ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

マギーズ・プラン 幸せのあとしまつ

2017-01-20 23:53:06 | ま行

番長の2014年ベスト映画
「フランシス・ハ」の女優が主演。
こちらも鋭く、おもしろい。


「マギーズ・プラン 幸せのあとしまつ」76点★★★★


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大学でアーティストのコーディネーターとして働く
マギー(グレタ・ガーウィグ)は
仕事が表すように、面倒見がよい、いい女子。

しかし、恋愛が長続きしないのが悩みの種で
合理的な彼女は、友人(トラヴィス・フィメル)に頼み
シングルマザーになろうと試みる。

が、そんな矢先、マギーは大学で学者のジョン(イーサン・ホーク)と出会う。
いいムードになる二人だが、
彼にはバリキャリの妻(ジュリアン・ムーア)がいた――!


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「50歳の恋愛白書」レベッカ・ミラー監督。
正直、「50歳の~」は2012年のワーストに入ってますが(苦笑)

これは
「フランシス・ハ」の女優グレタ・ガーウィグのおかげ、おかげ。
インディペンデントっぽい“いまっぽさ”が加わっていて、すごくいい。

なにがいいかというと、
まず単なる「好きだ」「恋だ」という恋愛話でなく
人間の性格分析や、相手との相性における役割の違いなど、
人間関係の構造をしっかり抑えて、愉快にリアルに描いている点。

いや、そんな難しいことじゃなく
見れば「あるある!」と納得してもらえると思います。


マギー(グレタ・ガーウィグ)は「ついつい人の面倒を見てしまう」タイプで
彼女と恋に落ちるジョン(イーサン・ホーク)は
「我が道をゆく、人に伸ばしてもらう」タイプ。

でもジョンは自分より強烈キャラな妻(ジュリアン・ムーア)の前では
「彼女をサポートする側」に回っている。

人間って相手との関係でキャラを変えたりしてるし、
そこには、必ず「我慢」も生じる。

そこのストレス度合いで
関係が続くか、続かないか、が判断されるんじゃないかなあ。

まあ、そんな登場人物の描写とキャラ設定がうまいので
マギーとジョンの関係を単なる「不倫」「略奪」とは思わないし

その後、「元妻に、ジョンを返そう」という意外なる展開にも
共感できるんです。


なぜ、真面目な私ばかりが、割りをくうの?
別に人の面倒を見る役をしたいわけじゃないんだけど・・・。

そんな不器用なヒロインを
大またでドシッと立つグレタ・ガーウィグが好演してます。
え?褒め言葉になってない?


★1/21(土)から公開。

「マギーズ・プラン 幸せのあとしまつ」公式サイト
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沈黙-サイレンス-

2017-01-18 21:03:27 | た行

みんな、声がいい。
耳をすませて、ぜひご堪能あれ。

「沈黙-サイレンス-」70点★★★★


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17世紀。
江戸初期の日本では、幕府による
激しいキリシタン弾圧が行われていた。

ポルトガルの若き宣教師ロドリゴ(アンドリュー・ガーフィールド)と
ガルペ(アダム・ドライバー)は

日本で捕らえられ、棄教(=宗教を捨てること)したと噂される
師匠(リーアム・ニーソン)を探しに
長崎の島にやってくる。

彼らは弾圧に耐え、教えを貫こうとするキリシタンの人々に迎えられるが
だが、状況は思いのほか厳しかった――。


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遠藤周作原作×マーティン・スコセッシ監督。

神とは、信仰とは、をテーマに
歴史を批難するわけでも
まして何かを押しつけるわけでもない
監督の冷静と達観が映画を凜と立たせています。

しっとり湿り気を持つ映像も
“日本的なるもの”を違和感なく、表現している。


なぜ宣教師たちは来たのか? 布教とは何か?
なぜ彼らは、こういう運命を辿ったのか?
――キリシタンの歴史を初めて深く知りました。

自らも命がけで、ましてや信者の命も奪いながら
布教する意味とはなんなのだろうか?

観る人も主人公の宣教師と同じく、悩み、揺れると思うんです。

で、彼らに「棄教」を迫る
長崎奉行の井上筑後守(イッセー尾形)と通訳の浅野忠信に
我々も説得される。

「日本じゃキリスト教は無理なんだから、意固地になるのはやめなさい」
「日本は沼地なの。宗教は根付かない!」――なるほどねえ・・・。


その説得を担っているのが
役者たちの“声”のよさ。

全員が声でしっかり演技をしていて
目をつぶって聞いていても気持ちがいい(いや、寝てたわけじゃないですぞ!笑)

アンドリュー・ガーフィールドの
ささやきのような祈りの声がナレーション代わりだし
キーマンとなるリアム・ニーソンの声もいいし、

イッセー尾形、浅野忠信、両氏もそう。

結局は
宗教も思想も「相手に押し付けるな」ってことで

改めて、いまの時代この話は
大きな意味を持つなあと思いました。


★1/21(土)から全国で公開。

「沈黙 -サイレンス」公式サイト
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ザ・コンサルタント

2017-01-16 23:48:26 | さ行

これは全米の評判通りおもしろい!


