自転車ひとり旅★

自転車大好きなTVディレクター日記。

ブルベ600km inしまなみ 後編。

2024年04月30日 01時55分31秒 | 自転車
続きがなかなか書けなくてすみません
GW前後は発狂しそうなほど忙しくて…
それでは待たせた割に大したことがない後編です(笑)








200kmを9時間半で通過
身体はとても調子が良く どこも痛くなっていない
淡々と170Wで漕ぎ続ける



愛媛の松山を出たところでポツポツと雨が降り出した
雨粒が大きい
どしゃ降りになるサインだ



私はあることをずっと考えていた
それは どのタイミングで宿に入ろうかということだ





予約しているのは 折り返し地点の25km手前
西予(せいよ)市にある「まつちや旅館」だ


ここを走るのは確実に夜となる
ルート沿いで見つけやすい宿が良い
そして往復ともに宿の前を通過する(290kmと340km地点)ので
休憩のタイミングを選べる
快活な老夫婦が切り盛りして ご飯が美味しいという評価も魅力だ


それに私は「普通のホテル」が好きではない
なぜなら面白くないからだ
ほどほどに快適で
ほどほどに便利
お値段もほどほど
そんな人生まっぴらだ




考えているのは 行き(290km地点)と帰り(340km地点)の
どちらで休憩するかということだ

このまま行けば 290km地点には19時少し前
340km地点には21時に到着する


まつちや旅館に電話する
「21時になっても良いですか?」
「あらあ大変ね。自転車だわよね。それじゃあ夕ご飯は無しね」

ちょっと待ってくれ(笑)
お風呂に入って夕飯をゆっくり食べるために
まつちや旅館にしたのだ


290km地点での休憩が確定した(笑)






雨は本降りになった
いつもは嫌いな長いトンネルが
今日は天国に思える


風も強くなってきた
微妙に向かい風だ


走りながら クリームパンを食べていたら
突風で飛んでいった





切ない…





さらに風の影響で
平均時速が 22km/hから18km/hに落ちた
上下のゴアテックスが 風をはらんで
漕いでも漕いでも進まない



突然 前を走っていたトラックが停まった


何があったのかとトラックの前に出てみると
車が大破して道を塞いでいた


事故が起こった直後らしい
カップルが電話で警察に状況を説明していた


カーブを曲がりきれず 道の外側の岩に激突し
クルクル回って止まったらしい
岩がなかったら海にドボンだろう
2人で「死ぬまで一緒」とならなかったのは
不幸中の幸いか…



助けられることはないか?
事故渋滞の交通整理を買って出ようかと思ったが
以前 サイクルウェア姿で事故現場の交通整理をしていたら
私が自転車で事故を起こしたと勘違いされ 大変だったのを思い出した


警察が早く到着することを願い 先を急いだ







290km地点 旅館に着いた
予定より1時間多くかかってしまった


女将さんが
「まあまあご苦労さんでした。そのままお風呂に入ってください」
と タオルを持ってきてくれた

「濡れた服はそこのカゴに入れてください。脱水かけますから」

ありがたい
これで暖房かけて部屋干しすれば 出発までに乾くだろう


養生テープで防水加工したシューズは
見事なほど中が濡れなかった
さすが世界に誇る日本のガムテだ(笑)






古い旅館ならではの物干し





1着干すたびに落ちる(笑)





食事はボリューム満点
ご飯が多くて助かった
1泊夕食付きで6500円


ふと窓外を眺めると 雨が止んでいる
急いで天気予報を見たら なんと今から3時間だけ
曇りマークに変わっているではないか


このスキに折り返しポイント(宇和島)までの往復50kmを
走って来てしまいたい!


女将さんに「ちょっと走りに行って来ていい?」と聞いたら
「すぐに寝なきゃダメです」と 笑顔で却下(笑)
そりゃあ深夜1時まで玄関を開けて待ってるのは
いやだよねえ…


つまらなくても 便利なホテルにするべきだったか…


「今走ったら快適だろうなあ」
後ろ髪引かれるように眠りにつき
3時間後に起きたら ちょうど雨が降り出していた


深夜2時 まつちや旅館を出発し
後半戦へと突入した





岡山県倉敷を出て 現在290km地点
天候は雨
残り314km

体調は問題なさそうだが
雨がどう響いてくるか
ゴアテックスを着ても 首や腕から水が染みたり
汗が溜まって体が冷えてしまうことがある

体が冷え切ってしまったら致命的だ
そして胃腸がやられて補給ができなくなる可能性もある
それに雨の夜道は 対向車のライトが水たまりに反射して
道路の白線がまったく見えず スピードを落とす羽目になる


油断は禁物である





午前3時 折り返し地点の宇和島に到着
ちょうど数人の参加者がいたので
雨で大変だと笑い合う





数値がえげつない(笑)



