ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

フローズン・リバー

2009-12-31 10:22:41 | は行
今年もお疲れさまでした。

一年の〆に、いい映画を。

「フローズン・リバー」79点★★★


白い雪原にぽつんとある車、という
試写状のビジュアルが

アトム・エゴヤンの名作
「スイート・ヒア・アフター」に似てるなあと
惹かれて見たのですが

いや~鑑賞後感もちょっと似てました。


めちゃくちゃ凍てついた景色と話なのに
見終わって心に残るのは
なぜか
淡いオレンジ色した光なんだなあ。


2008年のサンダンス映画祭でグランプリを獲得。
今年のアカデミー脚本賞にもノミネートされた作品です。



舞台はニューヨーク州最北端、
川を挟んでカナダとの国境に位置する町。


夫に逃げられ、冷えた生活を送ってる
二児の母レイ(メリッサ・レオ)は

ある出来事から
先住民モホーク族の若い女性
ライラ(ミスティ・アップハム)と知り合う。


いがみ合っていた2人だが
レイがライラの“ヤバイ仕事”を手伝ったことで
その関係に変化が訪れる――という話。


大事件は起こらないけど
常にさざ波のようにつきまとう不安感。

厳しい現実のなかで
さまざまな理由で心を凍らせた人々。

そして
ほんの一吹きで消えてしまいそうな
ほのかな「希望」がフィルムに焼き付くラスト。


すべてが静かに作用し合い
実に深い余韻を残す映画でした。


ライラ役ミスティ・アップハムの
ヘビー級の存在感も光ります。


そうそう、印象的なファーストシーンが
憂鬱そうにタバコを吹かす中年女性レイのアップで

「ずっとあなたを愛してる」
ファーストシーンにそっくり!

こっちの映画を先に見てたのですが
いやーびっくりしました。

つかみがいい映画は、やっぱり後味もいいですな。


ということで
来る年もまた
小さくても温かい光の灯る年になりますように。

では、よいお年を!


★2010年お正月第二弾、シネマライズほかで公開。


「フローズン・リバー」公式サイト
コメント (2)
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2009年ベスト&ワースト映画

2009-12-28 13:09:52 | ぽつったー(ぽつおのつぶやき)
そろそろ仕事納めでしょうか。

ぽつお番長も今年の総まとめ。

2009年のベスト&ワースト映画を
発表しちゃいましょう。

まずはベスト映画。


1位 ディア・ドクター
2位 グラン・トリノ
3位 レイチェルの結婚
4位 精神
5位 THIS IS IT
6位 トワイライト
7位 ピリペンコさんの手作り潜水艦
8位 正義のゆくえ
9位 ファイティング・シェフ
10位 消されたヘッドライン

次点 サマーウォーズ
    ミルク
    ファッションが教えてくれること
    湖のほとりで
    セントアンナの奇跡
    レスラー
    戦場でワルツを
    千年の祈り
    ポー川のひかり
    未来の食卓
    ジュリー&ジュリア

順位はいま思い返してピンときた順なので
点数と合ってないかもしれません。
ご容赦を~

お次はワースト映画。


1位 デュプリシティ
2位 パブリック・エネミーズ
3位 プール
4位 ノウイング
5位 真夏の夜の夢
6位 わたし出すわ
7位 それでも恋するバルセロナ
8位 バーン・アフター・リーディング
9位 宇宙へ
10位 リミッツ・オブ・コントロール

次点 ジャック・メスリーヌ
    ホースメン
    ドゥームズ・デイ
    ホワイト・アウト
    女の子ものがたり
    カールじいさんの空飛ぶ家

これはガッカリ度、残念度の高いものが順位高いです。

ほかにもありそうなんですが
まあ、こんな感じです。

では、とりあえず。
コメント (9)
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COACH コーチ 40歳のフィギュアスケーター

