橋本治とナンシー関のいない世界で

「上野駅から夜汽車に乗って」改題
とうとう橋本治までなくなってしまった。
平成終わりの年にさらに改題してリスタート。

安倍元総理銃撃事件報道を見ながらモヤモヤしていること

2022-07-09 21:35:26 | 国内情勢

安倍元総理が銃撃され亡くなったことを報じる報道を見ながら、ひとつモヤモヤしていることがある。ちょっと半信半疑で書く。

モヤモヤというのは、この事件を受けての政治家やメディア、ジャーナリストのコメントの多くが「暴力による言論の封殺は許されない」と訴えていることだ。

今回の事件が選挙期間中であり、銃撃されたのが安倍元総理という政界の大物であったところから、過去の政治家が狙われたテロを引き合いに出し、その流れの中で今回の事件が語られる。
このところの世の中の混乱と疲弊ぶりが戦前と比べられることも多いため、当然、五・一五事件や二・二六事件という言葉を出す人もいる。私とて、最初はそういう事件が頭をよぎった。しかし、それらと同列に考えてもいいのか・・・。

山上容疑者の取り調べでの発言の真偽についてはまだ調べが必要だが、現状の報道では、その動機について「安倍元総理の政治信条への恨みではない」とし、自らの家庭を家庭崩壊に陥れた特定の宗教団体への恨みを晴らそうと、その宗教団体と安倍元総理がつながりがあると思い込み犯行に至ったと供述しているという。

この供述が真実だとしたら、この事件は、ターゲットが大物政治家ではあったものの、山上容疑者の個人的な恨みによるものである。五・一五事件や二・二六事件のような、純粋な政治への不満によるテロと同列で語り、「言論封殺に負けるな」とイキリ立っていいものなのか・・・。

今のところ、容疑者が安倍元総理に不満を抱いていたのは「ある宗教団体とのつながり」のみで、その政策や政治信条に対してではないし、今のところ、山上容疑者は単独犯で、同じ考えを共有する共犯者もいなさそうである。安倍元総理が主張していた政治信条を、自民党の同僚政治家が主張したところで、また銃弾に狙われるということはないのではないか。

今回の事件は、現状では、政治思想や信条に絡んだものではないし、組織的なものでもなさそうだ。家庭が崩壊し恨みを抱えた容疑者は精神的に不安定になっていた可能性もある。どちらかというと、近年増えている、絶望した「無敵の人」による無差別殺人に近いものを感じる。もちろん、ターゲットは無差別どころか、いまや政界のラスボス的存在になった安倍元総理。その後の政界への影響は計り知れない。

しかし、防衛費拡大論議だとか憲法改正問題だとか、戦争の匂いのする案件がクローズアップされているこの時期に、五・一五や二・二六の名前を挙げて今回の銃撃事件を語り、戦争になだれ込んでいった時代を想起させることは、戦争も辞さないと考えている指導者層の思う壺になってしまうのではないか・・・。

私の考えが足りないのだろうか?

大体、今回の事件を受けて「言論封殺」とか言ってるのは政治家やメディアであって、市井の人々はただただ驚いているばかりではないか。犯行の理由がわからずただ怖いねと言っている人々に、これが言論封殺で、政治的自由を奪うものであるというイメージを植え付けることは、かえって世の中にそういう空気を蔓延させることになるのではないかといぶかってしまう。

五・一五とか二・二六とかいう前に、まずは安倍元総理のご冥福を祈りつつ、山上容疑者がなぜこうした凶行に至ったかの動機や背景をきっちり調べるべきだ。

投票日前日の今日、この事件の報道が比較的少なく、通常の番組編成に戻ったことはちょっとホッとした。
選挙と今回の銃撃は無関係である。
選挙後、安倍総理の悲願を達成したい・・みたいなことを言い出す政治家が出てこないことを願う。


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