母の足だと医院まで30分かかったと思う。内科で肛門もみてくれる医者をネットで探して連れて行ったのは4年位前。
最初「なんか、あの先生頼んないわ」と言っていたが、恥ずかしい箇所をみてもらう訳だから、そのうちに母も頼りにするようになった。
歩行器を押して約1キロも遠くまで行くのは危険極まりないと、はらはらしていたが、独りでちょくちょく訪ねて行き、そのうち「先生、お好きみたいだから」と生の平目を持っていったりしだした。私が生モノなぞ持っていくのは良くないよと言うと、百貨店でハムを買って持っていったりしていた。
その先生がお腹のレントゲンを撮った時に、当然上に映っているべき胸の片方が映っていないと気付いてくれたのが母の胸水を発見した切っ掛けだった。その後退院してからも、逆流性食道炎で脱水状態になった時に連れて行き点滴をしてもらって危機をのり超えたのが何回あったか。
昨年末発症する数日前に連れて行き私は「年末年始先生のところも休みになるけど、其の間無事で済むとは考えにくいなあ」と話したのが最後であった。
その後、一度報告に行かねばと思いつつ果たせていなかったので土曜日の医院の受付終了時間を見計らって訪ねていった。
「先生も気にしていただいていたんじゃないかと思うんですが、案の定無事とは行かなかったですよ。」
「今から思うと、こんな遠いところまで独りで車を押してきて、よくも途中で事故に遭わず、路に迷いもせず、ひったくりにやられる事もなく無事に済んだのは奇跡です。」 先生も「本当だね~」
「看取りが終わって落ち着いたら、連絡しますので一度付き合ってください。」
先生は頷いてくれた。