Manaboo 電子政府・電子申請コラム 

電子政府コンサルタントの牟田学が、電子政府・電子申請、その他もろもろ、気まぐれにコメントしてます。

総合行政ネットワーク(LGWAN)とインターネット

2010年02月27日 | 電子政府
少し前ですが、電子政府の関係者から、「LGWANとインターネットのどちらが良いと思いますか?」と聞かれました。

LGWANとは、「総合行政ネットワーク」のことで、地方公共団体を相互に接続する行政専用のネットワークを意味します。行政専用と言っても、実際には民間企業も利用料を払って利用することができます。例えば、最近始まった住民票のコンビニ交付も、このLGWANを使っています。

参考>>総合行政ネットワーク(財団法人地方自治情報センター)

その時の作者の回答は、「個人的にはインターネットで十分と思いますし、費用対効果や拡張性・柔軟性などでもインターネットの方が優れていると思いますが、自治体側から見ると専用回線の方が安心できるでしょうね」と。質問された方も、ほぼ同意見だったようです。

確かに、インターネットと専用回線を単体で比べると、専用回線の方が安全と言えましょう。しかし、情報セキュリティのレベルは様々な要素の総合値として決まるので、こうした比較はほとんど意味がありません。

実際には、インターネットを使おうが専用回線を使おうが、情報漏えい等の被害についてはほとんど差がないので、インターネットを使った方が合理的ということになります。

例えば、情報セキュリティインシデントに関する調査報告書を見てみると、情報漏えいの原因で上位を占めるのは「誤操作」「管理ミス」「紛失・置忘れ」「盗難」など。

「不正アクセス」は…、なんと1%にも満たないのです。組織犯罪的な不正アクセスは増加傾向にありますが、狙われるのは金融機関やショップサイトなどで、クレジットカード番号など「お金になる情報」があるところです。

「誤操作」の内訳を見ると、
1 紙媒体の誤配送
2 電子メールの誤送信
3 FAXによる誤配送

そう。「インターネットを使うか専用回線を使うか」には全く関係がないのです。

それなら、お金がかかるし、管理も機能拡張も大変な専用回線など使わなくて良いと思うところです。しかし、ベンダーからすれば専用回線の方がお金になりますし、外郭団体の仕事にもなりますから、インターネットではなくて専用回線が使われていると。

海外では、こうした専用回線など使わずに、日本よりずっと便利な電子政府サービスを実現しています。

例えば、エストニアには「X-road」という市民データの情報連携基盤があります。

「X-road」を通じて各種個人情報のやり取りができると共に、国民は自分のデータへのアクセスについて、誰が何の目的で利用したかを手軽に確認ができるようになっています。

この「X-road」は、インターネットベースのシステムであり、具体的にはPKI(データの暗号化、署名)とSSL暗号化通信を利用しています。

つまり、日本のように特別なシステムを作りこむことなく、誰でも使える広く普及した手段を使って、迅速かつ安価(約2億円)に構築したのですね。その費用対効果は、日本の何百倍・何千倍にもなりましょう。

日本の政府機関でも民間のSaaSを使うケースが増えており、政府が保有する個人情報等がインターネット(SSL)上で流通しています。

そうした現状を踏まえて、「今どき、専用回線(しかも特別仕様)にこだわる必要もないでしょ」といった当たり前の意見が、そろそろ出てきてもおかしくないなあと思うのです


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