代に求められたように
この家族コメディは、いまの時代を写し、
みんなに求められているのだ!


★5/27(土)から全国で公開。

「家族はつらいよ2」公式サイト
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2017-05-24 23:49:53 | は行

まぶしい。
まぶしすぎて痛いほどだ。


「光」74点★★★★


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美佐子(水崎綾女)は
視覚障がい者に向けた「映画の音声ガイド」をしている。

音声ガイドは、映像を言語化するのが仕事。
「場所」「主人公の身なり」「表情」そして「心境」までも
言葉にしなければならない。

ある日、彼女は音声ガイドのモニターに来た
弱視のカメラマン雅哉(永瀬正敏)と知り合う。

彼の鋭く、遠慮ない指摘に「むっ」とした美佐子だが
次第に、雅哉の写真に惹かれていく。

だが、雅哉の視力は、確実に失われつつあった――。


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河瀬直美監督×永瀬正敏が「あん」に続き、再タッグ。

視力を失いつつあるカメラマンと女性の邂逅を描き、
しかし“お涙頂戴”な想像を、軽く越えますんで、
ぜひ、おすすめです。


まず
画面から溢れる光が、観客の目を射る。
まぶしくて痛いほどで、
これ、日光を撮るのに、かなり危ない
ギリギリの線では?と思うほどですが(笑)。

でも、その「光」は
それを失いつつある人の、最後の光であり
映画に必要不可欠なものなんです。


さらに、この映画の出色は
映画を言葉で説明する“音声ガイド”という仕事を取り上げたこと。

見ると、光の洪水よりも
まずヒロインの発する言葉の洪水にクラクラする。

音声ガイドとは、
画面に出てくるあらゆる物や人の特徴、動作、
「登場人物が、そのときどう思ったか?」の心情までを
すべて言葉に変換する仕事で

言葉が多すぎてもダメ、少なすぎても伝わらない。

むっずかしそう・・・


最初に彼女のつけたガイドで映画を見た
永瀬氏演じるカメラマンは
「(障がい者を)『助けてあげよう』という思いが余計だ」と言うんですね。

でもここで、彼女は
「そっちこそ、想像力がない」と言い返す。

ここで観客は「お!」となると思うんです。


彼女は実に直截なキャラクターで、
障がい者にも、はっきり物を言う。

彼女は(無意識かもしれないけれど)
「共感なんてできっこないほどの不幸を背負った人」に、
わかったような顔をしないんですね。

真っ正面から対等に、相対しようとする。

その様子がぶっきらぼうでも、すがすがしく清らかで、
そこがいい。

彼女のまっすぐな光が、
閉ざされたカメラマンの心を照らしていくんです。

障がいを持った人に、どう向き合うべきか。
その痛みを想像するとはどういうことか。

この映画は個人の感情を深く潜りつつ、
観客の、社会のまなざしをも射ている。

見事だと思います。


“逃げなかった”ラストも素晴しい。

カンヌではスタンディングオベーションだったそうですが
私も立ち上がって拍手いたします!

そうそう
映画com.さんでも、応援レビュー書かせていただきました。
追っつけ見られるのでは、と思います~


★5/27(土)から全国で公開。

「光」公式サイト
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光をくれた人

2017-05-21 23:55:44 | は行

俳優が、風景が、
赦しの尊さが、美しい。


「光をくれた人」71点★★★★


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1918年。トム(マイケル・ファスベンダー)は
戦争で傷を負い、
オーストラリア西部にある
孤島の灯台守の仕事に就く。

赴任前、
孤島に最も近い岬の町を訪れた彼は
島の娘イザベル(アリシア・ヴィキャンデル)に出会う。

心を閉ざしていたトムに
美しく快活な彼女は、光を与えてくれた。

そして、二人は愛し合うようになるのだが――。


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「ブルー・バレンタイン」監督による
久々に王道な愛と哀しみのドラマです。

孤独な灯台守(マイケル・ファスベンダー)と
美しい島の娘(アリシア・ヴィキャンデル)。
愛し合うようになり、これ以上ないほど幸せそうな二人に
いったいなにが起こるのか――?と思っていると、
これか!という驚き。

