LE REGARD D'ALAIN DELON

アラン・ドロンさんの魅力を探ります。

UN FLIC (1)

2006-08-25 | THE 70'S CINEMA
1972年のアラン・ドロン主演作品『リスボン特急』を採り上げます。

この日本題名は覚えやすく、どこかエキゾチックな響きがあり、決して悪くはないのですが、
かなりこの作品のイメージを観客に誤らせてしまうような気がします。
原題は「あるデカ」というシンプルなもので、
正に「あるデカの日常」を淡々とジャン・ピエール・メルビル監督は描きたかったのだと思います。

この『リスボン特急』は意外と公開当時から評価が低いようで、
シネアルバム「血とバラの美学」にも、ある日本の有名な監督が手厳しい批判文を書いておられました。
確かに他のメルヴィル監督作に比べると弱いかもしれませんし、
各シーンにツッコミどころ満載の映画であることも認めざるをえません。
しかしながらこの作品でのドロンの演技には印象的なシーンがぎっしりつめこまれており私は好きな作品です。

それまでの作品ではドロンの演技にはまだ「若さ」を感じさせるようなものがよく見られましたが、
この『リスボン特急』ではそういう「若さ」「甘さ」といったものを画面から感じさせず、
一種の「凄み」というものを演技で披露した初めての作品であると思います。

外見面ではドロンは珍しくダーク・スーツではなく
薄いブルーのスーツと薄いカーキのジャケットを身にまとっていますが、
映画全体のブルーを貴重とした映像にとてもマッチしていました。

特に印象にに残ったシーンは
①殺された女性の死体を上から覗き込んだときの虚無的な視線。
②不法滞在でひったくり常習犯の外国人たちを目の前に整列させ、
そのうちの一人の頬を有無を言わさず顔色変えずに思い切りひっぱたいて自白させる暴力的なシーン。
③射撃練習場で同僚とゆっくり歩きながら、いきなり銃を撃つ際の素早い身のこなし。
④怪しさ満天の女装の情報屋との車の中での密談。(「FRANK RIVA」で同じようなシーンが見られます。)
⑤そして彼女(?)の情報が偽情報だったと勘違いしたドロンがデカ部屋に呼びつけて手ひどく痛めつける残虐な目つき。
⑥銀行強盗団の一人を食堂で待ち伏せし、飛び掛って羽交い絞めにする緊迫感溢れるアクション・シーン。
⑦追い詰められた犯人が自宅で自殺する瞬間ドアの外で思わず身を潜め、発砲した後に部屋に入る一連の無言の動き。

などです。

そして最後に最も私の印象に残っているのは、
ドロンが自分のデスクで執務中に眼鏡をかけたり外したりしながらデスクに座り、
クレンナのいるクラブに電話して彼が不在とわかると、一瞬考えた後に
新聞発表を待ってもらうよう上司に電話をかける一連の動きを長回しのワンカットで捉えたシーンです。
上司に「間に合わない」と返答されて最後に口元だけ笑いながら
「いえけっこうです」と目をうつろにしてつぶやくクールな芝居は最高でした。

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1 Comments

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情報屋 (Astay)
2006-08-29 01:52:21
チェイサー様

『リスボン特急』最近BSで放送されましたよね

私も何人かの方々に観るようにお勧めいたしました

勿論、自分でもまた観ましたよ

実は私最初に観た時あの情報屋が男であるとは夢にも思ってませんでした

『血とバラの美学』でその事を知りア然とした思い出があります

非常に美しかったですし小柄でしたので、まさか男とは思いませんでした



チェイサー様、色々と思い入れのあるシーンを挙げておられますが

私は、本当にラストでの車のシーンが好きです

お隣に座った刑事さんがガムを差し出すのに要らないと断るとこです

あの大大アップのお顔をスクリーンで観たかったです



あ、私からの直メールは届いてますでしょうか?
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