LE REGARD D'ALAIN DELON

アラン・ドロンさんの魅力を探ります。

AVEC MASSARI

2008-06-23 | THE BRILLIANT PHOTOS
「映画の友」誌より、
パリのスタジオで『さすらいの狼』を撮影中の
アラン・ドロンさんと共演のレア・マッサリとのスナップ写真です。

書かれている記事を原文通りご紹介しますと、
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『黒いチューリップ』『危険がいっぱい』に続くドロンの新作は、
彼自身が初めて製作に参加している『狼の死』(『わが母への手紙』改題)。
これはロミー・シュナイダー主演『島の決闘』("Le Combat dans l'île")
http://www.dvdbeaver.com/film2/DVDReviews33/fire_and_ice.htm
という作品で一躍注目された新人監督アラン・カヴァリエが、
彼自身のオリジナル・シナリオに基づいて演出する作品で、
ドロンにとっても新生面をきりひらくものと期待されています。

この映画にはストーリーらしいものはなく、
イタリア生まれでパリに住むジュリアーナという一人の娼婦をめぐって
様々な人間心理が展開するものです。
このジュリアーナ役にドロンがあえて希望したのが
『情事』でむずかしい心理的演技を見事にやってのけたイタリア女優レア・マッサリで、
ドロンはわざわざローマまで出かけて彼女を口説き落としたと言われます。

この映画はパリ、マルセイユ、レバノンで撮影されていますが、
これまでは外部には覗くことを許されなかった
パリのセット風景が初めて撮影許可されたのがこの写真です。

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当時の記事ではまだ映画のストーリーが完全には把握されていなかったようです。
映画の題名も二転三転しているようですが、
『さすらいの狼』というタイトルは主人公の孤独をよく言い表したいい題名です。
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L'INSOUMIS (3)

2008-06-22 | THE 60'S CINEMA
前回のインタビューの続きです。

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Q“『さすらいの狼』はアルジェリア戦争(1954年~1962年)について描かれていますね。
この戦争についてフランス本国の映画人たちはあまり取り上げようとはしません。
たとえば数多くのアメリカの製作者たちがベトナム戦争を映画化することに取り組んでいるのに対して、
なぜフランスの映画人はこの戦争について取り上げることをいやがるのでしょうか?”

AD“ベトナム戦争は多くのアメリカ人の頭の中に現実の問題として今でも存在しているし、
あの戦争で闘って帰還した人たちは今も心に傷を持ち続けている。

一方私たちフランス人はアルジェリア戦争のことはもう忘れてしまっている。
もうあの戦争のことはどうでもよくなってしまっているんだよ。
戦争中に生まれた今の20代の若者たちはあの戦争に全く関心を示さない。
彼らの親の世代でさえ、あの戦争のことについて話しをしようとしない。
こんな状態でいったい全体誰がこの戦争について映画にしようとするだろうか?
ポール・ボンヌカレールがPar le sang verséを出版して以来
20数年近くの間、(←この部分、私の知識不足で意味不明です。)
私のこの映画も含めてすべての製作会社が失敗しているんだ。
結局アルジェリア戦争の外人部隊というテーマは観客動員には結びつかないのさ。

一方のアメリカではベトナム戦争の傷跡は今も残っている。
精神的に痛手を被った兵士たち、
父親を戦争で失い心に傷を負った子供たちが今でも何千人と存在しているんだよ。”

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ドロンさんがことさらに政治的発言をしているというわけではありませんが、
暗にフランス人のアルジェリア戦争に対する無関心を批判している言葉が出た
大変珍しいインタビューだと思います。

若いころに実際にインドシナ戦争に参加した過去を持つドロンさんとしては、
この映画の物語に恐らく当初かなりの思い入れがあったのではないかと想像に難くないのですが、
興行的な大失敗という結果を目の当たりにしても挫折することもなく、
その敗因を冷静に分析し次の仕事に向けての肥やしとしているところが
ドロンさんの常人とは異なる優れたところです。

ドロンさんはこの作品の失敗の後、さらにハリウッド進出にも失敗しますが、
この大きな試練を持前の努力で克服し、30歳代後半には見事に復活を遂げていきます。
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L'INSOUMIS (2)

2008-06-08 | THE 60'S CINEMA
『さすらいの狼』の作品に関する資料をいろいろと探しているなかで、
1989年に発刊されたフランスの雑誌“VIDEO7”誌の記事“DELON STAR STORY”
のアラン・ドロンさんへのインタビューでの貴重な発言を見つけました。
今回はその前半部分をご紹介いたします。

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記者(以下Q)“1964年にあなたはアラン・カバリエ監督作品「さすらいの狼」で
初めて製作と主演を兼任しましたね。
フランス人の俳優がこういうことをするのは当時かなり稀なことでした。
なぜあなたはこういう行動をとったのでしょうか?
映画会社からの独立を目指したからでしょうか?
それとも作品に話題性を持たせるためだったのでしょうか?”

アラン・ドロン(以下AD)“あなたが仰った二つの理由もさることながら、
私はそれまでの俳優という型を打ち破りたかったんだ。
だが結局成功するまでにはあの作品の5年後の「ボルサリーノ」まで待たねばならなかったけれどね。”

Q“あなたはこの作品の失敗をどう説明されますか?”