その顛末には、単なるメロドラマを越える深みがあり
なかなかよい映画でした。

でも
この美麗なキャストに、このビジュアルじゃ
やっぱりメロドラマと思っちゃうよね~ということで
ネタバレにならないように・・・ご紹介しますと
(予備知識ナシ派は、ここまでね!笑)








孤島で二人きりで暮らす
灯台守と妻は、赤ん坊を失ってしまうんです。
そんなときに
島に赤ん坊が流れ着くんですね。

良心のかたまりのような夫は「すぐに届け出なければ」と
至極まっとうな対応をしようとするけれど

とにかく、奥さんがもう、この子がいないと壊れる!という感じなので
(そのガラスのような脆さと危険さを
アリシア・ヴィキャンデルがよく表現している)

散々逡巡したのちに夫も
その子を自分の子としてしまう。

だが数年後。
夫は、偶然、赤ん坊の実の母親を知ってしまう。

彼女の苦しみに接した彼は、
良心の呵責にさいなまれ

全てを打ち明けるのか、否か――?!という展開です。


誰も悪ではないゆえに
苦しい話で

どう収拾をつけるのか?と思いますが
うまいと思いました。


「光をくれた人」は、灯台守にとって妻であり、妻にとって灯台守であり
流れてきた命であり、
さらに、もうひとつ意味がある、というね。

それにやっぱり、M.ファスベンダーにA.ヴィキャンデルって
この上なく美しいカップル。しかも演技力はお墨付き。

その上、レイチェル・ワイズも参戦してるし。
美しい演技派たちの競演を堪能いたしました。

ちなみに
「ティッシュ会社の株価があがるほど」という触れ込みですが
よい映画だったけど、ワシは泣きはしなかった(笑)


★5/26(金)からTOHOシネマズ シャンテほか全国で公開。

「光をくれた人」公式サイト
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オリーブの樹は呼んでいる

2017-05-20 23:34:29 | あ行

そうか、これ
夫婦共同作業ね(笑)


「オリーブの樹は呼んでいる」60点★★★☆


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スペインバレンシア州。

20歳のアルマ(アンナ・カスティーリョ)は
オリーブ農園を営む祖父と、幼い頃から仲良しだ。

しかし、数年前に父が樹齢2千年のオリーブの樹を売ってしまってから
祖父は口を聞かなくなり、心を閉ざしてしまった。

ついに食事もしなくなった祖父を見て
アルマは考える。

「オリーブの樹を取り戻せば
おじいちゃんを救うことができるかも?」

そしてアルマは
祖父のオリーブの樹を探す旅に出るが――?!


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「天使の分け前」「わたしは、ダニエル・ブレイク」などケン・ローチ監督とのコンビで知られる
脚本家ポール・ラヴァーティと

「エル・スール」の少女役から
監督になったイシアル・ボジャインのタッグ。

この二人、夫婦なんですよね。
で、3作タッグを組んでいるんですね。


で、お話は
樹齢2千年という貴重なオリーブの樹が伐採されて
「環境保護」を喧伝するような企業に売られている・・・という
なんじゃそりゃ!な状況を訴えつつ、

そうしないとやっていけない
農家、ひいてはスペイン全体の
苦しく、閉塞した状況を描いているんですが

うーん、これは生理的感覚によるものなのかもしれないけれど
冒頭から
緩急をつけたカットバックや音楽が
ちょっとワシにはしつこくて
どうもリズムについていけなかった。

もぎ取られてしまったオリーブの樹、おじいちゃんとの思い出・・・と
過去を振り返るばかりのヒロインに
感情移入しずらかったというのもある。

やっぱり映画って
監督次第というか、監督によって違うなあとか
当たり前なことを思ったり。

ただ、オリーブの樹が、こんなに堂々たる大木になるんだ!というのは
かなり驚きだった。

うちのベランダのひょろりとしたオリーブも
2千年で、こうなるのか?・・・(いや、ならなそうw)


★5/20(土)からシネスイッチ銀座ほか全国順次公開。

「オリーブの樹は呼んでいる」公式サイト
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