映画鑑賞

昔の名画から最近上映の映画まで、国内外を問わず幅広く楽しんでいます。別世界へ連れて行ってくれる作品が好み(本棚6)。

「となりのトトロ」

2010-07-23 23:01:49 | その他
1988年、日本映画(長編アニメーション)。

云わずと知れた宮崎アニメの最高傑作です。
公開されたのは、もう20年以上前なのですね。

今までに5回は見たでしょうか・・・。
特に「懐かしき昭和日本の里山」を味わうにはベストの作品です。
「もののけ姫」も私にとっては捨てがたいけど。

今回、TV放映を偶然観ました。
やっぱりいいなあ。

子ども達のしぐさの描写がこれほどまでに細かいとは・・・改めて感心しました。
子どもが子どもらしくてとってもかわいい。

「かわいい子どもはかわいがられている」「愛されている子どもは愛らしい」・・・単純なこと。
ある時代・ある国で「子どもが子どもらしくない」ならば、それは「子どもとして扱われていない」ことを意味するのでしょう。

日本人の郷愁を誘うアイテムが随所に散りばめられています。
木造家屋、田んぼの風景、夕暮れの寂しさ、森の深さ。
現実と空想が入り交じり、トトロを生み、昔話の世界を形成しています。

私のクスノキ好きも、この映画が始まりでした。
今後も5年に1回くらい、観たくなる映画です。

5点満点で6点(反則?)。

ドラマスペシャル「白洲次郎」

2010-01-02 08:19:28 | その他
寝正月のお供は溜まっていたTV録画の視聴と決め込みました。

2009年9月にNHK-BSで放映された3部作(合計4時間半!)を観てみました。
原案・北康利、牧山桂子、脚本・大友啓史、近衛はな、音楽・大友良英、主演・伊勢谷友介。

白洲次郎さんは近年たびたびメディアに取り上げられる人物です。
戦中戦後に日本政府のブレインとして活躍した方で、残されている写真は雑誌モデル張りのダンディさ。
そして占領された日本の中で「唯一従順ならざる男」とGHQに揶揄されたほど鼻っ柱が強かった。
彼の仕事として一番印象に残っているのは、サンフランシスコ講和条約の吉田首相の演説文を直前に英語から日本語に直させたことです。
日本人としての誇りを貫いた象徴的なエピソードですね。

また、夫人の白洲正子さんも随筆家として有名な方です。
彼女の文章の師は小林秀雄氏でその指導はたいそう厳しかったとのこと。
最近私も読み始めましたが、凛として無駄のない文章は読んでいて心地よいですね。

ドラマは次郎氏だけではなく、この夫婦に焦点を当てて構成されています。
あたかもジョン・レノンとオノ・ヨーコのようなパートナーとして。

次郎は政界に関わりつつも、本業は農業だったという意外な一面を知りました。
自分の出番が無くなると、フイッと農作業に戻るのです。
土をいじってモノを作る人間は考え方がブレません。
最初から最後まで「己の良心(plinciple)」の向くままに行動する彼は見ていて壮快でした。
こんな政治家(本人はそう思ってないようです)が日本にもいたんだなあ、と感心しました。

ストーリーも見応えがありましたが、ファッションも目を引きました。
イギリス留学時代のツイード・ジャケット中心のカントリーファッション。
帰国後のコンケイブド・ショルダーのタイトな6つボタンのダブルブレスト・スーツとセットインスリーブのチェスター・コート。イギリスらしいウエストが絞られたシルエットは、アメリカのボックス・シルエットのそれとは異なり、シャープな印象を与えます。
次郎役の伊勢谷友介さんが細身でクールな二枚目なので、とても似合います。

次郎氏は仕事が終わると田舎にある自宅に帰りますが、この出で立ちで帽子をかぶった英国紳士然とした彼がたんぼ道を歩く姿は、当時新鮮に映ったことでしょう。
このドラマの中では、意識的とも思われるほど、コートを着脱する仕草が使われています。
帰宅後に帽子を取り、コートを脱いでくつろいだ表情に戻る場面は「at home(家庭)」を感じさせます。
この演出、記憶によると「ゴッドファーザー・パート2」がオリジナルですね。
ロバート・デ・ニーロが演じる若き日のヴィト・コルレオーネがマフィアの仕事に手を付け始めた頃、家庭に帰るとやさしいお父さんに戻るという、コッポラ監督の見事な技に感心したものでした。

しかし、吉田茂を演じる原田芳雄さんの圧倒的な存在感には参りました。
本人が乗り移ったような自然で豪快な演技は光を放っていましたね。

残念なのは、終始画面にタバコの煙が流れていること。
次郎も場面場面で吸いますが、正子はず~っと吸っているような描写。
自身の発散できないストレスをタバコで気を紛らわしている心理がありありと感じられました(ということは演出は成功?)。
GHQとの会議もモクモク煙の中で行われた模様。

さて、雑誌で知ったことですが、白洲次郎が愛用した時計はロレックスのパーペチュアル(自動巻)の金無垢時計。
それ1つしか持っていなかったとか。
私は時計好きですが、ロレックスは「バブコン(バブル時代に流行ったステンレスと金無垢のコンビのロレックス)」のイメージが先行し、どうも好きになれませんでした。
でも彼が愛用していたのを知り、昔のロレックスには惹かれるようになりました。
1940年代に造られたねじ込み竜頭を用いた防水機構はロレックスの独壇場で、今でも日常使用には何の問題もありません。

本物は時空間を経て光を放ち、落ち着きつつも妖しい雰囲気を纏っていきます。
人間もそうありたいモノです。