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すごくシリアスな作品と思いきや、イーストウッドの頑固オヤジぶりに爆笑の連続。単純に、娯楽作品としても楽しめる良作です。
主人公の暮らす町が、今のアメリカを象徴していて興味深い。
自動車工場とそこで働く人々で賑わった町が、自動車産業の衰退と共に、スラム化していく。
お金のある人や若い人は出て行き、残ったのは出て行きたくても出て行けない経済事情を抱える人たちや、頑固に住み続ける老人ばかり。
こうなると悪循環で、政治と住民が動かない限り、どんどん事態は悪化していく。
日本も、お金があるうちは良いが、いよいよお金がなくなってくると、お金持ちはもっと住みやすい海外へ出て行き、残るのは貧乏人や老人ばかりとなってしまうだろう。
介護産業の担い手と期待される外国人労働者も、基準や規制の厳しい日本を見限って、もっとお金のある中国へ行ってしまうだろう。中国は、これから急速に高齢化社会となるのだから。
そんな風に、ちょっとだけ日本の将来を案じながら、本作品を観てしまった。
イーストウッドの作品は、初監督作品から見ているけれど、正直言って、どれも暗めの仕上がり。おせじにも、明るくて華があるとは言えない。
しかし、その暗さが良いのだ。
暗さの中に、ちょっとだけ希望がある。
それは、わかりやすいハッピーエンドというものではなくて、今にも消えてしまいそうな「かすかな光」といった感じ。
角度を変えてみれば、光は影で隠れてしまうので、人によっては「希望」と認識できないかもしれない。
そんな、かすかな希望は、作品を観る人の考え方や捉え方によっては、大きく輝きを増し、あたりを温かく照らしてくれることもある。
だから、イーストウッドの作品を観て、「なんか良いなあ」と思ったり、「勇気が湧いてきた」と思えたら、その人の心持ちは上向きなのだろう。
ところで、先日『バード』を観る機会があった。
80年代のイーストウッド作品で、監督としての才能(特に、俳優の潜在能力を引き出す才能)を再確認できる。
エンディングのクレジットロールで、固定カメラで風景を捉えた映像を流すのは、この作品でもやってるんだなあと思った。
この方式は、作品の余韻に浸れるので、個人的にはすごく好き。
そう言えば、『ランボー 最後の戦場』で、スタローンも採用してたっけ。
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