スタート前 主催スタッフの女性が
寂しい道があると言っていたが
いったいどこだったか…


先日走ったフィリピンの山奥で 暗闇の中
野犬に吠えられながら走る恐怖に比べたら
四国の山道なんて 超ハッピーな天国でしかない





360km地点 八幡浜で夜が明けた
これで対向車が来るたびにスピードを落とす面倒から解放される






382km地点
インナーが濡れてきたので 伊予長浜駅のトイレで着替える


外に出ると 軽トラのおっちゃんが「どこへ行くのか」と話しかけてきた
「倉敷までです」と答えると 驚いてくれた
倉敷から来て すでに400km近く走っていることを言おうかと思ったが
話が難しくなるのでやめた


おっちゃんが脚を引きずっていたので
どうしたのかと聞くと
おっちゃんはトラックの運転手で
数年前に荷台から落ちて 脚を痛めたと言う
今日は大好きな釣りに出かけるところらしい


「12時ごろ雨が止むよ。夕方また降り出すけど」


釣り人が言うのだから この予報は信用できる
おっちゃんと互いの健闘を誓い合って 再び漕ぎ出した






422km地点
大好きな松山城を横目に見ながら
松山を通過






しまなみ海道にたどり着いたところで
雨が止んだ





しまなみでは たくさんの人とすれ違った


しまなみ海道はすごい
どこまでも同じような景色なのに 飽きることがなく
島に降りれば 立ち寄りたい店があちこちにある
地図なしでも走れるよう走行線や案内板が充実し
レンタサイクルなど ホスピタリティも素晴らしい


多くの自治体が ここを目指して
自転車を活用した町おこしを進めているが
一番大きな差は 目の付け所だと思った


自転車で走るとき やることが増えると「体感」が減っていく
例えば地図を見ながら ルートに気を配って走ると
その分景色を楽しむ心の量が減っていく
気を遣わなくて済むほど 自転車は楽しくなる


地図なしでも 道に引かれた青線を辿ればルートを走れる工夫は
最高のプレゼントだと思った


コンビニに置いてあるベンチも素晴らしかった
サイクルラックもいいが 本当に欲しいのはベンチなのだ




507km地点
生口島の 5つ目のチェックポイントのコンビニで
最後の食事をとる

固形物か液体か 迷ったあげくオムライスを食べたら
凄まじい胃痛に襲われた





胃が痙攣したように暴れて 耐えられないほどの痛みが襲ってくる
食べたものを全部吐き出してしまいたいが 吐き出せない
あまりの痛みに 道端の物置の屋根を借りて
座り込んだ


固形物を食べ続けたのがいけなかったのか
ある程度走ったら 胃に負担が少ないものに変えるべきだったのか



15分待ったが 痛みは変わらないので
ゆっくりでも進むことにした






再び雨が降り出した





痛みに耐えながら
因島(いんのしま)の15%ぐらいの長い激坂を上る


胃に穴があいたように ギュンギュン痛む
痛みで補給ができない
ハンガーノックにならないよう エネルギー効率が良い強度まで落として走る



激坂の途中に トイレがあった
山道では藤の花が満開だったのに
このトイレ前の藤棚は 花が咲いていなかった
痛みに耐えながら その理由をぼんやり考えながら通過した






船で尾道へ渡る
残り60km
胃痛はようやく治ってきたが
怖くて物が食べられない


ここから補給を高カロリードリンク(リッチカルピス)に切り替えた
ジェルも行けるだろうと飲んでみたら 胃が怒り狂ったように痛んだ
ジェルって意外と胃への負担が大きいのかもしれない




そしてスタートから37時間19分
雨の中で折れそうな心を叱咤しながら
日没とほぼ同時に 倉敷のゴールに辿り着いた





ゴールはアルハプスというサイクルカフェ
明るいスタッフの方が迎えてくれた





美味しそうなケーキやおにぎりを勧められるが
すみません 固形物を見たくないのです(笑)





係の方に 通過証明を見せて
600kmの「認定」をもらわねばならない
緊張の瞬間である

去年 福島の400kmで やらかしているので
今回も何かやらかすのではないかとドキドキだ


忘れ物の多い自分は ミスのないように
チェックポイントや 通過証明の写真を撮る場所などを書いたテープを
自転車のトップチューブに貼っている
ミッションを終えたら剥がしていくので忘れることはない


コンビニのレシート 5枚
通過証明の写真 4枚
サクサクとチェックが進んでいく
よかった 全部チェックOKだ


と思ったら


「それでは最後に 因島(いんのしま)の駐車場の写真をお願いします」







頭が真っ白になった


なんだっけ それ?


携帯の写真を1枚1枚見てみるが
そんな写真 撮ってないのであるわけない



不穏な空気を察して スタッフの女性がフォローしてくれる
「撮ったけどどこかに行っちゃったんですかね?」


何かウソでもつけば 突破できる可能性はあるだろうか?
「撮ったけど消えちゃいました」と言うべきだろうか?


