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“ISOを活かす―53. 品質マニュアルをPR資料として、顧客に信頼を与える”


今回は 品質マニュアルの扱い方をめぐる課題です。

【組織の問題点】
顧客から品質マニュアルの提出を求められ、初めての要請に対応に苦慮している会社がありました。顧客提出となると 品質マニュアルの内容を改訂した方が良いかとまで迷っているが、本来 品質マニュアルはどうあるべきものでしょうか、という課題です。

【磯野及泉のコメント】
まず、ここではISO9001の品質マニュアルに関する規定を見てみましょう。



ISO9001では まず対象とする品質マネジメントシステムの範囲を明確にすること、となっています。当然のことですが、ここでのポイントは 適用“除外”のプロセスがある場合は それを明示し、“除外”することが “正当とするjustification”ことを示す理由を記述することになっています。そして この“除外”可能かどうかは “1.2 適用”に規定された判断基準で判定することになっています。その1.2 に書かれていることは、“除外”可能なプロセスは “7. 製品実現”のなかに規定されている事項であり、“除外”しても 組織の顧客要求事項等の規制要求事項を満たす製品に影響しないものでなければならないことになります。つまり、“除外”しても製品に何ら影響しないプロセスであることを理由として合理的に記述しなければならないことになっています。
つまり、品質マニュアルには、ISO9001を適用する製品とプロセスを記述し、もし“7. 製品実現”のプロセスで“除外”せざるを得ないプロセスがあるならば、その理由を まず記載する必要があるのです。

次に、品質マネジメントシステムの運用に関する手順を示す文書、またはその文書がどのようになっているか特定できる記述が必要です。例えば、ISO9001の規定要求事項を実現させる文書のリストを ISO9001の項番とともに表記するような方法や、業務フロー図に注釈として付記するような方法が 一般的でしょう。

最後に、品質マネジメントシステムのプロセス相互の関係を示す記述が 必要となっています。これには、いわゆる品質保証体系図等で 業務フロー図等によって表現することが 可能となります。

つまり、品質マニュアルに記載する事項として要求されているのは 4.2.2項のa),b),c) の3項目だけなのです。ここには、 “企業のノウハウに相当することまで書く” 必要はありません。
これから、規格では“企業のノウハウ”の明示を期待している訳ではないことが分かります。それでも“企業のノウハウ”を書きたいというのならば、それは勝手ですが、マニュアルは本来“組織の内外に提供する”ことを期待して 書くように要請されている文書であることに留意するべきです。

以上が ISO9001で要求している品質マニュアルに関する事項です。それにも関わらず “外部”を“審査会社”だけであると勝手に決め付けて 品質マニュアルを 第二者監査でも社外秘として明示しないのは“重大な不適合”に近い所業であると言えます。ところが、現実にはこのような会社が多いのは 残念ながら事実です。

品質マニュアルは 本来は 顧客に自社のことを説明するための資料だったのを ISO9001ではマニュアルとして規定されたという説があります。これは 非常に説得力のある説で、私もほぼ間違いない話として信じています。また、そう考えると品質マニュアルは どうあるべきかが見えてくるように思うのです。
分厚い何ページもあるような読み辛いものではなく、図表で簡明に会社概要が分かる資料であるべきでしょう。そうでなければ、この会社に興味を持って 長く付き合おうという気が起きません。この会社から 製品を購入するにしても、です。
まして、そこに技術上のノウハウが 書かれていてもあまり意味がないことが分かります。そこに書かれるべきは、この会社が 立派に事業を運営しているという確信を ステーク・ホルダー与えるものであれば 良いことになります。組織図や 品質保証体系図は そのための手段として有効でしょう。そこに、会社運営のポリシー(品質方針など)があれば 確信を与えるのに さらに役に立つでしょう。

品質マニュアルを薄くすると 文書体系を考え直す必要があるでしょう。もし、現行のマニュアルが かなり分厚いものであるのなら、マニュアルの下位文書に 相当部分の記述や規定事項を移行させる工夫が必要になります。このために、マニュアルの文書リストの記載が要求されていると見るべきでしょう。

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