「ザ・コンサルタント」78点★★★★


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シカゴ近郊の田舎町で小さな事務所を構える
会計コンサルタント、クリスチャン・ウルフ(ベン・アフレック)。

数字に関しては天才的だが、コミュニケーション力はゼロ。
さらに趣味の狙撃の命中率は100%という
変わった男だ。

そんな彼のもとに大企業から
調査依頼が持ち込まれる。

企業の経理担当者デイナ(アナ・ケンドリック)が
使途不明金に気がついたのだ。

同じころ、アメリカの財務省の分析官(シンシア・アダイ=ロビンソン)は
上司(J・K・シモンズ)から
麻薬組織や武器商人などを顧客に持つ“闇社会の会計士”として知られる
ある人物を探すように命じられていた。

写真に写ったその人物は、たしかにウルフだった――。


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これは評判通り、おもしろい!


ベン・アフレックが謎の会計士に扮するサスペンス・アクションで
まずは彼のキャラ立ちがバッチリ。

数字や射撃など
得意分野には驚異的な能力を発揮する天才だけど
コミュ能力はゼロ。

自分が決めたルールに忠実で予定の変更に弱い――などなど
あきらかに「うん、うん」な特徴を持っていて
ミステリアスだけど完璧じゃない。

また
ところどころに彼の少年時代の映像がはさまるんだけど
自閉症らしき兄と、それを見守る弟の二人が写っていて
「ん?彼の子ども時代はどっち――?」と惑わせる仕掛けもうまく

冒頭からの伏線も着実に回収されていくので
サスペンスとして気持ちがいいんですね。

最後まで「お!」と思わせてくれます。


しかも
闇社会部分の描写より、
昼間の彼の「超・会計士」っぷりのおもしろさのほうが比重が高いので
バイオレンス推しでなく、ハード過ぎることないのもよかったなー。

コミュ障の彼が、わずか心を開く
マジメな経理担当アナ・ケンドリックもナイスキャラ。
最近は彼女が出る映画も、おもしろいの法則。


★1/21(土)から全国で公開。

「ザ・コンサルタント」公式サイト
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本能寺ホテル

2017-01-12 23:28:55 | は行

綾瀬はるか氏のおとぼけが期待どおり。


「本能寺ホテル」58点★★☆


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現代。

倉本繭子(綾瀬はるか)は
結婚を前に、彼氏の両親に会うために京都にやってきた。

予約の手違いでホテルを探すはめになった彼女は
レトロな「本能寺ホテル」を見つけて、宿泊することに。

だがエレベーターを降りると、
そこは1582年の本能寺。

繭子はそこで「本能寺の変」の前日の、
織田信長(堤真一)に会うことになり――?!


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脚本制作にまつわる
諸処事情をツイッターで目にしていたので
鑑賞前から相当にモヤッとしてしまいますが

映画に、まして俳優に罪はありません。
(とか考えちゃうところがすでに罪なんですけど!泣

映画としては
綾瀬はるか氏らしいおとぼけが期待どおりで
歴史への興味の第一歩になりそう。

まあ歴史オンチなワシも、この映画で実際
「本能寺の変」をググったわけですが
本当に諸説あり、謎ありで
ミステリーの題材になる要素が満載なんですねえ。

それを考えると
もっと重層に複雑なミステリーでもよかった気がする。


話は現代に生きるヒロインがひょんなことから
本能寺の変の前日にタイムスリップし
行ったり来たりする・・・というものだけど

歴史のナゾ、というよりは
特にやりたいことも見つからず、
なんとなーく就職し、なんとなーく結婚することになった
ヒロインの“自分探し”的要素が強いんですね。

テンポもややスローで
もそっと書き込みと、厚みが欲しかったなと感じました。

ただ意外に「京都観光」の要素があって
行きたくなるのがいいかも。

金平糖の店とか、有名だもんね。


★1/14(土)から全国で公開。

「本能寺ホテル」公式サイト
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ネオン・デーモン

2017-01-11 23:59:48 | な行

「ドライヴ」監督の新作です。


「ネオン・デーモン」70点★★★★


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モデルを目指して田舎町からロサンゼルスに出てきた
16歳のジェシー(エル・ファニング)。

本人は恥ずかしそうにオドオドするばかりだが
その美しさと存在感は
周囲が息をのむほど「完璧」だった。

すぐに有名カメラマンやデザイナーに見出された彼女は
成功を手にすると思えたが――?!


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田舎から出てきた無垢な少女モデル=エル・ファニングの
息してるだけで危うい
その存在感から、マジで目が離せない。


エル・ファニング自身は何もしていないのに
周囲に及ぼす、緊張感。
これは彼女の“不安定な完璧さ”で
成り立ってると思います。



「ドライヴ」(11年)
で心酔させ
「オンリー・ゴッド」(13年)で突き落とした(笑)
1970年、デンマーク生まれ、
ニコラス・ウィンディング・レフン監督。


この人の世界は
本当に徹底してるなあ・・・と絶句しますね。

超越と美と悪趣味の、きわどいバランス。

悪趣味一歩手前のところでやめておけばいいのに、
そこを超えちゃうところが
本物のヘンタイなんだろうなあと(笑)

モチーフ的に
岡崎京子氏の「へルタースケルター」を想起させる点も興味深く。


冒頭の衝撃的なシーンからつかまれるし
(これが「やられた!」感、満点)

非常に稀有な映画なんだけど、
ただ、残るのは美の余韻と感覚・・・なんだよね。

ストーリーが弱いのが、ちと不満ではありましたが
たしかに“美”を見せてもらいました。


★1/13(金)からTOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国順次公開。

「ネオン・デーモン」公式サイト
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