ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

神様の思し召し

2016-08-25 23:54:37 | か行

やっぱ「観客賞受賞」って
信頼できるなあ!


「神様の思し召し」74点★★★★



******************************


天才外科医のトンマーゾ(マルコ・ジャリーニ)は
高慢ちきで毒舌で
はっきり言って「イヤなヤツ」だ。

そんな彼の希望は
優秀な医大生の息子。

が、息子がいきなり
「神父になりたい」と言い出した!

どうやら息子は
ユニークな説法で人気の神父(アレッサンドロ・ガスマン)に
傾倒しているらしい。

息子を元の道に戻すべく
神父に近づこうとするトンマーゾだったが――?!


******************************



2015年の東京国際映画祭で観客賞を受賞した
イタリア人生喜劇。

これは、受賞も納得!
いや~笑いました(笑)


腕利きだけど高慢ちきなエリート外科医と
出自は怪しいけど、カリスマ的人気を持つ神父。

正反対のふたりが出会うことで起こる
科学反応がおもしろいし
冒頭からノリのいいポップソングが使われるところも
「お!」と思うし、

なにより
貧困や、人の見ため、差別、障害などなど
タブーなネタにもズケズケと踏み込む
きっつい笑いに思わず吹き出してしまいます。

あの「最強のふたり」を彷彿とさせる――という
宣伝文句も納得!


冷徹人間が、だんだん人間味を取り戻していくという
テーマは普遍なんだけど
その普遍が、また愉快というか。

イタリアンコメディって
ときどき
とんでもなくツボるものが多い。

「これが私の人生設計」もそうだったなあ。

テンポとかユーモアがさすがなんだよね。


医師の家族の食卓に
「ベリーニ」(桃のワインベースのカクテル。
「カルディ」とかに売ってるあれ!)がよく登場したり
二人が並んで食べる
フォカッチャサンドみたいなのもおいしそうだし

イタリアの食好き、ワイン好きにも
なかなか楽しいと思います。


★8/27(土)から新宿シネマカリテほか全国順次公開。

「神様の思し召し」公式サイト
コメント
この記事をはてなブックマークに追加

イングリッド・バーグマン~愛に生きた女優~

2016-08-24 23:53:47 | あ行

こんなに快活な人だとは知らなかった!
おもしろい!

*************************


「イングリット・バーグマン~愛に生きた女優~」75点★★★★


*************************


「カサブランカ「誰が為に鐘は鳴る」など
数々の代表作を持つ
大女優イングリッド・バーグマンのドキュメンタリーです。


イザベラ・ロッセリーニほか
バーグマンの子どもたちが全員参加し

インタビューに答え、
プライベート映像もふんだんに使われ、
とにかく見応えがあります。

ワシは子ども時代
ヘプバーンより、バーグマン派だったんですが
その背景についてしっかりとは知らなかったし
どちらかというと“しっとりした”イメージだった。

なので、この映画を見て
生涯現役で、5カ国を飛び回り
常に新しいことに飛び込む、自由な人だったんだなあと
すごくびっくりしたんですよ。


さらにバーグマンは
「なんでも取っておき魔」だったようで、
だから
子ども時代の写真も、最初の結婚式のホームムービーも、日記、手紙と
素材がたっぷりあるんですね。

それには彼女の
生い立ちゆえの理由があることもわかるんですが。

それら
ホームムービーに写る彼女の
伸び伸びとした肢体のおおらかさ。

子供たちや動物に向ける笑顔のまぶしさ。

子どもたちが語る
「とにかくチャーミングな人だった」という証言にも
うなずけます。

ナナメ上を向く、あの“神”な角度とは違う彼女の姿が
存分に楽しめて
改めてファンになりました。


往年のファンにもぜひおすすめです!


★8/27(土)Bunkamura ル・シネマほか全国順次公開。

「イングリッド・バーグマン~愛に生きた女優~」公式サイト


(おまけ)
発売中の週刊朝日9/2号で
映画に絡めた「バーグマン」記事書いてます。
ちょっとしたクイズ形式なので
チャレンジしてみてください。
(ちなみにうちの母は「最初の結婚相手はだれ?」を知ってました!笑)

コメント
この記事をはてなブックマークに追加

健さん

2016-08-17 22:50:36 | か行

あらためて「すごい人だったんだ」と。

***********************


「健さん」76点★★★★


***********************


マーティン・スコセッシにマイケル・ダグラスに
山田洋次、降旗康男、立木義浩・・・・・・(敬称略)