AD“まず初めに、そしてもっとも大事なこととして、
この映画は公開されてから最後の1週間、上映を禁止されたという事実がある。
なぜならレア・マッサリが演じたヒロインの役柄について、
「あれは私がモデルで、私から何の許可も取っていない。」
と法的に上映禁止を主張してきたある女性弁護士がいたからだ。
だが私はそんな彼女と決して和解はしなかったんだ。”

Q“今日でも「さすらいの狼」を人々が観ることのできない理由はここにあるのでしょうか?”

AD“この映画は当時封切られたものを大幅にカットしたり撮り直したりせずに、
初めのオリジナル・ネガに戻って再度編集しなおす必要が出てきたんだ。
それで私が演じたキャラクターは女性弁護士とより親密になり、
彼女と大恋愛を展開するという設定に変えたんだ。
そのため私たちは二人の親密感を出すよう台詞の録音をやり直したんだ。
もうこの話をするのはよそう。これは数々の失敗の要因のうちの一例だよ。”

Q“今ならもうアラン・カバリエ監督のフル・バージョンを公開しても問題ないのではないのでしょうか?”

AD“それはやはり不可能じゃないかな。
この映画には当時のフランで200万以上のコストがかかっていて、
資金を提供してくれたMGMは大損害を被っている。
従ってこの映画の権利は私にさえもう返ってくることはないだろう。
MGMも会社が分断されてしまったし(注;1986年MGMはタイム・ワーナーの傘下に入っている。)
ネガが手に入る可能性はさらに低くなってしまったよ。”

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このインタビューを読みますと、確かにドロンさん演じるトーマと
レア・マッサリ演じる女弁護士とが急速に接近していく過程が
やや唐突な感じがしないではありません。
彼女の自宅にトーマが姿を現す場面などはもっとちがう台詞のやり取りがあったはずの、
オリジナルの脚本によるバージョンもいつかまた見てみたいと思います。
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L'INSOUMIS (1)

2008-06-08 | THE 60'S CINEMA
1964年、当時29歳のアラン・ドロンさんが初めて映画の製作に乗り出した
記念すべき作品『さすらいの狼』をご紹介します。
http://www.imdb.com/title/tt0058232/

この作品は現在国内海外ともにDVDはおろかビデオやLDでも
一切発売されたことのない幻の作品となっています。
このたびブロンディーりおな様のおかげをもちまして
海外でテレビ放送された映像を観ることができました。

30数年ぶりに観た本作は、世間での「失敗作」という烙印が嘘ではないかと思うほど
私にとって十分にその映画的興奮を堪能することができる名作でした。
これが監督作品2本目というアラン・カバリエの緊張感のある演出、
撮影クロード・ルノワールの作り出す美しい白黒映像、
少ない時間ながらも強い印象を残すジョルジュ・ドルリューの音楽、
そして何よりも孤独な一匹狼を演じるドロンさんの熱演が見事です。

脇を固める共演俳優陣も個性豊かな面々で、
この作品のあと『高校教師』で再度共演するヒロイン役レア・マッサリ、
ドロンさんとの共演は珍しいジョルジュ・ジェレ、
ベルモンドの『相続人』の私立探偵役で印象に残る演技を見せたモーリス・ガレル、
『暗黒街のふたり』でジーノに引っぱたかれる隣人を演じたロベール・カステル
などなど、少ないながらも各自印象的な演技を見せてくれます。

物語は前半の誘拐事件から、中盤の主人公とヒロインの再会、
終盤の主人公たちの逃亡劇、というわかりやすい構成です。
公開当時、本作はあるトラブルによって内容が変更されてしまい、
興行的には失敗してしまったようですが、
(この事情については次回に記載します。)
映画はテンポ良く一気に進んでいくため、
私は特にとまどうことなく楽しむことができました。

ただしこの失敗によりドロンさんは本国フランスを捨て、
アメリカ行きに心がますます傾いていくという
おまけがついてくる結果となってしまいました。
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Le Bateau pour Lipaia

2008-06-03 | THE INFORMATIONS
いよいよドロンさんの新しい舞台のニュースが飛び込んできました。

http://www.leparisien.fr/home/loisirs/articles.htm?articleid=298540285

以前に伝えられていた娘のアヌーシュカ様との共演はまだあとになるようで、
来年1月にTheatre de Parisにおいて"le Bateau pour Lipaïa"という劇が
上演されることが発表されたようです。

共演は今年パリで大ヒットした映画"Bienvenue chez les Ch'tis"に出演し、
ドロンさんとは旧知の仲であったらしい歌手のリーヌ・ルノ-という方です。
(公式サイトhttp://www.linerenaud.com/)

今年80歳になる彼女との共演ということで
物語は老年の男女の劇的な出会いについてのもののようです。
リンクした記事の彼女へのインタビューによりますと、
彼女の舞台の大先輩である故エドウィージュ・フィエールが、
いつか彼女に演じるべきといわれていた役柄を今回演じたいと言ったのを
ドロンさんが喜んで共演を引き受けた経緯があるようです。

詳しい情報が入りましたらまたお知らせしていきたいと思います。
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FROM MY NEW SCRAP BOOK (51)

2008-06-01 | THE BRILLIANT PHOTOS
『ボルサリーノ』スティール写真です。
この写真を見ますと衣装と帽子の生地の風合いがよくわかります。

「スクリーン」誌より
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