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権威を嫌う知的な大衆:「日本的想像力」の可能性(3)

2013年10月21日 | 世界に広がるマンガ・アニメ
ここまで『日本文化の論点 (ちくま新書)』に沿って「日本的想像力の可能性」というテーマを考えてきた。今回は、この本の内容には直接は関係ない話題に少し触れて、次回また本に沿ったテーマに戻すつもりである。

前回、広い意味で「日本的コミュニケーション空間」の基盤をなす日本社会のあり方を以下のように私なりにまとめてみた。それは日本独特の風土と地理的条件、歴史の中で育まれた平等で細やかなコミュニケーション空間であり、それが現代のサブカルチャー空間にも受け継がれているのではないかと指摘した。

①知的エリートにコントロールされない巨大で平等性の高い大衆層が存在する。
②その各自が、現場でどんな仕事をするにせよ、自分たちがそれを作っている、世に送り出している、社会の一角を支えているという「当事者意識」(責任感)を持っている。
③だからこそ、互いの仕事を信頼でき、相互に協力し合いながら、共通の仕事を成し遂げたり、社会全体の質を保っていくことができる。

今回とくに触れたいと思ったのは、上のなかのとくに①に関連して興味深い調査結果が報道されたからである。すでに様々なメディアが報じているので目にした人も多いだろう。たとえば以下のような記事である。

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成人力「1位」欠ける独創性を鍛えたい

経済協力開発機構(OECD)が16~65歳を対象に初めて行った、「国際成人力調査」の読解力などの分野で、日本が1位という結果が出た。

教育水準も平均的な学力も高いという日本社会の特質が表れた形だ。だが、思考力や創造力をどう育てるか、才能をいかに伸ばすか、日本の課題は少なくない。「1位」に慢心することなく、世界で競える力を育てなければならない。

学力は経済力や国力に反映するとの観点から行われた調査には、先進国の集まりであるOECDなどの24カ国・地域が参加した。

調査は、日常生活で使う知識の応用に重点が置かれた。文章や資料を読んで答える「読解力」と数や図形を扱う「数的思考力」で、日本はOECD平均を大きく上回る1位の成績だった。

特徴的なのは、下位の割合が低く平均点が高いことだ。中卒層の成績が米国やドイツの高卒層を上回るなど、義務教育段階のレベルの高さが示された。就職後の社内教育や生涯学習の成果が発揮されたとの指摘もある。(以下略)

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この調査結果については、「ITを活用した問題解決能力」では19カ国中で10位と、それほど高くない、日本成人の「読解力」スキルのレベルの高さは必ずしも賃金の高さに反映されていないなど、いくつかの問題も指摘されている。しかし、日本の成人が世界的にみて学力がトップクラスであるという調査結果は否定できず、上の記事でも指摘されているように、成績下位の割合が低く、他国に比べ学力の面でも格差が少ないこともデータ上否定できない。つまり日本には、

①知的エリートにコントロールされない巨大で平等性の高い大衆層が存在する。

のうち、巨大で(知的にも)平等性の高い大衆が存在することが、データで裏付けられたのである。

では上の文章の前半「知的エリートにコントロールされない」についてはどうだろうか。これについても面白いデータがある。

日本に「強いリーダー」がいないのは、だれも望んでいないからです

リンク先のデータを見れば明らかなように、この調査項目で日本人の意識は世界の中でも例外中の例外に属する。この調査は、1980年代から世界80ヶ国以上のひとびとを対象に、政治や宗教、仕事、教育、家族観などについて訊く「世界価値観調査」の一項目ということだ。かなり大規模な意識調査のようだが、その2005年調査の全82問のなかのひとつで、日本人が他の国々と比べて圧倒的に異なっているのだ。

近い将来、「権威や権力がより尊重される」社会が訪れたとすると、あなたの意見は「良いこと」「悪いこと」「気にしない」のどれでしょうか、という質問項目である。

社会を運営するためには権威や権力は尊重されるべきだと考えている人の割合が、フランス人84.9%、イギリス人76.1%、オランダ人70.9%、アメリカ人59.2%、中国人43.4%。それに対して日本人は、「権威や権力を尊重するのは良いこと」と答えたのはわずか3.2%%しかいなかった。逆に80.3%が「悪いこと」と回答している。権威や権力への信頼度が2番目に低い香港でも22.6%が「良いこと」と回答しているのだから、この結果は驚くべきものである。

権威や権力を尊重したり信頼したりしないという意識をもった人が多い社会が、そのまま「知的エリートにコントロールされない」人々が多い社会とは限らないだろう。しかし、日本人が、社会的なリーダーといわれる人々、政治家や学者や評論家をそれほど信頼していないのは確かなようで、信頼していなければコントロールされにくいと言えよう。

以上二つの調査結果からも、日本の大衆が平均的に知的であり、しかも知的な格差が少なく、一部の権威や知的エリートをそれほど尊重も信頼もしていないということは事実だろう。そして、強力で優秀なリーダーは出にくいが、知的レベルの高い優秀な「平凡人」が多く存在し、そういう大衆が社会を支えていることに日本の底力があるのも確かだろう。同時にそれが「日本的想像力」の基盤でもある。
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