ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

サラエヴォの銃声

2017-03-27 23:50:56 | さ行

ダニス・タノヴィッチ監督が
故郷サラエヴォで初めて撮った作品。


「サラエヴォの銃声」67点★★★☆


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サラエヴォ事件から100年の記念式典のため
老舗の「ホテル・ヨーロッパ」にさまざまな人々が集まってくる。

ある女性ジャーナリストは
ホテルの屋上で教授にインタビューをしている。


支配人のオメルは
VIPである俳優を迎え入れ、

美人ホテルウーマンのラミヤは
厨房のコックから言い寄られ
迷惑そうだが、変わらず
テキパキと仕事をこなしている。


だが、ホテルの経営は
実は悪化していた。

そしてこのタイミングで賃金未払いに抗議する
従業員たちのストが行われようとしてるのだが――。


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ダニス・タノヴィッチ監督の新作。

サラエヴォ事件から100年の記念式典の舞台になるホテルでの
1日の出来事を、さまざまな人の視点から追う群像劇。


ホテルウーマン役のラミヤ(スネジャナ・ヴィドヴィッチ)は美人だし、
フランス人俳優、ジャック・ウェバーも活き活きしてるし
さすがの“世界標準”なんですが

いかんせん
「サラエヴォ事件なんて、知ってるよね当然?」な体で進むので
事件や、サラエヴォの歴史をある程度知らないと
誰と誰が対立しているのか、
いや、そもそも何の口論をしているのか「??」となってしまい
映画の意図がちょっとわかりにくいのがカナシイ。

まあ映画でも
インタビューに答える教授とかが
少し解説してくれてはいるんだけど・・・
理解力が低くてスミマセン。


資料によりますと
サラエヴォ事件とは、1924年6月28日に発生した事件。
オーストリア=ハンガリー二重帝国の皇太子と妻が
サラエヴォ訪問中にボスニア系セルビア人プリンツィブによって
射殺されたもので

これが
第一次大戦の引き金になった――そうです。

えーと、ぜひ
みなさん、学んでください!
(お前はいーのか。苦笑


★3/25(土)から新宿シネマカリテにて「汚れたミルク/あるセールスマンの告発」と連続公開。

「サラエヴォの銃声」公式サイト
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標的の島 風(かじ)かたか

2017-03-24 23:48:22 | は行

やっぱり、この映画によく出てくる石嶺さんが
いまニュースになっている方か。

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「標的の島 風(かじ)かたか」70点★★★★


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「標的の村」
「戦場ぬ止み」
などで
沖縄の現状を訴え続ける、三上智恵監督の新作ドキュメンタリー。

沖縄での闘いドキュメンタリーとも
長い付き合いになってきました。


今回も涙なしでは見られないというか。
冒頭、1分で泣けてきます。悔しさと怒りで。

「風かたか」は「風よけ」という意味で、
2016年にうるま市で起こった
元米海兵隊員による女性暴行殺害事件の追悼集会で使われる言葉。

まだ記憶生々しい事件を思いだし
マジで憤怒がこみあげてきます。


今回は
宮古と石垣で進んでいる
大規模な自衛隊駐屯計画を大きく取り上げている。

「基地ができ、武器がそこにあれば、敵に標的にされてしまうんですよ!」

反対運動をする住民たち――今年1月に市議にもなった石嶺香織さんら
母親たちを中心とした活動に対し、

駐屯に賛成の住民が多数いることも
重たい事実なんだよね。

賛成派は言うんです。
「宮古では学校もどんどん閉校になっている。自衛隊が来れば学校も動く。
先生たちにも仕事ができるんだよ」って。

これ、
飲食業者や商店主も同じ思いだろうと思う。
たしかに、宮古島、だいぶ行ってないし
地元の産業が苦しい状況も目に浮かぶんですよね・・・。


小さな島で暮らす人々が
引き裂かれてしまうような苦しさを感じました。


さらに
高江のヘリパッド建設に抵抗する人々も映る。
つい先日、5ヶ月間もの拘留ののち
保釈された運動のリーダー、山城博治さんもクローズアップされていて
まさに、いま起こっていることが
映っているドキュメンタリーです。


シリーズをとおして監督に
標的となるのは“村”であり、沖縄全体=“島”なんだと教えてもらったわけですが
今回は
「いや、アメリカにとって、日本列島全部が捨て石なんだよ」という
言葉にゾッとしました。
そうなんだろうね、実際。


