橋本治とナンシー関のいない世界で

「上野駅から夜汽車に乗って」改題
とうとう橋本治までなくなってしまった。
平成終わりの年にさらに改題してリスタート。

皮むき間伐体験ツアーin宮城栗駒 その2 クレイジーが日本を救う~栗駒木材編

2010-07-14 08:26:27 | 森から始まる未来
皮むき間伐バスツアー その1で書いたように、「皮むき間伐」は低いコストで森を守れる凄い方法である上に、遊びとしてもとても面白い体験でした。「自然保護」なんて肩に力を入れなくても、低―いハードルで参加できるフレンドリーな森林保護活動だなあと、エコツアーには関心の無かった私も(森の保護には関心ありますよ)、こうして皆さんに紹介しています。

しかし、実は、これ以上に印象に残ったのが、今回皮むきを行ったエコラの森を管理している栗駒木材さんの活動と、新潟からツアーに参加してくださったペレットストーブを作っているさいかい産業の古川さんの話でした。

今回、栗駒木材さんには皮むき間伐でもお世話になりましたが、翌日には、自社の製材所の案内をしてくださいました。

<栗駒木材 大場さん>


また、さいかい産業の古川さんもペレットストーブにまつわる話を聞かせてくださったほか、夜の懇親会では、皿うどんなど自慢の手料理をふるまってくださいました。

<ペレットストーブの説明をする さいかい産業・古川正司さん>


(ツアーの内容を詳しく知りたい方は、こちらのサイトをどうぞ)

そんな2人(栗駒木材さんは会社ですが)の話がなぜ印象に残ったか・・。
それは、両者ともある意味常識はずれ。一言で言うとクレイジーだったからなんです。

しかし、私は、そんなクレイジーの中にこそ、行き詰まった今の日本を救うヒントが隠されていると確信しました。

では、一体、何がクレイジーなのか?

まずは、栗駒木材さんの話からします。
実は、今回伺ったエコラの森は、栗駒木材さんによってその命を救われました。
その経緯はこのページのstoryという項目に詳しく書かれていますが、簡単に説明します。

エコラの森では、バブルの頃リゾート開発が計画されていました。しかしバブルがはじけて計画は無くなり、債権者たちが森のお金になりそうな木を無秩序に伐採し、山は荒れ果てました。そんな山をどうにかせねばと、栗駒木材さんに買い取ってくれないかという話が来ますが、資金面での折り合いがつかず断念。
するとその後、産業廃棄物業者が、ゴミ捨て場にするためにこの森を買い取ろうとしたのだそうです。しかし、山が産廃で汚染されては、麓の自然にも影響が出ます。そこで栗駒木材さんは悩みに悩み抜いた末、8000万円銀行に借金し、この森を買い取ったんだそうです。8000万円の借金の年間の利子は栗駒木材の従業員2人分の賃金に等しかったと言います。
木が盗まれてしまった山なんてすぐにはお金になりませんから、この栗駒木材さんの行動は、ビジネスの観点から見たらクレイジー以外の何者でもありません。

しかし、捨てる神あれば拾う神ありで、身を切って森を守ろうとしている栗駒木材さんに共鳴し、田中優さんらが主催する天然住宅バンクが、無利子で8000万円を貸してあげる事になりました。
これで、地域にも2人分の雇用が生まれます。

いい話じゃないですか。
私も、おもしろおかしくクレイジーなんて言葉を使っちゃいましたけど、“いわゆる常識”にあてはめてクレイジーな行動というのは概してまともなものです。

そんな栗駒木材さんは、天然住宅が作る化学物質の無い家のための木材を供給しています。

<天然住宅が使う建材を取り扱うのがこの木材工房>


森を守りながら人に優しい建材を提供してくださる栗駒木材さんに対し、「天然住宅」では、通常のホームメーカーが1軒の家を建てる際、製材所に支払う額よりずっと多い金額を支払っているそうです。
よくある建て売りなどだと木材費はおよそ100万円程度だそうですが、そこを500万円程払っているとか。でも、森を守りつつよい建材を提供するには、それが適正価格なのだと思います。
それに、この500万円の中には木材の加工賃も含まれています。通常は釘や金属のボルトでバンバン打ち付けるところを、この天然住宅ではできるだけ伝統的な木組みの工法で作ります。釘は建築基準法で定められた最低限。
そのため、建材にはあらかじめ凸出っ張りやそれと組み合わせる凹みが切り込まれたり、穴があけられ、目印がつけられています。


この技術代としておよそ100万円分があてられているそうです。
これが、日本の伝統的な工法を守る事にも貢献しているわけです。

そのほかにも、栗駒木材さんの丁寧な仕事は随所に。
上の写真の3枚目に映っている木は、少し色が黒っぽいですが、これは木酢液に浸されたものです。
内部の構造に使う木は、こうして木酢につけて防虫効果を高めます。

<木酢液につかった木材>


こちらは、木を乾燥させているところです。


家を建ててから木が反ったり狂ったりしないように、建材は芯からじっくりと、完全に乾かしたものが良いとされます。
栗駒木材では、おもに燻煙乾燥という方法で木を乾かしていますが、これは木の繊維をこわさず、細胞のひずみも均一化でき、木の反りや狂いを防げるそうです。
また、より低い温度でじっくり乾かし完全に水分を飛ばしきる低温乾燥炉というのも建設中でした。

しかし、これらは品質の良い建材ができるものの、時間もかかればコストもかかる乾燥法です。
やはり、いいものにはちゃんとお金を払う消費者の理解が必要です。

ところで栗駒木材は、こうした木の乾燥にも、自然エネルギーを使っています。
これは、乾燥炉に熱を送っているボイラーですが、燃料は木質ペレットです。
上からぶら下がっているのがペレットの入った袋。


製材所で使うペレットも実はここ栗駒木材の中で作られています。
これがペレット製造機。製材で出た木のくずを集めて機械に入れれば、ほらこの通り。かわいいペレットに早変わりです。



こうして製材に使う熱もバイオマスでまかなわれ、CO2排出削減にも貢献しています。

そして、一通り栗駒木材の見学が終わった所で、さいかい産業古川さんのペレットストーブの説明会が行わたわけですが、今回はここまでにして、次回、古川さんの素晴らしき「クレイジー」な素顔に迫ります。

次回 「皮むき間伐ツアーin宮城栗駒 その3 クレイジーが日本を救う さいかい産業・古川正司編」に続く



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