2009-12-26 20:25:59 | か行
いやはや
暮れも押し迫った今頃
仕事がバタバタになり
すっかり更新サボってすみません。

ネタはいっぱい仕入れてますので
ご安心を。


今回は

「COACH コーチ 40歳のフィギュアスケーター」58点★★


先ごろ“安藤美姫、映画初出演”とかで
ニュースになりましたね。


安藤の元サポートコーチで
プロ・フィギュアスケーターの西田美和(42歳)を
主演女優として起用した
あくまでも“フィクション”な映画です。


主人公の倉内美和(西田美和)は40歳独身のプロスケーター。

スケート教室のコーチをするかたわら
アイスショーの舞台に立つ彼女が
ひょんなことから
なんとオリンピックに挑戦することになる――!という話。


バラの花が象徴的に使われたり
がキラキラと空中を舞ったり、
さらにつんくによる歌謡曲チックな盛り上げかたといい

わざとクサく作ってあるので
好き嫌いが分かれるかもしれません。

ちょっと少女漫画のパロディのような雰囲気でもあります。


このクサさは
話の荒唐無稽さを表しているのか

フィギュアスケートという
な~んか気恥ずかしい特殊な世界を描く照れ隠しなのか


はたまた
プロのスケーターだけどもちろん演技は素人、という
主演女優に全体の空気感を合わせたのか。



ただ“アラフォーのアスリート”という題材は
現実を反映していておもしろいと思うし

フィギュア世界をこういう視点で見るのも珍しいので
まあまあ楽しんで見ちゃいまいした。


安藤美姫のほか、荒川静香も出演しており

我々が目にするこうしたトップ選手たちが
いかに一握りの存在かということもよくわかります。


それにしても。

試写には出演者らしき
子どもスケーターとその親たちがワラワラと来ていましたが
劇中にはフィギュア教室の親たちの熱狂ぶりを
やんわり揶揄するくだりもあり

「大丈夫かいな」と
ヒヤヒヤしました。

ま、通じてないみたいだったけど。


★2010年2/6から新宿K's cinemaほかで公開。

「COACH コーチ」公式サイト
コメント (2)
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インビクタス 負けざる者たち

2009-12-22 13:46:54 | あ行
「アバター」今日から?早く見たいなあ。

試写、見られなかったんだよねー。


で、今日は
地味だけど、ぜったいに感動する


「インビクタス 負けざる者たち」81点★★★



クリント・イーストウッド監督の最新作ですが
いやー感動以上に

魂が鼓舞する感じしました。



白人VS黒人だった南アを奇跡のごとく一つにまとめた
ネルソン・マンデラ氏の功績を
ある出来事からフィーチャーした斬新な視点の映画です。

まさに“友愛”のいまこそ
見るべき映画じゃないでしょうか。


1994年。南アフリカ初の黒人大統領になった
マンデラ氏(モーガン・フリーマン)は
白人VS黒人の根深い構造を打破するべくあるスポーツに目をつける。

それは翌年、南アで開催される
ラグビーのワールドカップ大会


が、ラグビーは白人文化の象徴で
黒人には忌み嫌われており
しかも主将(マット・デイモン)率いる代表チームは負け続き。

そこでマンデラ氏の取った行動とは?――というお話。



序盤は正直やや単調で、眠気と戦いましたが
後半からラストへの集約が素晴らしい!

特に最後の試合シーンは立ち上がりたくなるほどの興奮!
このために、ずっと抑えてたのね。


単なるスポーツ映画でも伝記映画でもなく
スポーツから得られる高揚感
「復讐心にとらわれることなく、相手を赦すことの大切さ」
という
規模のでかいメッセージを嫌みなく染みいらせる
イーストウッド監督の達人技には脱帽です。


「グラン・トリノ」ほど完璧じゃないけど
見て損はありません。

ゴールデングローブ賞にも3部門ノミネートされてるしね。


ちなみに“インビクタス”とはラテン語で
“征服されない(不屈の)”という意味だそうで
27年も投獄されていたマンデラ氏の
信念の基になっていたという詩の言葉です


しかしパッと見、地味な作品なので
マット・デイモンのスター性は重要なポイント。

ラガーマン役とあって
かなりむっちり、体作ってますよ。

「インフォーマント!」の後、これだとすると
安心なんですけどね。


まあ次回主演作は「ボーン」の
ポール・グリーングラス監督のサスペンスだし
やっぱり元に戻ってくるんだよね、ね。


★2010年2/5から丸の内ピカデリーほか全国で公開。

「インビクタス 負けざる者たち」公式サイト
コメント (6)
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パーフェクト・ゲッタウェイ

2009-12-20 11:55:53 | は行
ミラ・ジョヴォヴィッジって
変わった映画に出ますよね。

「パーフェクト・ゲッタウェイ」56点★★


南の島で繰り広げられる
男女6人のサバイバル・アクションです。


自然が濃くて美しいハワイのカウアイ島
ハネムーンにやってきた
大はしゃぎの新婚カップル(ミラ・ジョヴォヴィッチ&スティーヴ・ザーン)。

彼らは二組のカップルに出会い
旅は道連れ・・・で行動をともにする。

そんな6人のもとに数日前
オアフ島である新婚カップルが
男女二人組の犯人に惨殺されたというニュースが飛び込んでくる。


「え?この中の誰かが犯人じゃないの?」

とお互いを疑い始めた6人を悲劇が襲う・・・という話。



ジャングルでキャンプをするカップルの後ろを
怪しい人影がよぎる――という
「13日の金曜日」的な恐怖要素と

一度疑い出すとすべてが怪しく見える
“疑心暗鬼”という人間の心理の怖さがキモです。


南の島ではしゃぐカップルの傍若無人ぶりがリアルで
カップルがサメに襲われる怖い名作
「オープン・ウォーター」をちょっと思い出しました。


ってな感じで
中盤まで悪くなかったのだけど


この意外な犯人は
ちょっとルール違反じゃねーか


観客のだますテクニックはこの手の映画の醍醐味だけど
テクに入るんかなあ、これ。

少しでもドキドキハラハラさせられたことが
恨めしい~~~


ま、舞台となるカウアイ島の景色を十分堪能したし
ミラ・ジョヴォヴィッチの迫力満点な
「バイオハザード」走り(全力疾走)も見られたし

なにより90分ちょっとだったからいっか。


★2010年1/23から新宿ピカデリーほか全国で公開。

「パーフェクト・ゲッタウェイ」公式サイト
コメント (4)
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