ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

ブルックリン

2016-06-30 23:56:24 | は行

この“女の決断”、
「タラレバ娘」たちに(©東村アキコ)に
見せたい(笑)


「ブルックリン」80点★★★★


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1950年代。

アイルランドに暮らすエイリッシュ(シアーシャ・ローナン)は
狭い世界から飛び出す決意をし、
ニューヨーク・ブルックリンに渡る。

環境にも人にもなじめず
ホームシックにかかっていたエイリッシュだが
ある神父の勧めで、大学で学び始める。

さらにあるパーティーで
イタリア系の青年トニー(エモリー・コーエン)と出会い――?!


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2016年アカデミー賞、作品賞、主演女優賞、脚色賞ノミネート作。

少女の成長物語として、ベーシックなようで
意外に意外な展開が新鮮で

「17歳の肖像」に出合ったときのような
うれしさを感じました。


アイルランドの田舎娘が、ニューヨークにやってくる。

心細げな彼女は、勉強に目覚め、
キャリア方向に向かうんですが、
同時に彼氏が出来て、求愛される。

「さあ女の人生、キャリアを取るか、結婚を取るか?」

・・・と、普通はなりそうなんだけど
これが意外な方向へ。

さらに
ある事情で故郷アイルランドにいったん戻ると
そこでも新たな展開が――?という流れ。


すっかり垢抜けて故郷に帰ったヒロインが
「ここでも、いいかも」と一瞬思う、あの感覚、
故郷を出た人間、誰もが共感できると思います。

で、そのあとの
あのセリフがまた「クーッ!」と、痛烈に響くんだよなあ。


二つの運命の間で揺れ動くヒロインは
普通なら相当“イヤな女”になりそうなんですが

シアーシャ・ローナンが
もっさり、ぽっちゃりした娘によく化けていて、

心情描写も丁寧なので
感情移入がしやすい。

「つぐない」(07年)から9年。
目覚ましい成長と新天地ですね。


なにより
プレス資料にある、この言葉が
端的にこの映画を表現していると感服した。

「誰を愛するかを決めることが、どんな自分になりたいかという答えになる――」

プレス資料って
本当に、ものすごくよく出来ているんですよ。
リスペクト!


★7/1(土)からTOHOシネマズ・シャンテほか全国で公開。

「ブルックリン」公式サイト
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フラワーショウ!

2016-06-29 23:28:15 | は行

実在の女性造園家がモデルです。


「フラワーショウ!」68点★★★☆


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アイルランドの田舎で育ったメアリー(エマ・グリーンウェル)は
自然と共生する庭造りを夢見て
憧れの女性ガーデン・デザイナー
(クリスティン・マルツァーノ)の面接を受ける。

メアリーのスケッチを見た彼女は
その才能を見抜くが
「とりあえず、お試しね」とバイト採用。

そして
彼女のアイデアをパクってキャリアを重ねていく。

努力の報われない日々を送っていたメアリーは
自分のデザインを試す
「チェルシー・フラワーショー」に参加しようとひらめくが――?!



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1974年、アイルランド生まれの
女性造園家メアリー・レイノルズをモデルにした
アイルランド映画です。

自然本来の生命力と美しさを
提案した彼女そのままに

映画も素朴。


例えば
「ヴェルサイユの宮廷庭師」のような
盛り上げ方とは、全然違って

アイルランドの自然の美しさも、
野草をふんだんに使った、自然のままがステキな庭も
描写が超・素朴(笑)。


もうちょっと絵的に盛り上げてもよさそうなもんなんですが
それをしない。


ショーに出品するまでのカウントダウンも長いし(笑)
恋愛エッセンスの要となる
植物学者を追って
エチオピアに行くくだりも、長すぎるし(苦笑)。


主人公の邪魔する
“いじわる女”も登場するんだけど、
そこまで悪さはしなかったり(笑)と


もろもろ
映画として
うまく見せるには不器用すぎるんですが

実はテーマに合っているのかもしれない。
そこが美点なのかもしれないなと
思い返すのでありました。


★7/2(土)からヒューマントラストシネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国で公開。

「フラワーショウ!」公式サイト
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アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅

2016-06-27 23:50:08 | あ行

ワシはジョニー・デップの味方ですよ!
(映画と関係あるのか?笑)


「アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅」65点★★★☆


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前回の冒険から3年。

現実世界に戻ったアリス(ミア・ワシコウスカ)は
亡き父の後を継ぎ、船長として活躍していた。

だが、航海を終え、ロンドンに戻ったアリスは
自分を船長から退かせようとする、厳しい現実に直面する。

窮地に陥ったアリスは
あるきっかけで、再びワンダーランドへと導かれる。

だが、ここでもアリスは難題に直面する。

あのマッドハッター(ジョニー・デップ)が
命の危機にあるというのだ――?!


