国家戦略としての電子政府を、電子政府はICT政策ではなく行政改革そのものである

電子政府の次世代戦略マップ、新しい日本を作る基盤としての電子政府へに関連して、少し解説しておきたいと思います。

タイトルの通り、表面的なところをいじっても、電子政府が抱える問題は無くなりません。

今必要なのは、国家戦略としての電子政府です。

海外におけるオープンガバメントの取組、今こそ電子政府の役割を見直そう！でも書いたとおり、今後の電子政府は、その役割の見直しが必要です。

1.　政府の透明性を高め、政治と行政への信頼を取り戻す
2.　国民参加を促進し、民主主義の成熟度を高める
3.　改革を支援し、改革後の制度を支える基盤となる

電子政府は、「ICT政策」ではなく「行政改革」そのものです。

「行政改革」を伴わない電子政府ほど、無駄なものはありません。

別の見方をすれば、行政改革が本格的に動き出しそうな時こそ、本来の電子政府を実現するチャンスなのです。

国民受けが良さそうだと、「引越しや退職のワンストップサービス」を目指しても、泥沼化するだけで、お金と時間が浪費されるばかりでしょう。これまでの電子申請・オンライン申請を見れば、誰でもわかることです。


●核となる改革は何か

「行政改革」と言っても色々ありますが、その中で核となるのが「公務員制度改革」と「地方分権・道州制」の二つです。

この二つの改革を視野に入れないことには、本当に役立つ電子政府は実現できないと考えています。

政治主導で官僚指示待ち、国民の信頼を「行動」で回復しようのコメント欄で述べましたが、これまでと同じやり方、つまり行政主導・霞ヶ関中心で電子政府を作っていく限り、電子政府の成果は望めないのです。

個々のサービスは、民間で作っていけば良いのです。

行政は、その環境を整備する。少なくとも邪魔だけはしない。ということです。


●CIOの役割は、省益と政治家から電子政府を守ること

行政の仕事は、今やコンピュータや情報システム無しにはやっていけません。

ですから、行政の仕事を継続するためにも、情報システムについて最低限のメンテナンスや刷新は必要です。

けれども、財政状況や、今後予想される社会や制度の改革を考えると、5年10年といった長期の投資は、いったん停止するのが良いでしょう。

例えば、この情報システムを刷新すれば、年間1億円のコストを削減できます。でも、そのためには刷新費用として10億円かかります。

このようなIT投資は、認めるべきではありません。投資回収できる10年を待たずして、新たに情報システムの見直しが必要となる可能性が高いからです。

これが、2億円の投資であれば、2年で回収できますので、認めても良いでしょう。


こうした判断や優先順位付け、全体のバランスや関係性などについて、司令塔となるのが政府CIOです。

政府CIOを、国内外・官民を問わず登用することで、「機能する政府CIO」を目指します。

現行のCIO補佐官も変わります。各省庁に所属する形ではなく、政府CIOの配下に属するようにします。

政府CIOに人事権と予算執行の権限を集中しなければ、張子の虎、名前だけの政府CIOで終わってしまいます。

政府CIOの役割は、各省庁が勝手にIT施策を実行するのを防ぐ。すなわち、国益としての電子政府を、省益から守ることです。

それと同時に、政治家からの国民受けを狙った安易な要求に対しても、国益としての電子政府に反するものであれば、断固としてNO！と断ります。

「ワンストップサービスは、確かに大切なことです。しかし、現段階でワンストップサービスを実現しようとすることは、国民の税金や政府の人的資源を浪費するばかりで、成果を出すことはできません。それよりも、行政間の縦割りを無くすために必要な制度改革を進め、その改革を支援するために電子政府を活用するべきです。」

という感じです。


現政権が、財源確保もままならない状況で、「こんな電子政府サービスを実現します」とか言い出したら、要注意です。これまでと同じ「ハコモノ電子政府」の道をたどることになるからです。

・税や社会保障の制度を変える中で、必要なものには投資する。
・政策の変更はもちろん、政権交代があっても資産として残るものには継続的に投資する。
・税金を使わずに済む方法（民間・海外の人やお金を呼び込む等）を考える

といった方向性が出てきたら、日本の電子政府にも光が見えてくるでしょう。