だが私には 何も言えなかった
因島の 激坂の途中
藤の花が咲いていなかった あのトイレのある展望台
あそこで写真を撮るはずだったのだ


ではなぜテープを貼り忘れたか?
「椋浦休憩所」が読めなくて
「むくのうら」と読むのだと調べたら満足して
テープを貼り忘れたのだ(笑)




「写真、撮ってないです」
私はそう答えるしかなかった
そしてその場がシーーーーンとなった(笑)



「申し訳ありませんが……認定は出せませんね」


ここまでの37時間 雨の中で苦しみ続けてきたのは
なんだったのだろうか


秋に1,000km走るために SRを取得しなければならず
スケジュール的に 600kmを走れるチャンスは9月までない
ここで落とすのは 無念すぎた
せめて景色を楽しみながら 初めての道を楽しめたなら良かったが
残念ながら雨しか見てない(笑)



しょんぼりと帰ろうとした私に
スタッフが思い出したようにこう言った


「そうだ 今年から
 GPSの軌跡でも通過証明が出せるようになったんです」



私はサイコンを取りに猛ダッシュした(笑)



だが サイコンが雨で調子悪くなってたりして
GPSデータが壊れたりしたらアウトだ
ドキドキしながらデータを読み込む


サイコンのバッテリーが切れそうだ
よくもまあ ギリギリな事ばかり起こるもんだ
データがアップロードされた!
だが距離が長すぎて データがなかなか表示されない


待つこと5分
ようやく表示されたデータをスタッフに見せる
展望所に立ち寄ってなければダメだと言われやしないか
ヒヤヒヤしたが
無事に通過証明をもらうことができた


「去年までならダメでしたよ」


そう言ってスタッフの方たちは笑ってくれた



606km 37時間19分
TSS 897




なんとか300kmに加えて 600kmの認定ももらえた
残る200kmは6月中旬に岩手で
400kmは6月下旬に東京で参加予定
もうこんな失敗はしたくない(笑)



↑「FORM」(疲れ数値)が-15以下になると体の抵抗力が弱るサインだそうだ
 -87なんて見たことない(笑)






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12 コメント

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大冒険! (ichi)
2024-04-30 08:58:49
それ以外のことがあっても冒険できかってちょっと考えてみましたが・・むりです。
乗り越えた自分にあいたいのであせらずふと思い出して背筋を伸ばすように一歩ずつ一べダルずつ進んでみます。
それにしても新ルールよかったよかった。
お疲れさまでした。
Unknown (taakaa)
2024-04-30 12:37:52
600km認定、おめでとうございます!
私も函館200kmを無事に終えました、やはり「なるべく速く」を心掛けると終盤の補給戦略が肝になりますね。選びながら迷いながらでした。
雨はゴアテックス一択かと思いましたが、風をはらんだりと難しい場面もあるんですね。不覚にも物干しの場面は面白くて自分は好きです。笑
ゆっくり休んで次回200kmのblogも楽しみにしています。
ichiさま。 (D☆)
2024-05-01 02:40:43
新ルールで助かりました(笑)
いつかスマートにゴールしてみたいもんです。
taakaaさま。 (D☆)
2024-05-01 02:44:33
taakaaさんもめっちゃ速いタイムでゴールされましたね。素晴らしいです。
次の200km、400kmはたぶんRaphaのシャドージャージだけで行けるので楽だと思います。
Unknown (ta12015522)
2024-05-01 11:17:01
600km 走破、ロードバイク初心者の私からすると夢のようです。たくさんの出会い、とても楽しそうで素敵です。
これからのブログも楽しみに読ませて頂きます。たくさんの感動、ありがとうございます。
Unknown (hisashi)
2024-05-01 13:23:58
600km認定おめでとうございます!
> 「写真、撮ってないです」
読んでる私も頭が真っ白になりました笑。
Googleで確認したら、椋浦休憩所は普通に行っても普通に写真を撮りそうな綺麗なところでしたね。
藤の花が咲いていれば間違いなく撮っていましたよね笑笑
お疲れ様でした。ご自愛ください!
Unknown (ハタボー)
2024-05-10 17:00:07
ツライ思いをして完走したのに 証拠がないので 失格です・・・
めっちゃ残酷です。 ( ;∀;)

ガーミンの軌跡が残っていて良かったですね

しまなみ海道は 何度も走ってますが 行けば
帰ってきた――って思えるので 本当に良い道です!
Unknown (hirowaka1979)
2024-05-11 12:24:17
今回も期待どうりの落ちでめちゃくちゃ楽しませてもらいました(笑)
無事に完走されて本当に良かったです(*^^*)

まさに物語です!次回も楽しみにしています👍
ta12015522さま。 (D☆)
2024-05-15 19:16:01
ありがとうございます。
実は他にも色々な出会いがありました。
長くなるので今回は書きませんでしたが、いつか書きますね。
hisashiさま。 (D☆)
2024-05-15 19:18:14
いや〜あの瞬間は思い出したくないです(笑)
笑い話になってよかったです…

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