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前作「アリス・イン・ワンダーランド」(10年)から6年を経て、
完成した続編。

前作でアリス演じるミア・ワシコウスカの
可憐さや、ブルーのドレスにヤラれたクチですが(笑)

今回も
映像の完成度は、期待どおり。

アリスが成長し、女性船長になっているという
導入に頼もしさを感じてよい。


しかし、今回はそのアリスに降りかかる危機が
かなりディープ。


現実世界では、船長の座を剥奪されそうになり
さらにワンダーランドでは
旧友ハッターの危機に直面する。

その
ふたつの問題が、並行して進んでいきます。


話も考えてあるのだけれど、
とかく“タイムトラベル”が絡むネタは
整合性に気を取られ、ややこしいのが難点なんだよね。


ヘレナ・ボナム=カーターの赤の女王も、
アン・ハサウェイの白の女王も、
豪華なんだけど、
前作ほどのインパクトにかけるのが、惜しい。

それでも
チェシャ猫は相変わらずカワイイし(笑)
ミア・ワシコウスカが、この6年、どれだけ羽ばたいたか、を思うと
感慨深いものがありました。


★7/1(金)から全国で公開。

「アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅」公式サイト
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ふきげんな過去

2016-06-22 23:56:12 | は行

自然なセリフと呼吸がうまい!
かなりウケました。


「ふきげんな過去」72点★★★★


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18歳の果子(二階堂ふみ)は
北品川にある食堂の娘。


毎日が死ぬほど退屈なのに
抜け出す術もなく
日々、不機嫌そうに、悶々としている。

そんなとき
果子たち家族の前に、
18年前に死んだはずの叔母(小泉今日子)が現れる。

「あたし、生きてたの」。

いったい、どういうことなのか?!


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劇団「五反田団」主宰、前田司郎監督作品。

「生きてるものはいないのか」
(12年、石井岳龍監督)の原作者であり、
「横道世之介」(12年、沖田修一監督)のシナリオも
監督と共同で書いている前田氏。


本作には自然なセリフ回しと呼吸のよさ
タイミングのよい笑いがあって
かなりウケました。
「うまい!」と膝を打つような。


死んだはずの人間(小泉今日子)が現れて、
それが失踪だったのか?いや、幽霊なのか?
その判断もわざとあいまいで

かつ
登場人物は、みんなちょっとおかしな人。

そうした
舞台っぽさや、ファンタジーっぽさが
映画にうまく転換されているのがいい。


登場人物を、むやみやたらに
叫ばせたりしないしね。
(舞台っぽさが、うまく映画につながらないと、そうなりがち。苦笑)


ひと夏の、日常の描きかたも、気持ちよくて
舞台となる古い木造家屋の土間で
一家が豆をむく、
そんな団らんが心地よかったです。


二階堂ふみさんの
ボヤきな演技も極上だった。


とてもオリジナルな作品なんだけど、
ワシにはどこか
「岡崎京子」が匂ったんですよね。
特に「リバーズ・エッジ」と「pink」。

舞台となるのがリバーサイドで
中洲のような原っぱで死体探しをしたり、
“ワニ”が話題になったりするのもあるけど

なにより全体を覆う少女=二階堂ふみの
どうしようもない「退屈」がそう思わせるのかもしれない。

と、思ってみていたら
エンディングの歌を歌ってるのが
ピチカート・ファイブの「Twiggy Twiggy」を作詞&作曲をした方だった!

あながち、ハズしてないかも?(笑)


★6/25(土)からテアトル新宿ほか全国で公開。

「ふきげんな過去」公式サイト
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ホース・マネー

2016-06-17 23:45:51 | あ行

「ポルトガル、ここに誕生す」
最も難解だったペドロ・コスタ監督の、
またしても謎かけのような作品。


「ホース・マネー」68点★★★☆


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その男ヴェントゥーラが、暗い階段を下っている。
白衣の男がやってきて、彼を連れ戻す。

ここは病院のようだ。

病室で医者に質問されたヴェントゥーラは
いまは1975年で、自分は19歳だと答える。

カーネーション革命の翌年、
1975年、スピノラ将軍がクーデターを起こした日に
革命軍によって、
ここに連れてこられたという。

そして彼は自分の過去を遡る。

移民としてやってきてリスボンのスラムに暮らし、
工事現場で働いたあのころ。

あれから何十年が経ったのだろうか――。


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1959年、ポルトガル・リスボン生まれの
ペドロ・コスタ監督作品。

「ポルトガル、ここに誕生す」(12年)の短編「スウィート・エクソシスト」と同じ
ヴェントゥーラが主人公。
あのエレベーターのシーンも組み込まれています。


まず
カラヴァッジョや、ゴヤの絵画を思わせる
強烈な陰影をつけた、インパクトある映像がすごい。

ほとんどが闇!
そのなかでうごめくヴェントゥーラの姿が
亡霊のように
網膜にがっちり焼き付けられます。


映画は詩のようで、謎かけのようですが
辛抱しているうちに、
いまはおそらく現代の病院にいるベントゥーラが
「どこに」とらわれてしまったのかがわかってくる。

彼は移民としてやってきて
工事現場に努めていたけど
カーネーション革命後、
排除され、裏切られ、仕事を失った。

(おそらく赤シャツ男が“敵”の象徴なのだろう

そして
一緒に働いていた甥や兄弟も不幸に会い、
妻も子供たちも失った。

息を潜め続けていた彼は
10代のまま、その過去に閉じ込められ
いまその生涯を
ここに焼き付けようとしているのかなと。

難解ではありますが
評論も多いので、読み解く楽しさはあると思います。



「懸命に働いても、搾取され、僅かな年金で生きている
――劇中で歌われる歌が、
よその国の話ではないと感じられて
「うっ・・・」と痛かったです。


★6/18(土)から渋谷ユーロスペースほか全国順次公開。

「ホース・マネー」公式サイト
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