国内外のそうそうたる20人超
それぞれにとっての「健さん」を語るドキュメンタリー。

「単騎、千里を走る」(これ、好き!)に登場した
チューリン青年が案内役を務めています。


映画海外を拠点にする監督だからなのか
まずインタビューの構成もリズミカル。

知ったかぶりなしで、
あらためて「高倉健とはどういう人だったのか」を
きちんと紹介してくれているのがいい。

任侠映画のシーンや、さまざまな写真など
映像による情報もたっぷりで
95分間とは思えないボリュームでした。

とにかく
いろんな人が語る素顔の「健さん」のエピソードが
おもしろいんですねえ。

マジメ一徹、のイメージがあったから
意外なエピソードに驚いたり。
遅刻魔だったとは知らなかったなあ(笑)。

それに健さんは
自分の演技を「なぜ、そういうふうに演じたか」を
きっちり言葉で説明できた人だったそうだ。

「きっと演技の先生にもなれただろう」という話に
へえ・・・と思った。


本人の肉声による言葉
「人は思う人がいないと、仕事も一生懸命できない。
その人のことを思うと、心が『ジン』とするような人がいないと」
が、響きましたねえ。

あと
40年来、付き人だった方が語るエピソードに泣きそうになった。

ファンはもちろん、健さんをよく知らない人にも
絶対に楽しめると思います。


★8/20(土)から全国で公開。

「健さん」公式サイト
コメント
この記事をはてなブックマークに追加

イレブン・ミニッツ

2016-08-15 23:20:14 | あ行

「アンナと過ごした4日間」の監督作です。


「イレブン・ミニッツ」70点★★★★


*****************************


ある大都会。

ヘルマン(ヴィウチェフ・メツファルドフスキ)は
女優の妻アニャ(パウリナ・ハプコ)と
睡眠薬を飲んで眠る。

アニャは「午後5時に約束がある」と言っていた。

そのころ、ホテルの一室で
別の男(リチャード・ドーマー)が部屋の電話コードを抜いている。
そこにやってきたのはアニャだった。

目を覚ましたヘルマンは
妻を探しながら、犬を連れて街に出る。

彼らはホットドッグ屋台の前を通り過ぎ
そこでは5人の修道女たちが
ホットドッグを買っている。

こうして
点景に見える見ず知らずの人々が
やがて、大きな物語の一部となっていく――。


*****************************


「アンナと過ごした4日間」(08年)
「エッセンシャル・キリング」(10年)(これ、あんまりいい評価してなかったな・・・笑)の

78歳、イエジー・スコリモフスキ監督の新作。


どんな映画か知らずに見ると面白いと思いますが、
つまり
「そのとき」に向けての81分間を
11人の人々と1匹の犬の視点で
見ていくというもの。

一見関わりのないような人々の視点が
交互に入れ替わり、進んでいく。

で、「何が起こるのか?」は
まったくわかりません。

そこがミソ。


斬新な編集にも若々しさが弾けているし
暗示的な様子や、犬の目線など
ゴダールの「さらば、愛の言葉よ」を思わせたりもします。


冒頭からiPhoneや監視カメラ画像、
スカイプ画面などを多様しているのは
「第三者の目」、現代の「神の眼」を表現しているのだろうか。

でも、いっぽうでサスペンス要素が高く、
ちゃんとエンタメにしているのが面白い。

ハラハラが続くし
不穏な音の使い方も盛りがります。

ただ、
「そのとき」まで
ちょっともったいつけすぎかなーという感じもしなくもない・・・(苦笑)。
でも、楽しめましたよ。


★8/20(土)からヒューマントラストシネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開。

「イレブン・ミニッツ」公式サイト
コメント
この記事をはてなブックマークに追加

ソング・オブ・ラホール

2016-08-12 23:47:27 | さ行

ここまでハラハラさせられる
音楽ドキュメンタリーは、そうそうない(笑)


****************************


「ソング・オブ・ラホール」70点★★★★



****************************


伝統楽器による音楽が盛んだった
パキスタンの都市ラホール。

しかし
1970年代後半に政情不安定となり、
90年代に台頭し始めたタリバンによって、
音楽家たちはみんな、仕事を失った。

50年間も日の目を見ず、
細々と、伝統をつないできたミュージシャンたちは
ついに立ち上がり
伝統楽器でジャズに挑戦する。

それは名曲「テイク・ファイヴ」のカバー。

これが評判を呼び、
彼らは本場ニューヨークのジャズミュージシャンたちに招待され、
一緒に舞台に立つことになる――という展開。

これが予想以上にハラハラさせてくれるんです。


50年間、満足な活動もできず、練習もままならなかった彼らは
それでも精一杯練習して、
ドキドキでニューヨークに渡るわけですが
そこで
共演することになった本場ジャズミュージシャンたちは
彼らに容赦ない厳しさを見せるんですね。
「いろいろ大変だったんだから(この程度でも)いっか」なんて
同情や妥協は一切ない!


これぞプロの世界。

「もうちょっと、優しくしてもいいのに・・・」とか
こっちはヒヤヒヤし通しで(苦笑)
つい「がんばれ!」
前のめりで応援してしまうんですわ。


父の背中を見て、伝統楽器奏者になった息子に
父がこう言うんです。
「何かを成し遂げるには、人生の一部を犠牲にしなければならない」――
その意味が
本番のステージでよくわかる。

ここは
鳥肌が立ちましたわー。


誰もを「すごいね」と納得させる
“仕事をする”とは、こういうことだ!と、身が引き締まりました。


★8/13(土)からユーロスペースほか全国順次公開。

「ソング・オブ・ラホール」公式サイト
コメント
この記事をはてなブックマークに追加