旅のウンチク

旅行会社の人間が描く、旅するうえでの役に立つ知識や役に立たない知識など。

ブームと文化

2017年07月03日 | ライフスタイル
カナディアンロッキーの麓のオフロードバイクツアーの取扱を開始してはじめて現地へ同行した際に印象的だったのは、とてもキレイだという事でした。

 ハイウェイ沿いに”鳥居”みたいな道路標識があって、何の標識なのか暫く理解できなかったのですがどうやらピクニックポイント。木でできたベンチやテーブル、そして生物分解式のトイレ、ゴミ箱が設置されています。ゴミ箱は大型で、なおかつ蓋が妙に開けづらいものなのですが、これが”クマ対策”だということを後に知りました。

 日本の観光地で同じような設備だと、大抵の場合、ゴミ箱が溢れかえって周囲にゴミが散乱しているか、あるいは”ゴミは持ち帰りましょう”という看板の陰にゴミが大量に捨てられているような具合だと思うのですが、そんなところは見かけません。もちろん、絶対的に利用する人数が少ないというのもあるのでしょうが、夏場などは家族連れでのドライブの休憩をこういった場所で楽しんでいる姿を結構見かけるのです。

 最初は、”マナーが良いんだな”と思っていたのですが、渡航を重ねるうちに必ずしも全員のマナーが良いわけではない事がわかってきました。

 殆どの人のマナーは日本より良いことは間違いありません。ただ、たまにはやはりビールの空き缶が置きっぱなしになっていたり、食べ物の空き箱が放置されているところにも出くわします。山中のダートを走っていても、投げ捨てられた飲料の瓶や缶を見つけることはありました。

 そういう物を見つけると、現地のガイド達はバイクを停めて拾ってはバイクにくくりつけて次のゴミ箱へ捨てにいったものです。ゴミを捨てる箱がちゃんと設置されていることや満杯にならないように回収されていること、ゴミ箱意外にゴミを捨てる人が圧倒的に少ないことに加えて、自主的にゴミを拾っている人がいるわけですからキレイなわけですね。

 ある時、お客様の1人がガイドたちがゴミを拾う姿を見て感心したということをガイドに話していました。
 それに対して現地のガイドたちが言った話を今も時々思い出すのです。

 彼らの考えとしては....
もちろん、自分のゲストを案内するフィールドをキレイにしておきたいという考えもあってゴミを拾うのだけれども、それだけでなくて、ゴミがあれば、他の人もゴミを捨て始めて、そうするとあっという間にゴミだらけ。そうすると次に来るのは”立入禁止”などの規制。そうなっては困ってしまいます。
 だから、自分達が自由に楽しむ権利を堂々と行使する上では自分達がそのフィールドを使っても問題はないという事を証明し続ける事が必要というわけです。

 カナダの場合、レジャーに関わる権利が認められている代わりにかなり厳しいルールが設定されています。日本の場合はどちらかというと最初からレジャーを行う人は”そんな人いない”という考え方。だからある意味日本の方が自由です。ただし、”いない”という前提なので大抵のレジャーを”禁止”するのはとても簡単という側面もあります。そのあたりを”常識の範囲内”で運用しているのは日本の良い点だと思うのですが、ことレジャーを楽しむ側は正直意識が低いと言わざるを得ません。

 たとえば自転車に対する規制の強化や免許制度の導入などの意見がでています。自転車って、もっと気軽な乗り物としての魅力なんじゃないかと思う一方で、頻繁に目にする我が物顔で走る自転車を見ていると”何らかの規制が必要”という意見に反対できなくなってしまいます。自転車に限らずこの種の事は色々あるのではないでしょうか。

 規制が強化されて、そのレジャーを楽しむ人が激減して、一時的なブームとして消えていく。それが日本で様々なレジャーが繰り返してきた歴史でもあります。様々なレジャーのブームはあっても文化として定着はなかなかしないのが日本の特徴かなとも。

 自分たちが楽しむ自由を守るために何をすべきなのか、そういう事を考えながらレジャーを楽しめるようになってはじめてレジャーが文化の領域になるのだと考えさせられる次第です。


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