Manaboo 電子政府・電子申請コラム 

電子政府コンサルタントの牟田学が、電子政府・電子申請、その他もろもろ、気まぐれにコメントしてます。

社会保障カードへの提案(2):役所の怠慢を防ぎ、国民が政府や企業を監視する仕組みを

2007年12月04日 | 電子政府
社会保障カードへの提案(1):まずは「社会保障番号」の議論をオープンにするべき」の続きです。今回は、社会保障カードや電子私書箱を利用したサービスを提案したいと思います。


●「もらい忘れ」を防ぐ、事前通知サービスを

社会保障カードは、莫大な税金の投入が必要なだけでなく、「社会保障番号」の導入といった、国民が不安に感じる要素を多く抱えています。

ですから、ちょっとやそっとのサービス改善では、国民の理解は得られないと言えましょう。

例えば、年金情報についても、既に保険料の納付状況がインターネットで閲覧でき、パソコンを持たない人たちにも「ねんきん定期便」が送付されることになっています。

関連>>社会保険庁:年金個人情報提供サービス

単なる自己情報閲覧サービスであれば、社会保障カードなんて必要ないのですね。

そこで考えられるのが、次のような「事前通知・確認サービス」です。

・自分にとって必要な手続やサービスが事前に通知される。
・もらい忘れ、更新し忘れ、届出忘れ、申請忘れを防ぐ。
・気に入ったサービスを選んで内容を確認・修正するだけ。面倒な入力はほとんど必要なし。

確定申告も、記入済みの申告書の内容を確認して、特に問題が無ければワンクリックで申告完了となります。

社会保険庁の例にあるように「申請主義」が役所の怠慢の言い訳に使われることも多いわけですから、今後は「待ちの行政サービス」から脱却して、「プッシュ型サービス」や「御用聞きサービス」へ変わっていきましょうということです。


●勝手な閲覧や利用は許さない、個人情報管理サービスで政府や企業を監視する

自分の個人情報をネットで閲覧できるだけでは、国民の不安はなくなりません。

そこで取り入れたいのが、「自己情報のコントロール権」の考え方です。

関連>>日弁連 - 自己情報コントロール権を情報主権として確立するための宣言


あらゆる場面において自己情報をコントロールするなんてことは、もちろん無理な話です。例えば、氏名・生年月日・住所・性別といった情報は、本人の知らないところで既に流通しており、これを止めることはできません。

しかしながら、「特定の場所における特定の自己情報について」といった形で制限が加えられると、ある程度はコントロールすることが可能となります。

「社会保障カード」や「電子私書箱」という限られた空間で流通する自己情報については、国民自身が管理・監視できる仕組みを作れるのです。

「社会保障カード」や「社会保障番号」の導入で、政府によるプライバシー侵害等が心配されるわけですから、これに対する保証や対抗策をわかりやすい形で国民に提供することが大切です。

具体的には、次のような仕組みとなります。

・誰が、いつ、どんな目的で自分の個人情報を閲覧・利用・修正したのかがわかる。
・不審な利用があれば、問い合わせ(利用した機関へ)や通報(第三者機関へ)ができる。
・利用履歴は、ダウンロードして自分でも保存できる。
・申請サービス等を利用する際に、自己情報を開示する相手(行政機関、民間企業等)や範囲を選べる。

こうすれば、「国民が政府や企業を監視する社会」となり、「政府による監視社会」と言われることも少なくなるでしょう。

そもそも、「公務員なんて信用できない」といった人がいるわけですから、いくらセキュリティを強化しても、限界があります。「安全」に加えて、「安心」や「信頼」をどうやって提供するかを考えなければいけないのです。

なお、こうした個人情報管理サービスは、国民向けIDカード(ICカード)を発行している外国で、既に見られるサービスです。日本でも、ぜひ実現して欲しいものですね。

関連>>オーストリア・ドイツ・エストニアにおける電子行政サービスの動向(NEC C&C財団)


次回は、「社会保障カード」を単なる「ICカード特需」としないために、「社会保障サービスにおける携帯電話の可能性」について考えてみたいと思います。


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