Mort d'un pourri (1977)
この作品の原題は『虫けらの死』あるいは『汚い奴の死体』というもので、
物語の展開に重要な意味を持つ汚職政治家の秘密を握る男の死から付けられているものと思われますが、
この難しい小説的な題名を『チェイサー』(=『追いかける男』『謎を追う男』)という
スマートで都会的な題名に変えた日本の配給会社のセンスは非常によかったと思います。
今回からこの作品についての魅力を下記の5つの要素に分けて述べていきたいと思います。
①主人公グザヴィエ・マレシャルの人物像の魅力
②撮影アンリ・ドカエの映像美
③豪華キャストの新鮮な顔合わせ
④スタン・ゲッツを起用したフィリップ・サルドの音楽
⑤アラン・ドロンの絶妙な演技
(このうち④につきましては以前に投稿しましたのでそちらをご覧下さい。)
『MORT D'UN POURRI』(1)
『MORT D'UN POURRI』(2)
『MORT D'UN POURRI』(3)
『MORT D'UN POURRI』(4)
------------------------------------------------------------
ではまず初めに①について(若干私の推察を交えながら)記していきます。
ドロン演ずる主人公グザヴィエは、
自らの手でパリの高層ビルの1室に事務所を構える商事会社を何年か前に起こし、
数多くの従業員を抱えながら日々の業務を多忙にこなしているやり手の実業家である。
彼と同じオフィスには古くからの親友であり政治家でもあるフィリップが事務所を構えているが、
恐らく友人思いのグザヴィエが彼に間借りさせているものと思われる。
そのような環境下にあってもグザヴィエは政治にはいっさい興味はなく、嫌悪感すら抱いている。
当然のことながら自分の事業にフィリップの援助は一切必要とせず、
あくまでもお互い距離を置いてそれぞれの道を歩んでいる。
私生活においては、パリのアパルトマンで永年一人暮らしをしており、
恋人が時折訪ねてきては安らぎの一時を過ごすという極めてマイペースの生活。
そんな折親友であるフィリップが衝動的な殺人事件を起こしてしまい、
その動機を聞いて彼に同情したグザヴィエは偽のアリバイ工作を自ら進んで買って出る。
実はフィリップは殺害の詳しい状況についてグザヴィエに嘘をついており、
また殺害後に重要な機密書類を奪い取っている事も隠しているズルイ男なのだが、
その事を知ったグザヴィエは親友を大いに叱り付ける。
それは自分が騙された事に対して感情的に怒っているのではなく、
あくまでも親友が自分の立場を自ら不利にしている手際の悪さを認識させ、
軌道修正させる為である。
フィリップにはさらにもう一つ秘密があった。
自分の顧問弁護士と恋仲になってしまった妻に対抗すべく密かに愛人がいたのである。
フィリップからその事をやむなく告白されても
グザヴィエはそれ以上彼を追求したり非難したりはしない。
そんな事をしても今回の事態には一切関係がないという彼の冷静な判断であり、
かつフィリップの心の痛みも十分わかっているからである。
事態はさらに悪化の一途を辿り、とうとうフィリップは何者かに殺害される。
無二の親友を失ったグザヴィエの犯人追求劇がここから始まるが、
いかなる危機に直面しても彼はあくまでも冷静沈着である。
この一本筋の通った彼の頑固さはフィリップの愛人にも危機をもたらすが、
窮地を救ったグザヴィエは彼女を漫画家である幼馴染に頼んで家にかくまってもらう。
たとえ社交的ではなく、パーティー嫌いの性格であっても、
そうやって助けが欲しいときに助けてくれるブレーンが常に彼の周りには多数存在しているのだ。
この魅力的な人物はやがて敵対していた刑事や、
影のフィクサーたちからも一目置かれるようになり、
機密書類を目当てに様々な立場の人間がグザヴィエにアプローチを掛けて来る。
しかしながらどのような誘惑にも彼は一切耳を傾けようとしない。
グザヴィエが知りたい事はただひとつ、誰が親友を殺したか?のみなのである。
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いかがでしょうか?