★3/25(土)からポレポレ東中野で公開。ほか全国順次公開。

「標的の島 風(かじ)かたか」公式サイト
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未来よ こんにちは

2017-03-23 21:35:40 | ま行

ワシ、これDVD買う(笑)


「未来よ こんにちは」77点★★★★


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パリの高校の哲学教師ナタリー(イザベル・ユペール)は
人生を折り返した50代。

二人の子どもたちは独立し
同じ哲学教師の夫(アンドレ・マルコン)とは
同士のような関係。

最近は夜中にかかってくる
一人暮らしの母(エディット・スコブ)から愚痴の電話に付き合っている。
母は少し、ボケてきているようだ。

そんな日々でも教師の仕事に情熱を持ち
前向きに日々を過ごしているナタリーだが

ある日、夫に突然
「離婚してほしい」と切り出されてしまう――!


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ミア・ハンセン=ラヴ監督。

またしても登場人物と同じ時間を過ごした気になる、
この監督の不思議なマジックにやられました。


取り立てて大事件も起こらないのに
するすると見て
「ああ、このままこの時間が、終わって欲しくない・・・!」と思うというパターン。

「EDEN/エデン」もそうだったし、
「グッバイ・ファーストラブ」もそうだった。

振り返ってみると
「あの夏の子供たち」からやられてるようだ(笑)

どれも自分とどこか引っかかるようで
実際はビミョーに違うのに、なんでこんなにシンクロ?

この監督の不思議さは、なんだろう?と
このところずっと考えている。


登場人物の心理描写が、とりたててすごーく掘り下げられてるわけでもない。
ただ、とにかく、映画時間が、自然。

シーンのつなぎがうまいのかなあとも思う。
時間の流れが中断されることがないんだよね。
(「3年後」とか、いともたやすく時間が飛ぶのだけど)

とにかく身を任せるのに気持ちいいんです。


プレス資料のインタビューで監督が
「映画というのは私にとって動いている肖像画」と語っていて
「うおぉ、それだ!」とちょっと開眼しましたよ(笑)
なるほど、そんな感じ。

まして、今回はその肖像がイザベル・ユペールだもの。
とにかく見飽きない。


ボケてきた母親の介護に、浮気をして出ていく夫。
ずっと付き合ってきた出版社からも
「もうあなたは古いのよね・・・(面と向かっては言えないケド)」と
見放されてしまう。

スリムな体型を保ちつつも、老いは確実に忍び寄り
確実に時間に追いつかれ、追い抜かれそうになっている50代のヒロイン。
(実際の本人は60過ぎというのがすごすぎるけど。笑)


すべてが「なんだかなあ!」な状況なのに、
でも、彼女は慌てず騒がず、淡々と前へ進むんです。

仲良くなった猫にさえ執着しない。甘えない。
このあっさり感は、達観の域。

そうやって
過ぎていくものを追わず、いまを受け入れ、どんどん身軽になっていく。
そんな彼女が素敵でたまらない。

でもちょっぴり泣いたりする夜もあって
ああ、なんて共感できるんだろう!って。

ずっとこのイザベル・ユペールを見てたい。
この映画時間、終わってほしくない!と思いました。


★3/25(土)からBunkamura ル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開。

「未来よ こんにちは」公式サイト
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世界でいちばん美しい村

2017-03-22 23:28:17 | さ行


大地とともに生きる彼らの復興への道のりの、
なんとシンプルで、力強いことよ!


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「世界でいちばん美しい村」71点★★★★


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2015年4月に起こったネパール大地震。

約9000人の犠牲者を出した大震災の
震源地となった村の1年を写したドキュメンタリー。

カメラマンとして現地にいち早く入った
写真家・石川梵氏が初監督しています。


いわゆる「被災地ドキュメンタリー」とは
これもまた異なる作品で

村の少年アシュバドルと、彼の家族
そして村に尽くす一人の看護師を追うことで、
村人たちの再建への歩みを見つめている。

まず、このアシュバドル少年が、すごく魅力的。
利発そうな、でもまだ幼さも残るカワイイ男の子で
寒い朝、もぞもぞ起き出して
足元ビーサンで外に出て、コップの水で顔を洗う。

