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日本人のお人好しもここから:侵略を免れた日本02

2012年10月24日 | 侵略を免れた日本
日本文化のユニークさ7項目にそってこれまで書いてきたものを集約し、整理する作業を続ける。7項目は次の通り。

日本を探る7視点(日本文化のユニークさ総まとめ07)

今回も、(4)大陸から海で適度に隔てられた日本は、異民族により侵略、征服されたなどの体験をもたず、そのため縄文・弥生時代以来、一貫した言語や文化の継続があった。

に関連する記事を集約して整理する。

日本文化のユニークさ09:侵略なき安定社会
日本の「復元力」』の中で中谷巌もまた、日本史全体を通してのいちばん重要なポイントを、異民族による征服がなく、そのため、日本人の穏やかさや、社会の安全や安心が保たれたということに見ている。一方、大陸の人々は傾向として、常に相手からつけこ込まれたり、裏切られたりするのではないかと怯え、逆にどうやったら相手を出し抜き、ごかませるかと、攻撃的、戦略的に身構えているというのだ。大陸の人々が、利害関係がからむ場面ではなかなか謝罪しないのも、こんな背景があるからだろう。

異民族に制圧されなかったことが、日本を相対的に平等な国にした。もし征服されていれば、日本人が奴隷となりやがて社会の下層階級を形成し、強固が階級社会が出来上がっていたかも知れない。異民族との闘争のない平和で安定した社会は、長期的な人間関係が生活の基盤となる。相互信頼に基づく長期的な人間関係の場を大切に育てることが、日本人のもっとも基本的な価値感となり、そういう信頼を前提とした庶民文化が江戸時代に花開いたのだ。

江戸の庶民文化が花開いたのは、武士が、権力、富、栄誉などを独占せず、それらが各階級にうまく配分されたからだ。江戸時代の庶民中心の安定した社会は世界に類をみない。歌舞伎も浄瑠璃も浮世絵も落語も、みな庶民が生み育てた庶民のための文化である。近代以前に、庶民中心の豊かな文化をもった社会が育まれていたから、植民地にもならず、西洋から学んで急速に近代化することができたのである。

日本文化のユニークさ10:性善説人間観と日本の長所
かつて日本人の人間観・その長所と短所(1)というエントリーの中で岸田秀の『日本がアメリカを赦す日 (文春文庫)』の次のような主張を取り上げた。日本人は、ある種の人間観を前提として行動しているが、その前提についてはほとんど無自覚だというのだ。それは人間は、本来善良でやさしく、そして一人では生きることのできない弱い存在だから、互いにいたわり合い、助け合って生きていくしかないという性善説の人間観で、そんな人間観を前提にして日本の社会や規範は成り立っているというのだ。

このブログの「日本の長所」というシリーズで10項目にまとめた長所の多くが、そのような人間観に関係しているといえるだろう。

1)礼儀正しさ
2)規律性、社会の秩序がよく保たれている 
3)治安のよさ、犯罪率の低さ 
4)勤勉さ、仕事への責任感、自分の仕事に誇りをもっていること
5)謙虚さ、親切、他人への思いやり
6)あらゆるサービスの質の高さ
7)清潔さ(ゴミが落ちていない)
8)環境保全意識の高さ
9)食べ物のおいしさ、豊かさ、ヘルシーなこと 
10)外来文化への柔軟性

9)以外は、何らかの形で性善説の人間観に関係していると思うが、とくに2)~6)あたりは関係が深い。人間の誠意や真情を互いに信頼することで、社会の「和」や秩序が保たれる。自分のわがままを抑えることで、相手も譲ってくれ、そこに安定した「和」の関係ができるという性善説を無意識のうちに共有しているから、規律や秩序、治安のよさ、謙虚さ、親切、思いやりなどが維持される。

では、こういう日本人の特徴はどこから来るのかと言えば、これこそ日本が、異民族による侵略、強奪、虐殺など悲惨な体験をもたなかったことによると思われる。

日本文化のユニークさ11:侵略なしだからこそ日本の長所が
日本のように、異民族との闘争のない平和で安定した社会は、長期的な人間関係が生活の基盤となる。相互信頼に基づく長期的な人間関係の場を大切に育てることが可能だったし、それを育て守ることが日本人のもっとも基本的な価値感となった。その背後には人間は信頼できるものという性善説が横たわっている。

加えて、日本は稲作農業を基盤とした社会であった。人口の8割以上が農民であり、田植えから刈入れまでいちばん適切な時期に、効率よく集中的に全体の協力体制で作業をする訓練を、千数百年に渡って繰り返してきた。侵略によってそういうあり方が破壊されることもなかった。

