格安CDエクスプローラー

<100円からのCD批評>
~主に中古CDを漁り歩いて幾年月/好きなジャズ、ラテン音楽を中心に勝手・気ままな音楽批評

MPB女性シンガーの実力差歴然の2枚

2011年09月20日 | ラテン音楽

Marisa Monte [Verde Anil Amarelo con De Rosa E Carvao]  (EMI/1997) 外国盤・ブラジル 250円 

Mm05   星3つ   Soso

 マリーザ・モンチとアート・リンゼーのコンビにC.ブラウンが加わったメンバーで、90年代はず~っとつっ走って来た。それが好きかどうかといえば、少々理知的で硬い感じのするマリーザが、どうにも計算しながら作ったアルバムばかりで、自然なバランス感覚が少し足りなくて小生には不満があるCDばかり。その路線の中でも、サンバの要素をいつもより多めに出している本作は、それなりにうまくいったアルバムだと思う。おそらくG.ジルの参加がアルバム全体を活気づけ、サンバ感のパワーアップに貢献しているのではないのか?

 

Monica Salmaso [Voadeira]    (2000/Otomagaki)  国内盤  125円 

Monica  星3つ  Normal

~ブラジルの女性シンガーソングライターで初耳の名前だったが、試しに購入した。CDの構成は、自作と著名なアーティストのヒット曲が半分ずつ詰まっている。ネットでの前評判もあり、買ってみたがさほど感じるところが当方には無かった。

 とりわけセンスが良いわけでも、ルックスが飛びぬけているのでもなく、まあ普通のMPB女性シンガーであって、図抜けたヌケのよい音楽性が見られるのでもないから、このアルバムリリースからもう10年以上経ってみた今、日本で認知度も高くない理由もわかります。


知名度ではいまいち力不足だけど、実力者CD

2011年09月13日 | ジャズ

Martin Taylor's spirit of django [Years Apart]    (1996/LINN)  外国盤・イギリス  250円 

Martintaylor   星3つ Pointing

 ジャンゴ・ラインハルトは、今日でも大きな影響をジャズギターの世界に与え続けていて、ジャンゴの音楽を専門に現代的な方向性を持たせて、自分たちにおける「ジャンゴロジー精神」を表現しているアーティストも多くいます。このマーティン・テーラーはどちらかというと、ジャンゴの時代を割とそのまま受け継いで表現している様子で、朋友だったS.グラッペリの共演もあり、オーソドックスすぎる程オールドジェネレーションへのオマージュ的な世界を展開していて、ある意味で現代の臭いが少なく、その辺りが好き嫌いの分かれ道のようです。

 小生にとっては、これだったらオリジナルのCDをかけた方が気持ちも良いし、スッキリすると感じたトラックがかなりあって、残念ながら小生のアンテナにはひっかからないアーティストのようでした~。

Cyrus Chestnut  [The Dark before the Dawn]  (Atlantic/1995)   アメリカ盤  100円  星3つ

Cyruschess

~センチメンタルなムードもありの、ゴスペル風に歌い上げるピアノプレイでは定評?のあるC.チェスナット。手堅いプレイでサイドマンとして、色んなアーティストのセッションに引っ張り出されるだけあって、女性シンガーやフュージョン&ポップス系のアーティスト達にも人気がある。その分、自分のプレイにコレといった強みがないのが、弱点なのかもしれません。本CDはいつものアーシーな雰囲気にタイトルではないのですが、少々暗さを持った曲想を中心にした聞かせ方をしていてバリバリ技巧を繰り出すスタイルを心持抑えているようにも感じられる。安心して聞けるピアノアルバムではないでしょうか。


偉大なシンガーのラストアルバム2題

2011年09月07日 | ジャズ

~我がフェイバリットシンガーであるB.ホリディとM.ゲイの実質的なラストアルバムを最近購入。共にストリングス&フルオーケストラを従えてのバラード中心の構成という共通点と、何か物悲しさを感じさせるアルバムの雰囲気には、何やらドラマチックなものを感じます。一般評価はあまり高くないラストアルバムですが、どこか心の片隅に残る心地よい“傷あと”を感じる2枚です。

 

Billy Holiday [Lady in Satin]  (CBS/19?) 外国盤・アメリカ 250円 

Ladyinsatin       星3つ     Great_2

  これは有名な「レディ・イン・サテン」の復刻盤CD( CBSのマスターピースシリーズ)。ジャズファンはあまり評価していないのが、このバンド編成とアレンジメント。何か甘ったるい感じで、余計な女性コーラスがまとわりつくのが確かに気に入らない部分も多い。最晩年の陰りが見えたボーカルに、ストリングスやらコーラスがバックで被さってくると、少々安っぽいムード音楽になりそうなヤバさがあるのが、一番問題なのだろう。しかし、解説によるとこのレイ・エリスオーケストラは、ビリー自身が非常に気に入ってこうしたスタイルの演出において、レコーディングする事を望んでいたと言われる。オーケストラがビリーの衰えた声質とフレージング技量をカバーする為にやたら出しゃばるのが痛々しいまでに理解できてしまう。それでも、ビリー・ホリディのファンであるこちらにとって、やはりトップの「I’m Fool to Want you」の出来が素晴らしく、この曲はもうすでに女性ジャズボーカルのコンピレーションCDに収められているパターンで2,3枚持っていても、オリジナルとしてほしいもの。

 なお、2000年頃、再々発された本CDの完全盤には、この別バージョンが何曲も収録されていて、彼女のこの曲への思い入れが感じられる。

 

Marvin Gaye [Vulmerable]    (1997/Motown)  国内盤  250円 

Marving     星3つ    Great

~マービンが生前何度か録音をやり直したり、思い入れのあったバラードを中心に構成した、いわばラストアルバムというもの。「いそしぎ」などのスタンダードとソウル系バラードばかりで曲の長さも3分少々のナンバーなので、あっという間に聴き終えてしまう。物足りなさばかりが残ってしまうし、「What's going on」や「I Want you」で見せたある種の恍惚感はほとんど存在しない。その代わりに何かさびしく消え行く炎の輝きが感じられ、それは好きか嫌いかといわれるとどこか好きな感じです。苦さのソウルバラードとマービンの心の寂しさが伝わってくるようでもある。