税制調査会の配布資料として「議論の中間的な整理」が公開されています。
財政再建の問題は電子政府とも関係があるので、少し触れておきたいと思います。
参考>>財政運営戦略(PDF)
専門家委員会委員長である神野直彦氏の書籍は、本ブログでも紹介したことがあります。
関連ブログ>>財政のしくみがわかる本|希望の構想―分権・社会保障・財政改革のトータルプラン
上記のブログでも書いたように、神野氏の考えはシュムペーターをベースに、高齢化先進国であるスウェーデンの政策を参考にしたものと理解しています。
しかし、今回の「議論の中間的な整理」を見ると、スウェーデンの政策における大切な部分が欠けているように思います。
スウェーデンに学ぶ「持続可能な社会」で書きましたが、スウェーデンには次のような特色がありました。
・同時期に、景気回復と財政再建の二つを成し遂げた
・財政再建のために、「歳出の削減」と「増税」を実施した
・同時に、景気回復の投資を「教育」「ITインフラの整備」「環境」「強い福祉」の4分野へシフトさせた(産業構造の転換)
・特に、IT国家としての成長は、景気回復と財政再建の鍵となった
景気回復と財政再建の二つを成し遂げたことは、現在の日本が目指していることであり、良いお手本になると考えるのは自然なことと思います。
「歳出の削減」と「増税」についても、民主党が目指している方向と一致しています。
「産業構造の転換」については、現政権は消極的です。
最近発表された「新成長戦略(PDF)」の中では、
1.環境・エネルギー分野
2.医療・介護・健康分野
3.アジアに関する分野
4.観光・地域活性化分野
5.科学・技術・情報通信分野
6.雇用・人材分野
7.金融分野
における規制・制度の改革等により新たな需要を生み出し、市場や雇用を創出することを通じて、我が国が本来有する成長力を発揮させ、日本経済を本格的な回復軌道に乗せる必要がある。
としているものの、競争力の低下を招く補助金や、雇用維持のための助成金をばら撒いています。また、JALの再建には多額の税金を投入しています。
これらは「現在の産業構造を維持する」方策であり、「産業構造の転換を阻害するもの」です。
「教育」については、高校無償化といった形でお金を使う方向にありますが、肝心の教育の中身が変わっていません。果たしてどれだけの学校の先生が「グローバル社会に対応できる人材」であり、「グローバル社会に対応できる人材を育てる」ことができるのでしょうか。
「IT国家としての成長」についても不安がつきません。「ちっとも便利にならない電子政府」「ガラパゴス携帯」「ITゼネコン」と、明るい将来が見えない状況です。過去の成功体験にとらわれ、これまでのやり方を変えられない傾向が見て取れます。
●「議論の中間的な整理」には「雇用の流動化」が書かれていない
スウェーデンに学ぶ「持続可能な社会」では、日本との違いについては、よく言われる「人口」や「経済規模」といった面よりも、「民主主義の成熟度」や「女性の社会進出・労働力化」が大きいと指摘しています。
今後の日本に必要なのは、次のような政策であると思います。
1.「民主主義の成熟度」を高めること
2.「女性の社会進出・労働力化」を高めること
3.「政府の無駄遣い」を止めること
4.「政治や行政への信頼」を高めること
5.「増税が必要であること」を国民に理解してもらうこと
6.「若者世代が納得できる持続可能な年金制度」を作ること
7.「将来を見据えた持続可能な産業構造」へ転換すること
8.「産業構造の転換を推進する流動的な労働市場」を作ること
特に、「持続可能性」と「流動性」はセットであることへの理解が大切ですね。
また、国民に多くの負担を強いるのであれば、「民主主義の成熟度」を上げる必要があり、そのためには、教育の中身や教師を根本的に変えていかなければいけません。
「議論の中間的な整理」は、「セーフティネットの確立」といった記述が見られるものの、「雇用の流動化」については触れていません。
「産業構造の転換を推進する流動的な労働市場」や「教師自身に変革を迫る教育改革」に踏み込むことができないのが、民主党の弱点であることは多くの識者が指摘するところです。
スウェーデンのやり方を部分的・表面的に真似たところで、上手くいく可能性は低いでしょう。
国民にも覚悟が必要なのと同じように、民主党にも覚悟が必要なのです。
そして、その覚悟は、国民の覚悟に先んじて、民主党自身が行動で示す必要があるのです