礼儀正しさ、規律性、社会の秩序、治安のよさ、勤勉さ、仕事への責任感、親切、他人への思いやりなどは、こうした歴史的な背景から生まれてきたのであろう。

また、異民族に制圧されたり征服されたりした国は、征服された民族が奴隷となったり下層階級を形成したりして、強固な階級社会が形成される傾向がある。たとえばイギリスは、日本と同じ島国でありながら、大陸との海峡がそれほどの防御壁とならなかったためか、アングロ・サクソンの侵入からノルマン王朝の成立いたる征服の歴史がある。それがイギリスの現代にまで続く階級社会のもとになっている。

すでに触れたが、日本にそのような異民族による制圧の歴史がなかったことが、日本を階級によって完全に分断されない相対的に平等な国にした。武士などの一部のエリートに権力や富や栄誉のすべてが集中するのではない社会にした。特に江戸時代、庶民は自らの文化を育て楽しみ、それが江戸文化の中心になっていった。庶民は、どんな仕事をするにせよ、自分たちがそれを作っている、世に送り出している、社会の一角を支えているという「当事者意識」(責任感)を持つことができる。自分の仕事に誇りや、情熱を持つことができる。

階級によって分断された社会では、下層階級の人々はどこかに強力な被差別意識があり、自分たちの仕事に誇りをもつという意識は生まれにくい。奴隷は、とくにそういう意識を持つことができない。日本文化のユニークさのひとつは、奴隷制を持たなかったことであった。奴隷制の記憶が残り、下層階級が上層階級に虐げられていたという記憶が残る社会では、労働は押し付けられたものであり、そこに誇りをもつことは難しいだろう。

私は日本のここが好き!―外国人54人が語る』や『続 私は日本のここが好き!  外国人43人が深く語る』を読んで、私がいちばん強く印象に残るのは、外国人が日本人の仕事への責任感や誇り、誠実さを語る部分である。私たちは、こういう私たちの長所をもっと自覚すべきだと思う。自覚してこそ、守り伝えていくこともできるのだから。

《関連記事》
日本文化のユニークさ07:ユニークな日本人(1)
日本文化のユニークさ08:ユニークな日本人(2)
日本文化のユニークさ09:日本の復元力
日本文化のユニークさ11:平和で安定した社会の結果
日本文化のユニークさ37:通して見る
日本文化のユニークさ38:通して見る(後半)
その他の「日本文化のユニークさ」記事一覧

《関連図書》
☆『ユニークな日本人 (講談社現代新書 560)
☆『日本の「復元力」―歴史を学ぶことは未来をつくること』)
☆『日本の曖昧力 (PHP新書)
☆『日本人はなぜ震災にへこたれないのか (PHP新書)
☆『世界に誇れる日本人 (PHP文庫)
☆『日本とは何か (講談社文庫)

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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (pk)
2012-10-25 18:16:34
>階級によって分断された社会では、下層階級の人々はどこかに強力な被差別意識があり、
>自分たちの仕事に誇りをもつという意識は生まれにくい。

ある漫画(大河原遁「王様の仕立て屋」単行本5巻9ページ)で
「イギリスは未だに階級制度があるが、殆どのイギリス人は不自由を感じていない。
各々の階級にそれぞれの誇りがあり、他の領域に野心がないからさ」
てなセリフが在って、なるほどなーと思ったもんだけど、実際どうなんだろうねえ。
Unknown (ぞろめ)
2012-10-25 19:40:17
はて?江戸時代には士農工商の他にも階級があったはずですが、それはどう見るんでしょうかね?
差別なるものも聞いたことがありますが、それについてはどう思ってるんでしょうか?
外国と比べればまだマシなんでしょうが、日本にだって差別や不平等なこともあったかと思います。主に一部の人達に。
性善説的な見方ではいい部分しか見えないでしょうけど。
Unknown (pk)
2012-10-25 20:33:43
>日本を階級によって完全に分断されない相対的に平等な国にした。
>階級によって分断された社会では、下層階級の人々はどこかに強力な被差別意識があり

本当にそうだろうか?
ではなぜ日本は明治維新で四民平等を唱え、身分制を廃したんだろうか?
(華族は居たけどね)
イギリスなんか今でも普通に階級制なのに。
制度としては廃されても、遺風を残す国も多いし。

それは社会の権力財力を寡占していてずっと制度が強固だったとしても、
民主制の現代、止めようと思えば止められると思うんだけどなあ。

平等な国だが、真っ先に身分制を廃した。
被差別意識がある、しかし現代でも階級制。
なんか辻褄が合ってるような合わないような。