妹とじゃれ合ったり、動物たちとじゃれ合ったり、
無邪気な兄妹の様子も微笑ましく

そんな日常風景だけで
引き込まれてしまいます。


山奥にある村は
家もみなペシャンコだし、道路も寸断されているし
家族を亡くした人も大勢いて
もちろん深い傷を負っているんですが

でも、そこでの日々は
あきらかに前を向いている感じ。

男も女も子どもも、
新しい家のための建材を運んだり、とにかく一丸となって、よく働くんですね。

畑を耕し、家畜を飼い、常に家族で集い、
村中がひとつになって祭り事を楽しむ。
そんな
シンプルでプリミティブな暮らしの尊さがここにはある。

そんなふうに大地と寄り添って生きる彼らの再興への道のりは
まるで、草木が荒れ地から再び芽を吹くような力強さに満ちていて
畏敬とともに、
なんだか見ているこちらにも、力が湧いてくるんです。

これ、不思議。


政府は村を
高台に移転することを決めるんだけど、

それでも
「私はここで生まれて、死にたい」と
村に留まるお年寄りたちもいる。

そんなところも
まさに、日本の震災後の状況と重なって
いろいろ感じいるところ、ありました。


来週3/28発売の『週刊朝日』で
映画に賛同し、ボランティアでナレーションを担当されている
倍賞千恵子さんと、石川梵監督の対談を取材しました。

全国公開に先駆けて
東北の被災地での上映活動も行っていらっしゃるお二人が
「いまこの映画が、日本に何を伝えてくれるか」を
じっくり語ってくださっています。

ぜひ、映画と合わせてご一読くださいませ~。


★3/25(土)から東劇ほか全国順次公開。

「世界でいちばん美しい村」公式サイト
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タレンタイム ~優しい歌

2017-03-21 23:57:14 | た行

ヤスミン・アフマド監督、
イメージフォーラムで特集上映中!(3/24まで)


「タレンタイム ~優しい歌」74点★★★★


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マレーシアの高校で開催される
音楽コンクール「タレンタイム」。

コンクールに出るため
選ばれた生徒たちが連日、練習にやってくる。

ピアノの得意な女学生ムル―(パメラ・チョン)は
送り迎えを担当することになった
少年マヘシュ(マヘシュ・ジュガル・キショール)と恋に落ちる。

だが、インド系でヒンドゥー教のマヘシュの母は
イスラム教徒であるムル―との交際に反対する。

いっぽう
マレー系でギターのうまいハフィズ(モハマド・シャフィー・ナスウィプ)に
中華系で二胡の名手カーホウ(ハワード・ホン・カーホウ)は
ライバル心を抱き――。


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2009年に51歳で亡くなった
マレーシアのヤスミン・アフマド監督の遺作。


ヤスミン作品を見たのはこれが初めてだったのですが
とても素晴らしかった。


でもね、まず映画文法やテンポが
フツーじゃないんですよ。
いきなり病院のシーンになったり、ある家族の謎の踊りになったり。

とにかくつなぎが唐突(笑)。
で、最初はかなり戸惑ったんですが

でも、
それぞれが、登場人物たちの背景であることが徐々に明かされ
それぞれが、きちんと収束していく様子に「うまーい」と思いました。


青春群像としてのみずみずしさがあるし
それにね、とにかく優しいんです。
風景も空気も、まなざしも。


マレーシアという多民族国家ゆえ、
登場人物たちはマレー系、インド系、中国系と多彩で
交わされる言葉も、宗教もそれぞれに違う。

さらに、そこに耳の聞こえない少年も登場する。


すべての後ろに
異文化、異宗教、異民族の複雑さがあり、
それゆえの誤解や衝突、
ディスコミニケーションが内包されているんです。

そんななかで、クライマックスの「タレンタイム」を迎え、
それらを超えてゆく音楽の力が見えたとき、揺さぶられましたねえ。
特に、あの、ステージは泣けた!

異なるもの同士をつなぐのは理屈じゃなく、
心や体が素直に反応する、こんな「受容」や「寛容」に他ならないんだ!
静かに、感じいりました。


6作品を遺して、脳出血で突然亡くなってしまった
ヤスミン・アフマド監督ですが
いま、再評価がすごく高まっていて、各地で特集上映も開催されています。


ヤスミン監督と、なんと日本で映画を撮る予定だった
監督・女優の杉野希妃さんにも
『AERA』でインタビューさせていただき、ヤスミンワールドの魅力をたっぷり伺いました。
(来週、掲載予定です~)

折しも3/24(金)まで
シアター・イメージフォーラムで特集上映中。
ワシも見て来ます!


★3/25(土)からシアター・イメージフォーラムで公開。

「タレンタイム ~優しい歌」公式サイト
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