財政再建の問題は電子政府とも関係があるので、少し触れておきたいと思います。
参考>>財政運営戦略(PDF)
専門家委員会委員長である神野直彦氏の書籍は、本ブログでも紹介したことがあります。
関連ブログ>>財政のしくみがわかる本|希望の構想―分権・社会保障・財政改革のトータルプラン
上記のブログでも書いたように、神野氏の考えはシュムペーターをベースに、高齢化先進国であるスウェーデンの政策を参考にしたものと理解しています。
しかし、今回の「議論の中間的な整理」を見ると、スウェーデンの政策における大切な部分が欠けているように思います。
スウェーデンに学ぶ「持続可能な社会」で書きましたが、スウェーデンには次のような特色がありました。
・同時期に、景気回復と財政再建の二つを成し遂げた
・財政再建のために、「歳出の削減」と「増税」を実施した
・同時に、景気回復の投資を「教育」「ITインフラの整備」「環境」「強い福祉」の4分野へシフトさせた(産業構造の転換)
・特に、IT国家としての成長は、景気回復と財政再建の鍵となった
景気回復と財政再建の二つを成し遂げたことは、現在の日本が目指していることであり、良いお手本になると考えるのは自然なことと思います。
「歳出の削減」と「増税」についても、民主党が目指している方向と一致しています。
「産業構造の転換」については、現政権は消極的です。
最近発表された「新成長戦略(PDF)」の中では、
1.環境・エネルギー分野
2.医療・介護・健康分野
3.アジアに関する分野
4.観光・地域活性化分野
5.科学・技術・情報通信分野
6.雇用・人材分野
7.金融分野
における規制・制度の改革等により新たな需要を生み出し、市場や雇用を創出することを通じて、我が国が本来有する成長力を発揮させ、日本経済を本格的な回復軌道に乗せる必要がある。
としているものの、競争力の低下を招く補助金や、雇用維持のための助成金をばら撒いています。また、JALの再建には多額の税金を投入しています。
これらは「現在の産業構造を維持する」方策であり、「産業構造の転換を阻害するもの」です。
「教育」については、高校無償化といった形でお金を使う方向にありますが、肝心の教育の中身が変わっていません。果たしてどれだけの学校の先生が「グローバル社会に対応できる人材」であり、「グローバル社会に対応できる人材を育てる」ことができるのでしょうか。
「IT国家としての成長」についても不安がつきません。「ちっとも便利にならない電子政府」「ガラパゴス携帯」「ITゼネコン」と、明るい将来が見えない状況です。過去の成功体験にとらわれ、これまでのやり方を変えられない傾向が見て取れます。
●「議論の中間的な整理」には「雇用の流動化」が書かれていない
スウェーデンに学ぶ「持続可能な社会」では、日本との違いについては、よく言われる「人口」や「経済規模」といった面よりも、「民主主義の成熟度」や「女性の社会進出・労働力化」が大きいと指摘しています。
今後の日本に必要なのは、次のような政策であると思います。
1.「民主主義の成熟度」を高めること
2.「女性の社会進出・労働力化」を高めること
3.「政府の無駄遣い」を止めること
4.「政治や行政への信頼」を高めること
5.「増税が必要であること」を国民に理解してもらうこと
6.「若者世代が納得できる持続可能な年金制度」を作ること
7.「将来を見据えた持続可能な産業構造」へ転換すること
8.「産業構造の転換を推進する流動的な労働市場」を作ること
特に、「持続可能性」と「流動性」はセットであることへの理解が大切ですね。
また、国民に多くの負担を強いるのであれば、「民主主義の成熟度」を上げる必要があり、そのためには、教育の中身や教師を根本的に変えていかなければいけません。
「議論の中間的な整理」は、「セーフティネットの確立」といった記述が見られるものの、「雇用の流動化」については触れていません。
「産業構造の転換を推進する流動的な労働市場」や「教師自身に変革を迫る教育改革」に踏み込むことができないのが、民主党の弱点であることは多くの識者が指摘するところです。
スウェーデンのやり方を部分的・表面的に真似たところで、上手くいく可能性は低いでしょう。
国民にも覚悟が必要なのと同じように、民主党にも覚悟が必要なのです。
そして、その覚悟は、国民の覚悟に先んじて、民主党自身が行動で示す必要があるのです