私なりに整理する為にこうやって長々と書いてみて、
改めて自分が日常生活の上で理想と考える男の姿がこの「グザヴィエ」であると再確認しました。
この映画を観るだけで、『仕事が出来る人の云々かんぬん』といった巷でよく売れている自己啓発本は
全く読む必要はないと自信を持って私は言えます。
そしてこの「グザヴィエ」=「アラン・ドロン」という図式が私の頭の中で出来上がった為に、
こうやって今もドロンの探求を続けている自分がここにいるのです。
今回は長くなりましたので次回に②③⑤について記します。
この作品の原題は『虫けらの死』あるいは『汚い奴の死体』というもので、
物語の展開に重要な意味を持つ汚職政治家の秘密を握る男の死から付けられているものと思われますが、
この難しい小説的な題名を『チェイサー』(=『追いかける男』『謎を追う男』)という
スマートで都会的な題名に変えた日本の配給会社のセンスは非常によかったと思います。
今回からこの作品についての魅力を下記の5つの要素に分けて述べていきたいと思います。
①主人公グザヴィエ・マレシャルの人物像の魅力
②撮影アンリ・ドカエの映像美
③豪華キャストの新鮮な顔合わせ
④スタン・ゲッツを起用したフィリップ・サルドの音楽
⑤アラン・ドロンの絶妙な演技
(このうち④につきましては以前に投稿しましたのでそちらをご覧下さい。)
『MORT D'UN POURRI』(1)
『MORT D'UN POURRI』(2)
『MORT D'UN POURRI』(3)
『MORT D'UN POURRI』(4)
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ではまず初めに①について(若干私の推察を交えながら)記していきます。
ドロン演ずる主人公グザヴィエは、
自らの手でパリの高層ビルの1室に事務所を構える商事会社を何年か前に起こし、
数多くの従業員を抱えながら日々の業務を多忙にこなしているやり手の実業家である。
彼と同じオフィスには古くからの親友であり政治家でもあるフィリップが事務所を構えているが、
恐らく友人思いのグザヴィエが彼に間借りさせているものと思われる。
そのような環境下にあってもグザヴィエは政治にはいっさい興味はなく、嫌悪感すら抱いている。
当然のことながら自分の事業にフィリップの援助は一切必要とせず、
あくまでもお互い距離を置いてそれぞれの道を歩んでいる。
私生活においては、パリのアパルトマンで永年一人暮らしをしており、
恋人が時折訪ねてきては安らぎの一時を過ごすという極めてマイペースの生活。
そんな折親友であるフィリップが衝動的な殺人事件を起こしてしまい、
その動機を聞いて彼に同情したグザヴィエは偽のアリバイ工作を自ら進んで買って出る。
実はフィリップは殺害の詳しい状況についてグザヴィエに嘘をついており、
また殺害後に重要な機密書類を奪い取っている事も隠しているズルイ男なのだが、
その事を知ったグザヴィエは親友を大いに叱り付ける。
それは自分が騙された事に対して感情的に怒っているのではなく、
あくまでも親友が自分の立場を自ら不利にしている手際の悪さを認識させ、
軌道修正させる為である。
フィリップにはさらにもう一つ秘密があった。
自分の顧問弁護士と恋仲になってしまった妻に対抗すべく密かに愛人がいたのである。
フィリップからその事をやむなく告白されても
グザヴィエはそれ以上彼を追求したり非難したりはしない。
そんな事をしても今回の事態には一切関係がないという彼の冷静な判断であり、
かつフィリップの心の痛みも十分わかっているからである。
事態はさらに悪化の一途を辿り、とうとうフィリップは何者かに殺害される。
無二の親友を失ったグザヴィエの犯人追求劇がここから始まるが、
いかなる危機に直面しても彼はあくまでも冷静沈着である。
この一本筋の通った彼の頑固さはフィリップの愛人にも危機をもたらすが、
窮地を救ったグザヴィエは彼女を漫画家である幼馴染に頼んで家にかくまってもらう。
たとえ社交的ではなく、パーティー嫌いの性格であっても、
そうやって助けが欲しいときに助けてくれるブレーンが常に彼の周りには多数存在しているのだ。
この魅力的な人物はやがて敵対していた刑事や、
影のフィクサーたちからも一目置かれるようになり、
機密書類を目当てに様々な立場の人間がグザヴィエにアプローチを掛けて来る。
しかしながらどのような誘惑にも彼は一切耳を傾けようとしない。
グザヴィエが知りたい事はただひとつ、誰が親友を殺したか?のみなのである。
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いかがでしょうか?
私なりに整理する為にこうやって長々と書いてみて、
改めて自分が日常生活の上で理想と考える男の姿がこの「グザヴィエ」であると再確認しました。
この映画を観るだけで、『仕事が出来る人の云々かんぬん』といった巷でよく売れている自己啓発本は
全く読む必要はないと自信を持って私は言えます。
そしてこの「グザヴィエ」=「アラン・ドロン」という図式が私の頭の中で出来上がった為に、
こうやって今もドロンの探求を続けている自分がここにいるのです。
今回は長くなりましたので次回に②③⑤について記します。
復帰おめでとうございます。
早速ですが、映画『チェイサー』をようやく観る機会を得ました。
予想以上の傑作だと思いました。
そして、チェイサー様が、なぜこの映画に深い思い入れがあるのか、漠然とですが分かったような気もいたします。
この映画に関するブログ記事を書きましたので(一方的な感想ですが)、TBさせていただきます。
よろしくお願いします。
復帰と同時に大変うれしいコメントとトラバをいただき感謝いたします。
マサヤ様にこの作品に対する私の思い入れを少しでもご理解いただけたこと、
そしてこの作品のドロンさんの演技も含めた素晴らしさを楽しんでいただけたことは
私にとってもこの上ない喜びであります。